新事業進出補助金は2026年も続く?事業再構築補助金との違いと採択傾向を解説


根元 皓平
 編集:根元 皓平
 中小企業診断士

コロナ渦において経営不振に苦しむ中小企業を救済するために、新事業進出を後押しする事業再構築補助金が大規模に展開されました。

その後継として2025年度から始まった新事業進出補助金は果たして2026年度も継続されるのか、また事業再構築補助金との違いと採択傾向について考察をまとめました。

なお令和7年度補正予算の中小企業向け支援の全体像については以下の記事で解説しています。

【令和7年度補正予算成立】 補助金はどう変わる? 中小企業向け施策の全体像まとめ

 

新事業進出補助金とは

まずは新事業進出補助金の概要について説明します。なお2026年実施分についてはまだ分かりませんので、既に公開されている、2025年度の第1回・第2回の要領を参照しています。

 

補助事業の目的

新事業進出補助金の目的について、基金設置主体である独立行政法人 中小企業基盤整備機構(中小機構)のサイトに以下のように説明されています。

企業の成長・拡大に向けた新規事業への挑戦を行う中小企業等を対象に、既存の事業とは異なる、新市場・高付加価値事業への進出にかかる設備投資等を支援する補助金です。

中小企業等が行う、既存事業と異なる事業への前向きな挑戦であって、新市場・高付加価値事業への進出を後押しすることで、中小企業等が企業規模の拡大・付加価値向上を通じた生産性向上を図り、賃上げにつなげていくことを目的とします。

 

基本要件

本補助金を受給するために必ず満たす必要がある基本要件は以下となります。

  1. 新事業進出要件
  2. 付加価値額要件
  3. 賃上げ要件(目標値未達の場合、補助金返還義務あり)
  4. 事業省内最低賃金水準要件(目標値未達の場合、補助金返還義務あり)
  5. ワークライフバランス要件
  6. 金融機関要件 ※該当する場合
  7. 賃上げ特例要件 ※特例の適用を受ける場合(目標値未達の場合、補助金返還義務あり)

 

それぞれの詳細については中小機構のサイトをご参照ください

参考サイト:はじめての方|中小企業新事業進出補助金|中小企業基盤整備機構

 

 

審査概要

本補助金を受給するためには、提出した事業計画書が以下の項目と総合的に照らして適格であると審査される必要があります。

  1. 補助対象事業としての適格性
  2. 新規事業の新市場性・高付加価値性
  3. 新規事業の有望度
  4. 事業の実現可能性
  5. 公的補助の必要性
  6. 政策面
  7. 大規模な賃上げ計画の妥当性

なお上記以外にも「加点項目」と「減点項目」があります。

 

それぞれの詳細については中小機構のサイトをご参照ください

参考サイト:審査概要|中小企業新事業進出補助金|中小企業基盤整備機構

 

新事業進出補助金は2026年度も継続されるのか

それでは本題である「新事業進出補助金は2026年度も継続されるのか」について考察します。

 

2025年度度補正予算の内容(中小企業庁)

以下は中小企業庁がまとめた令和7年度(2025年度)補正予算案です。

参考サイト:中小企業対策関連予算 | 中小企業庁

 

こちらの赤枠を付けた部分を見ていただくと、「革新的製品等開発や新事業進出支援【既存基金の活用(1,200億円規模)」と記載されていることが分かります。

このうち「革新的製品等開発」は従来のものづくり補助金を指していると思われます。

そして後半の「新事業進出支援」により新事業進出補助金が継続されると分かります。

 

 

基金とは何か

上記の【既存基金の活用】について補足します。

国家予算は単年分しか計上出来ないことが憲法で定められていますが、基金として一括で積立てることで同一目的の事業を複数年にわたって継続することが出来ます。

近年はこの基金を活用することが増えており、2025年度に始まった新事業進出補助金も事業再構築補助金で中小機構に基金化した分の残額を使って継続運営されています。

なお基金の是非については国会で問われることもありますが、本記事では特に触れません。

 

予算規模は増えるのか?減るのか?

