のれんの減損を避ける方法は?買収前の対策と減損の兆候
のれんの減損を避ける方法は?買収前の対策と減損の兆候
M&Aで会社を買収した後、数年後にのれんの減損損失を計上する企業は少なくありません。
減損損失は、数億円から数十億円に達することもあり、企業の業績を大きく押し下げます。上場企業であれば株価への影響も避けられません。
のれんの減損は、買収前の判断とPMI(買収後統合)の成否で9割決まります。本記事では、のれんの減損とは何か、減損が起きるパターン、そして減損を避けるための対策について解説します。
のれんの減損とは何か——巨額損失の正体
のれんの減損について、基本を確認しておきましょう。
のれんとは、買収価格と対象会社の純資産の差額のことです。
のれん = 買収価格 - 純資産
たとえば、純資産5億円の会社を10億円で買収した場合、のれんは5億円です。こののれんは、ブランド価値、技術力、顧客基盤など「目に見えない価値」を表しています。
のれんは資産として計上され、日本の会計基準では最長20年(実務上は多くが10年)で償却されます。
減損とは、のれんの価値が当初の想定よりも下がったときに、帳簿価額を引き下げて損失を計上することです。
減損損失の計算
減損損失は、のれんの帳簿価額と回収可能価額の差額として計算されます。
減損損失 = のれんの帳簿価額 - 回収可能価額
たとえば、のれん残高が4億円、回収可能価額が1億円と算定された場合、減損損失は3億円になります。この3億円は、特別損失として一括計上されます。
のれん減損が起きる3つのパターン
のれんの減損は、なぜ起きるのでしょうか。代表的な3つのパターンを紹介します。
パターン①:高値づかみ
買収価格が適正価格を大きく上回っていた場合、買収時点ですでに減損リスクを抱えています。
- DDが不十分で対象会社を過大評価:財務DDや事業DDが不十分で、対象会社の実力を正しく評価できなかった
- 買収競争で価格が高騰:複数の買い手候補がいる場合、競争によって価格が釣り上がることがある
- 経営者の過度な期待:「この会社を買えば業績が飛躍的に伸びる」という過度な期待が、適正価格を無視させる
高値づかみの場合、買収後に対象会社が順調に成長しても、のれんを回収できないことがあります。
パターン②:PMI(買収後統合)の失敗
買収価格が適正であっても、PMIに失敗すると減損が発生します。
- 期待していたシナジーが実現しなかった:「クロスセルで売上が伸びる」と期待したが、実際には伸びなかった
- キーマンが退職してしまった:対象会社の技術者や営業担当者が、買収後に次々と退職
- 顧客が離れてしまった:買収によって経営方針が変わり、既存顧客が取引を停止
- 組織の統合がうまくいかなかった:親会社と子会社の文化や価値観が合わず、従業員のモチベーションが低下
パターン③:外部環境の悪化
- 市場の縮小:対象会社の事業が属する市場そのものが縮小
- 競合の台頭:強力な競合企業が現れ、シェアを奪われた
- 法規制の変更:法規制の変更により、事業モデルが成り立たなくなった
- 技術革新:新しい技術が登場し、対象会社の製品・サービスが陳腐化
外部環境の変化は予測が難しいですが、買収前にダウンサイドシナリオを想定しておくことが重要です。
買収前にできる減損回避策
対策①:適正価格での買収
複数のバリュエーション手法で検証
企業価値の算定には、DCF法、類似会社比較法、純資産法などがあります。複数の手法で算定し、妥当性を検証しましょう。
第三者評価を取得
自社だけで判断せず、第三者の評価機関やM&Aアドバイザーから企業価値の評価を取得することをおすすめします。
のれん比率を確認
のれん比率(のれん÷買収価格)が50%を超える場合は、要注意です。
対策②:徹底したDD
財務DD、事業DD、法務DDを実施
財務DDだけでなく、事業DDや法務DDも実施し、対象会社のリスクを多角的に把握しましょう。
将来予測の妥当性を検証
対象会社が提示する事業計画の妥当性を厳しく検証します。
ダウンサイドシナリオを想定
最悪のケースを想定し、それでも買収する価値があるかを検討します。
減損の兆候チェックリスト
- 買収後の業績が当初計画を大きく下回っている
- 主要顧客を失った
- キーマンが退職した
- 市場環境が大きく悪化した
まとめ
のれんの減損は、買収前の判断で9割決まります。減損リスクを十分に考慮し、慎重に判断することが重要です。
当事務所では、M&Aの買収価格の妥当性検証から、のれんの減損テストまで、会計・税務の両面からサポートしています。「買収を検討しているが、減損リスクが心配」という方は、お気軽にご相談ください。


