【ものづくり補助金2023】必須要件の賃上げを丁寧解説!計算方法から未達まで
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賃上げ目標を達成できない場合は、補助金を返還しなければならないこともあります。「賃上げのこと、正直よく理解できていない…」と不安に感じている方もいるのではないでしょうか。
この記事では、賃上げの必要性や必須要件、未達の場合のリスクについて解説します。2023年に行われる14次公募からは、積極的に賃上げを行う事業者への優遇措置も設けられます。賃上げについて後々問題が発生しないよう、応募申請時から正確に理解しておくことが大切です。
今回は、「ものづくり・商業・サービス補助金 令和4年度2次補正予算関連」(2.0版令和5年1月)を主に参照し解説を行います。
目次
1. 賃上げに関する項目と重要性
ものづくり補助金で目指すべきゴールは、設備投資や取り組みによる事業の発展や生産性向上を通して、賃上げや付加価値の増加が達成されることです。投資が利益を生み出し、事業に関わる人に還元されるまでを想定することが必要です。
2023年以降、ものづくり補助金がどうなるのかは下記のコラムで解説していますので、あわせてご覧ください。
【ものづくり補助金2023】14次以降の傾向と特徴とは?2022年との違いを解説!
ものづくり補助金の基本要件
○基本要件
<以下の要件を全て満たす3~5年の事業計画を策定することが必要>
・事業計画期間において、給与支給総額を年率平均1.5%以上増加。
(被用者保険の適用拡大の対象となる中小企業が制度改革に先立ち任意適用に取り組む場合は、年率平均1%以上増加)
・事業計画期間において、事業場内最低賃金(補助事業を実施する事業場内で最も低い賃金)を、毎年、地域別最低賃金+30円以上の水準とする。
・事業計画期間において、事業者全体の付加価値額を年率平均3%以上増加。
まずは、補助金を受給するために必要とされる、賃上げに関する項目を解説します。
数値の計算方法も押さえておきましょう。
要件のなかに「給与支給総額を年率平均1.5%以上増加」というものがありますが、これはどういったことなのでしょうか?
給与支払総額とは?給与所得となるものが対象
給与支給総額とは、会社のすべての従業員・役員に支払った給与などの合計金額です。給与所得となるものが対象で、具体的には以下のものが含まれます。
・給料
・賃金
・賞与
・役員報酬
・各種手当(家族手当、通勤手当、残業手当など)
福利厚生費や退職金は給与所得ではないため、給与支払総額には含まれません。
次に、「事業場内最低賃金(補助事業を実施する事業場内で最も低い賃金)を、毎年、地域別最低賃金+30円以上の水準とする。」について解説します。
事業所内最低賃金とは?もっとも低い時給で換算
事業所内最低賃金とは、同じ事業所に勤務する人の給与・賃金を時給換算した金額のうち、最も低い金額のことです。月給や日給で働く場合にも、1日の所定労働時間を用いて時給を計算します。
なお、事業所内最低賃金の目標を、「地域別最低賃金+○○円」という形で定めることもあります。地域別最低賃金とは、事業所が所在する都道府県の最低賃金のことです。
最後に「事業者全体の付加価値額を年率平均3%以上増加」とは何なのでしょうか。
付加価値額とは?計算方法
付加価値額とは、以下の計算式で求めることができます。
付加価値額 = 営業利益 + 人件費 + 減価償却費
人件費は給与支給総額のほか、福利厚生費や退職金も含みます。加えて、作業の外注や人材派遣の利用によって発生した外注費も人件費として計算します。給与支給額と混同しやすいため、しっかりと区別しておくことが大切です。
「付加価値額」と聞くとイメージしにくいものですが、内訳が分かれば伸ばすべきものが見えてくるのではないでしょうか。
2. ものづくり補助金の基本要件
ここからは、ものづくり補助金の基本要件をおさらいします。先程紹介した項目が多く出てくるため、わからなくなったら都度確認しながら読んでみてください。
基本要件の概要
ものづくり補助金の基本的な要件は、以下のように定められています。
以下を満たす3~5年の事業計画の策定及び実行
・付加価値額 +3%以上/年
・給与支給総額 +1.5%以上/年
・事業場内最低賃金≧地域別最低賃金+30円
(引用:令和元年度補正・令和3年度補正 ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金 公募要領 (11次締切分))
上記をすべて満たす必要があります。事業計画期間の3~5年間ではなく、1年ごとに達成し続ける必要があるため注意しましょう。
ただし、以下の条件を満たせば、給与支給総額は年1%以上の増加で構わないとされています。
・従業員規模51~500名の企業
・短時間労働者を健康保険・厚生年金に加入させる
基本要件が未達の場合は返還に注意!
