診断士試験合格後は実務補習と実務従事のどちらを受けるべき? ~受験生支援団体メンバーによる考察~

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村上 雅一
 この記事の編集:村上 雅一
 中小企業診断士

 

令和6年度中小企業診断士2次試験に合格された皆さま、本当におめでとうございます!

この記事では、令和5年度診断士試験合格後の1年間、診断士試験受験生向けの支援活動を行ってきた筆者より、中小企業診断士資格登録に必要な実務補習と実務従事の違い及び、選び方について解説していきます。

 

1.2次口述試験セミナー参加者からのご質問

受験生支援活動の締めくくりとして、令和7年1月に口述試験対策セミナーを開催し、約200名の受験生に参加頂きました。セミナー後の質問タイムでは、参加者から口述試験対策以外にも様々なご質問を頂きました。主なご質問を紹介いたします。

 

  • 実務補習と実務従事の違いは?どちらを選べば良いのか?
  • 登録に必要な15ポイントはどのように獲得すれば良いのか?
  • 診断士協会には加入した方が良いのか?
  • 中小企業診断士1年目の収入は?

 

筆者も1年前に悩んでいた質問ばかりですが、その中でも実務補習と実務従事のどちらを受けるべきか?については発信されている情報が少ないため、合格者の皆さまにとっては切実な悩みのようです。

 

2.令和6年診断士試験合格者の実務補習・実務従事申し込み状況

今回のセミナー参加者約200名に実務補習及び実務従事への参加予定について質問したところ、以下のような結果となりました。

出所:口述試験対策セミナー参加者の方からのヒアリング結果を基に筆者作成

このように、約22%の方が実務補習、約6%の方が実務従事の申し込みを済ませているという結果でしたが、実に70%以上の方がまだ何も決めていないというのが実態のようです。

3.実務補習と実務従事の違い

中小企業診断士登録として登録するには、1次試験、2次試験に合格した後、15日間の実務補習を修了するか、診断実務に従事(実務従事)することが必要です。※養成課程を除く。

ここからは、診断士協会主催の「実務補習」と、民間企業主催の「実務従事」について、それぞれの特徴を解説していきます。

4.実務補習の概要

主催者:一般社団法人 日本中小企業診断士協会連合会

日 数:8日間コースか15日コースのいずれか※一部地域では5日間コースあり

費 用:105,000円(8日間)、209,300円(15日間)

会 場:札幌、仙台、東京、名古屋、大阪、広島、福岡※どの地域も現地参加必須

日 程:令和7年2月・3月※この後の日程は後日発表(令和6年は7月・8月・9月実施)

定 員:15日コース 260名・8日コース 625名(全国合計885名)

カリキュラム:

出所:一般社団法人 日本中小企業診断士協会連合会HPより筆者抜粋

5.実務補習のメリット

(1)診断士としての実務能力を修得しやすい

実務補習では、中小企業に対し実際に診断実務を行う場合の一連の流れを、中小企業診断士である指導員より指導を受けながら体験することが出来ます。

指導員により差はありますが、クライアント向け報告書の内容に関して細かく指導を受けることが出来るため、未経験者の方でも安心して学ぶことができます。

(2)人脈形成

同じグループとなったメンバーとは、実務補習期間中の実施日はもちろん、実施日以外のミーティングや資料作成を通じて、コミュニケーションを深めることが出来、人脈を形成することが可能です。

また、指導員である先輩診断士との人脈形成も可能なため、指導員主催の研究会への参加など協会入会後の活動に活かせる場合もあります。

6.実務補習のデメリット

(1)費用が高いこと

上述のとおり、実務補習のみで15日間の診断実務に取組む場合、20万円以上の費用が必要となります。また、会場への交通費や診断先企業への交通費も別途必要となるため、特に実務補習開催地以外にお住まいの方には大きな負担となります。

(2)日程に融通が利かないこと

8日間・15日間いずれも、土日を中心に金曜日・月曜日が実施日となっているため、企業にお勤めの方は有給休暇を取得する必要があり、本業との両立が難しい場合があります。

また、2月・3月開催コースに申し込めなかった方は、次回開催日(令和6年は7月~9月)まで待つ必要があり、それだけ中小企業診断士としての登録が遅れることになります。

7.実務従事の概要

主催者:民間のコンサルティング企業など

日 数:主催企業による。5日間から15日まで様々なパターンがある

費 用:主催企業によるが、15日コースで8万円台からの実務従事もあり、実務補習より安価な場合が多い

会 場:主催企業所在地を中心に全国で開催されている。中にはWebで受講可能なケースもある

日 程:通年で開催している企業もある

定 員:主催企業による

カリキュラム:主催企業によって異なりますが、筆者が昨年受講した実務従事は以下のようなカリキュラムでした。

8.実務従事のメリット

(1)実際の診断士としての実践力が身に付く

実務従事では、実在の企業を対象に診断実務を行うため、中小企業診断士としての実践能力が身に付きやすく、グループ発表を通じてプレゼン能力を身に付けることも出来ます。

(2)人脈形成

同じグループとなったメンバーとは、実務従事の実施日に加えて、実施日以外のミーティングや資料作成を通じて、コミュニケーションを深めることが出来、人脈を形成することが可能です。

また、主催企業によっては実務従事後もコミュニティを通じて、主催企業や診断士仲間との人脈形成を支援している場合もあり、中小企業診断士としての活動や情報収集、仲間づくり、自己研鑽をサポートしてくれます。

(3)日程に融通が利くこと

主催企業によりますが、通年で実務従事を実施している企業や、オンラインでの参加を可能としている企業もあり、企業に勤務している方でも本業との両立が可能なケースもあります。

(4)費用が安いこと

主催企業によりますが、実務補習より安い価格設定となっていることが多いようです。

9.実務従事のデメリット

(1)主催企業、実務従事内容をよく見極める必要がある

民間企業主催の実務従事は、主催企業によって講義内容やサポート体制に違いがあるため、診断士としての実践能力修得に大きく差が出てしまうことが考えられます。

主催企業が、実際に中小企業の支援を実施しているのか?マーケティングに強いのか?補助金支援の実績はあるのか?など多面的に判断する必要があります。

10.まとめ

実務補習と実務従事は、どちらも中小企業診断士としての第一歩として重要なステップです。それぞれの特徴を理解し、自分の目的や状況に合った方法を選びましょう。迷った場合は両方を組み合わせて取り組むのも一つの手です。

筆者は、民間の実務従事を利用して診断士登録要件を満たしましたが、中小企業診断士登録後も同企業主催のコミュニティに所属し、診断士として必要な情報収集や仲間づくりに活かしています。

皆さまの中小企業診断士としての第一歩が素晴らしいものであるよう、心から応援しています。


村上 雅一
 この記事の編集:村上 雅一
 中小企業診断士