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【サイバーセキュリティ】「デジタル化・AI導入補助金でセキュリティ対策はどこまでできる?」がなくなる ― 2026年版・中小企業の活用ガイド


「デジタル化・AI導入補助金でセキュリティ対策もできるって聞いたんですけど、本当ですか?」

アクセルパートナーズが中小企業の経営者とお話しする中で、ここ数年で急増しているのがこの質問です。ランサムウェア被害のニュースを見て「うちも何かやらないと」と思い立ったものの、セキュリティ対策には数十万円から数百万円の費用がかかる。自力で捻出するのは厳しい。そこで「補助金で何とかならないか」と調べ始めるものの、制度が複雑で途中で挫折してしまう ―― そんな経営者を何人も見てきました。

このコラムを読み終えたとき、あなたは「デジタル化・AI導入補助金を使って自社のセキュリティ対策をどう進めればいいか」を具体的にイメージし、申請準備に着手できる状態になっています。

この記事でわかること

  • デジタル化・AI導入補助金の申請で中小企業が陥りがちな「4つの落とし穴」
  • 補助金をうまく活用してセキュリティ対策を実現している企業の共通点
  • 制度理解から導入までの「全体像フレームワーク」
  • 対象になるセキュリティ対策の具体例と採択率を上げる申請のコツ
  • 採択後の導入・効果測定で押さえるべきポイント

注意:補助金の制度内容・補助率・対象経費などは年度や公募回ごとに変わる可能性があります。本コラムは2026年6月時点の情報をもとに執筆しています。実際に申請される際は、必ず最新の公募要領をご確認ください。

1. 良かれと思ってやっている「4つの誤った申請準備」

デジタル化・AI導入補助金に興味を持つこと自体はすばらしい判断です。しかし、「セキュリティ対策に使えるらしい」という情報だけで動き出してしまうと、思わぬ落とし穴にはまることがあります。

ここでは、多くの中小企業が良かれと思ってやってしまっている4つのパターンを紹介します。あなたの会社にも当てはまるものがないか、確認してみてください。

良かれと思って「セキュリティ製品だけ」で申請しようとしている

「UTM(統合脅威管理)を1台入れたいから、その費用を補助金で賄おう」。こう考える経営者は少なくありません。しかし、デジタル化・AI導入補助金は「ITツールを導入して生産性を向上させる」ことを目的とした制度です。

セキュリティ製品単体では「生産性向上」の効果が見えにくいため、採択されにくいという現実があります。特に通常枠で申請する場合、業務効率化や売上向上につながるITツール(会計ソフト、受発注システム、顧客管理ツールなど)と組み合わせて申請するのが基本的な考え方です。

一方、セキュリティ対策推進枠であれば、サイバーセキュリティお助け隊サービスなどのセキュリティサービスを主軸にした申請が可能です。ただし、この枠にも独自の要件や補助率の違いがあります。

ポイント:まず「どの枠で申請するか」を正しく選ぶことが、採択への第一歩です。セキュリティ製品だけで申請するなら「セキュリティ対策推進枠」、業務ツールと合わせるなら「通常枠」や「デジタル化基盤導入類型」など、目的に応じた枠の選定が欠かせません。

良かれと思って「申請は自社だけでやろう」としている

「補助金の申請なんて、書類を出すだけだろう」。こう考えて自社だけで準備を進めようとする企業がありますが、デジタル化・AI導入補助金には大きな特徴があります。それは、「IT導入支援事業者」と呼ばれるパートナー企業と共同で申請する必要があるという点です。

IT導入支援事業者とは、補助金事務局に登録された、ITツールの販売・導入を行う企業のことです。補助金で導入するITツールは、この支援事業者が事務局に登録したツールの中から選ぶことになります。

つまり、「まず自社でやりたいことを決めてから、それに合う支援事業者を探す」という順番になるのですが、多くの企業は「とりあえず申請書を書いてみよう」とスタートしてしまい、支援事業者選びが後手に回ります。

結果として、公募期間に間に合わないか、自社のニーズに合わない支援事業者と組んでしまうことになりかねません。

ポイント:IT導入支援事業者は「申請のパートナー」です。信頼できる支援事業者を早い段階で見つけ、一緒に計画を立てることが、採択率を大きく左右します。

良かれと思って「公募直前に準備を始める」

デジタル化・AI導入補助金は年間を通じて複数回の公募が行われます。「次の公募に間に合えばいい」と考え、公募開始のアナウンスが出てから準備を始める企業は非常に多いです。

