【事業再構築補助金】展示会にも使える?使い方を徹底解説!
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中小企業の事業者の皆さまが新たな市場に進出したり、事業再編、業態転換するなどの思い切った事業再構築を計画する場合、「新市場開拓」をする必要があります。しかし新たな市場での顧客の獲得は容易ではありません。そこでぜひ検討したいのが「展示会への出展」です。「事業再構築補助金」をはじめとした補助金では、展示会出展費用を対象経費としています。ここでは、展示会出展の必要性やメリット、最大効果を得るための目標設定、費用や補助対象となる補助金などについて、ご説明していきます。
目次
事業再構築補助金の概要
事業再構築補助金とは、新分野展開、事業転換、業種転換、業態転換、又は事業再編という思い切った事業再構築に意欲を有する中小企業等の挑戦を支援するための補助金です。
補助金には、挑戦する事業や賃上げへの取り組みなどに応じて、様々な応募枠(2023年9月時点)が用意されています。具体的には、成長枠、グリーン成長枠、卒業促進枠、大規模賃金引上促進枠、産業構造転換枠、最低賃金枠、物価高騰対策・回復再生応援枠です。また、事業内容以外の条件によって、補助金の上限額や補助率が異なる仕組みとなっています。
応募枠や申請に必要な要件等については、こちらの記事で詳しく解説しています。
【中小企業向け】おすすめの事業再構築補助金について解説します!
アンゾフの成長マトリクスと事業再構築
経営を取り巻く環境が大きく変わるなかで、成長を続けるためにはどのような成長戦略をとれば良いのでしょうか。そのヒントとなる考え方、フレームワークの一つが「アンゾフの成長マトリクス」です。アンゾフは、成長戦略を「製品」と「市場」の2軸におき、それをさらに「既存」と「新規」に分けました。
1.「市場浸透戦略」既存製品×既存市場
いままでの市場に、既存の製品やサービスを投入して、売上高や市場シェアの拡大をめざす戦略です。市場浸透戦略では、既存市場で、既存製品の認知を上げたり、購入意欲を高めたりすることが大きな課題で、戦略の主な目的になってきます。
2.「新製品開発戦略」新規製品×既存市場
いままでの市場に、新しい製品やサービスを投入して、売上を拡大しようとする戦略です。既存市場のニーズに対応した製品やサービスを開発すること、競合と差別化を図ることができる製品やサービスを開発すること、それができるかどうかが、重要なポイントになります。
3.「新市場開拓戦略」既存製品×新規市場
既存の製品やサービスを新しい市場に投入する戦略です。その市場に競合がいる場合は、商品力はもちろんですが、営業力・販売ネットワーク等の「売る力」が勝負を左右することも多くなります。既存製品の海外進出・海外展開は、この戦略の一例と考えることができます。
4.「多角化戦略」新規製品×新規市場
新しい市場に新しい製品やサービスを投入する戦略です。多角化戦略は、ほとんど経験のない市場で新製品を投入するため、マーケティングのコスト、製品・サービスの開発コストがかかるなどのリスクがあります。リスクがあっても新しい収益源を求める時、または求めなくてはならない時に、ハイリスク・ハイリターンの多角化戦略がとられます。
参考:「アンゾフの成長マトリクス」 | 経済産業省 中小企業庁 (mirasapo-plus.go.jp)
事業再構築では、3の「新市場開拓戦略」や4の「多角化戦略」が採用されることが多くあります。これらは新市場開拓が必須となり、事業計画を策定する際にどのような方法でこれを行っていくかを詳細に検討しておく必要があります。ではこの新市場開拓はどのように計画すればよいのでしょうか。
事業再構築で直面する新市場開拓の課題
事業再構築を実施した小規模事業者に対しての調査で、「直面した課題」で2番目に多かったのが「販売先の開拓・確保」です(2021年2月実施調査)。小規模事業者の皆さまにとって独力で新市場を開拓する難しさを表していると言えます。
新市場開拓のプロモーションミックス
