【グローバルサウス未来志向型共創等事業費補助金】タイで実証事業を妨げる現地制度リスクとは?(③ヘルステック編)
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2026年6月現在、経済産業省「令和7年度補正グローバルサウス未来志向型共創等事業費補助金」(以下、グローバルサウス補助金)は第1回大規模実証事業(ASEAN枠と非ASEAN枠)の公募中です(〆切は6月30日)。中小企業なら補助率は最大2/3、5億円~最大40億円の支援が受けられます。
実は日本同様に高齢化が著しいタイは、日本のヘルステック企業が得意な「生活習慣病(予防医療)」や「高齢化(退院後ケア・介護連携)」に関する市場開拓余地が大きい国です。実際、既にこれらの分野での採択実績がタイでは幾つかあります。しかし、日本のヘルステック企業の多様性を考えると、まだまだタイでの採択数は少なく、チャンスが残っている状況です。今回はタイでヘルステック(医療技術)関連の実証事業を計画する際に留意しておくべき行政リスクを詳しく説明します。
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個人情報保護法(PDPA)との不適合リスク
タイの個人情報保護法(PDPA:Personal Data Protection Act)において、医療データは最も厳格に管理されるべくカテゴリーに分類されています。患者のデータを取得する実証事業では以下の4つのリスクが潜みます。
| 問題となる事態 | 概要 |
| 同意取得の不備 | 黙示の同意は不可。個別の明示的な同意(Explicit Consent)が必須で、UIや規約に不備があっても違法。 |
| 越境移転制限 | 日本へのデータ送信には厳格な基準があり、説明不足や保護措置を欠くと送信差し止めの恐れあり。 |
| データ処理契約の欠如 | 病院との個人情報に関するデータ処理契約(DPA:Data Processing Agreement、)が必須で、締結せずに漏洩が起きると、事業が強制停止される事態もあり得る。 |
| 刑事罰と社会的信用失墜 | 違反時には最高1年の禁錮刑や巨額の制裁金、企業名公表のリスクがあり、進出基盤を失う。 |
申請書を記述する際は、単に「現地の個人情報保護法を遵守する」と書くのではなく、「データ処理はタイ国内のクラウドで完結させる」、「現地病院とはPDPAに準拠したDPAを締結する体制である」、「患者からのExplicit Consentの取得フローを工程表に組み込んでいる」など、具体的に記載することで、PDPAリスクを理解して手を打っていることをアピールしましょう。
食品医薬品承認局(FDA)によるシステム/アプリの「医療機器」認定リスク
導入予定のシステムやアプリが現地で「医療機器(Medical Device)」に該当すると指摘されると、実証期間(一般的に1〜2年)の大半をライセンス申請手続きだけで消費することになりかねません。例えば、診断支援AIや、患者のバイタルデータを分析してトリアージ(緊急度判定)を行うアルゴリズムは、タイの「医療機器法(Medical Device Act)」において、医療機器としての登録・承認が必要になる可能性が高いと想定しておきましょう
タイFDAの判断基準や審査スピードが担当官によって揺らぐこともあり得るため、実証申請の段階で、システムが「単なる情報管理・表示ツール(医療機器外)」なのか「診断・治療に影響を与えるツール(医療機器)」なのかの境界線を明確にし、現地パートナーを通じてタイFDAへの事前照会を済ませておく、あるいはそのタイムラインを事業計画(工程表)に明確に位置づけておくことで、このリスクを回避しましょう。
保健省(MOPH)による遠隔医療・医師免許の参入障壁
日本の医療DX技術を現地で実証する際、「日本の医師がアドバイスする」「日本の優れた診断ロジックをそのまま適用する」という建て付けは、現地の医師法(Medical Profession Act)に抵触する恐れがあります。遠隔医療(Telemedicine)に関する保健省のガイドライン整備が進んでいますが、あくまで「タイの医療機関・医師による運用の補助」という枠組みを逸脱してはなりません。
遠隔医療(オンライン診療)プラットフォームなどを提供する場合、2025年〜2026年にかけて遠隔処方箋(e-prescription)やオンライン薬局に関するガイドラインがアップデートされています。システムを提供する事業体が、現地のライセンスを持つ病院・クリニックとどのような契約を結ぶか、法的な建て付け(医師法への抵触回避)がタイ保険省により審査されることになります。
まとめ
医療DXという規制の厳しい領域で行政リスクを乗り越える上では、申請時の「実施体制」に、現地保健省(MOPH)直轄の公立病院や国立大学医学部といった、タイの行政や規制当局に対するパイプを持つ「共同申請者(または現地パートナー)」を巻き込めていることが有効な対策となります。現地の規制動向(タイ版SaMDやPDPAの運用基準)を計画に織り込み、現地医療機関と「伴走型」で現地リスクに対応できる体制を組むことで、補助金採択だけでなく、その先の事業の成功を勝ち取ってください。
アクセルパートナーズの「グローバルサウス補助金」トータル支援サービス
タイだけでなく、他のASEAN諸国やインドなどでも実証事業を妨げ得る様々な制度があります。アクセルパートナーズは新興国への事業展開支援の実績が豊富な国際コンサルタント達を提携パートナーに含んでおり、進出国ごとの注意事項をアドバイスさせて頂きます。また、約200人の中小企業診断士や会計専門家達を擁しますので、事業計画や組織・財務戦略の策定もサポート可能です。
アクセルパートナーズの主な支援内容:
- 申請・事業計画策定:採択に繋がる「共創型」「リバースイノベーション」等の文脈を盛り込んだ事業計画を作成し、最適な申請枠を提案します。
- 採択後のPMO:複雑なプロジェクトの進捗管理代行、現地企業・政府との調整を支援します。
- 証憑管理・実績報告:厳格な補助金ルールに基づく証憑整理と実績報告書作成を全面的にバックアップします。
- 実行支援・経営顧問:補助金獲得だけでなく、現地パートナーの開拓と管理、現地事業の黒字化とキャッシュフロー最大化を支援します。
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