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【サイバーセキュリティ】「ゼロトラストって結局なに?」がなくなる ― 中小企業のための超わかりやすい解説と実践ガイド


「ゼロトラストって、結局うちには関係あるの?」

アクセルパートナーズが中小企業の経営者やIT担当者とお話しする中で、必ずと言っていいほど出てくるのがこの疑問です。セキュリティ関連のニュースや展示会で「ゼロトラスト」という言葉を目にするたびに、「何か大事なことらしい」とは感じるものの、具体的に何をすればいいのかわからない。ベンダーに聞いても専門用語ばかりで余計に混乱する ―― そんな経験はないでしょうか。

このコラムを読み終えたとき、あなたは「ゼロトラストとは何か」を自分の言葉で説明でき、自社に必要な範囲でゼロトラストの考え方を取り入れた具体的なアクションプランを描ける状態になっています。

目次

この記事でわかること

  • ゼロトラストに対する「4つのよくある誤解」
  • ゼロトラスト的な考え方を実践している企業の共通点
  • 中小企業向けの「信頼しない・常に検証する」フレームワーク
  • 明日から始められる段階的な導入ステップ

1. 良かれと思ってやっている「4つの誤ったゼロトラスト理解」

「ゼロトラスト」という言葉は、2010年にアメリカの調査会社フォレスター・リサーチのアナリスト、ジョン・キンダーバーグ氏が提唱した概念です。それから15年以上経った今、日本でもバズワードとして広まっていますが、その本質が正しく理解されているとは言い難い状況です。

ここでは、多くの中小企業が良かれと思って信じてしまっている4つの誤解を紹介します。あなたの会社にも当てはまるものがないか、確認してみてください。

誤解1:良かれと思って「ゼロトラスト製品を買えば実現できる」と考えている

「ゼロトラスト対応」と銘打った製品やサービスは数多く存在します。UTM、EDR、SASE、ZTNA ―― アルファベットの略語が飛び交う中、「とりあえずゼロトラスト対応の製品を買えば安心だろう」と考えてしまう気持ちはよくわかります。

しかし、ゼロトラストは製品ではなく、考え方(セキュリティアーキテクチャの設計思想)です。特定の1つの製品を買っただけで「ゼロトラストが実現した」ということにはなりません。

たとえるなら、「健康になりたい」と思って高価なサプリメントを買っても、食事・運動・睡眠の基本ができていなければ健康にはなれないのと同じです。ゼロトラストもまた、組織全体の考え方や運用の仕組みがあってこそ機能するものです。

ベンダーの営業トークに乗せられて「ゼロトラスト対応製品」を導入したものの、運用が伴わず結局セキュリティレベルが変わらなかった ―― そんなケースは少なくありません。

誤解2:良かれと思って「社内ネットワークは安全」と信じている

これは、ゼロトラストが生まれた背景そのものに関わる誤解です。

従来のセキュリティモデルは「境界防御」と呼ばれ、「社内ネットワーク=安全、社外=危険」という前提に立っていました。ファイアウォールやVPNで社内と社外の境界を守り、社内に入った通信は基本的に信頼する、というモデルです。

しかし、この前提はすでに崩れています。その理由は大きく3つあります。

理由1:クラウドサービスの普及
Microsoft 365、Google Workspace、AWS、kintone ―― 業務データの多くが「社内ネットワークの外」にあります。守るべきものが社内にないのに、社内の境界だけを守っても意味がありません。

理由2:テレワーク・リモートワークの定着
従業員が自宅やカフェから業務システムにアクセスする時代に、「社内にいる人は信頼できる」という前提は成り立ちません。

理由3:内部脅威の増加
IPAの「情報セキュリティ10大脅威2025」では、「内部不正による情報漏えい等の被害」が組織向け脅威の上位にランクインしています。社内にいるからといって安全とは限らないのです。

「うちは全員出社だし、クラウドもあまり使っていないから大丈夫」と思う方もいるかもしれません。しかし、取引先からのメールを装った標的型攻撃は、まさに「社内ネットワークに入り込んでから活動する」タイプの攻撃です。一度侵入されたら、社内のすべてが信頼されている環境では、被害が一気に拡大します。

