【事業再構築補助金】ECサイト構築が対象に?徹底解説します!
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「事業再構築補助金」は、経済社会の変化に対応するために新市場進出(新分 野展開、業態転換)、事業・業種転換、事業再編、国内回帰又はこれらの取組を通じた規模の拡大等、思い切った事業再構築に意欲を有する中小企業等の挑戦を支援することで、日本経済の構造転換を促すことを目的としています。出典:事業再構築補助金 第11回公募要領
この事業再構築補助金を活用し、事業再構築を計画する場合、「新市場進出」が必要になるケースが多いかと思います。しかし、全く経験のない新たな市場での顧客の獲得は容易ではありません。中小企業の事業者の皆さまが所在地やリソースに関係なく、ニーズのある市場で広く顧客開拓をする場合、「EC(電子商取引)サイト」が有力な選択肢となります。自社EC用ウェブサイト(以下、ECサイト)の構築は、事業再構築補助金の補助対象経費となり得ますが、対象となるには一定の条件があるので注意が必要です。
本コラムでは、事業再構築補助金を活用した新事業を計画する場合、ECサイトが対象経費になる場合、ならない場合等についてご説明します。
目次
ECは成長を続ける有望市場
まず、EC市場の規模感や成長度合いを確認しておきましょう。経済産業省が実施した「令和4年度デジタル取引環境整備事業(電子商取引に関する市場調査)」(令和5年8月31日)によりますと、令和4年の日本国内のB to C- EC(消費者向け電子商取引)市場規模は、22.7兆円(前年20.7兆円、前々年19.3兆円、前年比9.9%増)に拡大しています。また、令和4年の日本国内のB to C- EC(企業間電子商取引)市場規模は420.2兆円(前年372.7兆円、前々年334.9兆円、前年比12.8%増)に増加しました。
また、EC化率は、B to C- ECで9.13%(前年比0.35ポイント増)、B to B- ECで37.5%(前年比1.9ポイント増)と増加傾向にあり、商取引の電子化が引き続き進展しています。
このEC化率を物販系の業種別で見ると、書籍、映像・音楽ソフトが52.2%で最も高く、生活家電、AV機器、PC・周辺機器等が42.0%、生活雑貨、家具、インテリアが29.6%と続きます。一方で、EC化率が最も低いのは自動車、自動二輪車、パーツ等で4.0%、食品、飲料、酒類が4.2%、化粧品、医薬品が8.2%となっており、これらのEC化率が低い業種では、EC化の余地が高いと言えるでしょう。
出典:電子商取引に関する市場調査の結果および別紙報告書(経済産業省 令和5年8月31日)
事業再構築補助金でECサイト構築は補助対象?
事業再構築補助金において、ECサイト構築が補助対象となるには、ECサイト構築そのものが主目的ではなく、再構築の対象となる事業の商品等の販売手段として位置づけられる場合である点に注意する必要があります。少々わかりづらいかもしれませんので、ECサイト構築が事業再構築補助金の補助対象となるケースを見ていきましょう。
飲食店が業種転換して冷凍食品をECサイトで製造販売するケース
事業再構築補助金を所管する中小企業庁が事業再構築補助金の概要で発信しているわかりやすいケースをご紹介します。
【事例】
コロナ前に居酒屋を経営していたところ、コロナの影響で売上が減少。
店舗での営業を廃止し食品製造業に転換し、ECサイトで冷凍食品を全国向けに販売する。
出典「事業再構築補助金の概要」(中小企業庁 令和5年8月31日)
ここでポイントとなるのは、次の2点です。
1.事業再構築の主目的が食品製造販売業への業種転換である
2.転換後の業種が飲食業ではなく、冷凍調理食品製造業である
1については、ECサイト構築そのものが目的ではなく、食品製造販売業への転換を主目的としており、その販売手段としてECサイトを構築するという位置づけとなっています。このように、事業再構築をする事業の商品等を販売する手段がECサイトである場合は事業再構築補助金の補助対象となると考えられます。
2が意味するところをご説明します。事業再構築補助金では第10回公募より「成長枠」が新設されました。この成長枠は「売上等減少要件」がないものの、「市場拡大要件」(取り組む事業が、過去~今後のいずれか 10 年間で、市場規模が 10%以上拡大する業種・業態に属していること)があります。そのため、申請できる業種・業態は限られ、要件を満たしている必要があります。
上記の例では、業種転換前の業種は「飲食業」ですが、令和5年10月6日締切の第11回事業再構築補助金の「成長枠」の対象業種リストには「飲食業」は含まれておらず、対象外となりました。つまり、業種転換前は対象外業種ですが、業種転換後が「冷凍調理食品製造業」であり、「成長枠」で対象業種にリストアップされているため、対象業種になると考えられます。
