小規模事業者持続化補助金<共同・協業型>とは?他の型との違いや補助率などをわかりやすく解説

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根元 皓平
 編集:根元 皓平
 企業内診断士

地域の小規模事業者が直面する販路開拓や経営課題に対して、共同・協業の力で解決を目指す新たな補助金制度が始まりました。「小規模事業者持続化補助金<共同・協業型>」は、地域振興等機関が中心となり、複数の小規模事業者を支援するための取組を後押しするものです。「一事業者だけでは難しい挑戦を、地域全体で支える」という考え方が、本制度の中心にあります。
本記事では、この補助金の基本的な仕組みや申請にあたって押さえるべきポイントを、わかりやすく解説します。

小規模事業者持続化補助金<共同・協業型>とは

小規模事業者持続化補助金<共同・協業型>は、地域経済を支える小規模事業者が、互いに不足する経営資源を補い合いながら、商品やサービスの販路開拓に取り組むことを支援する制度です。
申請主体は、商工会・商工会議所、商店街組織、地域企業の支援に取り組む法人などの「地域振興等機関」となり、10者以上の小規模事業者を参画させることが必要です。

本補助金は、単なる単独支援ではなく、地域ぐるみで小規模事業者の販路拡大や事業力向上を図ることを目的としています。
また、支援は補助事業期間中だけで終わるのではなく、事業終了後も一定期間フォローアップを続ける体制が求められています。

なお、本制度はこれまで「共同・協業販路開拓支援補助金」という名称で第1回から第9回まで運用されていたものであり、本年度より「小規模事業者持続化補助金」の新たな枠組みとして統合されました。

 

他の型との比較

従来の小規模事業者持続化補助金は、以下の3つの主要なタイプがありました:

  • 一般型
  • 災害型
  • 創業型

今回は、これらと新しい「共同・協業型」を比較する形で違いを整理しました。

【ポイント】

  • 一般型災害型創業型は、基本的に単独の事業者が対象でした。
  • 新しく追加された共同・協業型は、複数の小規模事業者(10者以上)が協力して販路開拓や事業力の強化に取り組むことが求められます。
  • 最大補助額も、従来の50万円~200万円程度の補助上限とは異なり、最大5,000万円という大規模な支援が受けられます。

このように、共同・協業型は、従来の支援制度と比べて、規模が大きく、より広範な支援を提供しています。

 

項目 共同・協業型 一般型 災害型 創業型
対象事業者 複数の小規模事業者(10者以上) 単独の小規模事業者 災害の影響を受けた事業者 新規に創業した事業者
補助対象となる
取組内容
販路開拓、マーケティング支援など 販路開拓、業務改善など 災害復旧、事業再建支援 創業支援、販路開拓など
補助金額(上限) 最大5,000万円 最大50万円~200万円 最大300万円 最大200万円
補助率 2/3以内、定額補助あり 2/3以内 2/3以内 2/3以内
参画事業者数 10者以上の小規模事業者 単独事業者 単独事業者 単独事業者
申請方法 電子申請(Jグランツ) 電子申請(Jグランツ) 電子申請(Jグランツ) 電子申請(Jグランツ)
申請対象 複数事業者が共同で申請 単独の事業者 災害により被害を受けた事業者 創業後5年以内の事業者
支援対象経費 展示会、商談会、マーケティング支援費 販路開拓費、業務改善費、事業拡大費 事業再建費、復旧費 創業費、販路開拓費
交付決定後の実施 最大1年間、長期的な支援 1年間 1年間 1年間
収益納付義務 あり(収益が発生した場合) なし なし なし

 

 

補助対象となる取組内容

小規模事業者持続化補助金<共同・協業型>では、参画する小規模事業者の商品やサービスの販売力向上を目的とした、次のような取組が補助対象となります。

 

展示会・商談会の開催・出展支援 参画事業者の商品やサービスを効果的にアピールするため、展示会や商談会を主催したり、他者が主催する展示会への出展を支援する取組です。
催事販売(物販会・即売会)支援 地域やターゲット市場で催事(販売会、即売会など)を開催・支援し、参画事業者の売上拡大を促す取組です。
マーケティング拠点の設置・運営支援 特定ターゲットに向けた販売促進のため、マーケティング拠点(常設店舗、ECサイト拠点など)を構築し、継続的な販路開拓活動を行う取組です。

 


出典:小規模事業者持続化補助金<共同・協業型>【公募要領】

これらの取組はいずれも単なる機会提供だけでなく、デザイン改良、ブランディング支援、販路開拓先との交渉支援、フォローアップ支援まで含めて一体的に行うことが求められます。

補助対象者の要件

小規模事業者持続化補助金<共同・協業型>では、申請できる対象者と参画できる小規模事業者に、それぞれ明確な要件が定められています。

【申請者の要件】
申請者は、次のいずれかに該当する地域振興等機関である必要があります。
– 商工会(商工会法に基づき設立された法人)
– 商工会議所(商工会議所法に基づき設立された法人)
– 都道府県中小企業団体中央会
– 商店街組織(商店街振興組合や事業協同組合など)
– その他、地域企業の支援を事業として行う法人