誤解3:良かれと思って「VPNを使っていればゼロトラスト相当」と考えている

VPN(Virtual Private Network)は、社外から社内ネットワークに安全に接続するための技術です。テレワーク環境で多くの企業が導入しています。「VPNで暗号化しているから安心」と考えている経営者は多いのですが、これはゼロトラストとは根本的に異なります。

VPNの問題点は、「接続さえすれば、社内ネットワーク全体にアクセスできてしまう」ことです。つまり、VPNの認証を突破されたら、攻撃者は社内のあらゆるシステムに自由にアクセスできてしまいます。

実際に、VPNの脆弱性を突いたランサムウェア攻撃は年々増加しています。警察庁の「令和5年上半期におけるサイバー空間をめぐる脅威の情勢等について」によると、ランサムウェアの感染経路としてVPN機器からの侵入が最も多く、全体の約7割を占めています。

ゼロトラストの考え方では、VPNで社内に接続したからといって全面的に信頼するのではなく、アクセスのたびに「誰が」「どの端末で」「何にアクセスしようとしているか」を確認します。これが「常に検証する」という原則です。

誤解4:良かれと思って「ゼロトラストは大企業のもの」と諦めている

「ゼロトラストって、GoogleやMicrosoftみたいな大企業が何十億円もかけてやるものでしょう?うちみたいな中小企業には無理だよ」。この声は非常に多く聞かれます。

たしかに、大企業が導入するフルスペックのゼロトラストアーキテクチャは、多額の投資と専門人材が必要です。しかし、ゼロトラストの考え方そのものは、企業規模に関係なく適用できます

ゼロトラストの本質は「常に検証する」という考え方です。これを実践するのに、必ずしも高額な製品は必要ありません。たとえば:

  • 多要素認証の導入:Microsoft 365やGoogle Workspaceなら、追加費用なしで設定可能
  • アクセス権限の最小化:共有フォルダのアクセス権を「全員アクセス可」から「必要な人だけ」に変更
  • 端末の状態確認:Windows Updateが最新か、ウイルス対策ソフトが動いているかを確認

これらはすべて、ゼロトラストの考え方に基づいた対策であり、中小企業でも今日から始められるものです。

「フル実装は無理でも、考え方を取り入れる」。これが中小企業のゼロトラスト戦略の正解です。

2. ゼロトラスト的な考え方を実践している企業の3つの共通点

では、ゼロトラストの考え方をうまく取り入れている中小企業は、何が違うのでしょうか。アクセルパートナーズがこれまで支援してきた企業の中から、共通する3つの特徴をお伝えします。

焦点:「製品」ではなく「考え方」に投資している

うまく実践している企業は、最初に「どの製品を買うか」を考えるのではなく、「自社のどこにリスクがあるか」を考えることから始めています。

具体的には、以下の3つの問いを軸に自社の状況を整理しています。

問い 確認すること
誰がアクセスしているか? 従業員・外注・取引先のアクセス状況
どの端末からアクセスしているか? 会社PC・私用スマホ・自宅PCの管理状況
何にアクセスしているか? 業務データ・顧客情報・経理システムの権限設定

この3つの問いに答えられる状態を作ることが、ゼロトラスト実践の第一歩です。高額な製品を買う前に、まず「自社の現在地を知る」ことに時間と労力を投資しています。

行動:「一気にやる」のではなく「段階的に進める」

ゼロトラストをうまく取り入れている企業は、「来月までに全社導入する」といった無理な計画は立てません。代わりに、リスクの高いところから順に、段階的に対策を進めています。

たとえば、ある製造業の中小企業(従業員50名)では、以下の順番で進めました。

  • 第1段階(1ヶ月目):Microsoft 365の多要素認証を全社員に設定
  • 第2段階(2〜3ヶ月目):共有フォルダのアクセス権を部署単位に整理
  • 第3段階(4〜6ヶ月目):テレワーク用のリモートアクセスをVPNからクラウド型に移行
  • 第4段階(7〜12ヶ月目):端末管理ツール(MDM)を導入し、端末の状態を可視化

