事業承継にまつわる税務コンサルティング

経営者にとって、事業承継は企業の存続と発展を左右する重要な節目です。特に税務面では、相続税や贈与税、自社株評価の見直しなど、多岐にわたる専門的な知識と的確な対策が求められます。当事務所では、豊富な経験と最新の税制知識を活かし、事業承継の計画立案から実行まで一貫してサポート。経営者の想いを次世代へ円滑に引き継ぐため、最適な税務戦略をご提案いたします。

日本企業が直面する事業承継の現実

近年、日本の中小企業の多くが後継者不足に直面しています。経営者の高齢化が進む中で、事業承継の準備が後手に回り、相続税や贈与税の負担が経営を圧迫するケースが後を絶ちません。税務の課題は承継計画全体を左右し、対応の遅れが企業存続のリスクにつながります。

事業承継で発生する主な税務課題

事業承継は、単に経営権や資産を引き継ぐだけではなく、相続税・贈与税・譲渡所得税などの税務リスクが伴います。これらの負担は、承継方法やタイミングによって大きく変わるため、事前の対策が不可欠です。ここでは、代表的な税務課題を整理します。

1. 相続税・贈与税の負担と納税資金の確保

後継者が株式や事業用資産を引き継ぐ際には、多額の相続税や贈与税が発生する可能性があります。特に、自社株式の評価額が高い企業では、現金で納税できず事業用資産を売却せざるを得ない事態にもなりかねません。承継前に納税資金の準備や株価対策を講じることが重要です。

2. 自社株式評価の適正化

非上場企業の場合、株価は市場価格ではなく税務上の評価額で算定されます。業績や資産規模が大きい企業ほど評価額は高くなり、税負担も増加します。決算内容や資産構成を見直し、株価を適正な水準にコントロールすることが承継成功の鍵となります。

3. 事業承継税制の適用条件

事業承継税制を活用すれば、一定条件を満たす場合に相続税や贈与税の納税が猶予または免除されます。しかし、特例承継計画の提出期限や雇用確保要件など、適用には細かな条件があり、計画的な準備が欠かせません。

4. 不動産・動産・知的財産の課税

事業用不動産や機械設備、商標権・特許権などの知的財産も承継対象です。これらは相続税評価額や譲渡益課税の対象となるため、資産ごとに評価方法を把握し、承継方法を選定する必要があります。

事業承継の失敗事例とその教訓

1. 株価対策を怠った結果、多額の贈与税が発生

ある製造業のオーナーは、後継者である長男へ株式を譲渡する計画を立てていました。 しかし、株価評価を事前に見直すことなく贈与を実行したため、思いのほか高額な評価額となり、多額の贈与税が課されました。 最終的に納税資金の確保のために不動産を売却せざるを得ず、事業資産の一部を手放す事態となりました。 【対策】 株価は業績や資産状況によって変動します。承継前には必ず企業価値の試算を行い、必要に応じて株価引き下げのための自社株対策(役員退職金支給、配当方針の見直しなど)を行うことが重要です。

2. 特例承継計画の提出期限を逃したケース

小売業を営む企業では、事業承継税制の「特例納税猶予」を活用する予定でした。 ところが、特例承継計画の提出期限(2019年3月末)を過ぎてしまい、制度を利用できず、多額の相続税が発生。後継者は納税資金を捻出するため、経営資源の一部を売却することになりました。 【対策】 制度の適用には期限や条件があり、1日でも遅れれば適用不可となることがあります。税制や制度改正の情報を常に確認し、計画的に専門家へ相談することが必要です。

3. 相続開始後に慌てて対策し、親族間で紛争発生

建設業を営むA社では、経営者が急逝し、遺言書も承継計画もない状態で相続が開始しました。 株式の分配をめぐり兄弟間で意見が対立し、経営の意思決定が滞った結果、主要取引先との契約が打ち切られ、売上が大幅に減少しました。 【対策】 承継計画の不在は、相続人間の争いと事業悪化を招きます。遺言書や株式の承継方法を事前に明確化し、後継者や関係者と合意形成を図ることが不可欠です。 事業承継の失敗は「税金の負担」「制度利用の遅れ」「相続トラブル」の3つに集約されます。 いずれも共通しているのは、「早期準備の欠如」と「専門家の関与不足」です。 承継は5年先でも早すぎることはありません。今のうちから計画を立て、税務・法務・経営の観点で総合的な対策を進めることが、円滑な承継の鍵となります。

