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【徹底解説】重要物資サプライチェーン強靱化支援事業のポイント(工作機械・産業用ロボット編)

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経済産業省より令和5年度補正予算事業概況が発表されています。今後政府が力を入れて対応する事業動向を確認する中では要チェックの内容になります。今回のコラムのテーマとしている領域である「成長力の強化・高度化に資する国内投資を促進する」項に関しては、経済環境変化に応じた重要物資サプライチェーン強靭化支援が挙げられており、総額9.147億円の予算が設定されております。 

そういった状況の中で、今回のコラムでは「工作機械・産業用ロボット支援」の分野について概要とポイントを確認していきたいと考えています。政府資料の概況から確認を進めていきますが、一部聞きなれない法律や言葉も多数現れてくるので、一つずつ意図や言葉の意味を確認しながら事業のポイントを整理していきたいと思います。 

産業機械を提供されている事業者様で、本支援事業活用を検討予定の方は制度の理解に向けて、是非本記事をご参考いただけますと幸いです。 

 

経済環境変化に応じた重要物資サプライチェーン強靭化支援事業の概要 

最初に、本事業の目的と事業概要、成果目標についてポイントを確認していきたいと思います。製造産業局 産業機械化、ロボット政策室によるとそれぞれ下記で定義されています。

 

事業目的経済施策を一体的に講ずることによる安全保障の確保の推進に関する法律に基づく特定重要物資として政令で指定された工作機械及び産業用ロボットについて、民間事業者等に対する支援を通じて安定供給確保を図る。 

 

事業概要:経済施策を一体的に講ずることによる安全保障の確保の推進に関する法律に基づき認定された民間事業者等の計画(以下、「認定供給確保計画」という。)について認定供給確保計画に基づいて民間事業者等が行う工作機器および産業用ロボットに係る国内生産力強化や研究開発に対して助成金を交付する。 

 

成果目標厳しさを増す地政学的環境変化及び破壊的な技術革新に対応するため、工作機械及び産業用ロボットのサプライチェーンの強靭化を図る。 

 

  1. 工作機械の国内生産能力を2025年時点で約8万台 

2030年時点で約35万台に強化 

  1. 産業用ロボットの国内生産能力を2025年時点で約26万台 

2030年時点で約35万台に強化 

 

上記を読んだだけでは、なかなか背景の意図や用語の意味合いを理解するのが難しいかと思います。特にわかりにくいと思われる赤字太線&下線で示した重要ポイントについて少し内容を捕捉したいと思います。 

 

重要ポイントの内容確認 

 

背景の法律:経済安全保障推進法について 

まず、最初の事業目的内に示されている「経済施策を一体的に講ずることによる安全保障の確保の推進に関する法律」とは何か?という点です。経済政策を一体的に講ずることによる安全保障の確保の推進にかかわる法律、と記載がありますがこちらは経済安全保障推進法(令和4年法律第43号)が該当する法律になります。内閣府のホームページで説明されている本法律の背景および経緯は以下になります。

 

出典:内閣府ホームページ:経済施策を一体的に講ずることによる安全保障の確保の推進に関する法律(経済安全保障推進法)(令和4年法律第43号) 

 

発端として、国際情勢の複雑化、社会経済構造の変化による安全保障の観点が経済分野にも拡大していっている昨今の状況では、サプライチェーン上で安全保障にかかわる事態が発生しかねない。従って政府指定の特定物資については支援を実施するという意図が見て取れますね。今回コラムのテーマである工作機械、産業用ロボットについても重要な物資として指定されているという状況になります。 

 

認定供給確保計画とは? 

2つ目は認定供給確保計画って何なのか?という点です。こちらは「工作機械及び産業用ロボットに係る安定供給確保を図るための取組方針」に記載があります。本補助事業を進める上で物資の安定供給を実施する体制、計画が必要であること、その為の所定の項目を記載して提出する計画書、という事になります。下記リンクの指針には認定供給確保計画作成に必要な項目、支援の体制等が規定されています。 

参考:工作機械および産業用ロボットに係る安定供給確保を図るための取組指針 
工作機械及び産業用ロボット (METI/経済産業省) 
出典:内閣府ホームページ:工作機械及び産業用ロボットの安定供給の確保

 

 

この取組指針に沿って申請、認定を受けた上で補助事業を実施していくという流れです。また、運用事業スキームとしては下記の様にNEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)が民間企業との対応窓口を行っていく体制になります。 

出典:令和5年度補正予算案の事業概要(PR資料) 

 

「厳しさを増す地政学的環境変化及び破壊的な技術革新」の実際の状況とは? 