各段階で「何が良くなったか」を記録し、経営層に報告することで、次のステップへの投資判断を得やすくしています。

量:「完璧」を目指さず「まず60点」を確保している

ゼロトラストの完全実装は、大企業でも数年かかるプロジェクトです。中小企業が最初から100点を目指すと、途中で頓挫します。

成功している企業は、「まず60点の状態を目指す」というマインドセットを持っています。60点とは、以下の3つが実現できている状態です。

  • 多要素認証が主要システムに設定されている
  • アクセス権限が「必要最小限」に設定されている
  • 端末の状態(OSバージョン、ウイルス対策)を把握できている

この3つだけで、従来の境界防御だけのセキュリティに比べて、攻撃を受けた場合の被害範囲を大幅に限定できます。まず60点を確保した上で、余裕ができたら70点、80点と積み上げていくのが現実的なアプローチです。

3. 中小企業のための「信頼しない・常に検証する」フレームワーク

ゼロトラストの考え方を中小企業に適用するために、アクセルパートナーズでは「3つの検証ポイント」フレームワークを推奨しています。

ゼロトラストの原則を一言で言えば、「何も信頼しない(Zero Trust)」のではなく「常に検証する(Always Verify)」です。この「常に検証する」を中小企業で実践するために、以下の3つのポイントに集中します。

検証ポイント1:ユーザーの検証(誰がアクセスしているか?)

従来の考え方: IDとパスワードが合っていれば本人と見なす
ゼロトラストの考え方: IDとパスワードに加えて、別の方法でも本人確認する

これを実現する最も効果的な手段が多要素認証(MFA:Multi-Factor Authentication)です。

多要素認証とは、「知っているもの(パスワード)」に加えて、「持っているもの(スマホ)」や「自分自身(指紋)」など、複数の要素で認証する仕組みです。

認証の要素 具体例
知識情報(知っているもの) パスワード、PINコード、秘密の質問
所持情報(持っているもの) スマートフォン、ハードウェアトークン、ICカード
生体情報(自分自身) 指紋、顔認証、虹彩認証

Microsoftの調査によると、多要素認証を導入するだけで、アカウント乗っ取り攻撃の99.9%以上を防げるとされています。ゼロトラストの第一歩として、最もコストパフォーマンスが高い対策です。

中小企業での実装方法:

  • Microsoft 365:管理画面から多要素認証を有効化(追加費用なし)
  • Google Workspace:同様に管理コンソールから設定(追加費用なし)
  • その他のクラウドサービス:多くが多要素認証に対応済み

検証ポイント2:端末の検証(どの端末からアクセスしているか?)

従来の考え方: 社内ネットワークに接続している端末は信頼する
ゼロトラストの考え方: 端末の状態(OSバージョン、セキュリティソフトの稼働状況など)を確認してからアクセスを許可する

端末の検証が重要な理由は、たとえ正規のユーザーであっても、マルウェアに感染した端末からアクセスすれば被害が広がるからです。

【すぐにできること】

  • Windows Updateの適用状況を月1回チェックする
  • ウイルス対策ソフトの定義ファイルが最新か確認する
  • 管理外の私用端末(BYOD)からのアクセスルールを明確にする

【次のステップ】

  • MDM(Mobile Device Management)ツールを導入し、端末の一元管理を行う
  • 条件付きアクセス(端末の状態に基づいてアクセスを許可/拒否する仕組み)を設定する

検証ポイント3:アクセス権限の検証(何にアクセスする必要があるか?)