しかし、申請に必要な準備は意外と多岐にわたります。

準備項目 内容 目安の所要期間
gBizIDプライムの取得 申請に必須の法人認証アカウント 2〜3週間
SECURITY ACTION二つ星の宣言 IPAが実施する自己宣言制度への登録 1〜2週間
みらデジ経営チェックの実施 デジタル化の現状を診断 1〜2週間
IT導入支援事業者の選定 パートナー企業の比較・決定 2〜4週間
導入計画の策定 事業計画・数値目標の作成 2〜4週間

特にgBizIDプライムの取得は、申請から発行まで2〜3週間かかります。公募開始後に慌てて取得しようとしても、締切に間に合わない可能性があります。

また、SECURITY ACTION二つ星の宣言はデジタル化・AI導入補助金の申請要件です。これはIPAが提供する「中小企業の情報セキュリティ対策ガイドライン」に基づいて、自社のセキュリティ対策状況を自己宣言する制度です。一つ星は「情報セキュリティ5か条」に取り組むことの宣言、二つ星は「5分でできる!情報セキュリティ自社診断」を実施し、情報セキュリティポリシーを策定・公開することの宣言です。

ポイント:「次の公募に出そう」と決めたら、公募開始の2〜3か月前から準備を始めるのが理想です。特にgBizIDプライムとSECURITY ACTION二つ星は、申請の大前提となるため最優先で取得してください。

良かれと思って「導入後の計画を書かずに」申請している

デジタル化・AI導入補助金の申請書には、ITツールを導入することで「どのような効果が見込めるか」を具体的に記載する必要があります。しかし、多くの企業がこの部分を「業務効率が上がる」「セキュリティが強化される」といった抽象的な表現で済ませてしまっています。

審査では、導入前と導入後でどのような変化が生まれるかを、できるだけ具体的な数字や指標で示すことが求められます。

たとえば、次のような違いがあります。

記載例 評価
「セキュリティが強化される」 抽象的で評価しにくい
「現在はウイルス対策ソフトのみの対策で、過去1年間にフィッシングメール被害が2件発生。UTMとEDRの導入により、外部からの不正アクセスを検知・遮断する体制を構築し、インシデント発生件数をゼロに近づける」 現状・課題・対策・目標が明確

導入後の効果測定(実績報告)も義務づけられています。申請段階で効果測定の方法を計画しておくことで、採択後の運用もスムーズになります。

ポイント:「導入して終わり」ではなく「導入してどうなるか」まで計画に書くことが、採択率を上げる最大のポイントです。

2. 補助金をうまく活用している企業の3つの特徴

では、デジタル化・AI導入補助金を使ってセキュリティ対策を成功させている企業は、何が違うのでしょうか。アクセルパートナーズがこれまで支援してきた企業の中から、共通する3つの特徴をお伝えします。

焦点:「補助金ありき」ではなく「自社の課題ありき」で考えている

うまく活用している企業は、最初に「補助金で何が買えるか」を調べるのではなく、「自社のセキュリティ上の課題は何か」を明確にしています。

具体的には、以下のような問いを自社に投げかけています。

自社に問いかけること 確認のポイント
現在のセキュリティ対策は何をやっているか ウイルス対策ソフト、ファイアウォール、バックアップなど
過去にセキュリティインシデントはあったか フィッシングメール被害、不正アクセス、情報漏洩など
取引先からセキュリティ要件を求められているか セキュリティチェックシート、ISMS認証など
自社のIT環境でいちばんリスクが高いのはどこか リモートワーク環境、クラウドサービス、古いOSなど

課題が明確になれば、「その課題を解決するために必要なITツール」が自然と定まります。そこに補助金が使えるかどうかは、最後に確認すればよいのです。

この順番で考えることで、「補助金が不採択だったから何も対策しない」という事態も防げます。自社の課題を起点にした計画は、補助金の有無にかかわらず価値があるからです。

行動:「早めに動いて、専門家の力を借りている」

補助金をうまく活用している企業に共通する2つ目の特徴は、準備の早さ専門家の活用です。

先ほど述べたとおり、デジタル化・AI導入補助金の申請にはgBizIDプライムの取得やSECURITY ACTION二つ星の宣言など、事前準備に数週間を要する作業が複数あります。うまくいっている企業は、公募が開始される前から準備を進めています。

