政府が本気で支援!100億企業を目指すメリットや最新施策の「100億宣言」、最大5億円の補助金など 診断士が分かりやすく解説
はじめに
「100億企業」。かつては遠い存在と思われていたこの言葉が、今や現実的な目標として脚光を浴びています。2025年2月、中小企業庁と中小企業基盤整備機構は「100億宣言」を発表しました。これは、売上100億円を目指す企業を国が支援する制度です。中小企業の成長支援が明確に打ち出され、今後の日本経済の成長戦略の柱となる可能性があります。売上が100億円を超えると、企業の信用力が増し、資金調達が有利になるなどのメリットがあります。また、株式公開(IPO)により、大型の成長投資も可能になります。
本記事では、「100億宣言」が誕生した背景から、企業が活用できる具体的な補助金や税制優遇など支援策までをわかりやすくご紹介します。
1. 国の100億企業支援策の概要
「100億宣言」は、中小企業が飛躍的成長を遂げるために、経営者自らが売上高「100億企業」という野心的な目標を掲げ、その実現に向けた取り組みを進めることを宣言するものです。この制度を活用することで、企業は成長戦略をより明確にし、国の支援を受けながら事業拡大に挑戦できます。
この制度は、単なるスローガンではなく、企業が「100億企業」を現実的な目標として捉え、成長戦略を明文化し、国の支援を受けながら挑戦していくための仕組みです。国はこの宣言を通じて、将来的に中堅・大企業へと飛躍するポテンシャルのある企業を後押しし、地域経済や雇用への波及効果を生み出すことを狙っています。企業にとっては、単なる売上拡大ではなく、組織力・資金力・事業の多角化・デジタル化など、総合的な成長戦略が求められます。国はこうした取り組みを促進するため、補助金や税制優遇といった具体的な支援策も連動して展開しています。
2024年12月17日に成立した令和6年度補正予算により、中小企業の成長を促進するための「中小企業成長加速化補助金」が新設され、令和7年3月17日に公募要領が公開されました。この補助金は、売上高100億円を目指す中小企業に対して、設備投資や事業拡大のための資金を提供するものです。これにより、資金不足による成長の停滞を防ぎ、競争力の強化を図ることが期待されています。
2. なぜ国は100億企業の育成に力を入れるのか?
日本経済の持続的成長には、デフレ脱却と賃上げの実現が不可欠です。中小企業が100億円規模へと成長することで、雇用の安定、給与の向上、そして国内のサプライチェーン強化に貢献することが期待されています。また、大企業と中小企業の間に位置する100億円企業が増えることで、国内市場の活性化にもつながります。
近年、大企業では賃上げが進んでいますが、日本の雇用の約7割、付加価値の5割以上を占める中小企業・小規模事業者の成長がなければ、持続的な経済成長は実現しません。特に、売上高100億円を超える「100億企業」 は、賃金水準が高く、国内投資や地域経済への波及効果も大きいため、その育成が重要視されています。
3. 100億企業の位置づけ
ここで改めて、100億企業がどのような存在なのかを確認してみましょう。
100億企業は、中小企業と大企業の間に位置し、中堅企業と呼ばれます。中堅企業の明確な定義はありませんが、経済産業省では、「中堅企業」を 「中小企業基本法の定義を超えるが、大企業には至らない企業」 と位置づけ、売上規模100億円前後の企業が含まれることが多いようです。
売上高が100億円を超えると、企業の信用力が増し、事業展開の選択肢が飛躍的に広がります。たとえば、金融機関からの評価が高まり、資金調達の条件が有利になります。株式公開(IPO)の候補として市場の注目を集めることで、資本市場を活用した大型の成長投資も視野に入ります。さらに、海外市場への参入や現地パートナーとの連携といったグローバル展開が現実的な選択肢となります。企業の知名度と信頼性が高まることで、取引先との契約条件交渉にも有利に働きます。このように、100億企業になることで得られる経営上の利点は多く、企業の成長フェーズを次のステージへ押し上げる推進力となります。
中小企業庁長官は、令和7年の年頭所感において、100億企業について次のように述べています。
「特に、売上高100億円を超える『100億企業』は、直接輸出額や域内仕入高が大きく、賃金も高いなど、国内投資や地域経済を牽引していくような存在です。この『100億企業』を目指すような経営者・企業について、成長の後押しを行っていくことは、変革の時代を迎えている日本経済の更なる発展に寄与するものと確信しています。」
