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【サイバーセキュリティ】MDM選定ガイド ― 中小企業が失敗しないためのモバイルデバイス管理の選び方

~ 5つの評価軸と主要5製品の徹底比較で、自社に最適なMDMを見つける ~

「社員のスマホを紛失しました。顧客情報が入っているかもしれません。」

この一報を受けた瞬間、あなたの会社はどう対応できますか?遠隔でスマホをロックできますか?データを消去できますか?そもそも、そのスマホに何の情報が入っているか把握していますか?

MDM(Mobile Device Management=モバイルデバイス管理)は、会社が管理するスマートフォン、タブレット、ノートPCなどのモバイル端末を一元的に管理・制御するためのソリューションです。端末の紛失・盗難時の遠隔ロック/ワイプ(データ消去)はもちろん、アプリのインストール制御、OSアップデートの強制適用、セキュリティポリシーの配信など、モバイル端末のセキュリティを包括的に管理します。

本記事では、MDMの基本から、選定で失敗しないための5つの評価軸、そして国内市場で実績のある主要5製品の比較まで、中小企業の担当者が「これを読めば選べる」と思える情報をまとめました。

セキュリティ対策の全体像

MDMは、NISTサイバーセキュリティフレームワークの「防御(Protect)」フェーズに位置するエンドポイントの管理手段です。対策の全体像については「【サイバーセキュリティ】セキュリティ対策の全体像がわかるようになる」をご覧ください。

この記事でわかること

  • MDMとは何か、なぜ中小企業に必要なのか
  • 選定で押さえるべき「5つの評価軸」
  • 主要5製品(Microsoft Intune / LANSCOPE / CLOMO / Jamf / Optimal Biz)の比較
  • BYOD(個人端末の業務利用)への対応方法
  • 助成金を活用して導入費用を抑える方法

目次

1. MDMとは何か ― 「モバイル端末の管理センター」

そもそもMDMとは?

MDM(Mobile Device Management)とは、企業が所有または業務利用を許可したモバイル端末(スマートフォン、タブレット、ノートPC)を遠隔から一元的に管理・制御するソリューションです。

従業員が数十名規模の会社であっても、社員1人あたり「業務用スマホ+業務用PC」の2台、さらに個人スマホのBYOD利用を含めると3台のデバイスを管理する必要があります。30名の会社なら60~90台のデバイスです。これらを手作業で管理するのは現実的ではありません。

MDMの主な機能

機能 役割 わかりやすく言うと
遠隔ロック 紛失・盗難時に端末をロック 「なくした鍵を遠隔で施錠する」
遠隔ワイプ 紛失・盗難時にデータを消去 「なくした財布の中身を遠隔で消す」
アプリ管理 業務アプリの配信・削除、不正アプリのブロック 「使っていいアプリと使ってはいけないアプリを管理する」
OSアップデート管理 OSの更新を強制適用または制御 「全端末のソフトウェアを最新に保つ」
セキュリティポリシー配信 パスコード要件、暗号化設定を一括適用 「全端末に同じセキュリティルールを適用する」
位置情報取得 端末のGPS位置情報を確認 「なくした端末の場所を特定する」
証明書管理 Wi-Fi/VPN接続用の証明書を配布 「社内ネットワークへの接続許可証を配る」

2. なぜ中小企業にMDMが必要なのか

「スマホは個人が管理すればいい」の限界

モバイル端末のセキュリティを従業員個人に任せている企業は少なくありません。しかし、個人管理には以下の限界があります。

  • パスコードを設定していない端末がある
  • OSのアップデートをしない従業員がいる
  • 業務用アプリと個人用アプリが混在し、データの分離ができない
  • 紛失時に遠隔でデータを消去できない
  • 退職時の端末回収が不完全

MDMが必要な3つの理由

1. モバイル端末は「持ち歩くオフィス」

スマートフォンには会社のメール、連絡先、カレンダー、チャット、場合によっては顧客情報や営業資料が入っています。紛失・盗難のリスクはPCよりもはるかに高く、MDMによる遠隔制御は最低限の安全策です。

2. BYODの拡大

個人所有のスマートフォンを業務に利用するBYOD(Bring Your Own Device)は、中小企業では一般的です。しかしBYODは、会社のデータが個人のプライベート空間と混在するリスクがあります。MDMを使えば、端末内に業務領域と個人領域を分離し、会社のデータだけを管理できます。

