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【人材育成】「経営企画部門を設置したのに、機能していない」——その正体
  


鴨居 陽介
編集: 鴨居 陽介
アクセルパートナーズ 取締役・中小企業診断士

国内Sier企業でシステムエンジニア、PM、研修講師、法人営業を経験。 人と組織の成長を支えるマネジメントに携わる。2023年 中小企業診断士登録。2025年 アクセルパートナーズの理念や行動指針に強く共感し、取締役として参画。

「経営企画部門を作ったのに、会議の段取りと資料作りしかしていない」「戦略立案を期待していたが、いつの間にか社長の秘書部門になってしまった」——こうした声を持つ経営者・人事担当者は少なくありません。問題は経営企画担当者の能力ではなく、「何をする部門か」の定義と育成の設計にあります。本コラムでは、経営企画部門が機能不全に陥る5つの原因と、戦略を自分で考え実行できる経営企画人材を育てるための方法を解説します。

「経営企画部門を設置したのに、機能していない」——その正体

中堅企業の成長に伴い、「経営企画部門」や「経営企画担当者」を設置する企業が増えています。しかし、設置してみると思わぬ現実に直面するケースが多いです。

「戦略立案を期待していたのに、会議の段取りと資料作りばかりしている」

「社長が出したいアイデアをまとめるだけで、自分から提案が来ない」

「”経営企画”と名前はついているが、実態は管理部門と変わらない」

なぜ、期待通りに機能する経営企画部門が育たないのでしょうか。その答えは、「部門を作る」ことと「機能する人材を育てる」ことが、まったく別の問題だという点にあります。

経営企画部門が「社長の秘書部門」になってしまうのは、担当者の能力の問題ではありません。「何をする人材か」が定義されていないまま配置し、そこに向けた育成設計がないことが、本当の原因です。


第1章:なぜ経営企画部門は「秘書部門」になってしまうのか

――5つの「良かれと思って」の罠

機能する経営企画部門を作ろうとするとき、多くの企業が「良かれと思って」取る行動が、実は機能不全の原因になっていることがあります。

パターン①「経営会議の資料作成を任せている」→ 情報整理者は育つが、戦略思考者は育たない

経営企画担当者に最初に任される業務の多くは、「経営会議の資料作成」です。各部門からデータを集め、グラフを作り、発表用スライドを整える仕事です。

この業務は確かに重要です。しかし、これだけを繰り返していると「情報整理のプロ」にはなれても、「戦略立案のプロ」には育ちません。なぜなら、資料作成とは「すでに決まった議題を見やすく整える」作業であり、「何を議題にすべきか」「どんな方向性が有効か」を考える作業ではないからです。

「資料を作る人」から「提案をする人」へのシフトが、経営企画人材育成の最初の関門です。

パターン②「社長の右腕」と説明している→ 補佐役の位置に固定されてしまう

採用や配置の際に「社長の右腕として経営を支えてほしい」という説明をする企業は多いです。このフレーズ自体は魅力的に聞こえますが、「右腕」という言葉は「補佐役」を意味します。

「補佐役」として位置づけられた経営企画担当者は、「社長の意思を実行する」ことが自分の役割だと認識します。自分から問題を発見し、提案を持ち込む「攻め」の姿勢ではなく、「社長が動きたい方向を整える」という「守り」の姿勢が定着してしまいます。

経営企画担当者に求めたいのが「主体的な戦略立案」なら、「右腕」ではなく「参謀」という位置づけで設計する必要があります。参謀は、自分の意見と判断を持ち、経営者に提言する役割です。

パターン③「業界データや競合情報を集めさせている」→ 情報収集力と戦略立案力は別物

「まず市場を知ることが大事」という観点から、経営企画担当者に業界レポートの収集や競合分析を任せる企業は多いです。情報を持つことは重要ですが、ここにも落とし穴があります。

情報を「集める力」と、情報を「解釈して戦略に変える力」は別のスキルです。どれだけ多くのデータを集めても、「だから自社はどうすべきか」という判断と提案ができなければ、経営企画としての仕事は完結しません。

多くの場合、「情報を集めてまとめること」で仕事が終わってしまい、「そこから何を読み取り、何を提案するか」の部分が育っていません。経営企画担当者に求めるべきは「情報の収集・整理」ではなく「情報の解釈と提案」です。

