【ものづくり補助金】対象経費について徹底解説!
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ものづくり補助金は正式名称を「ものづくり・商業・サービス補助金」と言い、よく「もの補助」と略されることの多い国の補助金です。
その名前から製造業のみが対象と誤解されることが多いですが、広く中小企業や小規模事業者等を対象とした、革新的サービス開発・試作品開発・生産プロセスの改善を行い、生産性を向上させるための設備投資等が対象となります。
さらに、令和4年度第2次補正予算にて、賃上げや温室効果ガス排出削減、海外市場開拓の取り組みへの支援が拡充となるなど、非常に注目を集めています。
今回はそんなものづくり補助金について、概要や補助対象となる経費について丁寧に解説していきたいと思います。
目次
ものづくり補助金の概要
ものづくり補助金とは?
中小企業が「経営革新」のための設備投資等に使える補助上限額750万円~5,000万円で、補助率は1/2もしくは2/3の補助金です。
(※補助上限額や補助率は申請される枠・類型や従業員の人数によって異なります。)
ものづくり補助事業公式ホームページで公開されている、ものづくり補助金第16次締切公募要領の概要版には経営革新の類型として以下が定められています。
A1:新商品(試作品)開発
例)避難所向け水循環型シャワーを開発
A2:新たな生産方式の導入
例)作業進捗を「見える化」する生産管理シ ステムを導入
B1:新役務(サービス)開発
例)仮想通貨の取引システムを構築
B2:新たな提供方式の導入
例)従業員のスキルに応じて顧客をマッチングするシステムを導入
このように広く経営革新に活用できる便利な補助金です。
どのような申請枠がある?
ものづくり補助金では以下の申請類型が用意され、様々なメニューで生産性向上を目指す取り組みが対象となっています。
- 通常枠
- 回復型賃上げ・雇用拡大枠
- デジタル枠
- グリーン枠
- グローバル市場開拓枠
それぞれの申請枠の概要を見ていきましょう。
【通常枠】
革新的な製品・サービス開発又は⽣産プロセス・サービス提供方法の改善に必要な設備・システム投資等を支援する申請枠です。
活用例:
・複数形状の餃⼦を製造可能な餃⼦全⾃動製造機を開発
・「⾷べられるクッキー⽣地のコーヒーカップ」の製造機械を新たに導⼊
補助上限:750 ~ 1,250万円
補助率:1/2、 2/3(小規模・ 再生事業者)
【回復型賃上げ・雇用拡大枠】
業況が厳しい事業者が賃上げ・雇用拡大に取り組むための革新的な製品・サービス開発又は⽣産プロセス・サービス提供方法の改善に必要な設備・システム投資等を支援する申請枠です。
(※前年度の事業年度の課税所得がゼロである事業者に限る。)
補助上限:750 ~ 1,250万円
補助率:2/3
【デジタル枠】
DXに資する革新的な製品・サービス開発又は⽣産プロセス・サービス提供方法の改善 による⽣産性向上に必要な設備・システム投資等を支援する申請枠です。
活用例:
・属人的な作業を省力化するため、顧客・受注・作業員を一体的に管理するシステムを導⼊
・AIを導⼊した高精度な⾃律移動式無人搬送ロボットの試作開発
補助上限:750 ~ 1,250万円
補助率:2/3
【グリーン枠】
温室効果ガスの排出削減に資する取組に応じ、革新的な製品・サービス開発又は炭素⽣産性向上を伴う⽣産プロセス・サービス提供方法の改善による⽣産性向上に必要な設備・システム投資等を支援する申請枠です。
活用例:
・炭素⽣産性向上が図れる製造装置を導⼊しつつ、従来から製造していた部品の高品質化
・「エコマテリアル」素材を導⼊し、環境負荷が少ないクリーンな製品の試作開発
補助上限(グリーン枠は申請の類型により補助上限額が異なります):
750 ~ 1,250万円(エントリー)
1,000 ~2,000万円(スタンダード)
2,000~4,000万円(アドバンス)
補助率:2/3
【グローバル市場開拓枠】
海外事業の拡大等を目的とした設備投資等を支援。海外市場開拓(JAPANブランド)類型では、海外展開に係るブランディング・プロモーション等に係る経費も支援する申請枠です。
活用例:
・海外市場獲得を目的とした新製品開発のため、製造機械の導⼊や展示会への出展
・日本に来日する外国人をターゲットとした予約システムの開発
補助上限:3,000万円
補助率:1/2、2/3(小規模 事業者)
申請の際の要件について
各申請枠では以下の基本要件を満たした上で申請枠別の追加要件に該当する必要があります。
○基本要件<以下の要件を全て満たす3~5年の事業計画を策定することが必要>
・事業計画期間において、給与支給総額を年率平均1.5%以上増加
・事業計画期間において、事業場内最低賃金を、 毎年、地域別最低賃金+30円以上の水準とする。
・事業計画期間において、事業者全体の付加価値額を年率平均3%以上増加
(申請枠別の追加要件については最新の公募要領をご確認ください。)
ものづくり補助金の対象となる経費について
それでは本題のものづくり補助金で対象となる経費について見ていきましょう!