3. テレワーク・外出先での業務増加

リモートワークの普及により、オフィス外で業務用端末を使用する機会が増えています。社外のWi-Fiに接続する端末を安全に管理するには、MDMによるVPN設定の自動配信やセキュリティポリシーの適用が有効です。


3. MDM選定で失敗しないための「5つの評価軸」

評価軸1:対応OS・デバイス ― 「うちのスマホに対応していなかった」を防ぐ

MDM製品によって、対応するOSやデバイスの範囲が異なります。

チェックすべきポイント:

  • iOS/iPadOS対応:iPhoneやiPadを業務利用している場合は必須。Apple Business Manager(ABM)との連携可否を確認
  • Android対応:Androidは端末メーカーによって仕様が異なるため、主要メーカー(Samsung、OPPO、Pixel等)での動作実績を確認
  • Windows/macOS対応:ノートPCもMDMで管理したい場合、PC向けの管理機能が充実しているかを確認
  • ChromeOS対応:Chromebookを利用している場合

評価軸2:セキュリティ機能 ― 「基本機能が足りない」を防ぐ

MDMに必要なセキュリティ機能は「守り」と「制御」の2つに大別されます。

チェックすべきポイント:

  • 遠隔ロック/ワイプ:紛失・盗難時の基本機能。全データ消去(フルワイプ)と業務データのみ消去(セレクティブワイプ)の両方に対応しているか
  • パスコードポリシー:パスコードの桁数・複雑性要件を強制できるか
  • 暗号化の強制:デバイスの暗号化を必須にできるか
  • アプリ管理:業務アプリの一括配信、許可リスト/拒否リストの設定
  • コンテナ化(BYOD向け):端末内に業務領域と個人領域を分離する機能

評価軸3:運用・管理のしやすさ ― 「管理が面倒で使わなくなった」を防ぐ

チェックすべきポイント:

  • 管理コンソールのUI:直感的で使いやすいか、日本語対応しているか
  • キッティング(初期設定)の自動化:新しい端末を開封→電源ON→自動的にMDM管理下に入る仕組み(ゼロタッチエンロールメント)に対応しているか
  • Apple Business Manager / Android Enterprise連携:ゼロタッチエンロールメントの前提となる連携が可能か
  • アラート機能:セキュリティ違反(脱獄/root化、非準拠端末の検出)時の自動通知

評価軸4:コスト ― 「思ったより高くついた」を防ぐ

チェックすべきポイント:

  • 1台あたりの月額/年額:台数によるボリュームディスカウントの有無
  • 最低契約台数:10台から、50台からなど
  • 追加費用:アプリ配信機能、レポート機能、電話サポートが追加課金かどうか
  • 3年間TCOでの比較:ライセンス+導入支援+運用管理の合計

評価軸5:サポート体制 ― 「困ったときに相談できない」を防ぐ

チェックすべきポイント:

  • 日本語サポート:日本国内にサポート拠点があるか
  • 導入支援:初期設定やポリシー設計のサポートが受けられるか
  • 障害対応:端末紛失時の緊急対応窓口があるか(営業時間外の対応可否)

4. 主要5製品を徹底比較 ― 中小企業向けMDMガイド

製品概要一覧

項目 Microsoft Intune LANSCOPE エンドポイントマネージャー CLOMO MDM Jamf Pro Optimal Biz
メーカー Microsoft(米国) エムオーテックス(日本) i3 Systems(日本) Jamf(米国) オプティム(日本)
特徴 M365環境との完全統合 IT資産管理+MDMの統合型 国内シェアトップクラス Apple製品管理に特化 国内中小企業向けに最適化
主な対象規模 全規模対応 中小~中堅 中小~大企業 Apple環境の企業 小規模~中小

評価軸別の比較

1. 対応OS・デバイス

項目 Intune LANSCOPE CLOMO Jamf Optimal Biz
iOS/iPadOS ◎ 最も得意
Android △ 限定的
Windows
macOS ◎ 最も得意
ABM連携
Android Enterprise

ポイント:Apple製品中心の企業にはJamfが最適。マルチOS環境にはIntuneまたはLANSCOPEが向いています。

2. セキュリティ機能

項目 Intune LANSCOPE CLOMO Jamf Optimal Biz
遠隔ロック/ワイプ
セレクティブワイプ
パスコード強制
アプリ管理
コンテナ化(BYOD) ◎ Intune APP
位置情報取得
脱獄/root化検知

