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【人材育成】「1on1をやっているのに、なぜ部下が育っている感じがしないのか」という問いの正体
  


鴨居 陽介
編集: 鴨居 陽介
アクセルパートナーズ 取締役・中小企業診断士

国内Sier企業でシステムエンジニア、PM、研修講師、法人営業を経験。 人と組織の成長を支えるマネジメントに携わる。2023年 中小企業診断士登録。2025年 アクセルパートナーズの理念や行動指針に強く共感し、取締役として参画。

「毎週欠かさず1on1をやっています。でも、正直なところ部下が成長しているという実感がなくて…」

人事担当者や管理職の方々からこうした声を聞く機会が増えています。1on1制度の導入率は年々高まり、今や中堅企業の多くが「定期的な上司と部下の対話機会」を仕組みとして持つようになりました。

ところが、制度を整えるほど生まれる奇妙な現象があります。「やっている」数が増えるのに、「育っている」実感が追いついてこないというジレンマです。

これは怠慢でも、相性の問題でも、ましてや部下の資質の問題でもありません。1on1という「場」と、人材育成という「目的」のあいだに、構造的なズレが生じていることが多いのです。

本稿では、1on1が形骸化するパターンを整理したうえで、実際に部下の成長につながった対話の特徴と、組織全体に展開できる仕組みの作り方をお伝えします。


第1章|「やっている」と「育っている」のギャップの正体

1on1という言葉が広まった背景には、「管理から支援へ」という人材マネジメントのパラダイムシフトがあります。指示命令型のマネジメントから、対話を通じた内発的動機の引き出しへ。その実践手段として1on1は注目を集めました。

しかし、現場ではひとつの矛盾が起きています。

「1on1の目的は何ですか?」と聞かれて、明確に答えられる管理職は意外なほど少ないのです。

「部下の話を聞く時間」「関係構築の場」「業務の進捗確認」……。そうした答えは間違いではありませんが、それだけでは「育成の場」にはなりません。

対話の量と育成の質は、自動的に比例しないのです。重要なのは、1on1という時間のなかで「何が起きているか」です。


第2章|1on1を形骸化させる5つのパターン

パターン①|毎回「近況確認」で終わっている

「最近どうですか?」「はい、この案件がこんな状況で…」。こうしたやり取りは対話としては自然ですが、育成という観点からは”情報交換”にとどまっています。経験を振り返り、次の行動につなげる「内省の回路」が動いていないことが多いのです。

パターン②|上司が「答え」を渡してしまっている

「それはこうした方がいいよ」「次はこれをやってみて」。善意の助言が、部下の思考を止めてしまうことがあります。答えをもらうことで短期的な問題は解決しますが、自分で考えて判断する筋肉は育ちません

パターン③|話す内容が毎回同じになっている

部下にとって「話しやすいテーマ」は固定されがちです。得意な分野、進んでいる案件、気の合う同僚の話。一方で、苦手なこと・失敗したこと・迷っていることは、意識的に引き出さなければ出てきません。表層的な対話が繰り返されるだけでは、深い成長は起きません。

パターン④|「評価」と「育成」が混在している

上司との1on1で「自分がどう評価されているか」を部下が意識し始めると、対話が防衛的になります。良く見せようとする話しか出てこなくなり、本当に困っていることや迷っていることが共有されなくなるのです。

パターン⑤|「今週の話」しかしていない

短期的な業務の話に終始すると、部下のキャリアビジョンや成長の方向性が話題にのぼりません。「この人は3年後にどうなりたいのか」「そのために今何が必要か」という中長期の視点が抜け落ちると、1on1はタスク管理の場になってしまいます。


第3章|実際に部下が育った1on1の3つの共通点

では、1on1が育成の場として機能しているケースには、何が共通しているのでしょうか。複数の企業での実践から見えてきた特徴を3つご紹介します。

特徴①|「経験の棚卸し」を習慣にしている

育成につながっている1on1では、「何をしたか」だけでなく「そこから何を学んだか」を必ず確認しています。「その判断をしたとき、どう考えていましたか?」「うまくいかなかった原因は何だと思いますか?」。経験を言語化させる問いかけが、成長の回路を動かします。