対象となる経費の項目は以下の通りです。
- 機械装置・ システム構築費
- 運搬費
- 技術導入費
- 知的財産権等 関連経費
- 外注費
- 専門家経費
- クラウドサービス 利用費
- 原材料費
- 海外旅費 ※1
- 通訳・翻訳費 ※2
- 広告宣伝・ 販売促進費 ※2
※1:グローバル市場開拓枠のみ対象
※2:グローバル市場開拓枠のうち海外市場開拓(JAPANブランド)類型のみ対象
機械装置・システム構築費
ものづくり補助金と聞いてまずイメージできるのはこの「機械装置・システム構築費」ではないでしょうか。実際にものづくり補助金の申請金額としても一番大きく、公募要領(※執筆時点2023年9月 第16次締切公募要領)においても、申請の際には必ず1つ以上、単価50万円以上の設備投資が必要であることが明記されていることから、国としてこの補助金を活用して中小企業に設備投資を行ってほしいという想いが伺えます。
また、機械・装置等だけではなく、生産性向上に資するソフトウェアやシステム開発、アプリ開発等も対象となります。
公募要領上の機械装置・システム構築費の説明は以下の通りです。
① 専ら補助事業のために使用される機械・装置、工具・器具(測定工 具・検査工具、電子計算機、デジタル複合機等)の購入、製作、借用 に要する経費
② 専ら補助事業のために使用される専用ソフトウェア・情報システム の購入・構築、借用に要する経費
③ ①若しくは②と一体で行う、改良・修繕又は据付けに要する経費
「機械装置・システム開発費」の採択例の一部は以下の通りです(第14次採択者一覧より)
・鉄筋自動切断機の導入による建設資材加工プロセスの効率化
・最新型コンバインの導入による大豆・小豆の収穫作業効率化
・最新の電気式醸造設備による地ビール製造
・最新式ゴルフ計測器の導入で、顧客満足度の向上と新規顧客の獲得
・最新立形マシニングセンター導入による人工衛星部品開発事業
・WEBにて見積発行可能な住宅リフォームクラウド見積システムの開発
・AIによるトリアージシステムの開発
・盛岡冷麺販路拡大に必要なAI画像検査技術導入事業
・遺産整理 e-ラーニングプラットフォーム構築事業
・多国籍・グローバル人材のITエンジニア専門人材紹介サイト開発
運搬費
補助対象事業に関わる運搬料、宅配・郵送料等 に要する経費です。
ただし、購入時の機械装置の運搬料については、機械装置費に含めることとすることが公募要領に明記されています。
技術導入費
補助対象事業の実施に必要な知的財産等の導入に要する経費です。
この知的財産というのは特許権・商標権・意匠権・著作権などが含まれ、これらを導入する費用が補助対象となります。
例として、他者と契約し商標権を取得したり、使用する許諾を受けることが該当します。
注意点として公募要領に以下が示されています。
・知的財産権を所有する他者から取得(実施権の取得を含む)する場合は書面による契約の締結が必要
・技術導入費支出先には、専門家経費、外注費を併せて支払うことはできない
なお、補助上限額が設定されており、補助対象経費総額(税抜き)の3分の1までとなっております。
知的財産権等 関連経費
知的財産権等 関連経費は、新製品・サービスの事業化に当たって必要となる特許権等の知的財産権 等の取得に要する弁理士の手続代行費用、外国特許出願のための翻訳料 等の知的財産権等取得に関連する経費が対象になります。
ただし、以下の経費は補助対象外となります。
・補助事業の成果に係る発明等ではないもの
・事業期間内に出願手続きを完了していない場合
・日本の特許庁に納付する手数料等(出願料、審査請求料、特許料等)
・拒絶査定に対する審判請求又は訴訟を行う場合に要する経費。