2025年補正予算は上記の通り「ものづくり補助金」と「新事業進出補助金」で合わせて「1,200億円規模」という記載になっています。

一方、昨年(2024年)度の補正予算では新事業進出補助金だけで「1,500億円規模」と記載されていました。

一見減額されているように見えますが、解説したとおり新事業進出補助金は従来より基金型であり残額を使って継続運用しているため必ずしも減額とは言い切れません

つまり予算規模が増えるのか・減るのかについては、今時点で明確に判断出来る情報は出ていないことになります。

 

事業再構築補助金との違いから2026年度の要件を予測

既に公募要領が公開されている2025年度実施分の第1回・第2回新事業進出補助金と、前進である事業再構築補助金との違い(変化)を踏まえて、2026年度の要件を予測します。

 

目的は大きく変わっていない

新事業進出補助金の目的は本コラムでも既に解説したとおり、「中小企業等が企業規模の拡大・付加価値向上を通じた生産性向上を図り、賃上げ」をすることとなっています。

こちらについては事業再構築補助金の時から大きく変わっておりません。

なお事業再構築補助金では当時コロナ渦であったこともあり、企業の再生・回復という打ち出しも大きくありましたが、そのような要素は無くなり、あくまでも前向きな新事業進出に焦点を絞った目的設計となっています。

 

洗練された要件・審査基準

要件や審査基準についてはどうでしょうか。

事業再構築補助金は全13回にわたり実施されその中で変化も遂げてきましたが、特徴として「類型」という区分の考え方が継承されてきました。

類型とは第13回の公募要領では「(A)成長分野進出枠(通常類型)」「(B)成長分野進出枠(GX進出類型)」「(C)コロナ回復加速化枠(通常類型)」「(D)コロナ回復加速化枠(最低賃金類型)」「(E)サプライチェーン強靱化枠」の5つが記載されていました。

なおCとEに関しては第13回公募での公募はありませんでした。

これらの類型が後継の新事業進出補助金ではすっぽりと無くなっています。

新事業進出補助金では類型という考え方を無くして案件をすべて横並びとした上で、「新市場性」「高付加価値」「実現可能性」という評価基準に洗練・集約されてきています。

また第2回においては、第1回からその点に大きな変化は見られていませんので、2026年度も大きく要件は変わらないのでは無いかと想定されます。

 

第1回新事業進出補助金の採択結果を考察

結果が既に公表されている第1回の採択結果を考察します。

参考サイト:採択結果|中小企業新事業進出補助金|中小企業基盤整備機構

 

製造業の採択率が高い

上図を見ると、応募件数・採択数ともに製造業が最多であることが分かります。

日本の中小企業の企業数(令和3年度経済センサス調査結果)において、製造業は「卸売業、小売業」「建設業」「宿泊業、飲食サービス業」に次ぐ4位ですが、本補助金の活用は上位3業種をしのぐ結果となっています。

また採択率(採択数÷応募件数)を見ても、製造業だけが唯一50%を超過しており、全体の採択率が約37%ですので、製造業は採択率が特に高いと分かります。

 

新事業は全くの畑違いである必要は無い

基本要件のひとつである「新事業進出要件」は以下の3つをすべて満たす必要があります

  • 製品等の新規性
  • 市場の新規性
  • 新事業売上高(が一定以上あること)

この要件から既存事業とは異なる畑違いの分野に進出しなければいけないように見えますが、そうではありません

実際に採択案件一覧で「主たる業種」と「事業計画名」を見ても、必ずしも既存業種と異なる分野に進出している訳では無いことが分かります

例えば建設業であれば、「次世代解体推進計画」や「総合解体サービスの新基盤」など、建設に関わる中で高い付加価値を実現するための計画が多く見られます。

採択されなかった案件は公開されていないので、上記が「採択されやすい案件のみに該当する傾向である」とまではデータから断定できないことは事実です。

しかし経営の一般論として、既存事業と全く関係の無い「集成型多角化」よりも、既存事業の強みを活かす方が成功確率が高いとされており推奨されています

 

 

まとめ

新事業進出補助金は2026年度も継続されことがほぼ確実です。

要件や採択傾向については、2025年度実施分からある程度読み取ることが出来ますので、補助金活用を考えられている事業者様は、ぜひ早めのご準備に着手いただければと思います。

根元 皓平
 編集:根元 皓平
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