今注目のタレントマネジメントとは?詳しく解説
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新型コロナウイルスの世界的な感染拡大、少子高齢化など企業を取り巻く経営環境は大きな岐路に立たされています。そのような経営環境の中、今、「タレントマネジメント」が注目されています。今回は、タレントマネジメントについて詳細に説明します。
目次
タレントマネジメントとは?
タレントマネジメントとは、「従業員一人ひとりが持つ能力や技能、経験といった固有の情報を人材採用や人材育成、配置転換に活用する事で企業成長につなげていく人材マネジメント」と定義されています。タレントマネジメントの対象は、正社員に限らず、パート、アルバイトを含む全従業員が対象となっています。
この概念は、1990年代に米国のコンサルティング会社マッキンゼー&カンパニーが、「War for talent(人材育成競争)」が提唱しました。欧米企業において、2000年代以降、優秀な人材の早期発掘、適正な配置、人材育成の支援までを包括する一連の流れを総合的にとらえる人材マネジメントとして、広がりを見せました。
タレントマネジメントを実施する目的は?
タレントマネジメントを行う目的は、個々の企業の経営目標を達成するため、戦略的に人員の配置を行い、従業員個人の能力を発揮するための人材マネジメント戦略の実行です。人材採用から、採用後の配置、目標設定、業績評価といったさまざまな意思決定の場面において、別個の施策として行われているものを統合し、経営目標達成に向けて人材のマネジメントを総合的に行っていくことを基本的概念としています。その対象は、人材の調達、人材の育成、適材適所による成果の最大化、人材の定着へつなげることとなります。
タレントマネジメントが、今注目されている時代背景
少子高齢化に伴う人材不足が慢性化しています。優秀な人材の確保は、競争が激化しています。企業は、今後、より限られた人材で付加価値や生産力を維持、向上を図っていかなければなりません。パーソル研究所の調査結果「労働市場の未来推計2030」によると、2030年には644万人の労働人口が不足すると推計されています。
続いて、人材の多様化があげられます。主に2点のポイントがあります。まずは、世代間における働き方や仕事に対する価値観は多様化しています。従来の年功序列、長期雇用を前提とした画一的な人材マネジメントでは人材の多様化に対応ができなくなっています。そのため、タレントマネジメントを活用して、多様な価値観、多様な能力を持つ人材のパフォーマンスを最大限発揮できる仕組みが必要とされています。もう一点は、働き方の改革における長時間労働の是正です。企業全体の生産性を落とすことなく、労働時間の短縮を図るためには、社員の生産性の向上が急務となっています。
急速な市場環境の変化もタレントマネジメントを推進する必要性を高めています。WEB3.0、AIの進化など、テクノロジーの急速な変化やリモートワークの拡充など生活のあり方が大きく変化してきました。その中で、企業を取り巻く労働環境、市場環境も劇的に変化してきています。今後、企業が求める専門性を持った人材の育成を進めなければならない中、一人ひとりの潜在能力を最大限に活用する事が求められています。
従来、人材の能力や性格は可視化・定量化することが難しい分野でした。そのため、定性的な評価を中心、評価者の主観を頼りに評価がなされてきました。しかしながら、AIやビッグデータの活用が進む中で、HRテクノロジーの進化により、可視化、定量化が進んでいることも、タレントマネジメントが企業間に浸透している大きな要因となっています。
厚生労働省が発表した「平成30年版 労働経済の分析」においては、2012年における日本企業のタレントマネジメントの導入率は約2.0%でしたが2017年度においては7.1%と増加しています。また導入検討中・検討中まで含めると13.5%から25.1%と大幅に増加しており、日本企業の4社に1社が対応をすすめようとしています。
タレントマネジメントを導入するメリットとは?
タレントマネジメントを導入するメリットは主に4点あります。
・適材適所の人材配置が実現できる
従業員一人ひとりのスキルや特性を考慮した人材マネジメントにより、適正な人材配置が進みます。例えば、経理部では力が発揮できなかった人材も営業部で求められているスキルを潜在的に持っていると定量化・可視化されることで、移動に伴い潜在能力の開花につながります。
・長期的な人材育成につなげることができる
従業員がそれぞれ考える将来のキャリアビジョンを可視化することで、目指していきたいワークライフバランスに向けた研修などを実施することができます。その結果、長期目線に従った人材育成につながります。
・貢献意識の向上
タレントマネジメントを導入することで、現在行っている職務に限定されない汎用的な能力やスキルの開発、キャリアの可視化により、将来身につけるスキルをイメージすることができます。一人ひとりの適性を見極めた人材の配置が実現します。その結果、従業員個人の成長や成長が企業の成果に貢献できていることを実感する機会が増加します。その結果、人材の定着や新規採用への企業の強みへと転化することができます。
・組織の生産性の向上
タレントマネジメントを導入し、企業内に浸透してくると、一人ひとりのスキルや経験に合った部署や業務への配置を行うことができるようになります。その結果、従業員の潜在的な能力を最大限引き出すことができ、パフォーマンスの最大化が図れます。
タレントマネジメントのデメリットとは?