知的財産権等 関連経費についても、技術導入費と同様補助上限額が定められており補助対象経費総額(税抜き)の3分の1までとなっています。
外注費
新製品・サービスの開発に必要な加工や設計(デザイン)・検査等の一部を外注(請負、委託等)する場合に補助対象経費総額(税抜き)の2分の1までを上限として外注費として申請できます。
具体的な例としては、新たに開発しようとしている製品の設計や販売するための包装のデザイン等を他社に外注する場合に補助対象経費とすることができます。また、新製品の品質評価等を他社に実施してもらう場合も外注費にあたります。
いずれの場合でも必ず外注先との書面による契約の締結が必要になることに注意してください。
そのほかの注意点としては以下の通りです。
・外注先が機械装置等の設備を購入する費用は補助対象にならない
・機械装置等の製作を外注する場合は、「機械装置・システム構築費」に計上
・外注先に、技術導入費、専門家経費を併せて支払うことはできない
専門家経費
本事業の実施のために依頼した専門家に支払われる経費を補助対象経費総額(税抜き)の2分の1までを上限として専門家経費として申請できます。
専門家の明確な定義は公募要領上で示されていませんが、例として大学教授・弁護士・弁理士・公認会計士・大学准教授・技術士・中小企業診断士・ITコーディネータ等幅広い分野の専門家に依頼する場合の経費が対象となります。
注意点は以下のとおりです。
・謝金は1日5万円以下(税抜き)
大学教授、弁護士、弁理士、公認会計士、医師:1日5万円以下
大学准教授、技術士、中小企業診断士、ITコーディネータ:1日4万円以下
上記謝金単価に準じるか、依頼内容に応じた価格の妥当性を証明する複数の見積書
を取得することが必要
・専門家経費支出対象者には、技術導入費、外注費を併せて支出することはできない
・応募申請時に事業計画書の作成を支援した者は、専門家経費の補助対象外
クラウドサービス 利用費
生産性向上を目的としたクラウドサービスの利用に関する経費が補助対象となります。
原材料費
試作品の開発に必要な原材料及び副資材の購入に要する経費が対象となります。
ただし、試作品の開発のために購入する原材料等の数量は必要最小限にとどめ、補助事業終了時には使い切ることを原則とし補助事業終了時点での未使用残存品は補助対象とならないことに注意が必要です。
原材料費を補助対象経費として計上する場合は、受払簿(任意様式)を作成し、その受払いを明確にするとともに、試作・開発等の途上において発生した仕損じ品やテストピース等を保管(保管が困難なものは写真撮影による代用も可)しておく必要があります。
海外旅費
※グローバル市場開拓枠のみ対象
海外事業の拡大・強化等を目的とした、本事業に必要不可欠な海外渡航及び宿泊等に要する経費に対し、補助対象経費総額(税抜き)の5分の1を上限として申請できます。
注意点は以下の通りです。
・国内旅費や本事業と無関係な海外旅費は補助対象外
・交付申請時に海外渡航の計画を申請することが必要
・一度の渡航での海外旅費の使用は、事業者3名まで(専門家、通訳者が海外に同行する場合には事業者3 名に加え2 名まで)とし、1 人あたり最大 50 万円(税 抜き)が上限
通訳・翻訳費
※グローバル市場開拓枠 のうち②海外市場開拓(JAPAN ブランド類 型)のみ対象
事業遂行に必要な通訳及び翻訳を依頼する場合に支払われる経費を補助対象経費総額 (税抜き)の5分の1を上限として申請できます。
翻訳については、広告宣伝・販売促進に必要な翻訳のみが対象で、事業計画に係る契約書の翻訳は対象外となることに注意が必要です。
また、最大 30 万円(税抜き)までを限度となります。
広告宣伝 販売促進費
