【グローバルサウス未来志向型共創等事業費補助金】タイで実証事業を妨げる現地制度リスクとは?(②GX編)


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2026年6月現在、経済産業省「令和7年度補正グローバルサウス未来志向型共創等事業費補助金」(以下、グローバルサウス補助金)は第1回大規模実証事業(ASEAN枠と非ASEAN枠)の公募中です(〆切は6月30日)。中小企業なら補助率は最大2/3、5億円~最大40億円の支援が受けられます。今回はASEANの中心国、タイでGX関連の実証事業を計画する際に留意しておくべき行政リスクを詳しく説明します。

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「気候変動法案」制定に伴う規制の不確実性 

欧州の炭素国境調整措置(EU-CBAM)などの国際貿易ルールへの対応、および国内企業の保護・競争力維持のため、現在、タイ政府は「気候変動法案(Climate Changing Act)」の法制化を進めています。

この法案には、炭素税(Carbon Tax)の導入や、特定の高排出セクターに対する炭素排出報告の義務化、キャップ・アンド・トレード型の排出量取引制度(ETS)の設立などが盛り込まれる見込みです。現時点(2026年6月)で、私は法案の制定スケジュールを以下のように予想しています。勿論、この通りに進まない可能性も十分あり得ますが、大型実証期間中に新たな規制が導入されるということは間違いなさそうです。

施策・制度 導入・実施予想時期 概要・目的
排出量報告義務化 法案成立後、早期に開始 年間3,000トン超等の対象法人への算定・報告義務。
炭素税の導入 2026年〜2027年頃 物品税の仕組みを利用し、初期は1トンあたり200バーツで調整中。
排出量取引制度(ETS) 2029年頃 キャップ・アンド・トレード型の本格運用。
タイ版CBAM 2031年頃 炭素漏出(カーボンリーク)を防ぐための国境調整。

タイ政府は2025年末のCOP30(国連気候変動枠組条約第30回締約国会議、約200か国が参加)にて、ネットゼロの達成目標を従来の「2065年」から「2050年」へと15年も前倒しする方針(NDC 3.0)を発表しています。この法案は国際公約達成のための最重要基盤としても位置づけられています。

リスク:法案の詳細(具体的な税率、排出枠の割り当て基準、罰則規定など)が流動的であり、実証期間中および実証後に予期せぬコンプライアンス(法令順守)コストや税負担が発生するリスクがあります。

再エネ市場における「官民の役割分担」と制度運用の不透明性

グローバル企業のRE100対応やデータセンター投資誘致のため、現在、タイ政府は従来の「政府系電力が電力を独占販売する仕組み(シングルバイヤー制度)」から電力市場の規制緩和に向けて大きな舵を切り出しています。

※RE100(Renewable Energy 100%):巨大グローバル企業の多くが加盟しているイニシアチブ。事業活動で消費する電力を全て再生エネルギーで賄うことを目標に掲げています。

とはいえ、現時点での規制緩和は限定的で、タイ発電公社(EGAT)を中心とする政府系企業の影響力は未だ非常に強力です。

リスク: 外資企業が再エネ(太陽光、バイオマスなど)や蓄電池、EV充電インフラの事業に参入する際、電力系統(グリッド)への接続許可(グリッドアクセス)や、余剰電力の買い取り制度(FIT等)の条件変更、許認可の遅延といった「行政側の運用のブレ」に直面しやすく、事業計画が狂う可能性があります。

外資規制とタイ投資委員会(BOI)恩典の間のグレーゾーン

タイでは原則として、外国人ビジネス法(FBA)によりサービス業への外資出資比率が「49%以下」に制限されています。

リスク: タイ投資委員会(BOI)の恩典(外資100%出資許可など)を受けられるGX事業(特定の技術開発や環境インフラなど)かどうかの境界線が曖昧な場合があります。行政窓口(BOI、商務省、工業省など)によって法解釈の統一性が欠けるケースが発生する場合、事前の確認に膨大な時間を要することがあります。

地域調達率(ローカルコンテンツ要件)の突然の強化

現在、タイ政府は電気自動車(EV)やGX関連の産業において、BOIの税制優遇措置と引き換えに「国内での主要部品の調達・生産」を義務付けるケースが増えています。タイのGX・EVインセンティブは「ギブ・アンド・テイク」が極めて明確であり、特にEV関連ではこの傾向が明確に見てとれる制度整備が進行中です。

リスク: サプライチェーンの立ち上げが予定通りに進まない場合、行政から優遇措置(法人税免除など)を取り消されたり、遡及して課税されたりするリスクがあります。

まとめ

タイはGXやEVに関する法制度の整備が現在進行中であり、今後の諸規制の内容を現時点で予見することが難しい状況です。リスクヘッジと精度の高い現地事業計画を立てるのためには、タイ投資委員会(BOI)からの公式な書面(Ruling)を個別かつ事前に取得すること、また、現地の規制動向に詳しい現地パートナーとの現地JVなどを通じて、行政とのパイプラインを強固にしておくことが不可欠です。

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タイだけでなく、他のASEAN諸国やインドなどでも実証事業を妨げ得る様々な制度があります。アクセルパートナーズは新興国への事業展開支援の実績が豊富な国際コンサルタント達を提携パートナーに含んでおり、進出国ごとの注意事項をアドバイスさせて頂きます。また、約200人の中小企業診断士や会計専門家達を擁しますので、事業計画や組織・財務戦略の策定もサポート可能です。

アクセルパートナーズの主な支援内容:

  1. 申請・事業計画策定:採択に繋がる「共創型」「リバースイノベーション」等の文脈を盛り込んだ事業計画を作成し、最適な申請枠を提案します。
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  3. 証憑管理・実績報告:厳格な補助金ルールに基づく証憑整理と実績報告書作成を全面的にバックアップします。
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土井 アキラ
この記事の編集: 土井 アキラ
中小企業診断士

公的機関コンサルタントとして中小企業の海外展開支援をベトナム(金型)、ケニア(農業機器・資材、食品加工機材ほか)、ミャンマー(自動車検査用機材、教育用電子機器ほか)、パキスタン(縫製機械、工場用ソフトウェア)、タイ(建設資材)等で実施。 現地での実行支援に加え、新規の海外展開を成功させるために前提となる経営・事業戦略、組織・人員体制、ファイナンスなどの全社的調整も伴走支援させて頂きます。

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