複数の地域振興等機関が共同して申請する場合には、代表機関を定め、代表機関が取りまとめて申請します。

【参画事業者(小規模事業者)の要件】
– 小規模事業者であること(業種別従業員数基準あり)
– 資本金5億円以上の大企業の100%子会社でないこと
– 直近3年間の課税所得の年平均が15億円を超えないこと
– 申請者と資本関係を有していないこと
– 申請者と役員の兼任関係がないこと

【参画事業者数の要件】
– 取組ごとに10者以上の小規模事業者が参画することが必要です。
– 参画事業者は、実際に販路開拓活動に参加し、成果を目指す主体である必要があります。

単なる人数合わせではなく、実際の事業活動に関わる小規模事業者で構成することが求められます。

補助率と補助上限額

小規模事業者持続化補助金<共同・協業型>では、補助対象となる経費に対して、定められた補助率・補助上限額の範囲内で補助金が交付されます。
具体的な内容は以下のとおりです。

【補助上限額】
– 1申請あたり上限5,000万円(1回の公募につき)
– 取組の種類や参画事業者の数によらず、1件あたりの上限額は5,000万円です。
※取組が複数ある場合(例:展示会とマーケティング拠点を同時に実施する場合)でも、補助金の総額上限は変わりません。

【補助率】
経費の種類に応じて、次の補助率が適用されます。

補助率 経費
定額 人件費、謝金、旅費(地域振興等機関分)、会議費、消耗品・備品費、通信運搬費、印刷製本費、雑役務費、委託・外注費、水道光熱費
対象経費の2/3以内 参画事業者旅費、借料、設営・設計費(内外装費含む)、展示会等出展費、保険料、広報費

 

【補助金の支払時期】
– 原則、事業終了後に実績報告書提出の上、精算払い。
– 一定条件を満たせば、事業期間中に概算払いの申請も可能です。

【注意点】
本補助金では、定額補助対象の経費(人件費や雑役務費など)だけで申請することは認められていません。
必ず、補助率2/3以内の経費(例:展示会出展費、広報費など)を含めて申請計画を立てる必要があります。
これに違反すると、申請自体が無効になるため注意が必要です。

申請要件と注意点

小規模事業者持続化補助金<共同・協業型>に申請するためには、いくつかの要件を満たし、注意事項を守る必要があります。
主なポイントは次のとおりです。

【電子申請(Jグランツ)による申請が必須】
本補助金は、国が運営する電子申請システム「Jグランツ」からの申請のみ受け付けています。
紙の申請や郵送による提出はできません。

注意点:
– Jグランツを利用するには、GビズIDプライムアカウントが必要です。
– アカウント取得には数週間程度かかるため、未取得の場合は早めの取得手続きを推奨します。
– 暫定GビズIDプライムでは申請できません。

【申請書類の作成・提出】
申請にあたって、以下の書類をJグランツ上で提出する必要があります。
– 申請書(様式1)
– 補助事業計画書(様式2-1)
– 参画事業者一覧(様式2-2)
– 支出計画書(様式3)
– 地方公共団体による事業支援計画書(様式4、任意)
– 直近2年分の税務申告書・決算書(または事業計画書)

ポイント:
– 共同申請の場合は、代表機関が全体を取りまとめます。
– 提出書類には、各参画事業者に関する情報(納税証明書、役員名簿など)も含まれます。

【参画事業者への説明・同意取得が必要】
補助事業を進めるにあたり、参画するすべての小規模事業者に対して、事業の内容を事前に説明し、理解と同意を得ることが求められます。
単に名前を借りるだけではなく、各事業者が実際に販路開拓活動に参画することが前提です。

【申請時・実施時の注意点】
– 交付決定前に事業着手(契約・発注・支払等)を行った場合、その経費は補助対象外となります。
– 採択された後でも、適切な実施報告がなければ補助金が支払われない可能性があります。
– 収益が発生した場合は、収益納付が求められる場合があります(詳細は後述)。

補助金交付までの流れ

小規模事業者持続化補助金<共同・協業型>では、申請から補助金の交付を受けるまでに、いくつかのステップを経る必要があります。
全体の流れをあらかじめ把握しておくことが、スムーズな申請・実施につながります。

【公募・申請】
– 公募要領の公表後、電子申請システム(Jグランツ)を通じて申請を行います。
– 申請書、補助事業計画書、参画事業者一覧、支出計画書、必要な財務書類などを揃え、期限内に提出します。

【審査・採択】
提出された申請書類に基づき、形式審査と内容審査が行われます。

【主な審査ポイント】

 

補助事業の適格性 本補助金の趣旨に沿った取組であるか、事業内容が補助金の目的に一致しているか。
取組内容の有効性 参画事業者の商品やサービスの販路開拓に実効性があるか、具体的な成果が期待できるか。
事業計画の具体性 事業計画が詳細であり、取組内容、スケジュール、支援体制が明確か。
成果の広がり・持続性 補助事業終了後も成果が地域に広がり、持続可能な成果を上げられるか。
費用対効果 事業にかかる費用が妥当であり、無駄な経費がないか、効率的に運用されるか。