ポイント:セキュリティ機能は各製品とも充実しています。BYODでのコンテナ化(業務/個人データの分離)が重要な場合、IntuneのIntune App Protection Policiesが最も成熟しています。

3. 運用・管理のしやすさ

項目 Intune LANSCOPE CLOMO Jamf Optimal Biz
管理画面の日本語化 ◎ 完全日本語 ◎ 完全日本語 ○ 概ね日本語 ◎ 完全日本語
操作の直感性 △ 多機能で複雑 ◎ わかりやすい ◎ わかりやすい ◎ Apple管理に最適化 ◎ シンプル設計
ゼロタッチエンロール ◎ Autopilot/ABM/AE ◎ ABM連携最強
IT資産管理統合 ◎ 統合型
レポート機能

ポイント:LANSCOPEはIT資産管理機能とMDMが統合されており、PC管理とモバイル管理を1つのコンソールで行えます。CLOMOとOptimal Bizは国産ならではのシンプルで直感的なUIが強みです。

4. コスト

項目 Intune LANSCOPE CLOMO Jamf Optimal Biz
1台あたり月額(目安) 安い(M365に含まれる場合あり) 中程度(300~500円程度) 中程度(300~500円程度) やや高め(400~600円程度) 安い(200~400円程度)
最低契約台数 1台~ 要確認 要確認 要確認 要確認
初期導入費用 なし(クラウド) あり(初期設定支援含む) あり あり あり
コスパ ◎ M365利用企業には最安 ○ IT資産管理統合で一石二鳥 ○ 国内実績と安定性 ○ Apple環境には最適 ◎ 小規模企業に割安

ポイント:Microsoft 365 Business Premiumを契約している企業は、Intuneが追加費用なしで利用可能です。国産製品ではOptimal Bizが比較的安価で、小規模企業に適しています。

5. サポート体制

項目 Intune LANSCOPE CLOMO Jamf Optimal Biz
国内サポート ◎ Microsoft Japan ◎ 国内メーカー ◎ 国内メーカー ○ 日本法人あり ◎ 国内メーカー
導入支援 ○ パートナー経由 ◎ 手厚い導入支援 ◎ 手厚い導入支援 ◎ Apple専門の導入支援 ◎ 導入支援あり
導入実績(国内中小) ◎ M365利用企業に広く普及 ◎ 国内で豊富 ◎ 国内トップクラス ○ Apple利用企業 ◎ 国内中小に豊富

5. 企業規模・状況別「おすすめの選び方」

Microsoft 365を利用している企業

検討候補:Microsoft Intune

M365 Business Premiumに含まれるため追加コスト最小。Entra IDとの連携で条件付きアクセスも設定可能。

Apple製品(iPhone/Mac)中心の企業

検討候補:Jamf Pro

Apple製品の管理に特化しており、ABMとの連携が最も成熟。macOS管理も万全。

PC管理とモバイル管理を一元化したい企業

検討候補:LANSCOPE エンドポイントマネージャー

IT資産管理+MDMの統合型。PCとモバイルを1つのコンソールで管理可能。

小規模(30名以下)でコスト重視の企業

検討候補:Optimal Biz

国産のシンプルなMDM。低コストで必要十分な機能を提供。


6. BYODへのMDM対応 ― 「会社のデータ」と「個人のプライバシー」の両立

BYODの課題

個人端末を業務利用するBYODは、コスト削減のメリットがある反面、以下の課題があります。

  • 個人のプライバシーへの配慮:会社が個人端末の位置情報やアプリ利用状況を把握することへの抵抗感
  • データの分離:業務データと個人データが混在するリスク
  • 退職時のデータ消去:個人端末から業務データだけを消去する必要性

MDMによるBYOD対応の方法

方式 内容 メリット デメリット
フルMDM 端末全体をMDM管理下に置く 高いセキュリティ、遠隔ワイプ可能 個人のプライバシー懸念が大きい
MAM(アプリ管理) 業務アプリのみを管理 プライバシーへの影響小 端末全体の制御はできない
コンテナ化 端末内に業務専用領域を作成 セキュリティとプライバシーの両立 対応製品が限定的

中小企業のBYOD環境では、MAM(アプリ管理)またはコンテナ化が現実的な選択肢です。Microsoft IntuneのApp Protection Policiesは、端末をMDM管理下に置かなくても業務アプリ内のデータを保護できるため、BYODとの親和性が高い手法です。


