研修会社様が知らずに陥る|人材開発支援助成金の不正受給リスク
「言ってはいけない一言」で信頼を失わないために
助成金のご案内では、良かれと思って使った表現が、後々のトラブルや受講企業様からの信頼低下につながることがあります。
「必ず戻ってくる」「実質無料」——こうした言葉は、その代表例です。
本記事では、研修会社様が助成金をご案内する際に気をつけたい注意点と、令和8年8月3日の制度改正で変更された点を、事業展開等リスキリング支援コースを念頭に整理します。
断定表現は避ける
助成率や上限額だけを強調すると、「申請すれば必ず助成される」という誤解を与えかねません。
申請時に提出する様式にも明記されている通り、計画届が受付されたとしても、助成金の支給が確約されるわけではありません。実際の支給可否は、研修終了後の支給申請時に審査されます。
広告やパンフレット、営業時のご案内では、次のような表現にとどめることが望ましいです。
「研修内容や受講企業様の状況によっては、人材開発支援助成金を活用できる可能性があります」
一方、以下のような断定表現は避けていただくことをおすすめします。
- 「実質無料」
- 「自己負担なし」
- 「必ず受給できる」
研修費用を実質的に減額する金銭提供はNG
経費助成を受けるには、受講企業様が支給申請までに訓練経費の全額を自ら負担している必要があります。
以下のような金銭やサービスの提供を行うと、「実質的な全額負担違反」とみなされ、助成対象外となることや不正受給と判断されるリスクが生じます。
- 研修費用の返金・キャッシュバック
- アンケート回答協力金、広告費、紹介料、営業協力金、協賛金などの名目による金銭の支払い
- 助成金が不支給となった場合の返金保証
- 無償または著しく低額な関連サービス・製品の提供、クーポン券等の経済的便宜の供与
また、同じ内容の研修であっても、助成金を利用する企業向けの料金だけを著しく高く設定している場合、その差額分は助成対象経費として認められません。
価格設定に関する書類も確認される
事業展開等リスキリング支援コースの支給申請では、原則として「受講料等の価格設定に関する疎明書(様式第28号)」の提出が求められます。
この書類では、以下の点が詳細に確認されます。
- 通常の受講料
- 助成金利用による価格差の有無
- 関係者から提供される金銭・サービスの有無
料金体系や紹介料の設計を行う際は、契約前に専門家へ確認しておくと安心です。
様式第12号(支給申請承諾書)の内容も事前に確認を
支給申請時には、教育訓練機関である研修会社様の承諾を示す「支給申請承諾書(訓練実施者)(様式第12号)」を提出します。
この承諾書には、以下の重要事項が盛り込まれています。
- 労働局による調査やヒアリングに協力すること
- 不正受給に関与(指示や黙認を含む)した場合は、申請事業主と連帯して返還金等の債務(不正受給額+年3%の延滞金+20%の違約金加算)を負うこと
- 訓練実施者名や代表者名、不正内容が公表されること
- 不支給・取り消し日から5年間、自社が実施する訓練が助成対象外となること
適正な研修提供を行っていれば過度に不安を感じる必要はありません。ただし、事実と異なる証明の提出や、不当な負担軽減を行わないよう、内容の事前確認は不可欠です。
【令和8年8月3日改正】対象となる訓練の基準が変わりました
令和8年8月3日以降に提出された計画届に基づく訓練から、DX化・GX化に関する訓練の要件が厳格化されました。
以下の内容にとどまるものは、助成対象外となります。
- 職業・職務に間接的にしか関係しない知識にとどまるもの
例:特定の業務への適用を伴わない、汎用的なプロンプトの作り方を学ぶだけの訓練 - 職業人として共通して必要となる内容にとどまるもの
例:DXの概念、デジタル技術の概要、データ活用の考え方、脱炭素の基本理念や国際情勢を学ぶだけの訓練
明確な判断基準は、「受講者の具体的な担当業務に、訓練内容を直接活用・適用できるかどうか」です。
受講回数制限の変更(eラーニングは年度1回まで)
本コースでは従来から、助成対象となる訓練の受講回数は、同一労働者につき一の年度で3回までとされています。
令和8年8月3日の改正により、このうちeラーニングによる訓練(複数の実施方法を組み合わせる場合を含む)については、「一の年度で1回まで」という制限が新たに設けられました。
なお、「一の年度」とは、支給申請日を基準として4月1日から翌年3月31日までを指します。
注意点
- ここでご紹介した内容は一般的な傾向であり、個別の研修カリキュラムや対象労働者の職務内容によって判断が異なります。
- 令和8年8月3日改正には経過措置があります。原則として同日以降に提出された計画届に新しい取扱いが適用されますが、訓練の契約・申込時期などによっては、従前の取扱いが適用される場合があります。
- 研修内容の対象可否や価格設計に迷う場合は、契約前に専門家へご確認ください。
まとめ
助成金のご案内は、断定表現や過度な費用調整を避け、事実に基づいたご案内を心がけることが信頼につながります。
特に令和8年8月3日の改正により、DX化・GX化に関する訓練では、受講者の具体的な職務との直接的な関連性が、これまで以上に重要になっています。
研修内容が対象になるかどうか迷う場合は、早めに専門家へご相談ください。
※本記事は執筆時点の情報です。制度や様式は変更される場合がありますので、最新情報は専門家にご確認ください。
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