タレントマネジメントには、デメリットも以下存在しています。
・人材の情報収集に時間がかかる
タレントマネジメントを推進する一番のポイントは、個々の従業員のパーソナルデータとなります。いきなり、従業員にスキルやマインドなどを十分にヒアリングができない可能性があります。実施の前には必ず、タレントマネジメントシステムの導入目的やそのメリットを十分に説明する必要があります。
・情報の管理に手間がかかる
従業員から詳細なデータを収集しても、その管理を一元的に行うためには非常に手間がかかります。アンケート用紙を用いた場合における転記ミスなどのヒューマンエラーの発生リスクが出てきます。また、データの収集管理事態に業務が大幅に増加して、負担の増加へとつながってしまう危険性があります。
・社内制度の大幅な変更が余儀なくされる可能性がある
タレントマネジメントは、人材育成、人事戦略に直結する内容となります。それに伴い、従来の戦略の大幅な変更を余儀なくされます。特にこれまで、年功序列制度を導入していた企業にとって、個人のスキルや能力を最重要視するタレントマネジメントは真逆の取り組みであると意識することが大切です。あつれきや抵抗などが一定の確率で発生する危険性があります。
タレントマネジメントを導入するためには
続いて、タレントマネジメントを導入する手順について説明します。
・導入目的を設定する
企業理念、経営戦略を基に、「なぜタレントマネジメントを導入するのか?」を明確に定義します。目的を明確化することで、どのような人材が求められるのかが可視化されます。
続いて、部署ごとに必要な能力、タレントを設定し、全部署においてタレントマネジメントの設計を行います。
・適材人材の発掘する
目的を設定した後は、目的に適合した人材の発掘となります。第一段階の目的の設定段階で各部署がどのような人材が必要であるのか具体的なイメージが定まっています。目的の設定と合わせて、全従業員のパーソナルデータを分類、整理を行います。個人のプロフィール、保有資格、保有スキル、キャリアプランなどをデータベース化しておくことが有用です。
・人材の活用を行う
各部署にマッチした人材を発掘した後、目的の達成へ向けた個人情報や保有資格などデータベース化されたものを用いて、最適なポジションに配置を行います。
・部署間の情報共有による育成・評価を実施する
適正配置後は、現場の管理者により状況の把握に努めます。管理者が中心となって、従業員を育成評価できるシステムの構築、新しいスキルの開発のチャンスを積極的に創出することも大切になってきます。また、現場管理者と経営陣が定期的なミーティングを行い、情報連携を行い個々の従業員の育成・評価につなげていかなければなりません。
・引き止め効果
従業員の体調データやモチベーションの管理といった点もリアルタイムに把握を行うことで、従業員を自社に確保をすることを目指します。この場合においても従来は困難であった定性面でのデータを可視化、定量化することにより、より精度の高いタレントマネジメントにつなげていくことが大切です。
タレントマネジメントの成功事例
・日産自動車の社内スカウトマンの活用
社内にタレントマネジメント部門を設置、社内スカウトマン制度を導入しました。国内外に関わらず優秀な人材を選定し、リーダー育成用のプログラムへの参加をスカウトしました。個々の特性に合わせて、キャリアのターゲットポジションを目指せることと従業員の満足感が出やすいことがメリットとなっています。
(参考 日産自動車 日本タレントマネジメントの取組 )
・サントリーホールディングス
一人ひとりが活躍できる環境作りを行うためにタレントマネジメントを導入しています。「ダイバーシティ経営」を掲げ、多様な人材が活躍できるようになっています。
具体的には、個々に与えられた役割や成果に応じて実力主義の人事評価を導入しています。
その実力主義にタレントマネジメントの視点を加えることで、昇進、昇格を含めたキャリアパスがわかりやすくなり、従業員のモチベーションの向上にもつながっています。
(参考 人事の基本的な考え方 サントリーグループのサステナビリティ サントリー )
・サイバーエージェント
サイバーエージェントにおいては、適材適所の配置を実現するために、「キャリアエージェント」という組織をおいています。この組織を中心に社員のコンディション把握ツール「GRPRO」や社内異動公募制度「キャリチャレ」の運用を行っています。
GERROに記入されたコメントに対して、手厚いサポートシステムを構築し、風通しのよい職場環境作りに向けた取り組みになっています。
(参考 87%の社員が「働きがいがある」と答える環境を実現ーーCHO曽山が語るエンゲージメントを高める人事施策 | CyberAgent Way サイバーエージェント公式オウンドメディア )
タレントマネジメントの失敗事例
タレントマネジメントがうまくいない要因としては主に以下があげられます。
・導入の目的があいまい
・タレントマネジメントの導入をするだけで効果が得られると考えた
・既存の人事制度と連携ができなかった
・目的があいまいなため、社員のデータ収集に協力が得られなかった
・人材データの更新頻度が少ない
このように、そもそもタレントマネジメントを行う目的が従業員にまで浸透がしなければ、従来の年功序列制度と反する制度であるため浸透が難しいと言えます。
まとめ
タレントマネジメントは、うまく機能することができれば、労働力人口の減少への対応、社員の流出阻止、付加価値の向上などメリットが多くあるシステムとなります。そのためにはまずは経営層から導入の目的を伝え浸透させることが大切です。
今回お伝えした内容が、タレントマネジメントの導入にお役立ていただければ幸いです。
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この記事の監修
中小企業診断士
株式会社アクセルパートナーズ代表取締役 二宮圭吾
WEBマーケティング歴15年、リスティング・SEO・indeed等のWEBコンサルティング300社以上支援。
事業再構築補助金、ものづくり補助金、IT導入補助金等、補助金採択実績300件超。
中小企業診断士向けの120名以上が参加する有料勉強会主催。