中小企業省力化投資補助金の対象設備とは?補助対象・対象外をわかりやすく整理
人手不足に悩む中小企業にとって、IoTやロボットの導入コストを抑えられる「中小企業省力化投資補助金」は非常に心強い制度です。しかし実務の現場では、「この設備は補助対象になるのか」「見積書のこの費用は対象外なのか」という判断で手が止まってしまうケースが少なくありません。対象設備の範囲を誤って事業計画を組んでしまうと、採択後に経費が減額されたり、最悪の場合は交付決定が受けられなかったりするリスクもあります。
本記事では、公募要領に基づき、カタログ注文型・一般型それぞれの対象設備の考え方と、意外と見落としがちな「対象外」の費用を整理します。自社の投資計画がどちらの型に合うのか、対象経費の範囲を正しく把握したい経営者の皆さま・経営企画のご担当者はぜひ参考にしてください。
結論:対象設備は「型」によって考え方が大きく異なる
中小企業省力化投資補助金には「カタログ注文型」と「一般型」の2つの型があり、対象となる設備の考え方はまったく異なります。
・カタログ注文型
事務局が事前に審査・登録した「カタログ掲載製品」から選ぶ方式。製品そのものと導入に伴う付随費用が対象です。
・一般型
カタログに載っていない、自社専用に設計されたオーダーメイド設備が対象。機械装置だけでなく、システム構築費や専門家経費など幅広い経費区分が用意されています。
どちらを選ぶにせよ、「単価50万円以上の設備投資が必須」という点は共通しており、これを下回る小規模な投資だけでは申請できません。
カタログ注文型と一般型、対象設備の違い早わかり表
| 比較項目 | カタログ型 | 一般型 |
| 対象設備 | 事務局登録済みの汎用製品 | オーダーメイド設備 |
| カスタマイズ | 原則不可(そのまま導入) | 可能 |
| 投資額(下限) | 50万円以上 | 50万円以上 (機械装置・システム構築費) |
| 導入経費の扱い | 製品本体価格の20%まで別枠で対象 | 運搬費・技術導入費、外注費などとして区分ごとに対象 |
| 建物費・車両費 | もとより対象経費の範囲外 | 明確に「対象外」と規定 |
この表からも分かるように、「既製品をそのまま使うか」「自社仕様に作り込むか」が、型選択の分岐点になります。
カタログ注文型の対象設備
カタログ注文型で補助対象となるのは、あらかじめ事務局のカタログに登録されている省力化製品のみです。自社の希望する設備が独自にカスタマイズされたものである場合、この型では対象になりません。なお、対象経費は大きく2つに分かれます。
・製品本体価格
機械装置や工具・器具、専用ソフトウェア・情報システムなど、カタログに登録された製品本体の購入・借用費用です。単価50万円以上であることが条件です。
・導入経費
設置作業費、運搬費、動作確認費用、初期設定(マスタ設定等)費用が対象です。ただし上限は製品本体価格の2割までと決められており、導入経費だけを単独で申請することはできません。
カタログ注文型は「製品を選ぶだけ」という手軽さが魅力ですが、その裏返しとして対象となる設備の自由度は低く、大幅なカスタマイズを加えると対象外になる点に注意が必要です。カタログには清掃ロボットや自動搬送機、検品・外観検査装置、券売機など、業種を問わず人手不足解消に効果があると認められた汎用製品が幅広く登録されています。まずは自社の課題を解決できる製品カテゴリがカタログに存在するかを確認するところから始めるとスムーズです。
一般型の対象設備
一般型では、外部のシステムインテグレータ等と連携して自社の業務に合わせて設計された「オーダーメイド設備」が対象です。経費区分は次のように幅広く用意されています。
・必須経費:機械装置・システム構築費
単価50万円以上の機械装置、工具・器具、専用ソフトウェア・情報システムの購入・製作・借用、およびこれらの改良・据付費用が対象です。この区分への投資が最低1件必須となります。なお、船舶・航空機・車両及び運搬具は対象外です。
・任意経費(上限あり)
運搬費、技術導入費(知的財産権等の導入、上限は対象経費総額の3分の1)、知的財産権等関連経費(上限3分の1)、外注費(上限2分の1)、専門家経費(1日5万円まで、上限2分の1)、クラウドサービス利用費が対象になります。これらは機械装置・システム構築費と組み合わせて申請するもので、単独では申請できません。
