【サイバーセキュリティ】UTMは本当に必要? 中小企業がセキュリティ製品を”入れすぎ”て失敗するケース


UTMは本当に必要? 中小企業がセキュリティ製品を”入れすぎ”て失敗するケース

~ベンダーに言われるがままに製品を導入して後悔しないために~

「セキュリティ対策をしなければ」と危機感を持った中小企業の経営者が、ベンダーの提案を受けて次々とセキュリティ製品を導入した結果、「製品が多すぎて管理しきれない」「機能が重複してコストが無駄になっている」「導入したのに使いこなせていない」という事態に陥るケースが増えています。

セキュリティ対策は「やればやるほど安全になる」というものではありません。自社の環境やリスクに合わない製品を過剰に導入すると、かえって運用負荷が増え、本来守るべきポイントが見えなくなってしまいます。

このコラムでは、セキュリティ製品の「入れすぎ」で失敗するパターンと、自社に本当に必要な製品を見極めるためのフレームワークを解説します。

この記事でわかること

・セキュリティ製品の過剰導入でよくある失敗パターン4つ
・UTM、EPP、EDR、MDMなど主要製品の役割と機能の重複ポイント
・自社に本当に必要な製品を見極めるための判断フレームワーク
・サイバーセキュリティ対策促進助成金を活用して、中立的な専門家と一緒に製品選定を進める方法


1. 「入れすぎ」で失敗する4つのパターン

中小企業がセキュリティ製品の導入で失敗するパターンには、以下の4つがあります。

パターン1:機能が重複して無駄なコストが発生している

UTM(統合脅威管理)にはファイアウォール、IPS(侵入防止システム)、アンチウイルス、Webフィルタリングなどの機能が統合されています。にもかかわらず、UTMとは別に単体のファイアウォールやWebフィルタリングソフトを導入している企業があります。

また、EPP(エンドポイント保護)とEDR(エンドポイント検知・対応)の両方を導入する場合、同一ベンダーの統合製品であれば問題ありませんが、異なるベンダーのEPPとEDRを重ねて入れると、競合が発生して端末の動作が遅くなることがあります。

パターン2:導入したのに使いこなせていない

高機能なEDRを導入したものの、アラートの意味がわからず放置している。UTMのログを見る人がいない。MDM(モバイルデバイス管理)を入れたが設定が初期状態のまま――こうした「宝の持ち腐れ」は非常に多いです。

特に情報システム担当者が1人しかいない(一人情シス)企業では、複数の製品を運用するリソースが根本的に不足しています。製品の数を増やすほど、1つあたりに割ける管理時間が減り、全体のセキュリティレベルがかえって下がるという逆説的な状態になりかねません。

パターン3:ベンダーの提案をそのまま受け入れている

セキュリティ製品のベンダーは、当然ながら自社製品を売ることが目的です。「最新の脅威に対応するにはこの製品が必要です」「御社の環境ならこのオプションも付けたほうがいいです」と勧められると、断りにくいと感じる経営者は少なくありません。

問題は、ベンダーは自社製品の範囲で最適な提案をするのであって、御社にとっての全体最適を考えているとは限らないということです。A社のUTMとB社のEDRとC社のバックアップソフトをそれぞれ別のベンダーから購入すると、製品間の連携がなく、トータルのコストも管理負荷も増大します。

パターン4:「とりあえずUTM」から始めて計画なく積み上がった

「まずはUTMを入れよう」→「次はEDRが必要だと言われた」→「バックアップも追加しなければ」→「MDMも入れたほうがいいらしい」……こうして場当たり的に製品が積み上がっていくパターンです。

