【サイバーセキュリティ】中小企業のセキュリティ相談先まとめ ― 無料窓口から専門サービスまで比較


「セキュリティ対策をしなければいけないのはわかっている。でも、誰に相談すればいいのかわからない。」――中小企業の経営者や情シス担当者から、最も多く聞く悩みのひとつです。

独立行政法人 情報処理推進機構(IPA)の「2024年度 中小企業における情報セキュリティ対策に関する実態調査」によると、中小企業の約7割が「セキュリティ対策を十分に実施できていない」と回答しています。その理由として最も多いのが、「何をすればよいかわからない」「相談先がわからない」という声です。

実は、中小企業がセキュリティについて相談できる窓口は、無料のものから有料の専門サービスまで数多く存在します。しかし、それぞれの窓口で対応できる範囲は異なりますし、費用や専門性にも大きな差があります。自社の状況に合わない窓口を選んでしまうと、「相談はしたけれど、結局何も進まなかった」という結果になりかねません。

さらに、東京都が実施するサイバーセキュリティ対策促進助成金を活用すれば、有料の専門サービスの費用を大幅に抑えることも可能です。本記事では、中小企業が利用できるセキュリティ相談先を網羅的に整理し、自社に最適な相談先を選ぶための判断基準をお伝えします。

目次

この記事でわかること

  • 中小企業が利用できる無料のセキュリティ相談窓口5選とその特徴
  • より専門的な支援が受けられる有料の相談先4種類の比較
  • 各相談先のメリット・デメリットを一覧で整理した比較表
  • 自社の状況に合った相談先を選ぶための判断フロー
  • サイバーセキュリティ対策促進助成金を使って有料サービスの費用を抑える方法

1. まず知っておきたい「無料」のセキュリティ相談窓口5選

セキュリティ対策の第一歩として、まずは無料で利用できる相談窓口を把握しておきましょう。公的機関が運営する窓口は、費用がかからないだけでなく、中立的な立場からアドバイスを受けられるという利点があります。

1-1. IPA(情報処理推進機構)情報セキュリティ安心相談窓口

IPA 情報セキュリティ安心相談窓口は、セキュリティに関する相談先として最も知名度が高い公的窓口です。経済産業省所管の独立行政法人であるIPAが運営しており、ウイルス感染やフィッシング詐欺、不正アクセスなど、セキュリティに関する幅広いトラブルについて電話やメールで相談できます。

相談は無料で、個人・法人を問わず利用可能です。電話相談は平日10:00~12:00、13:30~17:00に対応しています。

向いているケース:

  • ウイルス感染や不審なメールへの対処法を知りたい
  • セキュリティに関する基本的な疑問を解消したい
  • インシデントが発生した際の初期対応を確認したい

注意点:あくまで「相談窓口」であり、実際のインシデント対応(復旧作業や原因調査)を代行してくれるわけではありません。また、個別企業の環境に踏み込んだコンサルティングは対象外です。「まず何をすべきか」の方向性を確認する場として活用しましょう。

1-2. 警察庁・都道府県警察のサイバー犯罪相談窓口

不正アクセスやランサムウェアによる被害など、犯罪が疑われるケースでは、警察のサイバー犯罪相談窓口に連絡することが重要です。警察庁の公式サイトから各都道府県警察のサイバー犯罪相談窓口一覧を確認できます。

2022年4月には警察庁に「サイバー警察局」が設置され、サイバー犯罪への対応体制が強化されました。被害届の提出だけでなく、被害拡大の防止策についてもアドバイスを受けることができます。

向いているケース:

  • ランサムウェアに感染し、身代金を要求された
  • 不正アクセスによる情報漏洩が発覚した
  • ビジネスメール詐欺(BEC)で金銭被害が生じた

注意点:警察は犯罪捜査が主たる業務です。予防的なセキュリティ対策の相談や、日常的なセキュリティ体制の構築支援は管轄外となります。また、被害届の受理には証拠の保全が必要ですので、ログやメールの保存を忘れずに行いましょう。

1-3. 商工会議所・商工会のセキュリティ相談

全国の商工会議所・商工会では、会員企業向けにIT・セキュリティに関する経営相談を実施しています。地域によっては、IPAの「SECURITY ACTION」の取得支援や、セキュリティセミナーの開催も行っています。