また、IT導入支援事業者だけでなく、補助金申請に詳しいコンサルタントや士業(中小企業診断士など)の力を借りているケースも少なくありません。特に初めての申請では、経験者のアドバイスが採択率に直結します。

たとえば、事業計画の数値目標の立て方や、審査項目に沿った記載方法など、「書き方のコツ」は経験者でなければわからないノウハウが多くあります。

費用がかかることを敬遠する経営者もいますが、数十万円から数百万円の補助を得るための投資と考えれば、専門家への相談料は十分にリターンが見込める支出です。

量:「1つの対策だけでなく、包括的な計画を立てている」

3つ目の特徴は、セキュリティ対策を「点」ではなく「面」で考えていることです。

たとえば、UTMを1台導入するだけでなく、あわせてEDR(端末の不審な挙動を検知・対処するソフトウェア)の導入、社員向けセキュリティ教育の実施、インシデント対応マニュアルの整備なども計画に含めています。

デジタル化・AI導入補助金では、ITツールの導入だけでなく、導入に付随するサービス(導入コンサルティング、教育、保守サポートなど)も補助対象になる場合があります。これらをパッケージで申請することで、「包括的なセキュリティ対策計画」として評価が高まり、採択率も上がる傾向にあります。

「UTMだけ入れればOK」「ウイルス対策ソフトを入れ替えれば十分」と考えるのではなく、自社のセキュリティ対策の全体像を描いたうえで、補助金を活用して一気に対策レベルを引き上げる ―― これが、うまくいっている企業の考え方です。

3. 補助金活用の全体像フレームワーク

ここからは、デジタル化・AI導入補助金を使ったセキュリティ対策を「制度理解→事前準備→申請→導入」の4つのフェーズに分けて、全体像を解説します。

フェーズ1:制度を正しく理解する

デジタル化・AI導入補助金は、経済産業省が所管し、中小企業・小規模事業者のIT導入を支援する制度です。まず、セキュリティ対策に関連する主な枠組みを整理しましょう。

枠の名称 主な対象 補助率 補助上限額の目安
通常枠 業務効率化・売上向上を目的としたITツール 1/2以内 数十万円〜450万円程度
セキュリティ対策推進枠 サイバーセキュリティお助け隊サービス等 1/2以内 5万円〜100万円程度
デジタル化基盤導入類型 会計・受発注・決済・ECの機能を持つITツール 2/3〜3/4以内 数十万円〜350万円程度
複数社連携IT導入類型 サプライチェーン全体でのIT導入 2/3以内 3,000万円程度

注意:上記の補助率・上限額は年度・公募回により変更される可能性があります。必ず最新の公募要領を確認してください。

セキュリティ対策に特化して申請したい場合は「セキュリティ対策推進枠」が最も直接的です。この枠では、IPAが公表する「サイバーセキュリティお助け隊サービスリスト」に掲載されたサービスが補助対象になります。

一方、業務用ソフトウェア(会計、受発注、CRMなど)の導入に合わせてセキュリティ機能を追加する場合は、通常枠で申請できるケースがあります。たとえば、クラウド型の業務ソフトウェアを導入し、そのオプションとして二要素認証やアクセスログ管理の機能を追加するようなケースです。

2025年度からは「デジタル化・AI導入補助金」としてAI関連のITツール導入に手厚い補助が設けられる動きもあります。AI搭載のセキュリティツール(AIを活用した脅威検知など)が対象になる可能性もあるため、最新情報を随時チェックすることをお勧めします。

フェーズ2:事前準備を整える

制度の全体像を把握したら、次は事前準備です。申請に必要な準備を時系列で整理しました。

ステップ1:gBizIDプライムの取得(申請の2〜3か月前)

gBizIDプライムは、政府の補助金申請システムを利用するための法人認証アカウントです。取得には申請書と印鑑証明書を郵送する必要があり、発行まで2〜3週間かかります。すでに取得済みの企業も、アカウント情報(メールアドレス・パスワード)が有効かどうかを事前に確認してください。

ステップ2:SECURITY ACTION二つ星の宣言(申請の1〜2か月前)

前述のとおり、SECURITY ACTION二つ星の宣言はデジタル化・AI導入補助金の申請要件です。これを満たしていないと、そもそも申請ができません。

SECURITY ACTIONとは、IPAが推進する中小企業向けの情報セキュリティ対策自己宣言制度です。二つ星を取得するには、以下の3つを実施する必要があります。