全体の計画がないまま個別の製品を追加していくと、優先順位が不明確になり、本当に必要な対策に予算が回らなくなることがあります。


2. 主要セキュリティ製品の役割と重複ポイント

「入れすぎ」を防ぐために、まず主要なセキュリティ製品の役割を整理しましょう。

製品カテゴリ 何を守るか 主な機能 費用の目安(中小企業)
UTM(統合脅威管理) ネットワークの境界 ファイアウォール、IPS、アンチウイルス、Webフィルタリング 30万〜150万円
EPP(エンドポイント保護) PC・サーバーの端末 ウイルス検知・駆除、ランサムウェア防止 年間5万〜30万円
EDR(エンドポイント検知・対応) PC・サーバーの端末 不審な挙動の検知・調査・対処 年間10万〜50万円
MDM(モバイルデバイス管理) スマホ・タブレット リモートワイプ、アプリ管理、位置追跡 年間10万〜40万円
バックアップ データ 自動バックアップ、世代管理、リストア 20万〜100万円
IT資産管理 全IT資産 デバイス・ソフトの一元管理、ライセンス管理 年間10万〜50万円

機能が重複しやすいポイント

重複しやすい組み合わせ 重複する機能 対処法
UTM + 単体ファイアウォール ファイアウォール機能 UTMにファイアウォールが含まれるため、単体製品は不要
UTMのアンチウイルス + EPP ウイルス検知 UTMはネットワーク層、EPPは端末層で守る範囲が異なるため、両方あって良い
異なるベンダーのEPP + EDR 端末の監視・保護 同一ベンダーの統合製品を選ぶか、どちらかに集約する
MDM + IT資産管理 デバイス管理 モバイル端末が少数ならIT資産管理ツールの機能で代替可能な場合も

3. 自社に必要な製品を見極めるフレームワーク

では、自社に本当に必要なセキュリティ製品はどう判断すればいいのでしょうか。以下の4ステップのフレームワークで整理できます。

ステップ1:守るべき資産を洗い出す

まず、自社のIT環境で「守るべきもの」を洗い出します。

顧客情報(個人情報、取引履歴)
財務情報(売上データ、経理データ)
業務システム(基幹システム、メール、ファイルサーバー)
端末(社員PC、スマートフォン、タブレット)
ネットワーク(社内LAN、Wi-Fi、VPN)

ステップ2:リスクの優先順位をつける

すべての資産を同じレベルで守ろうとすると、コストも運用負荷も膨大になります。「失ったときの影響が大きいもの」から優先的に対策するのが現実的です。

リスクの大きさ 対象例 優先度
事業停止につながる 基幹システム、バックアップデータ 最優先
法的責任が発生する 個人情報、顧客データ
取引先の信頼を失う メールセキュリティ、ネットワーク境界
業務効率が低下する PC端末、社内ファイル

ステップ3:既存の対策を棚卸しする

現在すでに導入している対策を一覧にし、「カバーできている領域」と「まだカバーできていない領域」を可視化します。この作業で、不要な重複や対策の穴が見えてきます。

ステップ4:不足している対策だけを追加する

ステップ2の優先順位とステップ3の棚卸し結果を照らし合わせ、「優先度が高いのにまだカバーできていない領域」に対して、必要最小限の製品を追加するのが正しいアプローチです。

このフレームワークに沿って自社だけで判断するのが難しいと感じる場合は、セキュリティ製品導入支援サービスをご活用ください。特定メーカーに偏らない中立的な立場から、御社に本当に必要な製品だけを選定いたします。サイバーセキュリティ対策促進助成金の対象となる製品の選定もあわせてサポートしています。


4. 「UTMは本当に必要か?」への回答

コラムのタイトルである「UTMは本当に必要か?」にお答えします。結論から言うと、「会社によって異なる」が正直な回答です。

UTMが必要な企業

社内にオンプレミスのサーバーやファイルサーバーがある企業
社内LANに接続するPCが多数ある企業
取引先からネットワーク境界の防御を求められている企業

UTMが不要(または優先度が低い)な場合

業務のほとんどがクラウドサービスで完結している企業(社内にサーバーがない)
従業員がほぼ全員テレワークで、オフィスのネットワークをほとんど使わない企業
従業員が数名で端末も数台しかない小規模な企業

クラウド中心の企業であれば、UTMよりもCASB(Cloud Access Security Broker)やSWG(Secure Web Gateway)など、クラウド環境を守る製品の方が優先度が高い場合があります。

