【サイバーセキュリティ】取引先・親会社から「セキュリティ調査票」が届いたら?中小企業の担当者が知っておくべき対応手順
この記事でわかること
- 大企業・親会社が中小企業にセキュリティ調査票を送る理由と背景
- 調査票に多い質問カテゴリと、回答時の基本的な考え方
- 「できていない項目がある」場合の正しい対処法と、調査票対応を対策強化につなげる手順
ある日突然、取引先や親会社から「情報セキュリティに関するアンケートへのご協力をお願いします」というメールが届く——。
このような「セキュリティ調査票(情報セキュリティ質問票)」が、中小企業に届くケースが急増しています。受け取った担当者が「何を書けばいいかわからない」「うちの会社の実情をそのまま書いて大丈夫?」と戸惑うのは当然のことです。
この記事では、セキュリティ調査票が届いた際の対応手順と、回答時のポイントを中小企業の担当者向けにわかりやすく解説します。
1. なぜ今、セキュリティ調査票が急増しているのか
サプライチェーン攻撃という「新しい脅威」
近年、大企業を狙うサイバー攻撃の手口に大きな変化が起きています。セキュリティが強固な大企業を直接攻撃するのではなく、その大企業と取引関係にある中小企業を踏み台にして侵入する「サプライチェーン攻撃」が急増しているのです。
IPA(情報処理推進機構)が発表した「情報セキュリティ10大脅威 2024(組織編)」では、「サプライチェーンの弱点を悪用した攻撃」が第2位にランクインしています。大企業にとって、取引先のセキュリティ水準を把握・管理することは、もはや自社防衛の一部となっています。
出典:IPA(情報処理推進機構)「情報セキュリティ10大脅威 2024」
https://www.ipa.go.jp/security/10threats/10threats2024.html
経済産業省のガイドラインが後押し
経済産業省が2023年に改訂した「サイバーセキュリティ経営ガイドライン Ver 3.0」では、企業がサプライチェーン全体のセキュリティ管理を行うことが重要事項として明記されました。この流れを受け、大企業・上場企業を中心に、取引先への「セキュリティ調査票」の送付が本格化しています。
出典:経済産業省「サイバーセキュリティ経営ガイドライン Ver 3.0」(2023年3月)
https://www.meti.go.jp/policy/netsecurity/mng_guide.html
つまり、調査票が届くということは、「あなたの会社は取引先にとってリスク管理の対象になっている」ということを意味します。慌てる必要はありませんが、誠実かつ正確に対応することが求められます。
2. セキュリティ調査票に多い質問項目(カテゴリ別解説)
調査票の形式や質問数は送付元によって異なりますが、多くの場合、以下のカテゴリに分けられます。
| カテゴリ | 質問例 | 回答のポイント |
|---|---|---|
| 基本情報 | 従業員数、情報システム担当者の有無、セキュリティ責任者の設置状況 | 事実をそのまま記載する。担当が兼任でも記載可 |
| セキュリティ方針 | 情報セキュリティ基本方針の策定・公開状況、SECURITY ACTION(セキュリティアクション)の宣言有無 | SECURITY ACTION 2つ星を取得済みであれば明記する |
| アクセス管理 | パスワードポリシーの設定、多要素認証(MFA)の導入状況 | 実際に運用しているルールを確認してから記入する |
| 端末・ネットワーク管理 | OSやソフトウェアのアップデート状況、ウイルス対策ソフトの導入有無 | 導入済みのツール名・バージョン管理方法を確認する |
| 教育・訓練 | セキュリティ教育の実施頻度、フィッシング訓練の有無 | 実施していれば実施日・内容を記録として残しておく |
| インシデント対応 | 過去のセキュリティインシデントの有無、発生時の対応フロー | 事実を正直に。対応した事実があれば評価につながる |
3. 回答前に確認すべき3つのこと
① 提出期限を確認し、余裕を持って対応する
セキュリティ調査票は「急ぎで」と言われることが多いですが、慌てて不正確な情報を記入するのは禁物です。まず期限を確認し、社内の担当者に情報収集の時間を確保してください。回答に時間がかかる場合は、送付元に一報入れて期限調整を依頼するのが適切な対応です。
② 記入内容は「事実のみ」で正直に回答する
「できていない項目があると取引に影響するかも」という不安から、実態と異なる回答をするケースがあります。しかし、虚偽の回答は後で発覚した場合に信頼を大きく損なうリスクがあります。対応できていない項目は「未対応」と正直に回答し、「今後対応予定」として改善計画を添えるほうが誠実な対応として評価されます。
③ 不明な項目は確認してから回答する
「多要素認証(MFA)」「EDR」など、ITの専門用語が並んでいる場合は、わからないまま回答せず、社内のIT担当者や外部の専門家に確認してから記入しましょう。誤った情報を記入するよりも、「確認中のため後日回答します」と伝えるほうが適切です。