基本要件に未達となってしまうと、補助金を返還しなければならない場合が出てきます。それぞれの要件を見ていきましょう。
≪給与支給総額・付加価値額の未達≫
給与総支給額の年1.5%以上の増加ができなかった場合は、設備導入時にかかった費用のうち、補助金によってまかなった割合を返還しなければなりません。以下の計算式で求めることができます。
返還額 = 導入した設備の簿価または時価 × 補助金額 / 実際の購入金額
ただし、思うように利益が出ない場合は付加価値額も伸びず、賃上げも難しいでしょう。付加価値額の年3%以上の増加ができなかった場合でも、以下の計算式に当てはまれば返還を求めないとされています。
1年の給与総支給額の増加率 > 付加価値額の増加率 ÷ 2
≪事業内最低賃金の未達≫
事業内最低賃金を地域別最低賃金+30円以上の水準にできなかった場合は、受給した補助金のうち、その年度1年分の金額を返還しなければなりません。返還額は以下の計算式で求めることができます。
返還額 = 補助金額 ÷ 計画年数
ただし、付加価値額が年1.5%以下である場合には返還は求められません。
≪目標達成の据え置き≫
新型コロナウイルスの感染拡大の影響を考慮し、補助事業を行った年度は賃上げや付加価値額を1年間据え置くことができます。つまり、最初の年度は未達でも返還を求められることはありません。
ただし、回復型賃上げ・雇用拡大枠は除きます。ほかの枠であっても、2年目以降には確実に達成していくことが必要です。
賃金引上げの誓約書の提出が必要
ものづくり補助金の応募申請では、賃金引き上げの誓約書の提出が求められます。直近の給与支払総額と事業内最低賃金を記載し、どれだけ引き上げるかを誓約します。この書面によって加点措置が行われるため、応募申請の時点で賃上げの見通しと計画の策定が必要です。
なお、9次公募までは従業員に対して賃上げを表明する「賃上げ表明書」の提出が必須でした。10次公募以降はものづくり補助金の事務局に対して賃上げを誓約する「賃上げ誓約書」を提出するよう変更されています。
3. 回復型賃上げ・雇用拡大枠
厳しい状況であっても賃上げに向けて積極的に取り組む会社は「回復型賃上げ・雇用拡大枠」で応募でき、目標を達成することで優遇措置を受けられます。
「回復型賃上げ・雇用拡大枠」の要件の概要
基本要件に加えて、以下の要件が求められます。
・前年度の事業年度の課税所得がゼロであること、
・常時使用する従業員がいること
・補助事業を完了した事業年度の翌年度の3月末時点において、その時点での給与支給総額、事業場内最低賃金の増加目標を達成すること。
(引用:令和元年度補正・令和3年度補正 ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金 公募要領(11次締切分))
応募申請では、前年度の課税所得を証明するために、確定申告書類の提出が必要です。
「回復型賃上げ・雇用拡大枠」の要件が未達の場合は全額返還
回復型賃上げ・雇用拡大枠の補助率は、事業規模を問わず2/3です。補助率が優遇される代わりに、すべての賃上げ目標の達成が必須となります。基本要件の達成に加えて、補助事業完了の翌年3月時点で給与支給総額・社内最低賃金の両方の目標を達成しなければ、補助金は全額返還しなければなりません。
4. 賃上げに関する2023年以降の変更点
2022年12月、中小企業庁より今後のものづくり補助金の変更点が発表されました。依然として賃上げは重視されており、さらに14次公募以降は積極的に賃上げを行う事業者が優遇される措置が設けられます。
賃上げは加点項目から上乗せ補助のための要件へ
13次公募までは賃上げは加点項目に過ぎず、評価が上がって採択されやすくなるというものでした。しかし14次公募以降は、積極的に賃上げを行う会社に対する補助金額の上限が上がり、より多くの支援を受けられるようになります。
補助事業期間終了後3~5年で以下の要件をすべて満たすことで、従業員規模に合わせた上乗せ補助額が適用されます。補助率に変更はありませんが、補助上限が大幅に引き上げられるため、さらに大規模な設備投資を想定できるようになります。
≪大幅な賃上げに取り組む事業者の要件≫
・給与支給総額年平均6%増加
・事業場内最低賃金を年額45円以上引上げ
・賃上げに係る計画書を提出
≪補助上限の上乗せ額≫
従業員規模 |
上乗せ補助額 |
5人以下 |
100万円 |
6~20人 |
250万円 |
21人以上 |
1,000万円 |
(引用:ものづくり・商業・サービス補助金 令和4年度2次補正予算関連 1.0版)
5. まとめ
ものづくり補助金において賃上げは必須であり、賃上げに関する枠や優遇措置も定められています。それだけ積極的な賃上げが求められていると言えるでしょう。特に14次公募以降は補助上限が大幅に増加する措置が設けられるため、賃上げに取り組む事業者はますます増えると考えられます。
本記事は14次締切資料の情報と2023年1月発表の令和4年度2次補正予算関連情報をもとに解説しています。
公募要領はものづくり補助金総合サイトに順次掲載されますので、最新情報をご確認のうえ、申請の準備をすることをおすすめします。
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この記事の監修
中小企業診断士
株式会社アクセルパートナーズ代表取締役 二宮圭吾
WEBマーケティング歴15年、リスティング・SEO・indeed等のWEBコンサルティング300社以上支援。
事業再構築補助金、ものづくり補助金、IT導入補助金等、補助金採択実績300件超。
中小企業診断士向けの120名以上が参加する有料勉強会主催。