このように、事業再構築補助金でECサイト構築を補助対象とするには、ECサイトが事業再構築による新事業の商品販売の手段であり、「成長枠」で申請する場合は、成長枠の対象業種・業態に属している必要があります。
必ず確認したい事業再構築補助金「成長枠」の対象業種・業態
事業再構築補助金「成長枠」の対象業種・業態については、第11回公募要領内にリンクのある「成長枠の対象となる業種・業態の一覧」をご参照ください。このリストは、第12回以降の事業再構築補助金の公募要項で変更となる可能性もありますのでご注意ください。
成長枠で対象外業種の場合(飲食業や小売業、宿泊業など)は、成長枠で事業を対象業種・業態に転換するか、成長枠以外の申請枠である「物価高騰対策・回復再生応援枠」などで申請する方法が考えられます。
物価高騰対策・回復再生応援枠は業況が厳しい事業者や事業再生に取り組む中小企業等、原油価格・物価高騰等の影響を受ける中小企業等の事業再構築を支援するものですが、成長枠とは異なり「売上高等減少要件」があります。
なお、小売業や飲食業は「成長枠」の対象業種・業態に含まれませんが、「飲食料品小売EC業(B to C)」(飲食料品小売業のうち、一般消費者に対して、飲食料品をECによって販売するもの)は対象となっています。
業種別のECサイト構築採択事業例
次に、中小企業庁による事業再構築に向けた事業計画書作成ガイドブック(中小企業庁 令和5年6月16日)で紹介されているECサイト構築が含まれる補助事業の例を見ていきましょう。
本ガイドブックで紹介されている事例は、過去に事業再構築補助金申請がなされた事業計画書を蓄積し、ビッグデータ(第3~4回公募データが中心)として分析し、統計上有望な再構築の事業テーマを特定したものです。本コラムでは割愛させていただきましたが、ガイドブック内では、採択率と市場成長度から有望度がプロットされていますので、ぜひ参考になさってみてください。
それでは、ECサイト構築に関連した事業例を抽出してご紹介します。
業種 |
事業テーマ名 |
特徴 |
採用事業例 |
飲食業 |
通販・EC の活用による販路拡大 |
ECサイトや通販を介して自社商品を販売 |
地元食材を利用した食料品をECサイトで販売 |
スイーツ・菓子の製造・販売 |
スイーツ、菓子を製造し店舗やEC を通して販売 |
低糖質の日常菓子の製造 |
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製造業(金属) |
EC事業展開
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ECサイトを構築することによる販路拡大や新分野への挑戦 |
ECサイトを構築し、1社依存体質からの脱却 |
製造業(化学・繊維) |
EC事業展開 |
ECサイトを構築することによる販路拡大や新分野への挑戦 |
自社EC サイトを活用した新商品の販売 |
卸売業 |
水産物販売方法展開
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水産物を加工し、EC サイト等を通して消費者に直接販売 |
ファストフィッシュ加工品を製造、EC サイトで販売 |
精肉、加工肉の製造販売
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一般消費者向けに精肉、加工肉の販売を開始
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直売所EC サイトを新設して一般消費者へ販売 |
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スイーツ製造販売
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スイーツ、菓子を製造し店舗やEC を通して販売 |
卸販売用食材の知識、ノウハウを活用して新たにスイーツを製造販売 |
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プラットフォーム型ビジネス展開
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プラットフォームをWEB 上に構築して集客、販売 |
他社の商品も幅広く取り扱うプラットフォーム型 ECサイトを構築 |
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EC等直販 |
ECサイトや通販を介して自社商品を販売
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WEB接客・コンサルティング機能を備えた EC サイトを構築 |