従来の考え方: 社員であれば社内の情報にはだいたいアクセスできる
ゼロトラストの考え方: 業務に必要な最小限の権限だけを付与する(最小権限の原則)

これはゼロトラストの中でも最も重要な原則のひとつです。すべての社員が全社の共有フォルダにアクセスできる状態は、一人のアカウントが乗っ取られただけで全情報が漏洩するリスクを意味します。

最小権限の原則を実践するチェックリスト:

  • 共有フォルダのアクセス権を「全員」ではなく「部署単位」に設定しているか
  • 退職者のアカウントを即日無効化しているか
  • 管理者権限(Administrator/root)を持つ人を最小限に絞っているか
  • 取引先・外注先のアクセス範囲を限定しているか
  • 定期的にアクセス権限の棚卸しを行っているか

境界防御とゼロトラストの違い:

項目 境界防御(従来型) ゼロトラスト
基本的な考え方 社内は安全、社外は危険 社内も社外も常に検証
信頼の前提 一度認証されれば信頼 アクセスのたびに検証
防御の対象 ネットワークの境界(入口) データ・アプリケーション単位
認証方式 ID・パスワード中心 多要素認証+端末検証
アクセス権限 広い範囲にアクセス可能 必要最小限の権限のみ
テレワーク対応 VPNで社内に接続 クラウド経由で直接アクセス
侵入された場合 社内全体に被害が拡大 被害を限定的に抑制
クラウド対応 社内にデータがある前提 データの場所を問わない
導入コスト ファイアウォール・VPN 段階的に既存ツールから開始可能

この表からわかるように、ゼロトラストは「何かを買い足す」ことではなく、「セキュリティに対する考え方の前提を変える」ことが本質です。

4. 段階的な導入ステップ ― 中小企業が今日から始めるゼロトラスト

ゼロトラストの考え方を自社に取り入れるために、3つのフェーズに分けた段階的な導入ステップをお伝えします。各フェーズは無理なく進められるように設計されています。

フェーズ1:すぐにできること(コスト:0円〜数万円 / 期間:1〜2週間)

このフェーズでは、追加投資なしで今あるツールの設定を変えるだけで実現できる対策を行います。

アクション1-1:多要素認証を有効化する

対象:Microsoft 365、Google Workspace、その他主要クラウドサービス

手順(Microsoft 365の場合):

  • Microsoft 365管理センターにログイン
  • 「ユーザー」→「アクティブなユーザー」を選択
  • 「多要素認証」をクリック
  • 対象ユーザーを選択し、有効化

よくある質問:

  • 「スマホを持っていない社員はどうする?」→ 電話認証(音声通話)を代替手段として設定可能
  • 「面倒くさいと社員から苦情が出そう」→ 「信頼できるデバイス」として登録すれば、同じ端末から30日間は再認証不要

アクション1-2:アクセス権限を棚卸しする

対象:共有フォルダ、クラウドストレージ、業務システム

手順:

  • 現在の共有フォルダ一覧を作成する
  • 各フォルダに「誰がアクセスできるか」を確認する
  • 「全社員アクセス可」になっているフォルダを洗い出す
  • 本当に全社員がアクセスする必要があるか検討する
  • 必要に応じて部署単位やプロジェクト単位にアクセス権を変更する

特に注意すべきフォルダ:

  • 人事・給与関連の情報
  • 顧客リスト・契約書
  • 経営に関する機密文書
  • 取引先から預かっている技術資料

アクション1-3:退職者のアカウントを確認する

過去1年以内に退職した社員のアカウントがまだ有効になっていないか確認してください。退職者のアカウントが残っている場合、そのアカウントが悪用されるリスクがあります。

確認すべきサービスの例:

  • Active Directory / Microsoft Entra ID
  • Microsoft 365 / Google Workspace
  • 業務用クラウドサービス(会計ソフト、CRM、SFAなど)
  • VPN
  • 社内Wi-Fi

フェーズ2:短期的な改善(コスト:数万円〜数十万円 / 期間:1〜3ヶ月)

フェーズ1が完了したら、次は「検証の仕組み」を強化するステップに進みます。

アクション2-1:パスワードポリシーを見直す

ゼロトラストにおいて、パスワードは「知識情報」という1つの認証要素に過ぎません。しかし、多要素認証と組み合わせることで、より強固な認証基盤を構築できます。

項目 推奨設定 理由
最小文字数 12文字以上 8文字では総当たり攻撃に対して脆弱
複雑さ 英大小文字+数字+記号 パターン攻撃への対策
変更頻度 定期変更は不要 NISTの最新ガイドラインに準拠
使い回し 禁止 1つのサービスの漏洩が他に波及する
パスワード管理 パスワードマネージャー推奨 覚えられないほど複雑なパスワードを安全に管理

