税理士事務所の仕事とは?中小企業診断士が経営支援で知っておくべきこと
中小企業診断士として経営支援の現場に立つ際、税理士事務所との連携は重要です。しかし、税理士の仕事は単なる税務処理や確定申告に留まらない事実を、どれだけの診断士が深く理解しているでしょうか。税理士の専門領域と経営者とのリアルな関わり方を理解することは、中小企業診断士が提供する経営支援の質を格段に高めます。
今回は、税理士の丸山さんのお話をもとに、税理士事務所の実際の仕事内容、経営者が抱える本質的な悩み、そして経営判断に直結する試算表や決算書の重要性について掘り下げ、中小企業診断士が経営支援に活かすべき視点をお伝えします。

税理士事務所の仕事内容は「確定申告」だけではない
多くの人が税理士事務所と聞くと、確定申告や決算業務を思い浮かべるでしょう。しかし、丸山さんの話によれば、税理士事務所の仕事の「8割」は税務顧問契約にあり、顧問先とは「大体1ヶ月に1回ぐらい」の頻度で打ち合わせをしています。
この毎月のミーティングで話される内容は、実は数字の報告だけではありません。丸山さんは「もちろん数字の話はするんですけども、『こう思ってるんだけどどう思う?』 『借り入れしたいんだけどさ』とか、『うちならいくらまでなら借り入れられるかな』とか、あと『社員がやめちゃったんだけど』とかそういった数字以外のことの方が実はすごく打ち合わせの時間が多いんですよ」と語っています。これは、税理士が数字のプロであると同時に、経営者の最も身近な相談相手であることを示しています。
数字の裏に隠された「人」の悩みと経営者の本音
毎月の打ち合わせでは、多くの場合、数字以外の「人」に関する話が繰り広げられます。丸山さんは、社長との会話が結構雑談の中から相談に展開されると言います。YouTubeで見た情報について「うちでも使えるの?」と尋ねたり、「この人採用しようと思うんだけどどう思う?」と人事の悩みを打ち明けたりと、多岐にわたる相談が持ち込まれます。
「1質問すると10ぐらい喋ります」という社長たちの本音は、税理士が単なる事務代行者ではなく、経営者の孤独な悩みに寄り添う存在であることを物語っています。資金繰りやM&A、親族への事業承継、廃業の検討といった将来的なビジョンに関する相談も頻繁にあり、税理士は多角的な視点から経営者の声に耳を傾けているのです。中小企業診断士として経営者の悩みに向き合う際、税理士が既にこれらの「人」に関する深い情報を持っている事実を理解することは、今後の支援の方向性を定める上で非常に役立ちます。
経営の羅針盤となる「試算表」のリアルタイムな価値
経営判断の重要な指標となるのが決算書ですが、これは年に一度作成されるものです。丸山さんは年に一度の決算書だけではリアルタイムな経営判断が難しい点を指摘します。ここで重要になるのが「試算表」です。
試算表は毎月作成されることで、現在の会社の業績や財務状況をリアルタイムに把握できる情報です。「今だったら8月の3日に7月の試算表を見れれば、3日の段階でもう、あ、先月こうだったんだ。なんか自分の経営判断がちょっと良くなかったのかな。そういうことも気がつくことができる」と丸山さんはその価値を強調しています。
「試算表を知らずに会社経営してたりだとかそのままやってく人って一定いるんですよ」という丸山さんの言葉は、この重要な情報を見過ごしている経営者が少なくない現状を示唆しています。中小企業診断士は、試算表の重要性を経営者に伝え、毎月確認することの価値を共に理解し、経営判断に活用できるよう促す役割を担います。自分の頭の中のどんぶり勘定では「大体間違ってます」というのが実情です。
金融機関からの評価を分ける「決算書」の品質
決算書は単に税務申告のために作成されるだけではありません。その作り方一つで、金融機関からの評価や融資の可能性が大きく変わる、という重要な側面があります。丸山さんは、「私たちも決算書を作る上で正直不安なんですよ。これが合ってるかどうかって」と、その責任の重さを語ります。
具体的な例として、役員退職金の処理や、貸借対照表における流動資産・流動負債の適切な区分、そして代表者からの借入金の表示方法が挙げられます。例えば、「役員さんの退職金が1億出てますよってなってる。あの、そうするとですね、営業利益マイナスってなってるんですよね。それやばいでしょうと思いますね」といったケースや、代表者からの借入金を長期借入金にまとめることで、金融機関が自己資本と見なすべき部分を見落としてしまう可能性に触れています。
細部にまでこだわった決算書の作成は、金融機関が見やすく、正しく査定できるだけでなく、経営者自身の会社への理解を深めることにも繋がります。「家賃1つにしたってその家賃を受け取ってる家賃もあるんだったら相殺してあげて販売管理費減らしてあげる」といった、細かな配慮が評価を左右する事実を中小企業診断士は理解しておくべきです。
「節税」の罠と、本当に価値あるお金の使い方
税理士に相談する際、多くの経営者が節税に関心を持ちます。しかし、丸山さんは「節税するためにお金がなくなってちゃ意味がない」と、安易な節税の危険性を説きます。
「経費を増やして税金を減らした」という成功体験が、経営者の本来の目的から逸れてしまうことがあります。丸山さんの事務所では、スタッフが気持ちよく働けるように不動産を増築し、家賃を上げるために借り入れを行うことを「別に全然悪くない」と判断しています。これは、将来への投資として価値あるお金の使い方であり、単なる税金対策ではないからです。
過度な節税は、会社の資金を流出させ、金融機関からの評価を下げるリスクも伴います。中小企業診断士は、目先の節税効果だけでなく、会社の長期的な成長や資金繰りを見据えた、本当に価値あるお金の使い方を経営者と共に考える視点を持つ必要があります。
税理士と「伴走」する中小企業診断
中小企業診断士として経営支援を行う上で、税理士との連携は単なる情報交換以上の意味を持ちます。
税理士は数字の専門家として、そして経営者の身近な相談相手として、深い情報と信頼関係を築いています。中小企業診断士は、その税理士の専門性を正しく理解し、その上で「税理士の保管する専門家である」という立ち位置で、経営課題の解決に貢献できます。経営者が求めるものに対し、適切な税理士を紹介する「橋渡し」の役割も担うことができます。
税理士の仕事のリアルを知ることは、中小企業診断士がより的確な提案を行い、経営支援の幅を広げ、クライアント企業の持続的な成長を支援するための重要な一歩です。
関連動画
さらにサポートが必要な方へ
アクセルパートナーズは、中小企業診断士が税理士事務所の仕事内容を深く理解し、経営支援の質を高めるためのサポートを提供しています。この動画で得られた知見を、ぜひあなたの経営支援に活かしてください。
お問い合わせはこちらから