このように、国全体として100億円企業の創出を強力に後押ししていく姿勢が明確に示されました。
4. 補助金・税制優遇など、100億企業への挑戦を支える制度
それでは、100億企業を目指す経営者にとって、どのような支援策が用意されているのでしょうか? 100億宣言を行うことで、令和7年5月に公募が始まる予定の成長加速化補助金や、2025年夏以降に予定されている経営強化税制の拡充措置などが対象となります。ここでは、中小企業成長加速化補助金の概要を紹介します。
概要:賃上げへの貢献、輸出による外需獲得、域内の仕入による地域経済への波及効果が大きい売上高100億円超を目指す中小企業の大胆な投資を支援
補助上限額:5億円(補助率1/2)
補助対象者:売上高100億円を目指す中小企業(※売上高が10億円以上100億円未満である必要があり)
補助事業の要件:
① 「100億宣言」を行っていること
② 投資額1億円以上(専門家経費・外注費を除く補助対象経費分)
③ 一定の賃上げ要件を満たす今後5年程度の事業計画の策定(賃上げ実施期間は補助事業終了後3年間)
補助対象経費:建機械装置費(器具・備品費含む)、ソフトウェア費、外注費、専門家経費 ※建物費は生産設備等の導入に必要なものに限ります。なお、土地代は対象外
引用:中小企業成長加速化補助金 概要資料(中小企業成長加速化補助金事務局)
詳細については、募集要領(https://growth-100-oku.smrj.go.jp/documents/subsidy/kobo_20250418.pdf )をご参照ください
5. 100億宣言とは
国が新たに打ち出した「100億宣言」についても説明します。
これは、売上高100億円を目指す意欲ある企業が、国に対して目標達成に向けた意思を公式に表明し、計画を提出することで、各種支援の対象となる制度です。参加企業は、補助金や税制優遇などの後押しを受けながら、成長戦略の実行を加速させることが可能になります。
「100億宣言」に参加するためには、まず経済産業省の専用サイトから申請を行う必要があります。その際、詳細な事業計画を提出し、企業が売上高100億円を目指していることを明確に示す必要があります。計画の審査には2〜3か月の期間を要し、承認されると正式に「100億宣言」企業として認定され、各種支援策を受けることが可能になります。
■申請方法
経済産業省の専用サイトから申請が可能です。その際に、詳細な事業計画の提出が必要となります。2025年5月8日(木)から申請受付が予定されています。
■メリット
「100億宣言」に参加することで、企業にはどのようなメリットがあるのでしょうか? これにより得られる具体的な利点を整理してみましょう。
・公式ロゴマークの使用
・一部支援策(補助金・税制優遇)の適用対象
・経営者ネットワークへの参加
・金融機関からの優遇措置
■スケジュール
申請から支援策の適用までには一定の期間を要するため、計画的な準備が求められます。
・申請開始:2025年5月
・審査期間:2~3か月
・支援策適用開始:2025年7月以降
詳細については、「100億企業成長ポータル」もご参照ください。(https://growth-100-oku.smrj.go.jp/)
6. 100億円企業創出に向けた中小企業診断士の活用
100億円企業を目指す際、企業単独では難しい面も多いため、中小企業診断士の活用が一つの選択肢となります。100億円企業に成長するためには、戦略的な支援が不可欠であり、中小企業診断士はその支援に重要な役割を果たします。
主な支援領域
・成長戦略の策定:100億円達成までのロードマップ作成
・資金調達のサポート:銀行融資、ベンチャーキャピタル、政府補助金の活用
・市場拡大支援:新規顧客開拓と販路拡大
・組織強化支援:経営基盤を支える人材確保
・デジタル化推進:生産性向上と競争力強化
・経営管理・統制支援:ガバナンス強化、内部統制の整備、上場準備や経営管理体制の高度化
中小企業診断士はこれらの支援を通じて、企業が100億円企業に成長するための道筋を共に築いていくことができます。
7. まとめ
売上高100億円を目指す企業にとって、今後は国の支援施策を有効に活用することが成長への大きなステップとなります。補助金や税制優遇などの制度を適切に利用することで、企業は段階的に目標達成に向けた成長を図ることができます。100億円という高い目標は挑戦ではありますが、それに挑む企業や経営者を支援するために、プロジェクト「100億宣言」がスタートしました。この記事が、100億企業の実現に向けた理解を深め、皆さまの取り組みに少しでも役立つことを願っております。