「あのファイルどこだっけ?」が毎日起きていた事務所が、ストレージを1つにまとめた話
「あのファイル、Dropboxだっけ?Googleドライブ?」「○○さんのパソコンにしかないかも」──当社では、こうしたやり取りが日常的に発生していました。
Dropbox、OneDrive、個人のGoogleドライブ。気づけば3つのストレージにファイルが散らばり、誰が最新版を持っているのか分からない。退職した人のアカウントにしかデータがない。そんな状態が何年も続いていました。
今回Google Workspaceを導入し、すべてのデータを共有ドライブに集約しました。この記事では、3つのストレージからの移行で実際に何をしたのか、どこでつまずいたのかをお伝えします。

ストレージが散らばったまま放置するとどうなるか
士業の事務所では、顧問先の決算書や契約書、届出書類など機密性の高いファイルを日常的に扱います。それらが複数のストレージに分かれている状態には、見過ごせないリスクがあります。
まず、情報漏洩のリスク。個人のGoogleドライブやDropboxの無料プランは、退職後もアカウントが残りがちです。実際うちでも、移行作業中に過去の共有リンクがそのまま生きているのが何件も見つかりました。誰でもアクセスできる状態です。機密情報のデータではないものの、気づいたときはさすがに冷や汗が出ました。
次に、業務効率の問題。「このファイルはDropboxの○○フォルダ」「あのデータは△△さんの個人ドライブ」という情報がベテランの頭の中にしかない状態だと、新しく入った人が追いつけません。ファイルの所在を毎回誰かに確認する。これは属人化そのものです。
もう一つ、AI活用との関係があります。最近注目されるAIツールの多くはクラウドストレージと連携して動くため、データが散らばった状態ではスタートラインにすら立てません。ストレージの統合は、将来のAI活用に向けた土台づくりでもあります。
移行前の当社の状態
| ストレージ | 利用状況 | 何が問題だったか |
|---|---|---|
| Dropbox(無料プラン/ファミリー) | 一部のチームが常用 | 容量制限あり。権限管理が甘い。ビジネスプランでないと公式の移行ツールが使えない |
| OneDrive(個人/ファミリー) | 一部メンバーが利用 | 権限が「リンク」単位で管理しづらい。共有フォルダの同期に手動操作が必要 |
| 個人Googleドライブ | ほぼ全員 | 個人アカウントに業務データが混在。退職者のデータが取り出せない |
ここから、Google Workspaceの共有ドライブに全データを集約していきました。
移行先にGoogle Workspaceの共有ドライブを選んだ理由
Google Workspaceの共有ドライブの最大の特徴は、データが「個人」ではなく「組織」に紐づく点です。
通常のマイドライブはアカウント個人に紐づくため、退職すればデータにアクセスできなくなります。一方、共有ドライブは組織に紐づくため、人が入れ替わってもデータはそのまま残ります。担当者が変わっても顧問先のデータを確実に引き継ぐ必要がある士業の事務所には、この仕組みが適しています。
加えて、共有ドライブ単位でアクセス権限を分けられる点も決め手になりました。「補助金チームには補助金のドライブだけ」「業務委託メンバーには全体共有ドライブも」といった制御ができるため、情報の出し分けが無理なく行えます。
【移行①】Dropboxからの移行
3つの中で最もシンプルでした。ただし、個人向けプランを使っていたため、Dropbox公式の移行ツールは使えません。ビジネスアカウント限定の機能です。
実際の手順
- Google Drive for Desktopをインストールし、エクスプローラーから共有ドライブを開ける状態にする
- Dropboxのフォルダもエクスプローラーで開く
- Ctrl + C → Ctrl + Vでコピー
- ブラウザでGoogle Driveを開き、データが揃っているか確認
- 確認後、Dropbox側のデータを削除
注意点
移行中にDropbox側のファイルを編集されると整合性が取れなくなるため、事前にフォルダの権限を「閲覧者」に変更しておくと安全です。この操作はオーナーしかできないため、オーナーが誰か事前に確認しておく必要があります。
また、データ量が大きい場合はPCのローカルストレージを圧迫します。当社では移行用のPCに外付けHDDを接続し、作業領域として使いました。普段の業務用PCとは別に環境を用意した方がスムーズに進みます。
【移行②】OneDriveからの移行
OneDriveもビジネスプランでないと公式ツールは使えません。当社はファミリープランだったため、手動での移行になりました。
実際の手順
- OneDriveアプリをインストール。サインイン時に「場所の変更」をクリックし、保存先を外付けドライブ(例:〇:\OneDrive)に指定
- 対象フォルダを右クリック →「このデバイス上に保持する」を選択し、ローカルにダウンロード
- ダウンロードしたデータをCtrl + C → Ctrl + Vで共有ドライブへコピー
Dropboxと比べてひと手間多いのは、OneDriveのデータがクラウド上にしかない状態(雲マークのアイコン)だと、そのままではコピーできないためです。まず「このデバイス上に保持する」でローカルに実体を落とす工程が入ります。
OneDriveで注意すべき点
OneDriveの権限管理は、GoogleドライブやDropboxと仕組みが異なります。ユーザー個人に権限を紐づけるのではなく、「リンク」に対して権限を設定する方式です。