  • 「5分でできる!情報セキュリティ自社診断」の実施:IPAが提供する25問の診断シートに回答する
  • 情報セキュリティ基本方針の策定:自社の情報セキュリティに対する方針を文書化する
  • 上記をIPAのウェブサイトで宣言・公開する:宣言するとロゴマークが付与される

二つ星の宣言自体は費用がかかりませんが、情報セキュリティ基本方針の策定には多少の時間と検討が必要です。IPAのウェブサイトにひな形が公開されているので、活用してください。

ステップ3:みらデジ経営チェックの実施(申請の1か月前)

「みらデジ」は中小企業庁が提供する、デジタル化の状況を診断するためのポータルサイトです。デジタル化・AI導入補助金の申請にあたっては、みらデジの経営チェックを事前に実施していることが求められます。質問に回答するだけで完了しますが、早めに済ませておきましょう。

ステップ4:IT導入支援事業者の選定と打ち合わせ(申請の1〜2か月前)

IT導入支援事業者の選定は、採択率を左右する最も重要な準備です。選定のポイントは以下のとおりです。

  • 自社の業種・規模に合った導入実績があるか:同業種の支援実績が多い事業者は、審査のポイントを熟知しています
  • 登録しているITツールが自社のニーズに合っているか:導入したいセキュリティツールが登録されているかを確認してください
  • 申請後のサポート体制が充実しているか:導入後の設定、教育、保守まで一貫して支援してもらえると安心です
  • 過去の採択実績はどの程度か:採択実績の多い事業者はノウハウが蓄積されています

フェーズ3:申請書を作成・提出する

事前準備が整ったら、いよいよ申請書の作成です。デジタル化・AI導入補助金の申請はオンライン(電子申請)で行います。

申請書で特に重要なのは以下の3つの項目です。

1. 事業計画(自社の課題とITツールによる解決策)

審査員に「この企業にはこのITツールが必要だ」と納得してもらうために、現状の課題を具体的に記載します。たとえば、セキュリティ対策の場合は、「現在どのような脅威にさらされているか」「過去にどのような被害やヒヤリハットがあったか」「対策を取らないことで将来どのようなリスクがあるか」を明確にします。

2. 導入後の数値目標

デジタル化・AI導入補助金では、労働生産性の向上に関する数値目標を設定する必要があります。セキュリティ対策は直接的に売上を増やすものではありませんが、「セキュリティインシデントによる業務停止時間の削減」「手作業で行っていたセキュリティ管理業務の自動化による工数削減」など、間接的な生産性向上として数値化することが可能です。

3. 導入スケジュールと実施体制

「いつまでに」「誰が」「どのように」導入するかを明確にします。中小企業の場合、IT担当者が不在、あるいは兼務であることも多いです。その場合は、IT導入支援事業者にどこまでサポートしてもらうかを記載することで、実現可能性を示すことができます。

フェーズ4:採択後の導入と運用

申請が採択されたら、計画に沿ってITツールを導入します。ここで注意すべきは、採択前にITツールを購入・契約してはいけないという点です。採択通知を受け取った後に、IT導入支援事業者を通じて発注・契約を行ってください。

導入後は、事業実績報告書を提出する必要があります。この報告書には、導入したITツールの利用状況や、申請時に設定した数値目標の達成状況を記載します。

4. 対象になるセキュリティ対策と申請のコツ

ここでは、デジタル化・AI導入補助金で実際に対象となるセキュリティ対策の具体例と、採択率を上げるための申請のコツを詳しく解説します。

対象になるセキュリティ対策の具体例

デジタル化・AI導入補助金でカバーできるセキュリティ対策は、申請する枠によって異なります。以下に、枠ごとの代表的な対策例を整理しました。

セキュリティ対策推進枠で対象になるもの

セキュリティ対策 内容 費用の目安(導入規模による)
サイバーセキュリティお助け隊サービス IPAが認定するセキュリティ監視・相談サービス 月額数千円〜数万円
UTM(統合脅威管理) ファイアウォール・IPS・アンチウイルスを統合した機器 数十万円〜100万円程度
EDR(エンドポイント検知・対応) PCやサーバーの不審な挙動を検知・対処するソフトウェア 年額数万円〜数十万円/台
ネットワーク監視サービス 外部からの不正アクセスをリアルタイムで監視 月額数万円〜

注意:セキュリティ対策推進枠は「サイバーセキュリティお助け隊サービスリスト」に掲載されたサービスが対象です。導入を検討しているサービスがリストに掲載されているかを、事前にIPAのウェブサイトで確認してください。