パターン④「MBAやフレームワークを学ばせている」→ 問いを立てる力がなければフレームは使えない

SWOT分析、ポーターの5つの力、バリューチェーン分析……経営戦略のフレームワークは、使いこなせれば強力な道具です。しかし、フレームワークを学ぶことと、それを「使える」ようになることは別の話です。

フレームワークは、「正しい問いを立てた後」に有効になる道具です。「自社にとっての本質的な問いは何か」を定義する力——つまり「問いを立てる力」——がないと、フレームワークは「形式的に埋めるためのシート」になってしまいます。

経営企画人材育成の核心は、フレームワークの習得よりも「問いを立てる力」の養成です。「自社の最大の課題は何か」「それを解くためにどんな問いが必要か」を自分で定義できる力が、真の経営企画力の入口になります。

パターン⑤「若いうちに経営企画に配置している」→ 現場経験なき経営企画は浮いた戦略しか作れない

ポテンシャルの高い若手を早期に経営企画に配置する企業があります。将来の幹部を早く育てたいという意図は理解できます。しかし、現場経験のない状態で経営企画業務に就くと、致命的な問題が生まれやすいです。

現場を知らない経営企画担当者が作る戦略は「机上の空論」になりやすいです。「この施策を実行するためのリソースがどこにあるか」「現場の人間がどんな抵抗感を持つか」「実行可能な速度はどのくらいか」——こうした肌感覚は、現場経験の中でしか身につきません。

経営企画人材は「現場を知っている人」が担うべきです。あるいは、現場経験を意図的に積ませながら経営企画業務を担わせる設計が必要になります。


第2章:機能する経営企画人材に共通する3つの力

「社長の秘書部門」を脱した経営企画部門で活躍する人材には、共通して3つの力があります。

力①「問いを立てる力」:課題を自分で発見できる

「何が問題か」を自分で定義できる力です。社長から「何か課題はないか」と聞かれてから動くのではなく、「この数字の動きはこういう意味ではないか」「この方向性に進んだ場合、こういうリスクがある」と自ら問いを立てて提案できます。

この力の土台は「会社全体を観察する習慣」にあります。日々の業務や数字の変化を「なぜ?」「だからどうなる?」という目線で見続けることで育ちます。

力②「翻訳する力」:現場と経営をつなぐ

現場のリアルな課題を経営の言葉に翻訳し、経営の方向性を現場の行動に翻訳できる力です。「現場の言語」と「経営の言語」の両方を話せることが、経営企画の最大の付加価値になります。

「現場は何に困っているか」を肌で知り、「経営者は何を考えているか」を理解し、その間をつなぎます。これができる経営企画担当者がいることで、経営会議での議論の質が格段に上がります。

力③「実行まで責任を持つ力」:提案で終わらない

「提案を出して終わり」ではなく、「提案を実行し、結果を評価し、次の提案につなげる」サイクルを自分で回せる力です。経営企画の仕事は「提案」が完成品ではなく、「実行された施策が成果を生む」ことが完成品です。

この意識があるかどうかが、「資料を作る人」と「経営に責任を持つ人」の最大の違いになります。


第3章:経営企画人材育成の本質

――「何をする人材か」を定義することから始める

経営企画部門の機能不全を解消するためのステップは、まず「この部門・この人材に何を期待するか」を明確に定義することから始まります。

「秘書部門型」と「参謀型」の違い

項目 秘書部門型(機能不全) 参謀型(機能する)
主な業務 資料作成・会議段取り・情報収集 課題発見・戦略立案・実行管理
情報の扱い 集めて整理する 解釈して提案に変える
動き方 社長の指示を受けて動く 自分から問いを立てて提案する
成功の定義 社長が困らないこと 会社の戦略が前進すること

この定義を明確にした上で、「参謀型」の人材に育てるための育成プログラムを設計することが必要です。

アクセルパートナーズの次世代幹部育成プログラムでは、経営企画人材向けにも対応したカリキュラムを提供しています。財務・人材・ガバナンス・ビジネスモデルの4領域を、「自社の経営課題を解くための思考力」という視点で学ぶ設計になっており、「問いを立てる→仮説を立てる→検証して提案する」サイクルを繰り返し実践することで、真の経営企画力が育ちます。