※NIST(米国国立標準技術研究所)は「定期的なパスワード変更は、かえってセキュリティを低下させる」としており、総務省のガイドラインもこれに追従しています。

アクション2-2:端末管理の仕組みを導入する

中小企業向けのMDMの選択肢:

  • Microsoft Intune:Microsoft 365 Business Premiumに含まれる。すでにMicrosoft 365を使っている企業なら追加導入しやすい
  • Google Endpoint Management:Google Workspace Business Plus以上に含まれる
  • LANSCOPE:日本製のIT資産管理ツール。中小企業での実績が多い

MDMで実現できること:

  • 端末のOSバージョン・セキュリティパッチ適用状況の一元管理
  • 紛失・盗難時のリモートワイプ(遠隔データ消去)
  • アプリのインストール制御
  • 条件付きアクセス(セキュリティ要件を満たさない端末からのアクセスをブロック)

アクション2-3:クラウドサービスの棚卸しを行う

従業員が業務で利用しているクラウドサービスを一覧化します。IT部門が把握していない「シャドーIT」が存在するケースは非常に多く、これはゼロトラストの考え方では大きなリスクとなります。

棚卸しの手順:

  • 各部署にヒアリングし、業務で使っているクラウドサービスを全て列挙してもらう
  • IT部門が把握しているサービスと突き合わせる
  • 会社として「承認するサービス」と「禁止するサービス」を分類する
  • 承認したサービスについて、多要素認証やアクセス権限の設定を確認する

フェーズ3:中長期的な体制構築(コスト:数十万円〜 / 期間:3ヶ月〜1年)

フェーズ1・2で基盤ができたら、より本格的なゼロトラスト環境の構築に進みます。

アクション3-1:VPNからZTNA(ゼロトラストネットワークアクセス)への移行を検討する

項目 VPN ZTNA
アクセス範囲 社内ネットワーク全体 許可されたアプリのみ
認証タイミング 接続時に1回 アクセスのたびに検証
端末の検証 なし(または限定的) 端末の状態を確認
拡張性 VPN機器の容量に依存 クラウド型で柔軟に拡張
運用負荷 VPN機器のメンテナンスが必要 クラウドベンダーが管理

中小企業向けのZTNAソリューションとしては、Cloudflare Access、Zscaler Private Accessなどがあります。月額数百円/ユーザーから利用できるプランもあり、VPN機器のリプレース時に合わせて検討するのが自然なタイミングです。

アクション3-2:ログの監視・分析体制を構築する

最低限記録すべきログ:

  • 認証ログ(誰がいつログインしたか)
  • アクセスログ(どのファイル・システムにアクセスしたか)
  • 変更ログ(誰が何を変更・削除したか)
  • 認証失敗ログ(パスワードの入力ミスやブロックされたアクセス)

Microsoft 365やGoogle Workspaceには、これらのログを確認する機能が標準で備わっています。まずは既存ツールのログ機能を有効化し、月に1回は異常がないか確認する体制を作ることから始めましょう。

アクション3-3:ゼロトラストポリシーを文書化する

文書に含めるべき項目:

  • 認証に関するルール(多要素認証の必須化、パスワードポリシーなど)
  • アクセス権限に関するルール(最小権限の原則、棚卸しの頻度など)
  • 端末管理に関するルール(OSアップデートの期限、BYOD利用条件など)
  • クラウドサービス利用に関するルール(承認プロセス、禁止サービスなど)
  • インシデント発生時の対応手順

5. よくある質問と「つまずきポイント」への対処法

ゼロトラストの導入を進める中で、中小企業が直面しやすい課題とその対処法をまとめます。

Q1:「社員が面倒くさがって多要素認証を使ってくれない」

多要素認証に対する抵抗感の多くは、「なぜ必要か」の理解不足から来ています。導入前に10分でよいので、以下の3点を社員に説明する場を設けてください。

  • パスワードだけでは防げない攻撃が増えていること(具体的な事例を1つ紹介)
  • 多要素認証を設定すれば99.9%の不正アクセスを防げること
  • 「信頼できるデバイス」を登録すれば、毎回の手間は最小限になること