通常枠でセキュリティ対策を含める場合の例

通常枠では、業務効率化を主目的としたITツールに、セキュリティ機能を組み合わせて申請するのが一般的です。

メインのITツール 組み合わせるセキュリティ機能
クラウド型会計ソフト 二要素認証、アクセス権限管理、操作ログ管理
クラウド型受発注システム 通信の暗号化、IPアドレス制限、データバックアップ
グループウェア・情報共有ツール ファイル暗号化、外部共有制限、監査ログ
RPA(業務自動化ツール) 操作ログの記録、実行権限の管理

このように、業務ツールのセキュリティ機能として組み込むことで、通常枠でもセキュリティ対策を補助対象に含めることができます

採択率を上げる申請のコツ

デジタル化・AI導入補助金の採択率は公募回によって異なりますが、すべての申請が採択されるわけではありません。限られた予算の中で選ばれるために、以下のコツを押さえてください。

コツ1:「経営課題」と「セキュリティ対策」をつなげて書く

審査では「この企業にとって、なぜこのITツールが必要なのか」が最も重視されます。セキュリティ対策の必要性を、自社の経営課題と結びつけて説明しましょう。

たとえば、次のような書き方が効果的です。

当社は製造業として大手メーカーのサプライチェーンに参加しており、取引先からセキュリティチェックシートの提出を求められている。現状の対策レベルでは取引先の要件を満たせず、今後の取引継続にリスクがある。UTMとEDRを導入することで、取引先の要件を満たし、安定的な取引関係を維持・拡大する。

このように、「セキュリティ対策をしないと経営にどのような影響があるか」を具体的に記載することで、審査員にとって「この投資は合理的だ」と判断しやすくなります。

コツ2:加点項目を可能な限り満たす

デジタル化・AI導入補助金には、採択審査で有利になる「加点項目」が設定されています。年度により内容は変わりますが、代表的な加点項目は以下のとおりです。

  • 事業継続力強化計画の認定:中小企業庁に防災・事業継続に関する計画を認定してもらう制度。認定を受けていると加点対象になります
  • 地域経済牽引事業計画の承認:地域の経済に貢献する事業計画を都道府県に承認してもらう制度
  • 賃上げに関する要件:従業員の給与を引き上げる計画がある場合に加点

特に事業継続力強化計画(ジギョケイ)の認定は、セキュリティ対策との相性が非常に良いです。サイバー攻撃は事業継続を脅かすリスクのひとつであり、「サイバー攻撃への備え」を事業継続力強化計画に組み込むことで、デジタル化・AI導入補助金の加点と事業のレジリエンス強化を同時に実現できます

コツ3:数値で語る

申請書の中で、できるだけ多くの項目を数値化してください。

項目 数値化の例
現状の課題 「過去1年間のセキュリティインシデント:3件」「復旧にかかった平均日数:4日」
導入効果の目標 「インシデント発生率を50%削減」「月間のセキュリティ管理工数を10時間削減」
投資対効果 「インシデント1件あたりの損害額:約200万円 × 年間削減件数:2件 = 年間400万円のリスク削減」

数字があると、審査員は「この投資は妥当かどうか」を判断しやすくなります。数字がない申請書は、どれだけ熱意があっても「具体性に欠ける」という評価になりかねません。

コツ4:IT導入支援事業者と申請書を何度も推敲する

採択される申請書は、たいてい何度も書き直しています。IT導入支援事業者と一緒に申請書を読み返し、「この表現で審査員に伝わるか」「数字の根拠は示せているか」「導入スケジュールは現実的か」をチェックしてください。

IT導入支援事業者の中には、過去の採択事例をもとにフィードバックしてくれるところもあります。遠慮せず、何度でも相談しましょう。

5. 採択後の導入と効果測定

デジタル化・AI導入補助金は「採択されたら終わり」ではありません。むしろ、採択後の導入と効果測定こそが、本当の勝負です。

導入フェーズで押さえるべきポイント

1. 採択通知後に発注する(採択前の発注は対象外)

繰り返しになりますが、採択通知を受け取る前にITツールを購入・契約してしまうと、補助金の対象外になります。「早く導入したい」という気持ちはわかりますが、必ず採択通知を確認してから発注してください。

2. 導入スケジュールを関係者全員で共有する

ITツールの導入は、IT導入支援事業者だけでなく、自社の担当者、場合によっては現場の従業員も関わります。「いつ、何が、どう変わるか」を全員に共有しておくことで、導入時の混乱を防げます。

