【2022年】キャリアアップ助成金の変更点を解説
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本記事では、令和4年4月1日に改正されたキャリアアップ助成金の変更点を解説しています。
5つのコースにおいて、要件や定義などが変更されています。
「申請しようと思っていたのに、申請対象外だった」ということがないように、変更点をしっかりおさえておくことをおすすめします。
キャリアアップ助成金を簡単におさらい
キャリアアップ助成金の概要を再確認しましょう。
キャリアアップ助成金とは、有期雇用労働者や短時間労働者といった非正規雇用労働者のキャリアップを促進するために、定められた取組を行った事業主に対して助成をする制度です。
「非正規雇用労働者を正社員化する」「賃金の改定など処遇改善を行う」といった内容の7つのコースが用意されています。
1.正社員化コース
2.障害者正社員化コース
3.賃金規定等改定コース
4.賃金規定等共通化コース
5.賞与・退職金制度導入コース
6.短時間労働者労働時間延長コース
7.選択的適用拡大導入時処遇改善コース(令和4年9月30日廃止)
【2022年】キャリアアップ助成金の変更点
令和4年4月1日より、要件や定義などの変更が行われました。
変更が行われたコースは、以下の5つのコースです。
1.正社員化コース
2.障害者正社員化コース
3.賃金規定等共通化コース
4.賞与・退職金制度導入コース
5.短時間労働者労働時間延長コース
本章では、各コースにおける変更点を詳しく解説します。
正社員化コース・障害者正社員化コースの変更点
正社員化コースは、「自社で雇用しているパートやアルバイトを正社員に転換するもしくは派遣社員を直接雇用することで、助成金を受け取ることができる」コースです。
障害者正社員化コースは、「自社で雇用している障がいのあるパートやアルバイトを正社員に転換することで助成金が支給される」コースです。
とても重要な変更なので、ポイントをおさえておくことをおすすめします。
正社員化コースにおいて、従前は3つのパターンが容認されていました。
このたびの変更により「有期雇用」→「無期雇用」の転換が廃止されました。
【変更前】
転換パターン |
助成額 |
有期雇用→正規雇用 |
570,000円 |
有期雇用→無期雇用(廃止) |
285,000円 |
無期雇用→正規雇用 |
285,000円 |
【変更後】
転換パターン |
助成額 |
有期雇用→正規雇用 |
570,000円 |
無期雇用→正規雇用 |
285,000円 |
したがって、アルバイトやパートの雇用期間を「有期」から「無期」に転換するだけでは助成金が支給されず、必ず正社員へ転換する必要があります。
正社員の定義の変更
正社員化コース、障害者正社員化コースの両コースにおいて、「正社員」の定義が変更されました。
令和4年10月1日以降の転換に適用されます。
【変更前】
同一の事業所内の正社員に適用される就業規則が適用されている労働者
【変更後】
同一の事業所内の正社員に適用される就業規則が適用されている労働者
ただし、「賞与または退職金の制度」かつ「昇給」が適用されている者に限る
つまり、「賞与または退職金が支給される」かつ「昇給がある」正社員へ転換する必要があります。
就業規則に「賞与または退職金の制度」と「昇給」の制度について明記しておきましょう。
非正規雇用労働者の定義の変更
正社員化コース、障害者正社員化コースの両コースにおいて、「非正規雇用労働者」の定義が変更されました。
令和4年10月1日以降の転換に適用されます。
【変更前】
6か月以上雇用している有期または無期雇用労働者
【変更後】
賃金の額または計算方法が「正社員と異なる雇用区分の就業規則等」の適用を6か月以上受けて雇用している有期または無期雇用労働者
つまり、契約社員と正社員間において、基本給の額や昇給幅などに差別化を図り、就業規則や賃金規定などに明記しておく必要があります。
賃金規定等共通化コースの変更点
賃金規定等共通化コースは、「正規雇用労働者との共通の職務等に応じた賃金規定等を新たに作成して適用した場合に、助成金が支給される」コースです。
このたびの改正により、助成額の加算が廃止されました。
【変更前】
共通化した対象労働者(2人目以降)について、助成額が対象労働者1人当たり20,000円加算
【変更後】
対象労働者(2人目以降)へ係る加算を廃止
したがって、共通化した対象労働者が何人であろうと、中小企業であれば助成額は1事業所あたり最大720,000円です。
賞与・退職金制度導入コース(諸手当制度等共通化コース)の変更点
賞与・退職金制度導入コースは、「有期雇用労働者等を対象に賞与・退職金制度を導入し、支給または積立てを実施した場合に助成金が支給される」コースです。
従前は、「諸手当制度等共通化コース」と呼ばれ、正社員と非正規雇用労働者間において諸手当等を共通化した場合に助成金が支給されていました。
このたびの改正により、名称の変更および以下の内容が変更されています。
【変更前】
■以下の5つの手当等を共通化
1.賞与
2.家族手当(廃止)
3.住宅手当(廃止)
4.退職金
5.健康診断制度(廃止)
■共通化した対象労働者(2人目以降)について、1人当たり15,000円加算
【変更後】
■以下の2つの制度を新設
1.賞与
2.退職金
■対象労働者(2人目以降)へ係る加算を廃止
したがって、正社員と非正規雇用労働者間において諸手当等を共通化する必要はなくなり、非正規雇用労働者に対する賞与と退職金制度を新設すれば良いこととなりました。
また、加算が廃止されたことにより、新設した制度が適用される対象労働者が何人であろうと、中小企業であれば助成額は最大480,000円です。
ただし、賞与と退職金制度を同時に導入した場合は、最大192,000円加算されます。
短時間労働者労働時間延長コースの変更点
短時間労働者労働時間延長コースは、非正規雇用労働者の週所定労働時間を延長し、社会保険を適用した場合に助成金が支給されるコースです。
以下のように、支給要件の緩和および支給額の延長がされました。
【変更前】
週所定労働時間を5時間以上延長
支給額の増額措置は令和4年9月30日まで
【変更後】
週所定労働時間を3時間以上延長
支給額の増額措置は令和6年9月30日まで
ただし、非正規雇用労働者が社会保険に加入するためには、週所定労働時間が20時間以上でないといけません。
助成金の支給要件は緩和されていますが、週所定労働時間が20時間以上になるように調整してください。
まとめ
令和4年4月1日に改正されたキャリアアップ助成金の変更点を解説しました。
変更点の中で特におさえるべき重要ポイントは、「正社員コースの有期→無期が廃止されたこと」および「令和4年10月1日以降は『賞与または退職金の制度』かつ『昇給』がある正社員に転換すること」です。
キャリアアップ助成金の申請を検討している方は、ぜひ参考にしていただけると幸いです。
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この記事の監修
社会保険労務士・
中小企業診断士
アクセル経営社会保険労務士法人代表 今井一貴
これまで、メーカーや人材サービス企業の人事として、採用、研修、給与計算、社会保険などの様々な業務に従事してきました。採用活動ではダイレクトリクルーティングを導入するなどして、ターゲットの採用に成功したり、労務業務でデジタルツールを活用して業務の効率化を図るなどの経験があります。また、制度を設計する際には、会社と従業員の双方の立場に立って仕事をしていました。これらの経験を活かして、従業員が幸せに感じるような職場の構築を支援したいと考えています。