【2023年雇用調整助成金】1月以降はどう変わる?コロナ特例廃止後の助成内容を詳しく解説
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2022年12月1日以降、雇用調整助成金コロナ特例が廃止されました。 しかし、いまだ大きな影響を受けている企業もあることに配慮し、業況が厳しい企業には2022年12月1日から2023年3月31日の期間は経過措置がとられます。
4月以降は、コロナの感染状況や雇用情勢を踏まえて検討のうえ決定することとしていますが、経過措置のさらなる延長はないとの見方が濃厚です。 これまで雇用調整助成金ありきで雇用を維持してきた企業にとっては、新たな人材戦略が求められています。
そこで今回は、雇用調整助成金コロナ特例廃止の内容に加え、政府が強化するとしている「人への投資」についても詳しく解説します。
雇用調整助成金コロナ特例のおさらい
まずは、おさらいとして雇用調整助成金コロナ特例の内容について簡単に説明します。
雇用調整助成金コロナ特例の対象事業主と労働者
対象となるのは、新型コロナウイルス感染症の影響により、経済上の理由で事業活動の縮小を余儀なくされた事業主です。
事業主が雇用を維持するために、労働者に休業手当等を支払った場合、その一部が助成されます。
対象となる労働者は雇用保険の被保険者ですが、コロナで自粛要請をされた小規模な飲食店や小売店などでは、多くの従業員が雇用保険に加入しておらず、助成金を受給することができませんでした。
そこでコロナ特例措置の一環として、雇用保険に加入していない労働者も対象とする、緊急雇用安定助成金が制度化されました。
(雇用調整助成金と緊急雇用安定助成金の助成内容に大きな違いはありません。)
またコロナによる休業において、休業手当の支払いを受けることができなかった労働者に対し支給される、休業支援金・給付金も2023年3月31日まで延長されています。
本記事では、雇用調整助成金に的を絞って説明しますので、緊急雇用安定助成金や休業支援金・給付金の詳細については厚生労働省のホームページでご確認ください。
(厚生労働省ホームページ「緊急雇用安定助成金」・「休業支援金・給付金」)
雇用調整助成金コロナ特例の助成内容
雇用調整助成金コロナ特例の助成内容を、特例以外の場合の雇用調整助成金と比較すると以下のようになります。
雇用調整助成金コロナ特例 |
特例以外の場合の雇用調整助成金 |
|
助成率 |
中小企業 4/5 大企業 2/3 業況特例・地域特例 |
中小企業 2/3 |
日額上限額 |
11,000円(2022年1~2月) 業況特例・地域特例 15,000円(2021年5月~2022年9月) |
8,355円 2022年8月1日~ |
※業況特例:生産指標(売上げ等)が最近3ヶ月の月平均で、前年、前々年度または3年間の同期比で30%以上減少している事業主
※地域特例:感染が拡大している地域
さらにコロナ特例では、事業主の手続き負担軽減と支給事務の迅速化のために、申請書類についても記載事項を約5割削減したほか、添付書類も一部削減するなど、大幅な簡便化が図られました。
雇用調整助成金コロナ特例廃止の概要
雇用調整助成金コロナ特例は2022年12月から廃止となりましたが、2023年3月31日まで、業況が厳しい事業主については一定の経過措置が設けられました。
2022年12月からの雇用調整助成金コロナ特例経過措置
経過措置が適用となるのは、2020年4月1日から2022年11月30日までに雇用調整助成金コロナ特例を利用した事業主です。
助成率については、2023年1月末までは特に業況が厳しい事業主を対象に、上乗せが継続されます。
特に業況が厳しい事業主とは、生産指標(売上げ等)が最近3ヶ月平均で前年、前々年又は3年前と比べて30%以上減少している場合です。
つまり、コロナ特例で「業況特例」を利用していた事業主となります。
※1 業況特例(2022年12月~2023年1月は「特に業況が厳しい事業主」として取り扱う)
※2 地域特例(2022年12月以降は廃止)
2023年1月末で現況が厳しい事業主に対する助成は廃止
2023年1月末で、特に現況が厳しい事業主を対象とした上乗せ助成は廃止されますが、下記の内容については、経過措置として3月31日まで適用されます。
・雇用保険被保険者でない労働者の休業も助成(緊急雇用安定助成金)
・計画届は不要
・クーリング期間を撤廃
※制度利用後、1年経過するまでの期間(クーリング期間)は制度を利用することができない。
・2022年12月1日から2023年3月31日の期間は、支給限度日数100日まで受給可
・短期間休業の要件を緩和
・残業相殺を停止
※残業相殺:「休業等延べ日数」から残業に該当する時間分を控除
・教育訓練の加算額引き上げ(中小2,400円 大企業1,800円)
・出向期間要件:1ヶ月以上1年以内
2023年4月からの雇用調整助成金について
2023年4月以降の雇調金についてはコロナ感染状況や雇用状況で決定するとされていますが、経過措置が終了すると以下のような内容となります。
コロナ特例・経過措置期間 (20年4月1日~23年3月31日) |
通常の雇用調整助成金 |
|
対象となる労働者 |
雇用保険被保険者でない労働者の休業も助成(緊急雇用安定助成金) |