商工会議所の強みは、地域密着型のサポートです。セキュリティだけでなく、経営全般の相談と組み合わせてアドバイスを受けられるため、「セキュリティ対策にかけられる予算が限られている」「何から手をつけるべきかわからない」という中小企業には特に適しています。

向いているケース:

  • セキュリティ対策の全体像を把握したい
  • SECURITY ACTIONの宣言方法を知りたい
  • 補助金・助成金の情報も合わせて収集したい

注意点:相談員のITセキュリティに関する専門性は、地域や担当者によって差があります。高度な技術的相談や、具体的な製品選定のアドバイスまでは対応できないケースもあります。

1-4. よろず支援拠点

よろず支援拠点は、中小企業庁が全国47都道府県に設置している無料の経営相談所です。経営課題全般について、専門のコーディネーターが相談に応じてくれます。セキュリティに特化した窓口ではありませんが、IT活用やデジタル化の一環としてセキュリティの相談も受け付けています。

何度相談しても無料で、予約制で1回あたり1時間程度の面談が可能です。セキュリティ専門のコーディネーターが在籍している拠点もあり、その場合はより具体的なアドバイスが得られます。

向いているケース:

  • セキュリティ対策を経営課題として捉え、全体戦略の中で検討したい
  • IT導入補助金やサイバーセキュリティ対策促進助成金の申請を検討している
  • セキュリティ対策とDX推進を同時に進めたい

注意点:あくまで経営相談の一環としてのセキュリティ助言です。具体的な技術実装や製品導入の支援はできません。また、拠点によってはセキュリティに詳しいコーディネーターが不在の場合もあります。

1-5. 東京都の中小企業サイバーセキュリティ支援制度

東京都は、都内の中小企業に対して手厚いサイバーセキュリティ支援を展開しています。その代表的な制度がサイバーセキュリティ対策促進助成金です。

サイバーセキュリティ対策促進助成金は、東京都内に本社を置く中小企業等を対象に、セキュリティ対策にかかる費用の一部を助成する制度です。助成率は2分の1(小規模企業者は3分の2)、助成限度額は1,500万円に設定されています。UTMやEDRなどのセキュリティ製品の導入費用、セキュリティコンサルティングの費用、従業員向けセキュリティ教育の費用など、幅広い経費が助成対象となります。

東京都ではこのほかにも、サイバーセキュリティ相談サービス(無料で専門家に相談できるサービス)や、サイバーセキュリティ対策セミナー(無料参加)なども提供しています。東京都内の中小企業であれば、まずこれらの制度を確認することをおすすめします。

向いているケース:

  • セキュリティ対策の費用を抑えたい東京都内の中小企業
  • セキュリティ製品の導入やコンサルティングの利用を検討している
  • サイバーセキュリティ対策促進助成金の申請を検討したい

注意点:助成金には申請期間があり、審査を経て採択される必要があります。また、事前にSECURITY ACTIONの二つ星を宣言していることが申請要件となっています。申請手続きに不安がある場合は、助成金申請サポートサービスを活用する方法もあります。


2. 専門的な支援が受けられる「有料」の相談先4種類

無料窓口は「まず何をすべきか」を確認する入口としては優秀ですが、具体的な対策の実行となると限界があります。セキュリティポリシーの策定、製品の選定・導入、社内体制の構築、インシデント対応計画の整備といった実務レベルの支援を受けるには、有料の専門サービスを利用する必要があります。

ただし、有料サービスにも様々な種類があり、費用感も月額数万円から数百万円まで幅があります。ここでは、中小企業が利用しやすい有料の相談先を4つのカテゴリに分けて紹介します。

2-1. 大手セキュリティベンダーのコンサルティングサービス

NRI セキュアテクノロジーズ、ラック、トレンドマイクロなど、大手セキュリティベンダーが提供するコンサルティングサービスです。豊富な実績と高い技術力を持ち、セキュリティ診断からポリシー策定、ISMS認証取得支援まで幅広いサービスを提供しています。

費用の目安:月額50万円~数百万円(プロジェクト単位では数百万~数千万円)