事業承継の成功に導くための税務対策ポイント

事業承継は、単なる経営権の移転ではなく、会社の資産・株式・経営ノウハウを次世代に円滑に引き継ぐ重要なプロセスです。特に税務面での準備不足は、思わぬ税負担や資金繰りの悪化を招き、承継計画全体を揺るがす可能性があります。ここでは、事業承継を成功に導くために押さえておきたい税務対策のポイントをご紹介します。

1. 株価評価と株式移転計画の早期策定

自社株の評価額は、相続税や贈与税の計算に直結します。事前に株価を評価し、必要に応じて評価額を引き下げる対策(配当方針の見直し、資本構成の最適化など)を行うことで、税負担を軽減できます。また、後継者への株式移転は一度に行うのではなく、複数年に分けて贈与することで税率を抑えられる場合があります。

2. 事業承継税制の特例措置を活用

事業承継税制の特例措置を活用すれば、一定条件のもとで贈与税や相続税の納税猶予を受けられます。ただし、特例承継計画の提出期限や承継後の事業継続要件など、適用には厳密な条件があります。適用可否を早めに確認し、計画的に手続きを進めることが重要です。

3. 納税資金の確保と資産分割のシミュレーション

相続や贈与に伴い発生する税金は、現金一括納付が原則です。納税資金が不足すると、資産の売却や借入に迫られる可能性があります。あらかじめ資金計画を立て、必要に応じて生命保険や金融商品を活用することで、無理のない納税を実現できます。また、後継者以外の相続人との間でトラブルが起きないよう、資産分割のシミュレーションも行っておくべきです。

4. 専門家との連携による総合対策

事業承継の税務は、相続税・贈与税だけでなく、所得税、法人税、地方税など多岐にわたります。税理士、弁護士、金融機関など複数の専門家と連携し、税務・法務・資金の三位一体で対策を行うことが、承継の成功には欠かせません。 税務対策は「いつから始めるか」が成功の分かれ道です。株価評価や特例制度の活用、納税資金の確保などは、承継の数年前から準備を始めることで効果を最大化できます。計画的に進めることで、後継者へのスムーズなバトンタッチと企業の持続的な成長が可能になります。

サービス内容

事業承継は、経営権や資産を後継者に引き継ぐだけではなく、複雑な税務処理と長期的な計画が必要なプロセスです。特に自社株や不動産など高額資産を保有する企業では、相続税・贈与税の負担や株価評価の問題が大きな課題となります。

1. 現状分析と課題の可視化

事業承継の第一歩は、現状の資産・負債、株価、税負担の見通しを明確にすることです。 税務コンサルタントは、以下のような分析を行い、将来発生する可能性のある税負担やリスクを見える化します。 ・自社株の評価額算定 ・相続税・贈与税の試算 ・承継時の納税資金の不足リスク診断

2. 承継スキームの立案

事業承継には、親族内承継、役員・従業員承継、M&Aなど様々な方法があります。税務コンサルタントは、会社の財務状況や後継者候補の事情を踏まえ、最適な承継方法を提案します。 ・贈与や譲渡のタイミング調整による税負担軽減 ・自社株の分散防止策 ・事業承継税制や経営承継円滑化法の活用

3. 税制特例の適用サポート

事業承継税制の特例措置を活用すれば、贈与税や相続税の納税が猶予・免除される可能性があります。しかし、適用には「特例承継計画」の提出や5年間の事業継続要件など、厳しい条件があります。 これらの手続きや要件管理を行い、期限切れや条件不備による特例の失効を防ぎます。

4. 関係者との調整役

事業承継は税務だけでなく、法務・労務・金融など複数分野が絡みます。税務コンサルタントは、顧問税理士、弁護士、金融機関、後継者と連携し、全体計画を円滑に進めるための調整役も担います。 事業承継は「準備不足」が最大のリスクです。当事務所では、現状分析からスキーム設計、税制特例の適用、関係者との調整まで幅広くサポートできます。承継のタイミングが数年先でも、早期に相談を始めることで、税負担の軽減やトラブル回避が可能になります。 もし事業承継の不安や疑問があれば、まずは現状分析から始めてみてはいかがでしょうか。

担当コンサルタント

  • 下木原 誠
    アクセルM&A会計事務所代表 公認会計士・社会保険労務士・中小企業診断士 下木原 誠

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