3. 社員へのセキュリティ教育を並行して実施する

セキュリティツールを導入しても、使う人間がセキュリティ意識を持っていなければ効果は半減します。UTMやEDRの導入と並行して、従業員向けのセキュリティ教育を実施することを強くお勧めします。

たとえば、以下のようなテーマで短時間の研修を行うだけでも効果があります。

  • フィッシングメールの見分け方
  • パスワード管理の基本ルール
  • 不審なファイル・リンクを見つけたときの報告手順
  • テレワーク時のセキュリティ注意点

効果測定と実績報告

デジタル化・AI導入補助金では、導入後に「事業実績報告」を提出する義務があります。報告期間は年度や枠によって異なりますが、通常は導入後1年間〜3年間の実績を報告します。

効果測定で重要なのは、申請時に設定した数値目標と、実際の結果を比較することです。以下の表のように、導入前・目標値・実績値を記録してください。

測定項目 導入前 目標値 実績値
セキュリティインシデント発生件数(年間) 3件 1件以下 (導入後に記録)
セキュリティ管理業務の月間工数 20時間 10時間 (導入後に記録)
セキュリティ教育の実施回数(年間) 0回 4回 (導入後に記録)
労働生産性(付加価値額÷従業員数) ○○万円 △△万円 (導入後に記録)

効果測定の結果が芳しくない場合でも、正直に報告し、改善策を記載することが大切です。不正確な報告は補助金の返還を求められる可能性があります。

補助金活用後の次のステップ

デジタル化・AI導入補助金を活用したセキュリティ対策は、あくまでも「第一歩」です。サイバー攻撃の手法は日々進化しており、一度対策を講じたからといって永続的に安全が保証されるわけではありません。

補助金で導入したセキュリティ対策を土台として、以下のようなステップに進むことをお勧めします。

  • 年1回以上のセキュリティ対策の見直し:IPAのガイドラインや最新の脅威情報をもとに、対策が十分かをチェックする
  • SECURITY ACTIONのレベルアップ:二つ星を取得した後、さらに高いレベルの対策(ISMS認証など)を検討する
  • 次年度の補助金・助成金の活用検討:デジタル化・AI導入補助金以外にも、東京都のサイバーセキュリティ対策促進助成金など、活用できる制度があります
  • インシデント対応計画の策定・訓練:サイバー攻撃を受けたときの初動対応手順を整備し、定期的に訓練する

まとめ

デジタル化・AI導入補助金は、中小企業がセキュリティ対策を進めるうえで非常に有効な制度です。しかし、制度を正しく理解し、適切な準備をしなければ、せっかくの機会を活かしきれません。

このコラムのポイントを振り返ります。

  • 「セキュリティ製品だけ」ではなく、業務ツールとの組み合わせや専用枠の活用を検討する
  • IT導入支援事業者という「パートナー」を早期に見つけ、一緒に計画を立てる
  • gBizIDプライムとSECURITY ACTION二つ星は申請の前提条件。公募の2〜3か月前から準備を始める
  • 申請書では「経営課題とセキュリティ対策のつながり」を数値で示す
  • 採択後は確実に導入し、効果測定と実績報告を行う

最新の公募要領は必ずご確認ください:デジタル化・AI導入補助金の制度内容、補助率、対象経費、公募スケジュールなどは年度や公募回ごとに変更されます。本コラムの情報は2026年6月時点のものです。申請を検討される際は、デジタル化・AI導入補助金の公式サイトで最新情報をご確認ください。

デジタル化・AI導入補助金を活用したセキュリティ対策、何から始めればいいかお悩みですか?

アクセルパートナーズでは、中小企業の経営者に向けて、デジタル化・AI導入補助金の活用からセキュリティ対策の導入まで、一貫したサポートを提供しています。

  • 「うちの会社でも使える補助金はあるの?」
  • 「SECURITY ACTION二つ星って何から始めればいい?」
  • 「セキュリティ対策の優先順位がわからない」

こうした疑問に、サイバーセキュリティの専門家が丁寧にお答えします。まずはお気軽にお電話ください。

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鴨居 陽介
この記事の編集: 鴨居 陽介
アクセルパートナーズ 取締役・中小企業診断士

国内Sier企業でシステムエンジニア、PM、研修講師、法人営業を経験。 人と組織の成長を支えるマネジメントに携わる。2023年 中小企業診断士登録。2025年 アクセルパートナーズの理念や行動指針に強く共感し、取締役として参画。

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