3つ目です。こちらは文脈で環境変化と技術革新が起こっており、厳しい環境になってきているということは何となく読み取れると思いますが、実際、重要物資に指定されている工作機械や産業ロボットに関しどういう懸念があるのか、状況はどうなのか?という背景について理解を深めたほうが良いと思いますので少し捕捉させていただきます。 

 

こちらは、先ほどご紹介した「工作機械及び産業用ロボットに係る安定供給確保を図るための取組方針」の第1章で詳しく状況の説明がされております。 

 

出典:内閣府ホームページ:工作機械及び産業用ロボットの安定供給の確保 

 

詳細内容は認定供給確保計画の項で示したリンクの「工作機械および産業用ロボットに係る安定供給確保を図るための取組指針」をご確認いただければと思いますが、それぞれ(1)~(6)の観点で意識しておくべきポイントとなりそうな箇所を抜粋記載させていただきます。 

 

(1)重要性の観点 

まず重要性の観点です。工作機械・産業用ロボットは、工業製品の製造プロセスにおいて不可欠であり、多様な機能を有するため、工業製品の生産に重要な役割を果たしていること、また、必要不可欠な工業製品・業種の割合は、2020 年の製造業の名目GDPのうち約5割を占めるという根幹の製造設備となるという点があります。 

 

(2)外部依存性の観点 

2点目は外部依存性の観点です。工作機械の国内調達率は、2021 年時点で 75%、産業用ロボットの国内調達率は、2021 年時点で 98%と推計されており、国内依存度が高い製品である特長があります。また今後人口減少社会を迎え製造現場においても熟練労働者の高齢化や人手不足が想定される中、製造プロセスの高精度化・自動化需要が増加するという観点で戦略的にも意義がある物資であるという点です。しかし、直近は海外企業の台頭が目立ってきており、将来的には供給不安定化、日本の製造業の事業基盤の過度な外部依存が生ずるおそれがあると推定されています。 

 

(3)外部から行われる行為による供給途絶等の蓋然性 

工作機械・産業用ロボットはその性能に応じて軍事用途にも用いられることから、 

各国の安全保障貿易管理の対象とされており、日本においても、輸出規制・役務取引規制及び対内直接投資規制の対象です。こうした点から、工作機械・産業用ロボットは戦略的物資としての性質が色濃く、実際に直近では、ロシアのウクライナ侵略に対する制裁として各国の輸出規制対象に指定されるなど、外部から行われる行為による供給途絶等の蓋然性があり得る物資になります。 

 

(4)法による施策の必要性 

日本が高い国際競争力を有している現段階で、早急に、将来にわたる安定供給確保のための措置を講ずる必要があるという観点です。各種の研究開発支援、外為法の規定に基づく輸出規制・役務取引規制及び対内直接投資規制の厳格な運用といった施策も引き続き実施、効果を高める必要性について述べています。 

 

(5)サプライチェーンの構造 

工作機械・産業用ロボットのサプライチェーンは上流・部素材(半導体や永久磁石といった汎用的な部素材)、中流・部素材(CNCやサーボ機構、減速機、PLCProgrammable Logic Controller)といった制御関連機器、および下流・最終製品(工作機械・産業用ロボット)に大別されます。このうちの、中流に位置づけられる部素材のうち、制御関連機器は、工作機械・産業用ロボットの精密な動作の実現に不可欠となる部材であり、性能を大きく左右する競争力の源泉になる点が示されています。 

 

(6)工作機械・産業用ロボットのサプライチェーンが抱える課題及び動向 

工作機械・産業用ロボット又はその生産に必要な原材料等の安定供給の確保を図るに当たって、各種課題対応を着実に講じていくことが必要である点が示されています。具体的には下記5項目が示されています。 

 

DXCN等のメガトレンドを受けて拡大するニーズに即した工作機械・産業用 

ロボット等の安定供給の確保  

・人材育成  

・工作機械・産業用ロボットをより効果的に活用するための各種の研究開発  

・外為法の規定に基づく輸出規制・役務取引規制及び対内直接投資規制への対応  

・半導体等、他の特定重要物資等の安定供給の確保 

 

まとめ 

いかがでしたでしょうか。 

今回は、経済環境変化に応じた重要物資サプライチェーン強靭化支援事業(工作機械・産業用ロボット)についての規定、および重要と思われる背景や用語について解説しました。支援事業の申請をする場合、政府が定めている実施事業の背景や目的を明確におさえて理解しておくことが非常に重要となります。 
背景を押さえた上で、政府から発行される公募要領や事業概要をご確認頂けると実際に申請される際の理解が深まると思います。こういった点を念頭において, 

必要に応じて専門家の支援を受けることも選択肢としてご検討ください。 

最後までお読みいただき、ありがとうございました。 

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この記事の監修

アクセルパートナーズ 代表取締役二宮圭吾

中小企業診断士
株式会社アクセルパートナーズ代表取締役 二宮圭吾

WEBマーケティング歴15年、リスティング・SEO・indeed等のWEBコンサルティング300社以上支援。
事業再構築補助金、ものづくり補助金、IT導入補助金等、補助金採択実績300件超。
中小企業診断士向けの120名以上が参加する有料勉強会主催。

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