このように、新市場における販売先の開拓・確保、つまり、新規顧客の獲得は簡単ではありません。中小事業者の皆さまにとっては、「新市場」では、自社や製品の認知度が高くないことが多いでしょう。そうなると、自社・自社製品の存在、機能や特徴、価格などの情報を市場に知らしめる必要があります。さらには、認知を図るだけでなく、「買う気」を起こしてもらうような働きかけも必要です。このようなアクションは「プロモーション」(販売促進活動)とも言われます。
新市場開拓は、皆さまビジネスが生産財(B to B)か、消費財か(B to C)かにより、どのようなプロモーションが効果的か変わってきます。製品をこれまで販売していなかった業界で販売するような場合、販売相手がユーザーとなるメーカーや卸業者となります。この場合は一般広告やパブリシティよりも、営業による人的販売活活動、そして「展示会」が新市場開拓の大きなきっかけとなります。消費財でも卸や小売に向けた市場開拓であれば、やはり人的販売や「展示会」が有効です。
一方で、消費財の認知向上は消費者に向けた広告、販売促進は店頭でのPOP掲示やキャンペーンなどの販促活動などが有効でしょう。
図:ビジネスに応じたプロモーションミックス
展示会出展の目的は新規顧客の獲得
このように、新市場がメーカーや卸、小売などの場合(B to B)は、展示会への出展が新市場開拓に大いに役立ちます。展示会出展の目的として考えられるのは次のようなものです。
1.対象業界の展示会に出展することで、潜在顧客が多く来場するため、新市場での知名度を高めることができます。
2.自社製品に関心を寄せた潜在顧客と名刺交換をすることにより、リードを獲得することができます。
3.自社製品の性能や特徴、味、外観などを実際に体験してもらうことができ、その後の商談を進めやすくなります。
4.潜在顧客のニーズや要望を収集・理解する機会となり、出展後のマーケティング戦略に役立たせることができます。直接商談をするだけでなく、ヒアリングしたい事項をアンケートにして、サンプルと引き換えに回答を求めるといった方法も大変効果的です。
5.潜在顧客だけでなく協力会社とのネットワーキング、競合他社の動向把握のチャンスにもなります。
展示会出展の最大の目的は新市場開拓、つまり新規顧客の獲得ですが、ブースでの「体験」を通じその後の人的販売を効果的に進めることができるなど、副次的な効果も想定することができます。
展示会出展効果を想定しておく
展示会出展の目的を明確にした後に、ぜひ出展の効果を想定しておきましょう。その効果が新市場開拓の目標を満たすものであるかどうかを確認しておく必要があります。さらに、目標値(KPI)を設定し、その目標をクリアすることを目指し、その後効果を検証する、というプロセスを踏むことで、展示会出展の最大効果を得ることができます。
リード獲得単価(CPL)
展示会出展の目的として前項で1~5まで挙げました。特に2の「リード獲得」については目標値(KPI)の設定しておくとよいでしょう。
例えば、展示会で500枚の名刺を収集し、出展費用が500万円の場合、名刺獲得単価、つまりリード獲得単価は1万円となります。
リード獲得単価(CPL)= 出展費用 ÷ 名刺獲得数
ただし、収集した名刺の中には、競合他社やターゲット顧客以外のものも含まれますので、実質的な見込み客となる名刺の数で数える方がよいでしょう。名刺交換数を想定するにあたり、展示会の主催者が過去の実績に基づいた来場者数や来場者の属性(業種や職種、地域など)の予測を公開していますので参考にされることをお勧めします。
一般的な展示会でのリード獲得単価(CPL)は1万円程度と言われています。この水準を見込めるかどうか、また想定したリード獲得単価が他の新市場開拓手段と比べて納得できるものであるか、展示会出展を決める前に確認しておきたいところです。
コンバージョン率(CL)
コンバージョン率(CL)は、展示会で名刺交換をしたリード顧客のうち、実際に商談や受注に至った割合です。
CL = (商談数 または 受注数 ÷ リード獲得数)× 100
コンバージョン率が高いほど、展示会が効果的ということになります。
投資対効果(ROI)
