のれんの減損を避ける方法は?買収前の対策と減損の兆候

  •  

下木原 誠
 編集:下木原 誠
 公認会計士、税理士、中小企業診断士、社会保険労務士、応用情報技術者

私はこれまでIT系事業会社の経理として連結決算や単体決算、コンサルティングファームのコンサルタントとして会計アドバイザリー、公認会計士として金商法・会社法監査といった、会計に関わる業務に従事してきました。 業務の際は、あるべき姿を提示するだけではなく、事業者様の目線に立った価値提供を常に心がけております。 お客様のパートナーとして、事業の成長に貢献できるよう努めますので、よろしくお願いいたします。

のれんの減損を避ける方法は?買収前の対策と減損の兆候

M&Aで会社を買収した後、数年後にのれんの減損損失を計上する企業は少なくありません。

減損損失は、数億円から数十億円に達することもあり、企業の業績を大きく押し下げます。上場企業であれば株価への影響も避けられません。

のれんの減損は、買収前の判断とPMI(買収後統合)の成否で9割決まります。本記事では、のれんの減損とは何か、減損が起きるパターン、そして減損を避けるための対策について解説します。

のれんの減損とは何か——巨額損失の正体

のれんの減損について、基本を確認しておきましょう。

のれんとは、買収価格と対象会社の純資産の差額のことです。

のれん = 買収価格 - 純資産

たとえば、純資産5億円の会社を10億円で買収した場合、のれんは5億円です。こののれんは、ブランド価値、技術力、顧客基盤など「目に見えない価値」を表しています。

のれんは資産として計上され、日本の会計基準では最長20年(実務上は多くが10年)で償却されます。

減損とは、のれんの価値が当初の想定よりも下がったときに、帳簿価額を引き下げて損失を計上することです。

減損損失の計算

減損損失は、のれんの帳簿価額と回収可能価額の差額として計算されます。

減損損失 = のれんの帳簿価額 - 回収可能価額

たとえば、のれん残高が4億円、回収可能価額が1億円と算定された場合、減損損失は3億円になります。この3億円は、特別損失として一括計上されます。

のれん減損が起きる3つのパターン

のれんの減損は、なぜ起きるのでしょうか。代表的な3つのパターンを紹介します。

パターン①:高値づかみ

買収価格が適正価格を大きく上回っていた場合、買収時点ですでに減損リスクを抱えています。

  • DDが不十分で対象会社を過大評価:財務DDや事業DDが不十分で、対象会社の実力を正しく評価できなかった
  • 買収競争で価格が高騰:複数の買い手候補がいる場合、競争によって価格が釣り上がることがある
  • 経営者の過度な期待:「この会社を買えば業績が飛躍的に伸びる」という過度な期待が、適正価格を無視させる

高値づかみの場合、買収後に対象会社が順調に成長しても、のれんを回収できないことがあります。

パターン②:PMI(買収後統合)の失敗

買収価格が適正であっても、PMIに失敗すると減損が発生します。

  • 期待していたシナジーが実現しなかった:「クロスセルで売上が伸びる」と期待したが、実際には伸びなかった
  • キーマンが退職してしまった:対象会社の技術者や営業担当者が、買収後に次々と退職
  • 顧客が離れてしまった:買収によって経営方針が変わり、既存顧客が取引を停止
  • 組織の統合がうまくいかなかった:親会社と子会社の文化や価値観が合わず、従業員のモチベーションが低下

パターン③:外部環境の悪化

  • 市場の縮小:対象会社の事業が属する市場そのものが縮小
  • 競合の台頭:強力な競合企業が現れ、シェアを奪われた
  • 法規制の変更:法規制の変更により、事業モデルが成り立たなくなった
  • 技術革新:新しい技術が登場し、対象会社の製品・サービスが陳腐化

外部環境の変化は予測が難しいですが、買収前にダウンサイドシナリオを想定しておくことが重要です。

買収前にできる減損回避策

対策①:適正価格での買収

複数のバリュエーション手法で検証

企業価値の算定には、DCF法、類似会社比較法、純資産法などがあります。複数の手法で算定し、妥当性を検証しましょう。

第三者評価を取得

自社だけで判断せず、第三者の評価機関やM&Aアドバイザーから企業価値の評価を取得することをおすすめします。

のれん比率を確認

のれん比率(のれん÷買収価格)が50%を超える場合は、要注意です。

対策②:徹底したDD

財務DD、事業DD、法務DDを実施

財務DDだけでなく、事業DDや法務DDも実施し、対象会社のリスクを多角的に把握しましょう。

将来予測の妥当性を検証

対象会社が提示する事業計画の妥当性を厳しく検証します。

ダウンサイドシナリオを想定

最悪のケースを想定し、それでも買収する価値があるかを検討します。

減損の兆候チェックリスト

  • 買収後の業績が当初計画を大きく下回っている
  • 主要顧客を失った
  • キーマンが退職した
  • 市場環境が大きく悪化した

まとめ

のれんの減損は、買収前の判断で9割決まります。減損リスクを十分に考慮し、慎重に判断することが重要です。

当事務所では、M&Aの買収価格の妥当性検証から、のれんの減損テストまで、会計・税務の両面からサポートしています。「買収を検討しているが、減損リスクが心配」という方は、お気軽にご相談ください。

下木原 誠
 編集:下木原 誠
 公認会計士、税理士、中小企業診断士、社会保険労務士、応用情報技術者

私はこれまでIT系事業会社の経理として連結決算や単体決算、コンサルティングファームのコンサルタントとして会計アドバイザリー、公認会計士として金商法・会社法監査といった、会計に関わる業務に従事してきました。 業務の際は、あるべき姿を提示するだけではなく、事業者様の目線に立った価値提供を常に心がけております。 お客様のパートナーとして、事業の成長に貢献できるよう努めますので、よろしくお願いいたします。

相談無料、お気軽にご相談ください!

Contact