メリット:

  • 豊富な実績と高い専門性
  • 大規模なインシデントにも対応可能
  • 最新の脅威情報やグローバルな知見を持っている
  • ISMS認証やPマーク取得など、認証取得支援も可能

デメリット:

  • 費用が高額で、中小企業には負担が大きい
  • 大企業向けのサービス設計が中心で、中小企業の実態に合わないことがある
  • 担当者が複数プロジェクトを掛け持ちしている場合、レスポンスが遅いこともある
  • 最低契約期間や最低金額が設定されていることが多い

向いている企業:年間のセキュリティ予算が500万円以上あり、高度なセキュリティ対策が求められる企業。上場準備中の企業や、大手企業との取引でISMS認証が求められている企業にも適しています。

2-2. 中小企業向けセキュリティコンサルティング会社

大手ベンダーのサービスが自社には大きすぎる――そう感じる中小企業には、中小企業を専門にしたセキュリティコンサルティング会社が選択肢になります。中小企業の予算感や業務実態を理解した上で、現実的な提案をしてくれるのが特徴です。

費用の目安:月額10万円~50万円(スポット相談は1回5万円~15万円程度)

メリット:

  • 中小企業の予算や体制に合わせた提案が受けられる
  • 大手ベンダーに比べて費用を抑えやすい
  • 経営者や情シス担当者と直接やり取りできる場合が多い
  • セキュリティ対策だけでなく、IT全般の相談にも応じてくれることがある

デメリット:

  • 会社によって専門性や品質にばらつきがある
  • 大規模なインシデント対応には対応力が不足する場合がある
  • コンサルタントの人数が少なく、稼働が逼迫している場合がある

向いている企業:年間のセキュリティ予算が100万円~500万円程度の中小企業。「何から始めればいいかわからない」段階から、伴走型で支援してほしい企業に特に適しています。

なお、東京都内の中小企業であれば、サイバーセキュリティ対策促進助成金を活用することで、コンサルティング費用の最大2分の1(小規模企業者は3分の2)の助成を受けられます。月額30万円のコンサルティングを利用した場合、実質的な自己負担は月額15万円(小規模企業者は10万円)に抑えられる計算です。

2-3. vCISO(仮想CISO)サービス

近年注目を集めているのが、vCISO(Virtual Chief Information Security Officer:仮想CISO)サービスです。CISO(最高情報セキュリティ責任者)を正社員として雇用するのではなく、外部の専門家にCISOの役割を委託するサービスです。

フルタイムのCISOを採用しようとすると、年収1,000万円以上が相場です。しかも、セキュリティの専門知識と経営視点の両方を持つ人材は市場に少なく、採用自体が困難です。vCISOであれば、月額30万円程度から、経験豊富なセキュリティ専門家のCISO機能を自社に取り入れることができます。

費用の目安:月額20万円~80万円

メリット:

  • 経営視点でセキュリティ戦略を策定・推進してくれる
  • 正社員CISOの採用に比べて大幅にコストを抑えられる
  • 経営会議への出席やセキュリティ投資の意思決定支援など、経営レベルの関与が可能
  • 社内のセキュリティ人材育成の方向性も示してくれる

デメリット:

  • 常駐ではないため、緊急時の即時対応に限界がある
  • 社内の状況を深く理解するまでに一定の期間が必要
  • 月額契約のため、年単位でのコストが積み上がる

向いている企業:従業員50名以上で、セキュリティを経営課題として位置づけている企業。取引先や顧客からセキュリティ体制の整備を求められている企業、上場準備中の企業にも適しています。アクセルパートナーズでもvCISOサービスを月額30万円から提供しており、経営とセキュリティの両面からサポートしています。

vCISOサービスの費用についても、サイバーセキュリティ対策促進助成金の対象となる可能性があります。助成金を活用すれば、月額30万円のvCISOサービスを実質月額15万円程度で利用できるため、中小企業にとっても現実的な選択肢となります。

2-4. リモートセキュリティ顧問サービス

「vCISOほどの関与は必要ないが、気軽にセキュリティの専門家に相談したい」という企業には、リモートセキュリティ顧問サービスがおすすめです。月に数回のオンライン面談やチャットでの質問対応を通じて、セキュリティに関する疑問や課題を継続的に相談できるサービスです。

