中小企業診断士試験を勉強して良かったこと、身についたこと3選を解説
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中小企業診断士の学習を通じて得られる価値には、大きく分けて「トレーニング価値」「コンテンツ価値」「つながりの価値」の3つがあります。

「独占業務がないのに意味があるのか」という議論は、受験生だけでなく有資格者の間でもたびたび繰り返されてきました。
しかし、結論から申し上げますと、診断士資格の価値は決して一つではありません。実務に直結する知識だけで測ると見えにくいものですが、視点を変えると、診断士の学習は次の3つの価値を同時に提供してくれます。
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トレーニング的価値(基礎体力の獲得)
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コンテンツ的価値(仕事に転用できる要素)
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人のつながりの価値(ネットワーク形成)
以下、それぞれの内容について詳しく解説いたします。
1. トレーニング的価値:診断士学習は「脳の筋トレ」
診断士学習の最大の価値は、学習内容そのものよりも、学習プロセスを通じて得られる「基礎体力」にあります。
これは運動に例えるなら、スクワットや腹筋のようなものです。
日常生活でスクワットの動作を頻繁に行うわけではありませんが、足腰が鍛えられることで姿勢が整い、全体のパフォーマンスが向上します。
診断士学習も同様で、実務でそのまま使う知識以上に、土台となる「思考体力」が徹底的に鍛えられます。
一次試験の7科目は、経済学から財務・会計、情報システムまで非常に幅広いです。
これらを横断的に学ぶことで、経営を多面的に捉えるための「標準装備」が整います。例えば、経営法務を苦痛に感じる方も多いですが、それはこれまで法律に触れてこなかった証拠でもあります。
経営の現場では契約やガバナンスは避けて通れません。
苦手な領域をあえて学ぶこと自体が、コンサルタントとしての体力づくりになるのです。
また、「中小企業経営・政策」という科目は、国の意図や制度の使いどころを民間企業へ翻訳して届ける「行政施策のスポークスマン」としての素養を身につける場であると整理できます。
1ー2. 二次試験で鍛えられる「要約力」は、実務で最も再現性が高い
トレーニング価値の中でも、二次試験の学習による実務への転用効果は特に大きいです。二次試験の本質は、突き詰めれば「要約」にあります。
要約とは、重要なポイントを抽出し、余計な私見を挟まずに短く整理して伝えることです。
ここで求められるのは「自分の意見を混ぜない」訓練でもあります。与件文に書かれている事実を根拠に、問われた枠組みで整理する。この訓練は、そのまま実務の基礎動作に直結します。
実際の仕事現場では、上司や経営者の話を聞き、要点をまとめて資料化し、意思決定を促す場面が多くあります。
メールや議事録、提案書など、媒体は違っても求められるのは「要点の抽出」と「構造化」です。診断士学習の中で、最も再現性高く実務に効いてくる能力は、この「要約力」であると言っても過言ではありません。
2. コンテンツ的価値:自分なりの「商品」を設計する
診断士には独占業務がほぼありません。そのため、「資格そのものが即、商品になる」わけではないという弱点があります。しかし見方を変えれば、これは「設計の自由度が高い」ということでもあります。
補助金支援や計画書作成、財務の見立てなど、学習内容から直接つながる領域は確かに存在します。しかし、重要なのは、学習で得た素養に「自分の経験」や「専門性」を掛け合わせて、独自の「商品(コンテンツ)」へと変換することです。
これは独占業務がある他の士業でも同じです。例えば社労士の方も、実務で価値を生んでいるのは、給与計算や人事制度をパッケージとして提供する「コンテンツ化」の力に依るところが大きいです。診断士も同様に、資格で得た総合力を核にしながら、自分ならではの提供価値を設計して初めて、仕事として成立しやすくなります。
3. 人のつながりの価値:ネットワークによるレバレッジ
三つ目は、ネットワーク形成の価値です。診断士という肩書きを持つことで、地域の支援機関や金融機関、他の士業、そして経営者の方々と接点を作りやすくなります。
「経営の会話ができる人」と認識されるため、決算書を見せてもらえる機会が増え、対話の入り口がスムーズに開きます。
また、独立診断士だけでなく、企業内診断士のネットワークも非常に貴重です。大企業で培った知見を持つ多様な人材と相互に学び合える環境は、自らの学びを加速させ、新たな仕事の機会を広げるきっかけとなります。
まとめ:診断士の価値は「土台 × 設計 × つながり」で最大化する
中小企業診断士の価値は、独占業務の有無だけでは測れません。学習を通じて得られる価値は、以下の3点に集約されます。
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トレーニング的価値:経営を多面的に捉える基礎体力が身につく
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コンテンツ的価値:専門性と掛け合わせることで、独自のサービスを構築できる
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人のつながりの価値:支援機関や経営者との強固なネットワークが生まれる
診断士試験は長期戦であり、一次試験の先には「正解のない二次試験」も待っています。非常に負荷の高い試験ではありますが、合格後に得られるものは、単なる知識の引き出しではありません。
長期的にビジネスの武器となる「思考体力」「整理力」「ネットワーク」という、かけがえのない資産を手にすることができるのです。