一般型は対象範囲が広い分、審査の観点も「独自性」「革新性」「投資回収期間の妥当性」など多岐にわたり、カタログ注文型より事業計画の作り込みが求められます。
見落としがちな「対象外」設備・費用
補助金申請でトラブルになりやすいのは、意外と対象外になる費用の存在です。両型に共通する代表的な対象外経費を整理します。
・交付決定前に発生した費用
契約・発注・購入のいずれも交付決定後でなければ対象外です。「早く導入したいから」と先に発注してしまうと、その時点で補助対象から外れてしまいます。
・中古品の購入費
新品であることが前提です。
・不動産・簡易建物の取得費用
土地、建物、コンテナハウスなどの取得費は対象外です(一般型)
・自動車・船舶・航空機の購入・修理・車検費
機械装置に該当するもの以外は対象外です。
・既存システムのバージョンアップ・改修費
新規導入するシステムと連携させるための改修費は対象になりますが、既存システムの単純な更新は対象外です。
・汎用性が高く目的外使用になり得るもの
事務用パソコン、プリンタ、スマートフォン、タブレット、家具などは、本事業専用であることが明確でない限り対象外です。
・自社の人件費・旅費・交際費、消費税、各種保険料、振込手数料など
・同一法人・関係者間の取引
代表者や役員が同じ会社間の発注、資本関係・特別な利害関係がある事業者への支払い、同一企業の部署間での発注は対象外となります。設備の調達先を決める際は、グループ会社や役員の関連会社が含まれていないか事前に確認が必要です。
・リース利用時の金利・保険料
リース会社との共同申請スキームを使う場合でも、リース契約に付随する金利や保険料そのものは対象外です。
これらは「設備投資だから何でも対象になる」という思い込みで事業計画を組んでしまうと、後から補助対象経費が大きく削られる典型パターンです。特にシステム開発を伴う投資では、既存システム改修と新規開発の境界線が曖昧になりやすく、事前の整理が欠かせません。
どちらの型で申請すべきか迷ったら
「自社の設備は汎用品なのか、オーダーメイドなのか」の判断自体が難しいケースは非常に多くあります。たとえば汎用設備であっても、自社の環境に応じて周辺機器の構成や搭載機能が変わる場合や、複数の汎用設備を組み合わせることでより高い省力化効果を生み出す場合は、一般型のオーダーメイド設備とみなされることがあります。逆に、カタログに掲載されている製品カテゴリに該当する設備を一般型で導入する場合は、審査上考慮される仕組みもあります。
このように対象設備の判定には型ごとの詳細なルールの理解が必要であり、公募要領の読み込みだけで正確に判断するのは決して簡単ではありませんので、専門家に事前相談することをおすすめします。
よくある質問
Q. 中古の機械装置は対象設備になりますか?
A. なりません。カタログ注文型・一般型のいずれも、新品の設備であることが前提です。
Q. 事務用のパソコンやタブレットは対象設備になりますか?
A. 原則対象外です。汎用性が高く目的外使用が可能な機器(事務用PC、プリンタ、スマートフォン、タブレット、家具等)は、本事業専用であることが明確でない限り補助対象になりません。
Q. 交付決定前に発注してしまった設備は対象になりますか?
A. 対象になりません。契約・発注・購入のいずれも交付決定日以降に行う必要があり、事前着手は理由を問わず認められません。
Q. 建物の改修や増築は対象設備に含まれますか?
A. いずれの型でも不動産(土地・建物・構築物)の取得費用や、設置場所の整備・基礎工事費用は対象外です。
まとめ
いかがでしたでしょうか。中小企業省力化投資補助金の対象設備は、カタログ注文型では「登録済み製品+導入経費」、一般型では「オーダーメイドの機械装置・システム構築費を中心とした幅広い経費区分」という、まったく異なる考え方で整理されています。一方で、交付決定前の発注、中古品、既存システムの単純更新など、両型に共通する対象外費用も多く存在し、これらを見落とすと採択後の経費減額や交付決定の取り消しにつながるリスクがあります。
・「自社の投資計画がどちらの型に合うのか」
・「見積書のこの費用は対象になるのか」
といった判断に迷われた際は、公募要領の最新版を確認しながら、専門家に事前相談することをおすすめします。事業計画の設計段階からのご相談も承っておりますので、お気軽にお問い合わせください。