4. 「できていない項目がある」場合の正しい対処法
正直な回答が信頼の基盤になる
すべての質問に「対応済み」と回答できる中小企業はほとんどありません。重要なのは、現状を正確に把握した上で、改善に向けた具体的な行動を取ることです。「未対応+改善計画あり」の回答は、「未対応+回答なし」よりも格段に評価が高くなります。
SECURITY ACTION(セキュリティアクション)2つ星の宣言で「方針策定」を証明する
調査票でよく問われる「情報セキュリティ基本方針の策定」については、IPA(情報処理推進機構)が運営するSECURITY ACTION(セキュリティアクション)の2つ星宣言を取得することで対応できます。宣言は無料で行えますが、基本方針書の作成や内部規程の整備が必要です。
SECURITY ACTION 2つ星の宣言は、調査票への回答材料になるだけでなく、IT導入補助金(セキュリティ対策推進枠)や東京都サイバーセキュリティ対策促進助成金の申請要件にもなっており、一つの取り組みで複数の効果が得られます。
出典:IPA(情報処理推進機構)「SECURITY ACTION(セキュリティアクション)」
https://www.ipa.go.jp/security/security-action/
補助金を活用して対策コストを抑える
調査票の回答を機に「本格的にセキュリティ対策を整えたい」と思った場合、IT導入補助金(セキュリティ対策推進枠)を活用することで、セキュリティソフト・クラウドサービスの導入費用の最大1/2(上限450万円)を補助してもらえます。補助金の詳細については、当サイトの補助金関連コラムも参考にしてください。
5. よくある質問(FAQ)
Q1. セキュリティ調査票への回答は法的に義務付けられていますか?
法的な義務はありませんが、取引契約や取引継続の条件として求められる場合があります。特に大企業・上場企業との取引では、未回答・無視は取引リスクと見なされる可能性があるため、誠実に対応することを推奨します。
Q2. 「対応できていない」と正直に回答したら、取引への影響はありますか?
未対応項目があること自体よりも、「現状を正確に把握しているか」「改善に向けた行動をとっているか」が評価されるケースが多いです。未対応の場合は、改善計画や対応予定時期を添えて回答することで、誠実さを示せます。逆に虚偽の回答は発覚した際の信頼損失が大きいため、避けてください。
Q3. 調査票への対応に外部の専門家を使う場合、費用感はどのくらいですか?
専門家によるサポートの費用は、調査票の規模・対応範囲によって異なりますが、基本的なレビューと回答支援であれば10万〜30万円程度が相場です。SECURITY ACTION(セキュリティアクション)2つ星の取得とセットで対応することで、効率よく書類を整えられます。
Q4. SECURITY ACTION(セキュリティアクション)2つ星を取得すると、調査票でどのように役立ちますか?
SECURITY ACTION 2つ星の宣言を行うには、「情報セキュリティ基本方針の策定と社内への周知」「リスク分析・対策計画の立案」が必要です。これらはセキュリティ調査票でよく問われる項目そのものであるため、2つ星取得のプロセスが調査票への回答準備を兼ねることになります。
まとめ:調査票への対応は「対策の見える化」のチャンス
セキュリティ調査票は、受け取った側には手間のかかる作業に感じられますが、自社のセキュリティの現状を棚卸しする絶好の機会でもあります。
- 調査票が届く背景には、サプライチェーン攻撃の増加と、大企業のリスク管理強化がある
- 回答は「事実のみ」で。未対応項目は改善計画を添えて誠実に記載する
- SECURITY ACTION(セキュリティアクション)2つ星の取得は、調査票対応と補助金申請の両方に活用できる
- 不明な点は外部の専門家に相談することで、回答精度と対策の質を同時に高められる
「調査票が届いたが、どう対応すればいいかわからない」という状況を放置せず、まず現状の把握から始めましょう。
アクセルパートナーズへのご相談
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参考・出典
- IPA(情報処理推進機構)「情報セキュリティ10大脅威 2024」:https://www.ipa.go.jp/security/10threats/10threats2024.html
- 経済産業省「サイバーセキュリティ経営ガイドライン Ver 3.0」:https://www.meti.go.jp/policy/netsecurity/mng_guide.html
- IPA(情報処理推進機構)「SECURITY ACTION(セキュリティアクション)」:https://www.ipa.go.jp/security/security-action/
本コラムの内容は2026年5月時点の情報に基づきます。制度・要件等は変更される場合がありますので、最新情報は各機関の公式サイトまたは当社へご確認ください。


