【徹底解説】経済環境変化に応じた重要物資サプライチェーン強靭化支援事業のポイント(LNG編)
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令和5年11月29日、令和5年度補正予算が発表されました。本記事で扱う「経済環境変化に応じた重要物資サプライチェーン強靭化支援事業」については、総額9,147億円の予算が設定されており、今後政府が力を入れて対応する事業動向を確認するうえでは要チェックの内容になります。本記事では、LNGを取り上げて解説しますので、本支援事業活用を検討予定の方はご参考いただけますと幸いです。
目次
LNGとは液化天然ガス
LNGとは、「Liquefied Natural Gas」の略称で、液化天然ガスのことを指します。天然ガスは主にメタンを含む無色無臭のガスで、エネルギー源として広く使用されています。LNGは天然ガスをマイナス162度セルシウスまで冷却し、液化させることで体積を約1/600に圧縮します。この液化プロセスにより、輸送と保管が容易になり、パイプラインでの輸送が不可能な遠距離や海を越える輸送に適しています。
LNGは比較的環境に優しいエネルギー源とされており、石炭や石油に比べて燃焼時の二酸化炭素排出量が少ないのが特徴です。また、硫黄酸化物や窒素酸化物の排出も少なく、大気汚染の観点からも利点があります。しかし、採掘や輸送過程でメタン漏れが生じることがあり、これは温室効果ガスとしての影響が大きいため、環境への影響は完全に無視できないという側面もあります。
LNGの未来に向けて安定供給や環境対応の取り組みを日本が主導
LNGの安定供給を図るため、産出国と消費国が望ましい市場の姿を議論しようと2012年から毎年「LNG産消会議」が開催されています。2023年7月18日には、「LNG産消会議2023」が初めて、経済産業省と国際エネルギー機関(IEA)との共催で行われました。背景には、LNG需要の高まりと共に、安定供給のためのルール整備や環境対応など、LNGに関する課題解決が喫緊のものとなっていることがあります。
出典:経済産業省 資源エネルギー庁 記事(LNGの未来に向けて、安定供給や環境対応の取り組みを日本が主導)
「経済環境変化に応じた重要物資サプライチェーン強靭化支援事業」の目的
経済産業省が取り組む「経済環境変化に応じた重要物資サプライチェーン強靱化支援事業」は、日本国内の投資を促進し、経済の成長力を高めることを目的とした28の重要な事業の一つです。
特にこの分野は、経済産業省の令和5年度補正予算の中で最も大きな割り当てとなっており、2.7兆円という巨額の予算が設定されています。これは、政府がこの領域の強化に非常に力を入れていることを示唆しています。
この事業の主な目的は、変化する経済環境、特に厳しい地政学的な環境の変化や破壊的な技術革新に対応するため、重要な物資のサプライチェーンを強化することにあります。
具体的には、重要物資の安定供給を確保するために、それぞれの物資の特性に応じて様々な施策を実施します。
これには、生産基盤の強化や整備、供給源の多様化、生産技術の導入・開発・改良、そして代替物資の開発などが含まれます。
このような取り組みにより、日本の産業は、外部環境の変化によるリスクに強く、かつ柔軟に対応できるようになることが期待されています。
また、国内での技術革新を促進し、経済の高度化に寄与することもこの事業の大きな目標です。
経済産業省は、これらの目標達成のために必要な支援を提供し、国としての競争力を維持・向上させることを目指しています。
「経済環境変化に応じた重要物資サプライチェーン強靭化支援事業」(LNG)について
経済産業省令和5年度補正予算の事業概要(PR資料)によると、経済環境変化に応じた重要物資サプライチェーン強靭化支援事業(LNG)については下記の通りです。
項目 |
内容 |
令和5年度補正予算 |
330億円 |
事業目的 |
供給途絶が国民の生存や国民生活・経済活動に甚大な影 響を及ぼす重要な物資に関し、安定供給に資する事業環境の整備に向けて、民間事業者等に対する支援を通じて安定供給確保を図る。本事業では、経済施策を一体的に講ずることによる安全保障の確保の推進に関する法律に基づく特定重要物資として政令で指定された可燃性天然ガスについて、民間事業者等に対する支援を通じて、特に液化天然ガス(LNG)の安定供給確保を図る。 |
事業概要 |
経済施策を一体的に講ずることによる安全保障の確保の推進に関する法律に基づき認定された民間事業者等の計画について、当該計画に基づく事業者の戦略的な余剰のLNG(SBL : Strategic Buffer LNG)確保・運用に向けた取組に対して助成金を交付する。 |
成果目標 |
昨今のLNGの需給逼迫の状況を踏まえ、LNGの調達について国が戦略的に関与し、安定供給を確保する。本事業においては、LNGの需給ひっ迫等に備え、SBLについて、当面の間は冬季に少なくとも各月1カーゴ確保することを目指す。 |
2023年11月27日の「電氣新聞」の一面によると、経済産業省は24日、経済安全保障推進法に基づく「戦略的余剰LNG(SBL)」を確保する事業者にJERAを認定したと発表しました。冬季(12月~2024年2月)に毎月1カーゴ分(約7万トン)の余剰在庫を維持し、経産省からの要請があった場合に電力・ガス会社に販売します。制度創設以来、認定を受けるのはJERAが初めてになります。
今後も、SBLを確保する事業者は認定されていくと想定されます。
「経済環境変化に応じた重要物資サプライチェーン強靭化支援事業」(LNG)の事業スキーム等
「経済環境変化に応じた重要物資サプライチェーン強靱化支援事業(LNG)」の事業スキーム等は下図の通り、独立行政法人エネルギー・金属鉱物資源機構(JOGMEC)を通して実施されます。なお、補助対象者は大企業、中堅企業、中小企業者、小規模企業者です。
JOGMECは環境保全やカーボンニュートラル実現の一翼を担う機関 鉱害防止を支援する唯一の機関として、最新の鉱害防止技術の開発・導入や坑廃水処理、海外への技術協力などを行うとともに、環境に配慮した資源開発やカーボンニュートラル実現に向けた多様な取組みを推進します。詳しくはこちらのホームページをご参照ください。
まとめ
いかがでしたでしょうか?この記事では、「経済環境変化に応じた重要物資サプライチェーン強靱化支援事業」の中で特に注目されるLNG(液化天然ガス)に焦点を当てて解説しました。令和5年度の補正予算において、この事業には9,147億円が割り当てられており、日本政府がLNGの安定供給と環境対応に力を入れていることが伺えます。
LNGはエネルギー源としての利点が多く、環境への影響も比較的少ないものの、メタン漏れなどの課題にも対応する必要があります。
LNG産消会議を通じて、供給安定化のための国際的な取り組みが進められています。また、経済産業省はJOGMECを介して多様な事業者への支援を行い、特に戦略的余剰LNG(SBL)の確保を重視しています。これらの取り組みは、日本の産業が変化する経済環境に対応し、国内の経済発展と環境保全に貢献することを目指しています。
本記事が、LNGの現状と未来、および政府の支援事業についての理解の一助となれば幸いです。
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この記事の監修
中小企業診断士
株式会社アクセルパートナーズ代表取締役 二宮圭吾
WEBマーケティング歴15年、リスティング・SEO・indeed等のWEBコンサルティング300社以上支援。
事業再構築補助金、ものづくり補助金、IT導入補助金等、補助金採択実績300件超。
中小企業診断士向けの120名以上が参加する有料勉強会主催。