7. 導入費用を抑える ― 助成金の活用

MDMの導入費用は、東京都のサイバーセキュリティ対策促進助成金の対象経費に含まれます。

項目 内容
助成率 対象経費の1/2
上限額 500万円
対象要件 SECURITY ACTION 二つ星を宣言済みの都内中小企業

おすすめの進め方

サイバーセキュリティ やり切りパック」でSECURITY ACTION二つ星を取得 → 助成金を申請 → 採択後にMDMを導入。


8. よくある質問(Q&A)

Q1. 従業員にスマートフォンを支給していませんが、MDMは必要ですか?

A. 従業員が個人のスマートフォンで業務メールやチャットを利用している場合は、MDM(またはMAM)の導入を推奨します。個人端末であっても業務データにアクセスしている以上、そのデータを保護する仕組みが必要です。

Q2. MDMを入れると、従業員のプライバシーは侵害されませんか?

A. MDMの設定によります。フルMDM管理の場合、端末の位置情報やインストール済みアプリの情報を取得できるため、プライバシー懸念があります。BYOD端末にはMAM(アプリ管理のみ)を適用し、個人データには一切触れない設定にすることで、プライバシーとセキュリティを両立できます。導入時には従業員への丁寧な説明が重要です。

Q3. MDMとEPP(ウイルス対策)は別物ですか?

A. はい、別物です。MDMは「端末の管理」(遠隔ロック、アプリ配信、ポリシー適用)が目的であり、EPPは「マルウェアの検知・防御」が目的です。理想的にはMDMとEPPの両方を導入しますが、予算が限られる場合はPC向けにEPP、モバイル端末向けにMDMという優先順位が一般的です。

Q4. iPadだけで使っていますが、MDMは必要ですか?

A. iPadが業務データにアクセスしている場合は必要です。iPadは紛失・盗難のリスクがPC以上に高く、遠隔ワイプの機能は最低限確保しておくべきです。

Q5. MDMの導入にどのくらいの期間がかかりますか?

A. 小規模(30台以下)であれば、1~2週間で導入可能です。ポリシー設計に1週間、端末へのエンロールメント(登録)に1週間が目安です。ゼロタッチエンロールメントを利用すれば、新規端末のセットアップはさらに短縮できます。

Q6. MDMを導入すると端末の動作が遅くなりますか?

A. MDMエージェント(管理用アプリ)の影響は軽微です。バッテリー消費がわずかに増加する場合がありますが、通常の業務利用に支障が出るレベルではありません。

Q7. MDMの導入を外部に委託できますか?

A. 可能です。MDMメーカーの導入支援サービスや、IT機器の販売代理店に依頼すれば、ポリシー設計から端末への展開までを一括で対応してもらえます。


まとめ:MDMは「モバイル時代のセキュリティの必需品」

スマートフォンやタブレットが業務に不可欠な現代において、MDMはモバイル端末を安全に管理するための必需品です。

本記事で紹介した5つの評価軸を使って、自社に最適なMDMを選んでください。

  1. 対応OS・デバイス ― 自社のデバイス環境に合った製品を選ぶ
  2. セキュリティ機能 ― 遠隔ワイプ、アプリ管理、BYOD対応を確認する
  3. 運用・管理のしやすさ ― 管理画面の操作性とゼロタッチ対応を確認する
  4. コスト ― 3年間TCOで比較する
  5. サポート体制 ― 国内サポートと導入支援を確認する

「何から始めればいいかわからない」なら、まずはご相談ください。

アクセルパートナーズでは、MDMの選定アドバイスから、助成金を活用した導入支援、セキュリティルールの整備までワンストップで対応しています。

初回相談(60分・Zoom)は無料です。「自社の端末管理をどうすればいいか」を一緒に考えるところから始めましょう。

お問い合わせ:0120-659-057(平日 9:30~18:00)


編集:アクセルパートナーズ

出典・参考資料:

鴨居 陽介
この記事の編集: 鴨居 陽介
アクセルパートナーズ 取締役・中小企業診断士

国内Sier企業でシステムエンジニア、PM、研修講師、法人営業を経験。 人と組織の成長を支えるマネジメントに携わる。2023年 中小企業診断士登録。2025年 アクセルパートナーズの理念や行動指針に強く共感し、取締役として参画。

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