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【デジタル化・AI導入補助金コラム】 補助金をもらったのに全額返還!? エンドユーザーの解約が招く最悪のリスク
  


鷺森 尚紀
編集: 鷺森 尚紀
アクセルパートナーズ/アクセル経営社労士法人 コンサルタント

アクセルパートナーズ/アクセル経営社労士法人 コンサルタント

「申請も通った、入金もされた。もう安心だ」——そう思った矢先、事務局から届いた一通のメール。タイトルには「補助金返還のご連絡」。

こうした事態が、実際にデジタル化・AI導入補助金を活用した中小企業やITベンダーの間で起きています。補助金は「採択されれば終わり」ではありません。受給後にも守るべき条件があり、それが守られなかった場合、受け取った補助金を返還しなければならないのです。

中でも見落とされがちなリスクが「エンドユーザーによる解約」です。自社ではなく、補助金を使ってシステムを導入した顧客が、その後サービスを解約してしまう——このケースで補助金返還を求められた事業者は少なくありません。

この記事では、なぜ解約が返還につながるのか、実際にどんなケースで起きているのか、そして事前に防ぐための具体的な対策を解説します。

なぜ「解約=補助金返還」になるのか

デジタル化・AI導入補助金の交付を受けるためには、「ITツールの継続利用」が条件の一つとして定められています。

デジタル化・AI導入補助金(通常枠)では、採択を受けた事業者は原則として補助対象のITツールを一定期間(最低3〜5年)継続して利用する義務があります。この条件は、補助金の目的が「一時的な導入支援」ではなく「継続的なデジタル化の推進」にあるためです。

問題が複雑なのは、ITツールの導入を支援する立場にあるITベンダーや支援事業者(IT導入支援事業者)も、補助金交付の当事者として責任を負うという点です。

デジタル化・AI導入補助金の仕組みでは、申請はエンドユーザー(補助金を受ける中小企業)とIT導入支援事業者が共同で行います。そのため、エンドユーザーがツールを解約してしまった場合、その責任は双方に及ぶことがあります。

つまり、「うちのお客様が勝手に解約してしまっただけ」では済まないのです。補助金交付条件に違反したとみなされれば、受給した補助金の全額または一部の返還を求められます。

実際に起きた返還パターン3選

現場では、以下のようなケースで補助金返還問題が発生しています。

① 顧客の経営状況が変わり、コスト削減のために解約

デジタル化・AI導入補助金でクラウド型の経費管理システムを導入した中小企業が、その後の業績悪化によりランニングコストを見直し、導入から2年で解約。事務局から返還を求める通知が届きました。

支援したITベンダーも事態を把握しておらず、解約後に初めて報告を受けた——という後手後手の対応になってしまいました。

② 担当者交代により、補助金の存在自体が引き継がれなかった

補助金申請を主導した総務担当者が退職し、後任への引き継ぎが不十分だったケースです。補助金でシステムを導入した経緯が社内に共有されておらず、「使っていないから」という理由でシステムを解約。数ヶ月後に事務局からの連絡で初めて問題が発覚しました。

補助金の申請情報や継続利用義務は、担当者個人ではなく組織として管理する仕組みが必要です。

③ ベンダーとのトラブルにより、顧客がサービスを使わなくなった

導入後にサポート対応への不満が積み重なり、顧客が事実上の利用停止状態に。形式上は契約を維持していたものの、実態は使っていない状態が続き、最終的に解約。この場合も「利用継続義務に違反した」とみなされるリスクがあります。

返還になった場合の金額感

返還額は、解約した時期事務局の審査結果によって決まります。一般的に、導入から間もない時期に解約するほど返還額は大きくなる傾向がありますが、具体的な金額は事務局が個別に審査・決定するため、一律の目安を示すことはできません。

返還通知が届いた場合は、まず通知書に記載された返還額・返還期限・算定根拠を確認し、疑問点があれば事務局に直接問い合わせることが重要です。「なぜこの金額なのか」を理解した上で、次の対応を検討しましょう。

補助金を受け取った金額をすでに使ってしまっていれば、手元から現金を用意する必要があります。突然の出費にならないよう、補助金受給後も一定の資金を確保しておくことをお勧めします。

事前に防ぐための対策

① 導入前に「継続利用の条件」を書面で共有する

補助金申請の前段階で、エンドユーザーに対して継続利用義務の内容を文書で説明し、確認のサインをもらうことが重要です。「口頭で説明した」では後々証明できません。確認書や覚書として書面に残しましょう。

記載すべき内容:

    • 継続利用の期間と条件
    • 途中解約した場合の返還義務
    • 返還が発生した場合の費用負担の取り決め

② 解約リスクが高い顧客への補助金提案は慎重に

業績が不安定な顧客、担当者の定着率が低い顧客、ITリテラシーが低くシステムの必要性を理解していない顧客——こうした属性のある顧客への補助金提案は、慎重に判断することが重要です。

「補助金が使えるから」という理由だけで導入を進めてしまうと、後々のリスクが高まります。顧客が本当にそのツールを必要としているか、継続して使えるかを見極めることが、支援事業者としての責任です。

もし返還通知が来てしまったら

返還通知が届いた場合、まず以下の対応を取りましょう。

  1. 通知内容を確認し、返還期限を把握する
    返還通知には、返還額・返還期限・振込先などが記載されています。まずは落ち着いて内容を確認しましょう。
  2. 事務局に状況を相談する
    やむを得ない事情がある場合(天災、倒産など)は、事務局に相談することで減額や分割払いが認められるケースもあります。一人で抱え込まず、早期に相談することが鉄則です。
  3. IT導入支援事業者(ITベンダー)へ相談する
    補助金申請を一緒に行ったIT導入支援事業者(ITベンダー)に状況をすみやかに共有し、対応方針についてアドバイスをもらいましょう。ベンダーも補助金交付の当事者であるため、早期に連絡することが重要です。

まとめ

補助金は「採択されて入金されたら終わり」ではありません。受給後も継続利用義務という責任が続きます。特にIT導入支援事業者の立場であれば、エンドユーザーの解約が自社のリスクにもなることを忘れてはなりません。

事前の説明、書面での合意、定期的な確認——この三つを徹底するだけで、多くの返還リスクは防ぐことができます。

「申請を考えているが、どこまでサポートが必要かわからない」「すでに導入済みだが、継続利用の管理方法を見直したい」という方は、ぜひアクセルパートナーズにご相談ください。認定経営革新等支援機関として、補助金の申請から受給後のフォローまでトータルでサポートします。

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鷺森 尚紀
編集: 鷺森 尚紀
アクセルパートナーズ/アクセル経営社労士法人 コンサルタント

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