大切なのは、「UTMは定番だから入れるべき」という思い込みで判断するのではなく、自社のIT環境とリスクに合った製品を選ぶことです。


5. サイバーセキュリティ対策促進助成金を活用した賢い導入方法

セキュリティ製品の導入にはコストがかかりますが、東京都内の中小企業であればサイバーセキュリティ対策促進助成金を活用して費用の一部を賄うことができます。

サイバーセキュリティ対策促進助成金の概要

項目 内容
助成率 対象経費の1/2以内
助成限度額 最大1,500万円
対象経費 UTM、EDR、EPP、MDM、バックアップなどセキュリティ機器・サービスの導入費
申請要件 SECURITY ACTION二つ星宣言済み、GビズIDプライム取得済み

サイバーセキュリティ対策促進助成金を活用するメリットは、単にコストが下がるだけではありません。申請書を作成するプロセスで、自社のセキュリティ課題と導入計画を整理する機会になるのです。前述のフレームワーク(守るべき資産の洗い出し→優先順位付け→既存対策の棚卸し→不足対策の追加)と、サイバーセキュリティ対策促進助成金の申請プロセスは非常に相性が良いと言えます。

「入れすぎ」を防ぐために助成金申請を活用する

サイバーセキュリティ対策促進助成金の申請書には、「なぜこの製品が必要か」「導入後にどのような効果が見込めるか」を具体的に記載する必要があります。この作業を通じて、本当に必要な製品だけを厳選することが自然にできるようになります。

「あれもこれも導入したい」ではなく、「この課題を解決するためにこの製品が必要だ」と根拠を持って選定することで、過剰投資を防ぎながら効果的なセキュリティ対策を実現できます。

サイバーセキュリティ対策促進助成金の申請手続きに不安がある場合は、サイバーセキュリティ対策促進助成金 申請サポートサービスをご利用ください。製品選定から申請書作成まで一貫してサポートいたします。

また、中長期的なセキュリティ計画の策定から製品選定までを専門家と一緒に進めたい場合は、セキュリティ伴走コンサルティング(vCISO)(月額30万円〜)をご検討ください。サイバーセキュリティ対策促進助成金の活用計画も含めて、経営視点から最適な投資計画を策定いたします。


まとめ

セキュリティ対策は「たくさん入れれば安全」ではありません。自社の環境とリスクに合った製品を、必要最小限で、正しく運用することが重要です。

機能の重複を避け、コストと運用負荷を適正に保つ
ベンダー任せにせず、自社の課題を起点に製品を選ぶ
4ステップのフレームワーク(資産洗い出し→優先順位→棚卸し→不足追加)で判断する
・UTMが必要かどうかは自社のIT環境次第。クラウド中心なら他の選択肢も検討する
サイバーセキュリティ対策促進助成金を活用すれば、費用を抑えながら中立的な専門家と一緒に製品選定ができる


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アクセルパートナーズは、特定のセキュリティ製品を販売する代理店ではありません。中立的な立場から、御社の環境とリスクに合った最適な製品を選定いたします。

・「ベンダーから提案された製品が本当に必要かどうか、第三者の意見がほしい」
・「今の対策に過不足がないか、プロの目で確認してほしい」
・「サイバーセキュリティ対策促進助成金を使って、できるだけコストを抑えて導入したい」

こうしたご相談に、セキュリティと経営の両方に精通した中小企業診断士がお応えします。

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お問い合わせ:0120-659-057(平日対応)


参考・出典

・IPA「中小企業の情報セキュリティ対策ガイドライン 第3.1版」 https://www.ipa.go.jp/security/guide/sme/about.html
・経済産業省「サイバーセキュリティ経営ガイドライン Ver3.0」 https://www.meti.go.jp/policy/netsecurity/mng_guide.html
・東京都中小企業振興公社「サイバーセキュリティ対策促進助成金」公式ページ

鴨居 陽介
この記事の編集: 鴨居 陽介
アクセルパートナーズ 取締役・中小企業診断士

国内Sier企業でシステムエンジニア、PM、研修講師、法人営業を経験。 人と組織の成長を支えるマネジメントに携わる。2023年 中小企業診断士登録。2025年 アクセルパートナーズの理念や行動指針に強く共感し、取締役として参画。

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