※グローバル市場開拓枠 のうち②海外市場開拓(JAPAN ブランド類 型)のみ対象
補助対象事業で開発又は提供する製品・サービスの海外展開に必要な広告(パンフレット、動画、写真等)の作成及び媒体掲載、展示会出展等、ブランディング・プロモーションに係る経費を補助対象経費総額(税抜き)の2分の1を上限として申請できます。
補助事業以外の自社の製品・サービス等の広告や会社全体のPR広告に関する経費やマーケティング市場調査は対象外となることに注意が必要です。
また、交付決定後の発注・契約が前提で、補助事業実施期間内に広告が使用・掲載されること、展示会が開催されることが必要となります。
補助対象とならない経費について
本記事執筆時点の最新公募要領(第16次締切分)においては、具体的に以下のケースにおいて補助対象とならないことが明記されています。少々細かいですが、申請にあたっては十分に確認するようにしましょう。
① 補助事業期間中の販売を目的とした製品、商品等の生産に係る機械装置・システム構築 費以外の諸経費
② 工場建屋、構築物、簡易建物(ビニールハウス、コンテナ、ドームハウス等)の取得費用、 及びこれらを作り上げるための組み立て用部材の取得費用
③ 再生エネルギーの発電を行うための発電設備及び当該設備と一体不可分の附属設備(太 陽光発電を行うためのソーラーパネルなど)
④ 設置場所の整備工事や基礎工事に要する費用
⑤ 事務所等にかかる家賃、保証金、敷金、仲介手数料、光熱水費
⑥ 電話代、インターネット利用料金等の通信費(クラウドサービス利用費に含まれる付帯 経費は除く)
⑦ 商品券等の金券
⑧ 文房具などの事務用品等の消耗品代、雑誌購読料、新聞代、団体等の会費
⑨ 飲食、奢侈、娯楽、接待等の費用
⑩ 不動産の購入費、自動車等車両*の購入費・修理費・車検費用 *事業所や作業所内のみで走行し、公道を自走することができないものおよび税法上の車両及び運搬具に該 当しないものを除きます。
⑪ 税務申告、決算書作成等のために税理士、公認会計士等に支払う費用及び訴訟等のため の弁護士費用
⑫ 収入印紙
⑬ 振込等手数料(代引手数料を含む)及び両替手数料
⑭ 公租公課(消費税及び地方消費税額(以下「消費税等」という)等)
⑮ 各種保険料
⑯ 借入金などの支払利息及び遅延損害金
⑰ 報告書等の事務局に提出する書類作成・申請に係る費用
⑱ 汎用性があり、目的外使用になり得るもの(例えば、事務用のパソコン・プリンタ・文書 作成ソフトウェア・タブレット端末・スマートフォン及びデジタル複合機)の購入費(ただ し、補助事業のみに使用することが明らかなものは除く)
⑲ 中古市場において広く流通していない中古機械設備など、その価格設定の適正性が明確 でない中古品の購入費(3者以上の中古品流通事業者から型式や年式が記載された相見積 もりを取得している場合等を除く)
⑳ 事業にかかる自社の人件費(ソフトウェア開発等)
㉑ 上記のほか、公的な資金の用途として社会通念上、不適切と認められる経費
まとめ
今回は、今大注目のものづくり補助金について概要や活用例を解説しました。
生産性向上を目指す事業者様が使いやすい便利な補助金ですので、ぜひご活用をご検討ください。
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この記事の監修
中小企業診断士
株式会社アクセルパートナーズ代表取締役 二宮圭吾
WEBマーケティング歴15年、リスティング・SEO・indeed等のWEBコンサルティング300社以上支援。
事業再構築補助金、ものづくり補助金、IT導入補助金等、補助金採択実績300件超。
中小企業診断士向けの120名以上が参加する有料勉強会主催。