特徴②|「問い」を渡す設計になっている

答えではなく問いを渡す。「どうしたらいいと思う?」「他にどんな選択肢が考えられる?」という問いかけは、部下の思考を引き出します。上司の役割は”答えを持っている人”から”考えさせる人”へシフトすることで、1on1の質は大きく変わります。

特徴③|「3か月後の自分」を定期的に描かせている

月に一度でいい。「3か月後、どんな状態になっていたいか」を部下自身に言語化させる時間を設けています。これにより、部下は目の前の仕事を「目標に向かう経験」として位置づけることができ、自律的な成長意欲が生まれやすくなります。


第4章|「成長を引き出す問いかけ」のフレームワーク

1on1を育成の場に変えるために、すぐに使えるフレームワークをご紹介します。「経験学習サイクル(Kolb’s Learning Cycle)」を対話に組み込んだ設計です。

フェーズ 問いかけの例 ねらい
①経験の確認 「今週、印象に残った出来事は?」 経験を意識の俎上に乗せる
②内省の促進 「そのとき、何を考えていましたか?」 判断・感情を言語化させる
③概念化 「そこから、何を学びましたか?」 経験から法則・知恵を引き出す
④次への適用 「次に同じ場面が来たら、どうしますか?」 学びを行動に接続する
⑤中期の問い 「3か月後、どうなっていたいですか?」 自律的な目標設定を促す

このフレームワークのポイントは、管理職が「評価者」ではなく「問いの設計者」として機能することです。答えを持っている必要はありません。良質な問いさえ持っていれば、部下は自ら考え、自ら成長の方向を見つけていきます。


第5章|管理職全員に展開できる仕組みの作り方

1on1の質を一部の「マネジメントが上手な管理職」だけに依存している組織は、育成力が属人化します。継続的な育成には、個人の力量に頼らない「仕組み」への転換が必要です。

ステップ1|管理職の1on1を「見える化」する

1on1の内容・頻度・使われた問いかけを簡単に記録できるシートを導入します。管理職が自分の1on1パターンを客観視できるようにすることが第一歩です。

ステップ2|管理職同士の「相互学習」を設計する

月1回、管理職が自分の1on1での気づきを共有する場を設けます。「こんな問いかけが効いた」「この場面で詰まってしまった」という経験の共有が、組織全体のマネジメント力を底上げします。

ステップ3|外部の視点で「管理職を育てる」

管理職自身も内省の習慣が必要です。外部の専門家による管理職向けの伴走支援を組み合わせることで、「育てる人を育てる」サイクルを組織に実装することができます。


よくあるご質問

Q. 週1回の頻度は多すぎますか?
A. 頻度よりも「質」が重要です。週1回でも15分の深い内省を促せる対話は、月1回の1時間の近況報告より育成効果が高いケースがあります。まず質の設計を優先してください。
Q. 部下が話してくれない場合はどうすればいいですか?
A. 話さない理由の多くは「評価への不安」です。まず「この時間は評価には使わない」と明言することが有効です。加えて、最初の数回は上司自身が自己開示(失敗談・迷いを話す)することで、心理的安全性を先に作ることが重要です。
Q. 管理職が忙しくて1on1の準備ができていません。
A. 準備に時間をかけることよりも、「問いのレパートリー」を管理職に共有することが先決です。5つの定番の問いを印刷して机に置いておくだけで、1on1の質は変わります。

まとめ|1on1は「場」ではなく「設計」で決まる

1on1の効果は、頻度でも時間の長さでもなく、「何を問い、何を引き出すか」という設計によって決まります。

形骸化した1on1を育成の場に転換するためには、次の3点が核心です。

  • 上司が「答えを渡す人」から「問いを渡す人」に変わること
  • 経験の内省と中期ビジョンの対話を習慣化すること
  • 管理職個人の力量に頼らず、仕組みで再現できる体制を作ること

アクセルパートナーズでは、管理職向けの研修プログラムをご提供しています。「まず現状を整理したい」というご相談だけでも歓迎です。お気軽にお問い合わせください。

鴨居 陽介
編集: 鴨居 陽介
アクセルパートナーズ 取締役・中小企業診断士

国内Sier企業でシステムエンジニア、PM、研修講師、法人営業を経験。 人と組織の成長を支えるマネジメントに携わる。2023年 中小企業診断士登録。2025年 アクセルパートナーズの理念や行動指針に強く共感し、取締役として参画。

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