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小売業 |
EC事業の展開 |
ECを活用した直販 /EC 事業者向けサポートサービスの展開 |
倉庫・物流代行機能等を備えたレンタル オフィスの開設 |
花き園芸関連事業
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既存の生花事業をもとにしたEC やギャラリー等への展開 |
自宅用生花のオンラインサブスクサービスの展開 |
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建設業 |
EC事業の展開
|
ECサイトを構築することによる販路拡大や新分野への挑戦 |
住宅コンテナハウスの EC 事業展開 |
生活関連サービス・娯楽業 |
ECサイトでの商品販売
|
ECを活用した直販 /EC 事業者向けサポートサービスへの展開 |
洋服のお直しサービスのEC 展開 |
情報通信業 : |
EC構築・提供
|
ECサイトや通販を介して自社商品を販売 |
中華食材のEC サイト、アプリでの販売 |
物品賃貸業 |
EC構築・活用
|
ECサイトや通販を介して自社商品を販売 |
建設機械の間接材のEC サイト販売 |
医療・福祉業 |
EC構築・提供
|
ECサイトや通販を介して自社商品を販売 |
健康用品のライブコマース販売 |
教育・学習支援業 |
EC構築・提供 |
ECサイトや通販を介して自社商品を販売 |
自社学習教材のEC事業展開 |
出典:事業再構築に向けた事業計画書作成ガイドブック(中小企業庁 令和5年6月16日)
事業再構築補助金で申請できるECサイトの対象経費
このように、条件が合えば事業再構築補助金でECサイトは構築可能です。それでは、具体的にどのような費用を対象経費として計上することができるのかを見ていきましょう。
システム構築費
ECサイト構築で必要となる「システム構築費」は事業再構築補助金の補助対象経費のうち「機械装置・ システム構築費」に該当します。IT事業者に委託してECサイトを構築する際の費用などが含まれます。
ただし、公募要領に記載があるとおり、「専ら補助事業のために使用される専用ソフトウェア・情報システム等の購入・構築、借用に要する経費」が対象となるので、補助事業とは関係のないECサイトを作成するケースはや、既存事業と兼用のECサイト構築は、事業再構築補助金の対象外となります。
クラウドサービス利用費
ECサイトのサーバーなどを月額料金で利用する場合や、ECサイトをクラウドサービスを利用して制作する場合もあります。その場合、クラウドサービス利用費として事業再構築補助金の対象経費として申請することが可能です。
ただし、補助事業実施期間が終了後、商品やサービスの提供を継続しクラウドサービスを利用していたとしても、その費用は対象経費として申請できないので気をつけましょう。また、自社の他事業とクラウドサービスを共用する場合は補助対象となりませんので、注意が必要です。
専門家経費
ITコーディネータ等にECサイト立ち上げのコンサルを依頼する際などの専門家への報酬は専門家経費として申請することが可能です。1日あたりの謝礼の上限には規定がある点には注意が必要です。例として、中小企業診断士、ITコーディネータは1日4万円以下となっています。
まとめ
今回は、事業再構築補助金を活用したECサイト構築についてお伝えしてきました。
・ECサイトは成長を続ける有望市場で、EC化の余地が大きい
・ECサイトが再構築事業の販売手段であれば補助対象に
・対象業種・業態であれば「成長枠」で申請可能
・過去の採択事例を参考に
・ECサイトのシステム構築費、クラウドサービス利用費等が対象経費に
ECサイト構築は、DXを推進する国の政策とも合致し、先述した「事業再構築に向けた事業計画書作成ガイドブック(中小企業庁 令和5年6月16日)においても、社会課題解決関連トピックとしてデジタル技術を活用した事例は採択率が高い傾向にあります。再構築事業での市場開拓手段の一つとしてECサイト構築を検討してみてはいかがでしょうか。
事業再構築補助金の申請にあたっては、上記以外にも細かい要件が数多くあります。当社、アクセルパートナーズでは、ECサイト構築を含めた事業再構築補助金をはじめとした補助金申請のサポートを承っています。
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この記事の監修
中小企業診断士
株式会社アクセルパートナーズ代表取締役 二宮圭吾
WEBマーケティング歴15年、リスティング・SEO・indeed等のWEBコンサルティング300社以上支援。
事業再構築補助金、ものづくり補助金、IT導入補助金等、補助金採択実績300件超。
中小企業診断士向けの120名以上が参加する有料勉強会主催。