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「IT導入補助金」から「デジタル化・AI導入補助金」への改称で、ベンダー(IT導入支援事業者)が確認すべき変更点と再登録の進め方


「IT導入補助金」という名前で問い合わせてくるお客様は、2026年の今もなお非常に多くいます。
一方で、制度そのものの名称は「デジタル化・AI導入補助金」へと変わりました。
名前が変わっただけと考えて旧来のやり方を続けていると、IT導入支援事業者(ベンダー)として採択・返還・登録の面で思わぬリスクを抱えかねません。
本コラムでは、改称で何が変わり何が変わらないのか、ベンダーが確認すべき3つの変更点、そして旧制度で登録済みの事業者がやるべき再登録・情報更新までを、2026年の公募要領をもとに整理します。

「IT導入補助金」は「デジタル化・AI導入補助金」へ|名前が変わって何が変わったか

2026年(令和8年度)の事業から、従来「IT導入補助金」と呼ばれてきた制度は、「デジタル化・AI導入補助金」という名称で実施されています。

名称に「AI」が加わりましたが、公募要領が掲げる事業目的は、中小企業・小規模事業者が直面する制度変更(働き方改革・被用者保険の適用拡大・賃上げ・インボイスの導入)への対応と生産性向上です。

AIは制度の名称・方向性として打ち出された一方、AI専用の申請枠が新設されたわけではない点も、お客様には正確に伝えておきたいところです。

ただし、ベンダーがまず押さえるべきは「名前は変わったが、制度の骨格は旧IT導入補助金から引き継がれている」という点です。

共同申請の仕組み、補助対象ツールの継続利用義務、賃上げ要件、実績報告といった基本構造は維持されており、過去のIT導入補助金(2022〜2025)での交付歴がその後の要件に影響する設計にもなっています。

💡 ベンダーが見落としがちなポイント
お客様(エンドユーザー)の多くは、まだ旧称「IT導入補助金」で検索・相談しています。
自社サイトや提案資料では「旧称=IT導入補助金/新称=デジタル化・AI導入補助金」を必ず併記しておくと、改称を知らないお客様も、知っているお客様も取りこぼしません。
改称直後の今は、正しい情報を出せるベンダーに引き合いが集まりやすいタイミングです。

ベンダー(IT導入支援事業者)が真っ先に確認すべき3つの変更点

制度の骨格は引き継がれていますが、ベンダーの立場で「自社のリスクと売上に直結する」という観点から、特に確認しておきたいのが次の3点です。

① 共同申請|販売したベンダーも「申請の当事者」として責任を負う

デジタル化・AI導入補助金の申請は、補助金を受けるエンドユーザー(中小企業)と、IT導入支援事業者(ベンダー)が共同で行います

これは「売って終わり」ではなく、ベンダーも交付の当事者として相互に責任を負う構造です。

お客様側の不履行(解約・賃上げ未達・利用実態なし・書類不備など)が、自社の返還や信用のリスクに跳ね返ることがあります。

⚠ 「うちのお客様が勝手に解約しただけ」では済まない

共同申請である以上、ベンダーは補助金交付条件の当事者です。
相互責任の全体像と、それでも補助金で売るべき理由は、「共同申請は“連帯責任”|ベンダーが背負うリスクの全体像」で詳しく解説しています。

② 補助対象ツールの「継続利用・効果報告」義務|解約は返還リスク

補助対象となったITツールは、補助事業の終了後も効果報告期間(おおむね3年度目まで)にわたって継続的に活用し、その状況を事務局に報告する義務があります(補助対象事業に係る関係書類の保管義務は完了年度の翌年度から5年間)。

補助金の目的が「一時的な導入支援」ではなく「継続的なデジタル化の推進」にあるためです。

サブスク・クラウド型の製品を扱うベンダーにとっては、補助対象ツールの途中解約・利用停止が「辞退」とみなされ、交付済み補助金の全部または一部の返還トリガーになり得る点に注意が必要です。

③ 賃上げ要件の厳格化|「加点(任意)」と「必須要件」の分岐

賃上げは、申請金額や過去のIT導入補助金(2022〜2025)の交付歴によって、「加点(任意)」になる場合と「必須要件」になる場合に分かれます。

ベンダーが顧客に金額の大きい申請を勧めるほど、賃上げが必須要件に切り替わり、未達時に返還リスクを背負わせることになります。

立場 どんな場合か 未達のときのペナルティ(共通)
賃上げ加点(任意) 150万円未満で申請し、かつ過去にIT導入補助金(2022〜2025)の交付決定を受けていない ①18ヵ月間の経産省管轄の補助金の減点
②補助金の返還
を求められることがある
賃上げ要件(必須) 150万円以上(最大450万円)で申請する、または過去にIT導入補助金(2022〜2025)の交付決定を受けている