雇用保険被保険者 |
計画届の提出 |
不要 |
事前提出 |
クーリング期間 |
撤廃 |
1年のクーリング期間が必要 |
対象労働者の雇用保険被保険期間の要件 |
なし |
6ヶ月以上 |
支給限度日数 |
通常の限度日数とは別枠で利用可能 |
1年100日、3年150日 |
短時間休業要件 |
要件緩和 |
短時間一斉休業のみ |
残業相殺 |
停止 |
相殺あり |
教育訓練加算額 |
中小:2,400円 大企業:1,800円 |
1,200円 |
出向要件 |
1ヶ月以上1年以内 |
3ヶ月以上1年以内 |
雇用調整助成金不正受給の厳格化
不正受給への対応も厳格化されます。
コロナ特例では、申請書類等が大幅に簡素化されました。
事業主の負担軽減と支給事務の迅速化が図られた一方で、審査書類においては不正が見つけにくくなるいという問題があります。
実際に2020年9月から2021年3月までの間で、既に261件の不正受給が発生しました。
ニュース報道等の影響もあり、従業員等からの不正受給の情報提供が増加し、事業主からの自主返納の動きも出てきています。
雇用調整助成金の不正受給の具体例
これまでに報告されている不正受給例は、以下のとおりです。
・雇用関係のない者を雇用関係があるとして受給
・休業の実態がないのに休業を行ったとして受給
・休業手当を支払った事実がないのに支払ったとして受給
・雇用調整助成金と休業支援金を重複して受給
調査は不正受給が疑われる場合にだけに行われるわけでなく、雇用調整助成金の申請または受給した事業所に対して広範囲に、事業所訪問や立入検査が実施されます。
事前予告なしで行われる場合や、助成金受給後1~2年後に実施されることもあります。
調査は、雇用保険法に基づき実施されるものであり、事業所訪問や立入検査を拒んだり妨げたりした場合は、罰則が科せられることがあります(事業所調査について)。
雇用調整助成金の不正受給が判明した場合
不正受給が判明した場合は、以下のような対応となります。
・不正発生日以降に受けた助成金は全額に加え、ペナルティとして不正受給額の2割相当額+延滞金の返還
・雇用調整助成金のみならず、他の雇用関係助成金も5年間の不支給措置
・事業主、事業所名の公表
・特に悪質な場合は刑事告発
不正に受けた助成金を返還したとしても、不正受給事業主として公表され、銀行からの融資が受けられなくなり、倒産に至ったという会社も実際にあります。
申請代行業者に任せっきりで、申請書類の確認を行っていなかった場合でも、事業主は責任を問われることになるのです。
今一度、申請書類を確認し内容に誤りが発覚した場合は、自主的に報告することをお勧めします。
雇用調整助成金コロナ特例廃止でも負けない体制づくりを
今後は雇用を単に維持するだけでなく、コロナで落ち込んだ業績を回復し、さらなる成長のための新たな人材戦略が必要となります。
リスキリング(学び直し)と成長分野への労働移動
政府は「人」への投資を強化するため、リスキリングに5年間で1兆円を投じ、成長分野への労働移動を促すとしています。
※リスキリング:新しい職業に就くために、あるいは、今の職業で必要とされるスキルの大幅な変化に適用するために、必要なスキル(近年はデジタルスキルを指すことが多い)を獲得すること。
コロナ禍での在宅勤務やオンライン手続き等の増加により、日本においてもデジタル化が急速に進みました。
今後は定型労働が消失する一方で、ITなどの成長分野においては新たな仕事が生まれ、企業内でのITスキルの必要性はますます高まっていくこととなるでしょう。
ここで鍵となるのが、企業におけるリスキリングへの取組みです。
リスキリングを進めていく際には研修内容が重要視されがちですが、一番大切なことは、身につけたスキルを仕事につなげ新たな価値を創出することです。
働き方の多様化が進み、雇用を取り巻く環境が過渡期を迎えているなかで、スキルの高い人材を育て、いかに労働生産性を高めていけるかが、これからの人材戦略のポイントとなります。
まとめ
雇用調整助成金コロナ特例は、経過措置はとられるものの助成率は2023年1月末以降、通常の制度となります。
これまで雇用調整助成金頼みで雇用の維持を図ってきた企業にとっては、今後は苦戦を強いられることになるかもしれません。
経費がない、時間がない、せっかく育てても転職されるかもしれない等と理由をつけ、「人」への投資を後回しにすれば、今後は人材の確保すら厳しくなるでしょう。
時代の変化に負けない企業の体制づくりには、人材の育成に力を入れていくことが求められています。
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この記事の監修
社会保険労務士・
中小企業診断士
アクセル経営社会保険労務士法人代表 今井一貴
これまで、メーカーや人材サービス企業の人事として、採用、研修、給与計算、社会保険などの様々な業務に従事してきました。採用活動ではダイレクトリクルーティングを導入するなどして、ターゲットの採用に成功したり、労務業務でデジタルツールを活用して業務の効率化を図るなどの経験があります。また、制度を設計する際には、会社と従業員の双方の立場に立って仕事をしていました。これらの経験を活かして、従業員が幸せに感じるような職場の構築を支援したいと考えています。