費用の目安:月額5万円~20万円

メリット:

  • 月額5万円程度から利用でき、中小企業でも導入しやすい
  • オンライン完結のため、全国どこからでも利用可能
  • 「ちょっとした疑問」を気軽に聞ける関係性を構築できる
  • セキュリティ対策の優先順位づけや、製品選定のアドバイスが受けられる

デメリット:

  • 月あたりの対応時間に上限がある場合が多い
  • 戦略策定や大規模なプロジェクト推進には向かない
  • 現地訪問が必要な作業(物理セキュリティの確認等)には対応しにくい

向いている企業:従業員10名~50名程度で、セキュリティの専任担当者がいない企業。「相談相手がいないこと」が最大の課題だと感じている企業に最適です。アクセルパートナーズのリモートセキュリティ顧問サービスは月額5万円から利用でき、月2回のZoom面談とチャットでの随時相談に対応しています。

リモートセキュリティ顧問サービスも、サイバーセキュリティ対策促進助成金の活用が検討できます。月額5万円のサービスであれば、助成金活用後の実質負担は月額2.5万円程度まで抑えられます。年間に換算しても約30万円の自己負担で、セキュリティの専門家にいつでも相談できる環境が手に入ります。


3. 一目でわかる相談先比較表

ここまで紹介した無料・有料の相談先を、一覧表で比較してみましょう。自社の状況に合った相談先を選ぶ際の参考にしてください。

3-1. 無料相談先の比較

相談先 対応範囲 相談方法 メリット 限界・注意点
IPA 情報セキュリティ安心相談窓口 ウイルス、フィッシング、不正アクセス等の一般的なセキュリティ相談 電話・メール 公的機関の信頼性、幅広い相談に対応 実際の復旧作業や個別コンサルは対象外
警察 サイバー犯罪相談窓口 不正アクセス、ランサムウェア、詐欺等の犯罪被害 電話・来所 犯罪被害の届出と捜査対応 予防的な対策相談や体制構築は管轄外
商工会議所・商工会 IT・セキュリティに関する経営相談、SECURITY ACTION支援 対面・電話 地域密着、経営全般と合わせた相談が可能 相談員の専門性に差がある
よろず支援拠点 経営課題全般(IT・セキュリティ含む) 対面(予約制) 何度でも無料、経営戦略と連動した相談 技術実装や製品導入の支援は不可
東京都 サイバーセキュリティ支援 セキュリティ相談、助成金、セミナー 電話・オンライン 助成金制度が充実、専門家への無料相談あり 東京都内の企業限定

3-2. 有料相談先の比較

相談先 費用目安(月額) 対応範囲 メリット デメリット 向いている企業規模
大手セキュリティベンダー 50万円~数百万円 診断、ポリシー策定、ISMS取得、インシデント対応 高い専門性と豊富な実績 費用が高額、中小企業の実態に合いにくい 従業員100名以上、年間予算500万円以上
中小企業向けコンサル 10万円~50万円 セキュリティ体制構築、ポリシー策定、製品選定支援 中小企業の予算・体制に合わせた提案 会社により品質にばらつき 従業員20名~100名
vCISO 20万円~80万円 セキュリティ戦略策定、経営会議参加、投資判断支援 経営視点でのセキュリティ推進 常駐でないため緊急対応に限界 従業員50名以上
リモートセキュリティ顧問 5万円~20万円 継続相談、優先順位づけ、製品選定助言 低コスト、気軽に相談できる 大規模プロジェクトには不向き 従業員10名~50名

この比較表からわかるとおり、有料サービスは費用と専門性のバランスで選ぶことが重要です。そして、東京都内の中小企業であれば、サイバーセキュリティ対策促進助成金を活用することで、上記の費用を大幅に圧縮できます。たとえば月額30万円のvCISOサービスを1年間利用した場合、年間360万円のうち最大180万円(小規模企業者は最大240万円)が助成されます。


4. 自社に合った相談先を選ぶための判断フロー

相談先の選択肢が多すぎて迷ってしまう――そんな方のために、自社の状況に応じた相談先の選び方を段階的に整理しました。以下のフローに沿って、まず「今の自社に最適な相談先」を見つけてみてください。

ステップ1:今すぐ対処が必要な問題があるか?