そのため、共有リンクのURLを知っていれば想定外の相手にもアクセスされてしまう可能性があります。移行前に、既存の共有リンクの設定状況を一度確認しておくことをおすすめします。
【移行③】個人Googleドライブからの移行──最も手間がかかった
Google同士の移行なので簡単だろうと思っていましたが、実際は3つの中で最も手間がかかりました。原因は「権限」の制約です。
事前に把握しておきたい制約
| やりたいこと | 可否 | 条件 |
|---|---|---|
| フォルダごと共有ドライブへ移動 | 不可 | Workspace以外のユーザーがオーナーのフォルダは移動できない |
| ファイル単体を移動 | 可 | 自分がオーナーのファイルに限る |
| 複数ファイルを一括移動 | 可 | 他人がオーナーのファイルが1つでも混ざると全体が失敗する |
| 共有ドライブ間のフォルダ移動 | 可 | 同じWorkspace組織内に限る |
個人ドライブから共有ドライブへ「フォルダごとドラッグ&ドロップ」はできません。当社でもこの制約を知らずに試みて、原因の特定に時間を使いました。
実際の手順
① ファイルのオーナー権限を移行担当者に集約する
まず、各メンバーが保有しているファイルのオーナー権限を移行担当者へ譲渡してもらいます。
- 各メンバーがGoogleドライブで対象フォルダを開く
- 「ユーザー▼」フィルタで自分を選択→「オーナー」で絞り込み
- ファイルを複数選択し、共有設定から移行担当者へオーナー権限を譲渡
この作業は各メンバーに動いてもらう必要があるため、期限を設けて一斉に依頼しました。ここのスケジュール管理が、移行全体の進捗を左右するポイントです。
② 移行担当者がオーナー権限を承諾
- 自分のドライブで、委譲元のアドレスでフィルタリング
- 対象ファイルを一括選択して承諾(1件ずつ承諾する必要はありません)
③ 共有ドライブへ移動
- ファイルを選択 → 右クリック →「整理」→「移動」
- 「すべての場所」タブから共有ドライブを選択
「移動」の場合、元のフォルダからデータはなくなり、編集履歴もそのまま引き継がれます。
退職者のデータへの対処
連絡が取れない退職者がオーナーのファイルは、権限譲渡を依頼できないため別の方法を取りました。
- Google Drive for Desktopでローカルにデータを表示
- エクスプローラー上でコピー&ペーストにより共有ドライブへ移行
- 元データの権限を「閲覧のみ」に変更し、誤編集を防止
ブラウザからZIPでダウンロードする方法もありますが、容量が大きいとファイルが自動分割されたり、一部データが抜け落ちる可能性があるため推奨しません。手間はかかりますが、ローカル経由のコピー&ペーストが確実です。
移行前にやっておくべき準備
外付けHDDの用意。3つのストレージいずれも、移行時にはローカルを経由します。業務用PCのストレージを圧迫しないよう、外付けHDDを準備しておいてください。可能であれば移行専用のPCを用意すると、業務への影響を抑えられます。
Google Drive for Desktopの事前インストール。エクスプローラー上で共有ドライブを操作するために必要です。インストール後、ドライブ文字を全員「G」に統一しておくと、社内でファイルパスを共有する際に混乱が起きません。
共有ドライブの構成・権限設計。「とりあえず1つのドライブにまとめる」のではなく、業務領域ごとにドライブを分け、誰がどのドライブにアクセスできるかを事前に設計しておくことを強くおすすめします。データ量が増えた後から権限を組み替えるのは、かなりの手間です。
「移動」と「コピー」の使い分けルール。移動なら編集履歴を引き継げますが、コピーでは残りません。リンク共有されているファイルは移動で対応し、コピーしたものは旧データを削除する──こうしたルールを事前に決めておくと作業が迷いなく進みます。
移行後に変わったこと
「あのファイルどこにある?」という確認が発生しなくなりました。共有ドライブ内を検索すれば、誰が作成したファイルでも見つかります。
退職時の対応も大きく変わりました。データが組織に紐づいているため、アカウントを削除してもファイルはそのまま残ります。「退職前にデータを全部移してください」という依頼自体が不要になりました。
権限管理も簡素化され、新しいメンバーが入った際はグループに追加するだけで、必要なドライブへのアクセスが自動的に付与されます。
そして最も大きかった変化は、AIツールとの連携が可能になったことです。データが1箇所に集約されたことで、AIに事務所のデータを横断的に参照させる運用が現実的になりました。この点については、別の記事で詳しくお伝えします。
まとめ
| 移行元 | 方法 | 難易度 | 所要時間の目安 |
|---|---|---|---|
| Dropbox | エクスプローラーでコピー&ペースト | ★☆☆ | データ量次第(数時間〜) |
| OneDrive | ローカルにダウンロード後、コピー&ペースト | ★★☆ | ダウンロード込みで半日〜 |
| 個人Googleドライブ | 権限譲渡→ファイル単位で移動 or コピー&ペースト | ★★★ | 権限調整を含め数日〜 |
最も時間がかかるのは個人Googleドライブからの移行です。各メンバーへの権限譲渡の依頼は早めに動かないとスケジュール全体が遅れるため、移行を検討している場合はここから着手することをおすすめします。
「同じようにストレージが分散していて、何から始めればいいか分からない」という方は、お気軽にご相談ください。
使用しているツールや状況によってスムーズな移行の手順は異なってきます。
現状の把握から移行計画の策定まで、伴走してサポートいたします。