トップダウンで「経営方針として導入する」と宣言してもらうことも効果的です。

Q2:「予算が限られているが、何から投資すべきか」

優先度 対策 費用目安 効果
最優先 多要素認証の全社導入 0円(既存ツールの設定変更) 不正アクセスの99.9%を防止
アクセス権限の最小化 0円(設定変更のみ) 被害範囲の限定
端末管理ツール(MDM) 月額300〜1,000円/台 端末の可視化・制御
パスワードマネージャー 月額300〜500円/人 パスワード使い回し防止
低(次の段階) ZTNA 月額500〜2,000円/人 VPNからの移行

コストゼロで始められる対策が2つあることに注目してください。まずはここから始めれば、予算の制約があっても大きな改善が期待できます。

Q3:「IT担当者がいないのですが、自社だけでできますか」

フェーズ1の多要素認証やアクセス権限の設定変更は、IT担当者がいなくても実施可能です。Microsoft 365やGoogle Workspaceの管理画面から操作できますし、各サービスの公式ヘルプには設定手順が日本語で詳しく掲載されています。

フェーズ2以降の端末管理やクラウド棚卸しについては、外部のIT支援サービスの活用を検討してください。アクセルパートナーズのような中小企業向けのコンサルティングサービスを利用すれば、自社の状況に合ったアドバイスを受けながら進められます。

Q4:「すでにUTMを導入しているが、それでもゼロトラストは必要か」

UTM(統合脅威管理)は境界防御の一部であり、ゼロトラストとは補完関係にあります。UTMはネットワークの入口で外部からの脅威をブロックする役割を果たしますが、ゼロトラストはネットワーク内部での不正な動きを検知・防止する考え方です。

つまり、UTMとゼロトラストは「どちらか一方」ではなく「両方あったほうがよい」ものです。UTMで境界を守りつつ、ゼロトラストの考え方で内部のセキュリティも強化する。この多層防御のアプローチが最も効果的です。

Q5:「ゼロトラストの進捗をどう測ればよいか」

以下の5つのチェック項目で、自社のゼロトラスト成熟度を測定できます。

チェック項目 未着手 進行中 完了
多要素認証の全社導入
アクセス権限の最小化
端末管理の仕組み化
クラウドサービスの棚卸し
セキュリティポリシーの文書化

3つ以上が「完了」になっていれば、中小企業としてのゼロトラスト基盤は十分に整っていると言えます。

まとめ:ゼロトラストは「買うもの」ではなく「考え方を変えること」

ゼロトラストは、特定の製品を購入することでも、大企業だけのものでもありません。「社内だから安全」「VPNだから安心」という前提を疑い、常にアクセスを検証する考え方です。

このコラムで紹介した「3つの検証ポイント」フレームワークと段階的な導入ステップを実践すれば、中小企業でもゼロトラストの考え方を自社のセキュリティに取り入れることができます。

大事なのは、完璧を目指すことではなく、「今の自社のセキュリティの前提を見直す」こと。 多要素認証の設定、アクセス権限の見直し、端末状態の確認 ―― これらは今日から始められるゼロトラストの第一歩です。

アクセルパートナーズのサポート

アクセルパートナーズでは、中小企業のサイバーセキュリティ対策を包括的にサポートしています。

「ゼロトラストの考え方を自社に取り入れたい」「どこから手をつければいいかわからない」という方は、まずは無料相談からお気軽にお問い合わせください。

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鴨居 陽介
この記事の編集: 鴨居 陽介
アクセルパートナーズ 取締役・中小企業診断士

国内Sier企業でシステムエンジニア、PM、研修講師、法人営業を経験。 人と組織の成長を支えるマネジメントに携わる。2023年 中小企業診断士登録。2025年 アクセルパートナーズの理念や行動指針に強く共感し、取締役として参画。

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