「はい」の場合:

  • ウイルス感染・不審なメールが届いた → IPA 安心相談窓口に電話
  • 不正アクセス・ランサムウェア・金銭被害 → 警察 サイバー犯罪相談窓口に連絡
  • 大規模なインシデントが発生 → 大手セキュリティベンダーのインシデント対応サービスに依頼

「いいえ」の場合 → ステップ2へ

ステップ2:セキュリティ対策の現状を把握しているか?

「まだ何も把握していない」場合:

  • まずは商工会議所よろず支援拠点で無料相談を受ける
  • IPAの「5分でできる!情報セキュリティ自社診断」で現状を簡易チェックする
  • 東京都内の企業であれば、東京都の無料サイバーセキュリティ相談サービスも活用する

「ある程度把握している」場合 → ステップ3へ

ステップ3:セキュリティの年間予算はどれくらいか?

年間予算が50万円未満の場合:

  • リモートセキュリティ顧問(月額5万円~)が最適
  • サイバーセキュリティ対策促進助成金を活用すれば、実質月額2.5万円程度から利用可能

年間予算が50万円~300万円の場合:

  • 中小企業向けコンサルティングまたはリモートセキュリティ顧問
  • セキュリティ製品の導入も並行して検討するなら、セキュリティ製品導入支援の利用も選択肢
  • サイバーセキュリティ対策促進助成金で製品導入費用も助成対象にできる

年間予算が300万円以上の場合:

  • vCISOまたは大手セキュリティベンダーのコンサルティング
  • 経営戦略としてセキュリティを位置づけるならvCISOが適している

ステップ4:社内にセキュリティの担当者はいるか?

「いない」場合:

  • まずはリモートセキュリティ顧問で「社外の相談相手」を確保する
  • 並行して、セキュリティ教育・研修サービスで社内のセキュリティ意識を底上げする
  • 将来的には社内にセキュリティ担当者を育成し、vCISOとの二人三脚体制を目指す

「いる(兼任)」場合:

  • リモートセキュリティ顧問またはvCISOで、担当者の判断をサポートする体制を構築
  • 担当者のスキルアップのために、セキュリティ研修の受講も検討

「いる(専任)」場合:

  • vCISOで戦略的な方向性を補強するか、大手ベンダーの専門サービスを部分的に利用

このように、自社の状況を「緊急性」「現状把握の度合い」「予算」「人材」の4つの軸で整理すると、最適な相談先が見えてきます。


5. サイバーセキュリティ対策促進助成金を活用して費用を抑える

ここまで読んで、「有料サービスの方が適しているのはわかったが、費用が心配だ」と感じた方も多いのではないでしょうか。そこでぜひ知っていただきたいのが、サイバーセキュリティ対策促進助成金の活用です。

5-1. サイバーセキュリティ対策促進助成金の概要

サイバーセキュリティ対策促進助成金は、東京都中小企業振興公社が実施する助成金制度で、都内中小企業のサイバーセキュリティ対策を支援するために設けられています。

サイバーセキュリティ対策促進助成金の主なポイント:

  • 助成率:2分の1以内(小規模企業者は3分の2以内)
  • 助成限度額:1,500万円
  • 対象経費:UTM・EDRなどのセキュリティ機器、ソフトウェア、クラウドサービス利用料、コンサルティング費用、セキュリティ教育費用など
  • 申請要件:SECURITY ACTION二つ星の宣言、IPA「情報セキュリティ対策ベンチマーク」の実施など

5-2. 助成金活用時の費用シミュレーション

サイバーセキュリティ対策促進助成金を活用した場合、各サービスの実質負担がどの程度になるかをシミュレーションしてみましょう。

サービス 年間費用(税抜) 助成金額(助成率1/2の場合) 実質負担額
リモートセキュリティ顧問(月額5万円) 60万円 30万円 30万円(月あたり2.5万円)
セキュリティ教育・研修(年1回) 30万円 15万円 15万円
UTM導入 100万円 50万円 50万円
EDR導入(50台) 180万円 90万円 90万円
vCISO(月額30万円) 360万円 180万円 180万円(月あたり15万円)

