事業計画書の「生産性目標値」の作り込み方|採択を分ける労働生産性の向上率を、ベンダーが正しく設計する
採択を分けるのは、加点テクニックよりも「申請書の質」——当社の採択分析でも、それが繰り返し見えてきました。
そして、その申請書の質の核にあるのが「労働生産性の向上率」です。
これは審査で見られる計画目標値であると同時に、通常枠の必須要件でもあります。ところが、計算式や目標値の立て方を正確に理解しているベンダーは多くありません。
本コラムでは、2026年の公募要領(通常枠)をもとに、労働生産性の計算式と、事業計画書での目標値の作り込み方を、ベンダー向けに実践的に整理します。
審査で見られる「計画目標値=労働生産性の向上率」とは
公募要領の審査項目には、事業面・政策面とならんで「計画目標値の審査」があり、その中身は「労働生産性の向上率」と明記されています。
さらに労働生産性の向上は、通常枠では申請の必須要件でもあります。公募要領は、交付申請時点の翌事業年度以降3年間の事業計画について、次を求めています。
| 求められる目標 | 水準 |
|---|---|
| 1年後の労働生産性 | 3%以上向上(※過去にIT導入補助金2023通常枠等・2024・2025の交付決定を受けた事業者は4%以上) |
| 事業計画期間(3年)の労働生産性の年平均成長率 | 3%以上(※同上の事業者は4%以上) |
| 目標の質 | 労働生産性の向上の目標が実現可能かつ合理的であること |
つまり、数値を満たしたうえで、その数値が「実現可能かつ合理的」だと説明できることが問われます。
労働生産性・付加価値額の計算式(公募要領の定義)
労働生産性の計算式は、公募要領に明記されています。
📄 公募要領(通常枠)の計算式
労働生産性 =(営業利益 + 人件費 + 減価償却費)÷ 年間の事業者当たり総労働時間
分子の「営業利益+人件費+減価償却費」は、公募要領で付加価値額と定義されているものと同じです。つまり労働生産性は、「付加価値額 ÷ 年間の総労働時間」と読み替えられます。
💡 「売上を増やす」だけが向上策ではない
労働生産性は「付加価値額 ÷ 総労働時間」です。
ということは、付加価値額(営業利益・人件費・減価償却費)を増やすだけでなく、同じ成果をより少ない総労働時間で生み出す(残業削減・業務効率化)ことでも向上します。
ITツールの導入効果は「時間を減らす」方向で出ることが多いので、分母(総労働時間)を意識すると、説得力のある計画が描けます。
付加価値額や賃上げ(給与支給総額)の考え方は、賃上げ加点・返還の記事でも詳しく解説しています。あわせてご確認ください。
▶ 関連:“賃上げ未実施”で返還を求められるケースとは|付加価値額と賃上げ要件
生産性目標値の立て方|4ステップ
採択される計画は、いきなり「3%向上」と書くのではなく、根拠を積み上げて目標値にたどり着いています。次の4ステップで作り込みます。
1
直近の営業利益・人件費・減価償却費(=付加価値額)と、年間の総労働時間を整理し、現状の労働生産性を算出します。出発点の数字がなければ、向上率は説明できません。
2
「どの業務に、どのツールを入れ、何が変わるか」を具体化します。たとえば「受発注業務の入力を自動化し、月◯時間の作業を削減」など、効果の出どころを明確にします。
3
施策の効果を、付加価値額の増加や総労働時間の削減として数値化し、改善後の労働生産性を算出します。「現状値 → 施策 → 改善後の数値」が一本の線でつながる状態を目指します。
4
なぜその数値が達成できるのか(業務量・単価・削減時間の根拠)を添えます。公募要領が求める「実現可能かつ合理的」を、第三者が読んで納得できる形にします。
✓ 「現状値 → 施策 → 改善後の数値」をセットで
採択される計画に共通するのは、この3点セットが具体的・定量的につながっていることです。
ツールの機能説明だけでも、結論の数値だけでも足りません。
数字の出どころと根拠まで書けているかが、審査での説得力を左右します。
ベンダーが顧客の計画づくりを伴走するポイント
- 現状値のヒアリングをテンプレ化する……営業利益・人件費・減価償却費・総労働時間を、最初の打ち合わせで押さえられるシートを用意します。
- ツールの効果を「時間・件数・金額」で語る……機能ではなく、削減時間・処理件数・コスト削減として表現します。
- 過去の交付歴を確認する……IT導入補助金2023通常枠等・2024・2025の交付決定を受けた事業者は、向上率の要件が4%以上に上がります。要件の取り違えを防ぎます。
- 効果報告まで見据える……交付後3年の効果報告で実績を問われる前提で、現実的な計画を一緒に設計します。
まとめ|「目標値の作り込み」が採択率を底上げする
労働生産性の向上率は、審査の計画目標値であり、通常枠の必須要件でもあります。計算式は「(営業利益+人件費+減価償却費)÷ 年間の総労働時間」。
採択される計画は、現状値 → 施策 → 改善後の数値を具体的・定量的につなぎ、その数値が実現可能かつ合理的だと根拠づけられています。
「採択のための背伸び」でも「根拠のない最低ライン」でもなく、守れる範囲で、具体的に作り込む。これを伴走できるベンダーが、採択率でもお客様の信頼でも差をつけます。
お客様の事業計画、「守れて・通る」数字になっていますか?
労働生産性の目標設計から、現状値のヒアリング、効果報告まで見据えた計画づくり、採択率を高める申請サポート体制まで。
アクセルパートナーズは、リスクとコストの経営目線でベンダーの補助金活用を支援します。
出典:デジタル化・AI導入補助金2026 公募要領(通常枠)「2-1-1 申請の対象となる事業者及びその要件(ク)労働生産性」・「3-3 交付申請の審査(2)計画目標値の審査」・付加価値額の定義(https://it-shien.smrj.go.jp/、公募要領のダウンロードは https://it-shien.smrj.go.jp/download/)。本記事は2026年6月時点の通常枠公募要領をもとに作成しています。要件・計算式・水準は公募回や年度によって変更される場合があるため、申請前に必ず最新の公募要領でご確認ください。