※ 賃上げ加点・必須要件の具体的な水準(給与支給総額の年率平均成長率3%/3.5%、事業場内最低賃金+30円・+50円など)や、返還が免除されるケースは、「“賃上げ未実施”で返還を求められるケースとは」で詳しく解説しています。お客様への説明にそのままお使いいただけます。

名前以上に変わったのは「ベンダーの立ち位置」

改称で本質的に意識すべきなのは、制度名よりも「売り手であるベンダーも申請の当事者になる」という立ち位置です。

補助金を値引きの口実として売り急ぐと、解約・賃上げ未達・実績報告の不備が起きたときに、ベンダー自身が返還や信用毀損のリスクを負います。

逆に言えば、この相互責任を正しく理解し、お客様を守り切る伴走力を持つベンダーは、価格競争に陥らず「安心して任せられる会社」として選ばれます。

改称は、自社の売り方を「補助金頼みの値引き」から「補助金を武器にした提案」へと切り替える好機でもあります。

名称に加わった「AI」をどう捉えるか|AI製品の補助対象としての考え方

名称に「AI」が入ったことは、AI活用を含むデジタル化を後押しする制度の方向性を示しています。

ただし公募要領上は、AI専用の申請枠やAI固有の優遇措置が設けられているわけではありません

生成AIの業務活用支援やAI搭載のSaaSも、他のITツールと同じく「業務プロセス」への該当性と対象ツールとしての登録審査によって補助対象になるかどうかが判断されます。

AIツールを手がけるベンダーにとっては、自社製品がどの業務プロセスに当てはまるかを整理しておくことが、提案の出発点になります。

✓ 先行者にとっての好機

「AI×補助金」を正面から解説するベンダーはまだ多くありません。
改称直後の今、自社のAI製品がどの業務プロセスの対象ツールとして登録・申請できるかを整理し、お客様に提案できる状態を先に作っておくことが、競合との差につながります。
一方で、AI搭載ツールも継続利用・効果報告(付加価値額)の対象となるため、売り方の設計はリスクとセットで考える必要があります。

※ どの製品・サービスが補助対象として認められるかは、対象ツールとしての登録審査を経て決まります。自社製品が対象になり得るかは、最新の公募要領公式サイトでの確認が必要です。

旧制度で登録済みのベンダーがやるべき、再登録・情報更新の進め方

IT導入支援事業者の登録やツール登録は、事業年度ごとに受付・更新が行われるのが基本です。

旧「IT導入補助金」で登録していたベンダーも、新年度の事業に参加するには、改めて登録内容の確認・更新が必要になります。一般的な流れは次のとおりです。

1

公式ポータルで最新の公募要領・スケジュールを確認する
事業者登録・ツール登録の受付期間は年度ごとに設定されます。
まずは公式サイトで最新情報を確認します。
2

事業者情報・担当者・体制の登録内容を更新する
社名・所在地・担当者などに変更があれば最新化します。
旧年度の情報のまま放置すると、申請手続きでつまずく原因になります。
3

補助対象として提供するITツール・AI製品を登録(更新)する
新年度の要件に沿って、対象ツールの内容・価格・機能を登録します。
改称で重視されるようになったAI関連機能の扱いも、最新要領で確認します。
4

共同申請・継続利用義務・賃上げ要件を前提に、提案・契約の運用を見直す
登録は“ゴール”ではなく“責任の入口”です。
登録後に背負う責任を踏まえ、顧客への説明資料や契約・覚書を整えておきます。

※ 登録に必要な具体的な書類・手順・受付期間は年度・枠によって異なり、変更される場合があります。必ず最新の公募要領公式サイトでご確認ください。本記事は制度の考え方を整理するもので、個別の手続きの正確性を保証するものではありません。

改称は「顧客提案の好機」|ただし旧知識のままはリスクの入口

制度の改称は、お客様に「今、補助金を使うとどう変わるのか」を伝える絶好のきっかけです。

しかし、旧「IT導入補助金」の知識のまま動くと、共同申請の相互責任や賃上げ要件の厳格化を見落とし、返還・減点リスクの入口になりかねません。

改称対応を「自社の登録更新」と「お客様への正しい説明」の両面で進めることが、結果的に採択率と信頼の両方を高めます。

改称後のルールに、自社は対応できていますか?

「自社製品が新制度の補助対象になるか」「旧登録のまま2026年の事業に対応できるか」を、まずは無料で確認しませんか。
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出典:デジタル化・AI導入補助金2026 公募要領(https://it-shien.smrj.go.jp/download/)/デジタル化・AI導入補助金 公式サイト(https://it-shien.smrj.go.jp/itvendor/)。本記事は2026年6月時点の情報をもとに作成しています。名称・要件・金額・登録手続きは変更される場合があるため、最新の公募要領・公式ポータルで必ずご確認ください。

鷺森 尚紀
この記事の編集: 鷺森 尚紀
アクセルパートナーズ/アクセル経営社労士法人 コンサルタント

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