上記はあくまでシミュレーションですが、サイバーセキュリティ対策促進助成金を活用することで、有料サービスの費用負担を大幅に軽減できることがおわかりいただけると思います。特に、リモートセキュリティ顧問サービスであれば、助成金活用後の実質負担は月額2.5万円程度です。「有料サービスは高くて手が出ない」と思っていた企業にとっても、現実的な選択肢になるのではないでしょうか。

5-3. サイバーセキュリティ対策促進助成金の申請で気をつけるポイント

サイバーセキュリティ対策促進助成金の申請には、いくつかの注意点があります。

  1. 事前準備が必要:SECURITY ACTION二つ星の宣言と、IPAの情報セキュリティ対策ベンチマークの実施が申請要件です。これらの準備には一定の時間がかかるため、早めに着手しましょう。
  2. 申請期間が限定されている:サイバーセキュリティ対策促進助成金には募集期間があり、年に数回の募集が行われます。募集期間を逃すと次の募集まで待つ必要があります。
  3. 採択審査がある:申請すれば必ず採択されるわけではありません。申請書の内容が審査基準を満たしている必要があります。
  4. 交付決定前の契約・支払いは対象外:助成金の交付決定を受ける前に契約や支払いを行ってしまうと、その費用は助成対象になりません。必ず交付決定後に契約を進めてください。

申請手続きに不安がある場合は、サイバーセキュリティ対策促進助成金の申請サポートサービスを活用するのも有効な方法です。SECURITY ACTION二つ星の宣言からベンチマークの実施、申請書の作成・提出まで一貫してサポートを受けることができます。


6. 相談先を選ぶ前に整理しておくべき3つのこと

最後に、どの相談先を選ぶにしても、事前に整理しておくと相談がスムーズに進む3つのポイントをお伝えします。

6-1. 自社のIT環境を棚卸しする

相談先にアドバイスを求める際、「うちは何台のPCがあって、どんなソフトを使っていて、クラウドサービスは何を利用しているか」を説明できると、より具体的で的確な助言を受けられます。

IT資産管理台帳を作成していない場合は、最低限以下の情報を整理しておきましょう。

  • PC・スマートフォン・タブレットの台数と利用OS
  • 利用しているクラウドサービス(Microsoft 365、Google Workspace、Salesforce等)
  • ネットワーク構成(ルーター、VPN、Wi-Fiアクセスポイント等)
  • 現在導入しているセキュリティ対策(ウイルス対策ソフト、ファイアウォール等)
  • 社内サーバーの有無と用途

6-2. 「何を解決したいか」を明確にする

セキュリティ対策は範囲が広いため、「全部やりたい」と相談しても、相手も優先順位をつけにくくなります。以下のような形で、具体的な課題や目的を整理しておきましょう。

  • 「取引先からセキュリティ対策の証明を求められた」
  • 「ランサムウェアへの対策を強化したい」
  • 「従業員のセキュリティ意識が低く、研修を実施したい」
  • 「ISMS認証の取得を検討している」
  • 「サイバーセキュリティ対策促進助成金を使ってセキュリティ対策を進めたい」

6-3. 予算と期間の目安を決める

セキュリティ対策は一度の投資で完了するものではなく、継続的な取り組みが必要です。「今年度中に使える予算はいくらか」「いつまでに何を実現したいか」を明確にしておくと、相談先からの提案も具体的になります。

予算が限られている場合は、サイバーセキュリティ対策促進助成金の活用を前提とした計画を立てることで、より多くの対策を実施できます。助成金の申請から採択、交付までには数か月かかるため、スケジュールの逆算も重要です。


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参考・出典

鴨居 陽介
この記事の編集: 鴨居 陽介
アクセルパートナーズ 取締役・中小企業診断士

国内Sier企業でシステムエンジニア、PM、研修講師、法人営業を経験。 人と組織の成長を支えるマネジメントに携わる。2023年 中小企業診断士登録。2025年 アクセルパートナーズの理念や行動指針に強く共感し、取締役として参画。

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