また、申請時には数値による評価指標(目標値)の設定も求められます。
例:展示会での新規リーチ数、新規取引先数、催事販売での売上高増加額など、取組の種類に応じた具体的な数値目標を掲げることが必要です。

【交付申請・交付決定】
– 採択された申請者は、交付申請書を提出し、正式な補助金交付決定を受けます。
– 交付決定通知が発行された後に、初めて対象事業に着手することができます。
(交付決定前に契約・発注・支出を行った場合、その経費は補助対象外となるため注意が必要です。)

【事業実施】
– 交付決定後、各取組(展示会開催、催事販売、拠点運営など)を計画に沿って実施します。
– 必要に応じて、概算払い(中間支払)の手続きを行うことも可能です。

【実績報告・補助金支払】
– 補助事業が完了したら、30日以内または翌月10日までに、実績報告書と支払証拠書類を提出します。
– 事務局による審査・現地調査等を経て、確定した補助金額が精算払いで支払われます。

収益納付と遵守事項

小規模事業者持続化補助金<共同・協業型>においては、補助事業により収益が発生した場合、一定のルールに基づき収益納付を行う必要があります。
また、補助金を適正に使用するために遵守すべき重要なルールも定められています。

【収益納付について】
補助事業の実施により直接得られた収益が一定額以上となった場合、その一部を国に納付する義務が発生します。
ここでいう「収益」とは、補助事業に直接起因する純利益(売上高から直接費用を控除した額)を指します。

<収益納付が必要となる例>
– 展示会・催事販売の結果、補助期間中に大きな売上・利益が発生した場合
– マーケティング拠点の運営により、補助期間中に一定以上の利益が得られた場合

※収益が発生しなかった場合でも、実績報告書において「収益なし」と報告する必要があります。

【遵守事項】
補助事業の適正な実施を確保するため、次の事項を遵守しなければなりません。
– 交付決定前に契約・発注・支払等を行った場合、その経費は補助対象外となる。
– 補助対象外経費(飲食代、贈答品、福利厚生目的支出等)を補助金で支出してはならない。
– 実績報告書の提出を怠った場合、補助金の支払が遅延または取り消されることがある。
– 補助事業の成果について、事業終了後も一定期間(原則5年間)、成果報告(販路開拓状況など)を行う義務がある。

【不正受給への厳正対応】
虚偽申請や経費の不正使用等が発覚した場合、補助金の返還命令に加え、加算金の支払が命じられる場合があります。
悪質な場合は刑事告発される可能性もあり、社会的信用を大きく失うリスクがあるため、適正な運用が求められます。

スケジュール

小規模事業者持続化補助金<共同・協業型>のスケジュールは以下のとおりです。申請から補助金交付まで、各ステップの期日をしっかり把握しておくことが重要です。

【公募要領公開】
– 令和7年3月31日(月)
– 公式公募要領が公開されます。この段階で、具体的な申請要件や申請書類が確定します。

【申請受付開始】
– 令和7年4月25日(金)
– Jグランツを通じて申請が受付開始されます。事前にGビズIDプライムの取得や、申請書類の準備を進めておく必要があります。

【申請受付締切】
– 令和7年6月13日(金)17:00まで
– 申請期限を過ぎると申請できません。電子申請システム(Jグランツ)に不具合が生じる可能性もあるため、締切直前ではなく、早めの申請をおすすめします。

【採択結果発表】
– 申請締切後約2か月を目安に採択結果が発表されます。採択されると、交付決定通知が届きます。

【交付決定】
– 採択後、交付申請書を提出し、交付決定を受けます。交付決定後に事業開始となります。
– 交付決定前に契約や発注を行うと、補助対象外経費として扱われるため、必ず交付決定後に着手する必要があります。

【事業実施期間】
– 交付決定後から令和8年3月31日(火)まで
– 事業終了後も実績報告が求められるため、計画に沿って事業を進めます。

【実績報告提出】
– 事業終了後30日以内または翌月10日までに実績報告書を提出します。
– 実績報告が審査され、補助金の精算払いが行われます。

まとめ

小規模事業者持続化補助金<共同・協業型>は、地域振興等機関が中心となり、地域の小規模事業者を支援するための重要な制度です。
単なる販路開拓支援だけでなく、事業力の向上や地域経済の活性化も目指しており、長期的なフォローアップが求められます。

申請にあたっては、事業計画の具体性や数値目標の設定が不可欠です。
また、GビズIDプライムを取得し、電子申請(Jグランツ)を通じて申請を行う必要があります。

重要なポイントは以下の通りです。
– 補助上限額:最大5,000万円
– 申請締切:令和7年6月13日(金)17:00
– 交付決定後に事業を開始し、実績報告書提出後に精算払いが行われます。
– 交付決定前に契約・発注・支払を行った場合、その経費は補助対象外となります。

この補助金は、地域を支える企業群を巻き込み、販路拡大と事業力強化を目的としています。地域全体の力を結集して、新たな販路開拓に挑戦する絶好の機会です。
早期の準備と計画的な申請を進めましょう。

根元 皓平
 編集:根元 皓平
 企業内診断士