第4章:経営企画人材を育てるために今日からできること

①「なぜそう思う?」を口癖にする

経営企画担当者が情報や分析結果を持ってきたとき、「で、それはどういう意味があると思う?」「だから自社はどうすべきだと思う?」と必ず問い返します。この問い返しを繰り返すことで、「情報を持ってきて終わり」から「情報を解釈して提案する」という思考習慣が育まれます。

②月次の「経営課題レポート」を書かせる

月に一度、「今月の自社の最大の経営課題と、自分が考える対処案」を1〜2ページにまとめて提出させます。最初は質が低くて当然です。フィードバックを繰り返すことで、問いの精度と提案の質が上がっていきます。この「書く→フィードバックを受ける→書く」のサイクルが、経営企画力の基礎体力をつけます。

③現場の「生の声」を拾う機会をつくる

経営企画担当者が現場部門のミーティングに定期的に参加する機会を設けます。現場で何が起きているかを自分の目と耳で把握することが、「翻訳力」の源泉になります。「現場を知る経営企画」と「現場を知らない経営企画」では、提案の説得力がまったく違います。

④「提案の試し打ち」の場をつくる

経営企画担当者が考えた提案を、本番の経営会議の前に人事担当者や信頼できる管理職に「壁打ち」できる場を設けます。いきなり社長に提案する前に、フィードバックを受けて精度を上げる経験を積ませることで、「提案することへの自信」が育まれます。

⑤「実行まで担当する」仕事を一つ持たせる

経営企画担当者に「自分が立案し、実行し、評価まで責任を持つ」プロジェクトを一つ担当させます。小さなプロジェクトでよいです。「提案して終わり」ではなく「実行して結果を出す」という経験が、経営企画の仕事の本質を体感させる最良の機会です。


第5章:経営企画機能を「仕組み」として強化するために

「経営企画担当者を育てたいが、誰が教えるのか」「人事部門が経営企画の育成まで担うのは無理」——こうした声はよく聞かれます。この問題を解消するのが、外部専門家との伴走です。

経営企画人材の育成には、「経営の全体像」と「各機能領域の専門知識」を組み合わせて教えられる専門家が必要です。社内の人事担当者が一から教えるには、範囲が広すぎます。

アクセルパートナーズの次世代幹部育成プログラムでは、経営企画人材の育成にも対応しています。月1回3時間のセッションを12ヶ月間実施し、財務・人材・ガバナンス・ビジネスモデルの4領域を「経営企画の視点」から体系的に学ぶことができます。講師が実際に企業経営に関わった事例を教材として使うため、教科書的な学びではなくリアルな経営企画の思考が身につきます。


よくあるご質問

質問 回答
Q1. 経営企画部門がまだない企業でも活用できますか? はい、活用できます。むしろ「これから経営企画機能を立ち上げたい」「幹部候補に経営企画のスキルを身につけさせたい」という段階からご参加いただくケースも多いです。
Q2. 経営企画担当者と幹部候補を同じプログラムに参加させることはできますか? 可能です。両者が同じプログラムで学ぶことで、「経営の共通言語」が社内に育まれ、経営会議での議論の質が上がるという効果もあります。
Q3. 経営企画担当者の「現場経験不足」を補う方法はありますか? プログラム内で「他社の現場事例」を豊富に扱うことで、自社の現場だけでは得られない幅広い視点を補うことができます。また、社内でのローテーション設計についてもアドバイスが可能です。
Q4. 現経営者が経営企画担当者の育成に関与する必要がありますか? 関与いただけると育成効果が高まります。特に「社長が何を考えているか」を経営企画担当者が知ることが、翻訳力の向上に直結するため、月次の対話機会を設けることをお勧めしています。
Q5. プログラム終了後も継続的な支援はありますか? はい、12ヶ月のプログラム終了後も、継続的な伴走支援や個別相談に対応しています。育成は一度で完了するものではないため、長期的なパートナーとして関わることを大切にしています。

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次世代幹部育成プログラム|株式会社アクセルパートナーズ

お電話でのご相談:0120-659-057(平日 9:30〜18:00)


鴨居 陽介
編集: 鴨居 陽介
アクセルパートナーズ 取締役・中小企業診断士

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