さらに抑えておきたい指標が投資対効果(ROI)です。費用に対してどのくらいのリターンがあるか、「受注金額」を「展示会費用」で割った指標です。
ROI = (受注金額 ÷ 展示会費用) × 100
この数値が高いほど、費用対効果が良いと言えます。つまり、ROIが高い展示会は、その投資が高い効果を生んでいることを意味します。展示会でどの程度の受注金額を想定し、ROIがどのくらいになるか、目標値を設定しておくとよいでしょう。
ここまで定量的なデータで展示会出展の費用対効果を予測しKPIとして設定することをご説明してきましたが、このような定量的な効果だけでなく、定性的な効果、つまり認知向上や顧客ニーズの収集、ネットワーキングなど、数値化しきれない効果もありますので、これらを考慮に入れて出展を決定することが重要です。
展示会出展前に整えておきたいフォローアップ体制
展示会に出展する際には、出展中のことはもちろん、展示会終了後の展開についてもよく考えておく必要があります。
リードをせっかく獲得しても、受注に結び付けるアクションをとらなければ最終目標である結果を得ることができません。
そのため、集めた名刺を用いて、誰がどのようにフォローアップしていくのかをあらかじめ考えておくことが大切になってきます。例えば、出展後1週間以内に御礼のメールをし、商談日程を伺う、1か月後に再度状況伺いのメールをする、などです。
展示会をリサーチする
国内外で開催される展示会はジェトロなどのサイトで紹介されています。地域や業種、開催時期で検索でき、各展示会の公式サイトへのリンクがあるので、出展概要や詳しい資料を調べることができます。
展示会にかかるコストとは
展示会に出展する場合、かかる費用は多岐にわたります。以下は、一般的な展示会における費用の一部とその目安ですが、実際の金額は展示会の規模や場所、業界によって異なります。
1.出展料(小間代)
展示会主催者に支払う料金です。場所やブースのサイズによって大きく異なります。
2.ブースデザイン・設営
設営をせずに主催者が提供する既定のブースを利用できる場合もありますが、独自の装飾を行う場合、デザイン費用や設営費用がかかります。
3.出展スタッフの経費
出展のためのスタッフを配置し、旅費、宿泊費、食事代などの経費がかかります。自社で対応できない場合は、外部人材等の派遣を手配するケースもあります。
4.広告宣伝
展示会の効果を高めるための広告費用です。これには印刷物、デジタル広告、ソーシャルメディア広告、メールマーケティングなどが含まれます。
5.プロモーション資材
展示ブースで来場者に配布するチラシ、パンフレット、名刺、無料のサンプルなどの費用です。効果的な商談を行うために事前に十分準備しておきたいものです。
6.機材搬入、電気、Wi-Fi、水道等設備使用料
展示に自社製品を搬入や据え付ける場合の費用、ブースで電源やWi-Fi、水道を使用する場合、これらの設備の料金がかかります。
7.追加サービス
展示会主催者が提供する追加サービス(例: セミナーやワークショップへの参加、広告バナーの設置など)を利用する場合、それにかかる費用がかかります。
展示会出展費用が補助される補助金とは
このように、展示会出展で新規顧客の獲得を期待できるものの、費用負担が大きい点も気になります。そこで、ぜひ検討したいのが補助金や助成金の利用です。展示会出展費用が対象となる補助金には次のようなものがあります。各補助金とも公募回によって対象経費等が異なってきますので、最新の情報を確認されることをお勧めします。
事業再構築補助金
- 対象事業
補助事業にかかる製品・サービス
- 対象経費(抜粋)
展示会出展(海外展示会を含む)に係る経費
※1 補助事業以外の自社の製品・サービス等にかかる経費は対象外です。
※2 補助事業実施期間内に展示会が開催されることが必要です。
※3 相見積もり書及び価格の妥当性が確認できる証憑の提出が必要です。
※4補助対象企業の従業員の人件費、出張旅費や交通費は対象外です。”
ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金(ものづくり補助金)
- 対象事業
グローバル市場開拓枠のうち、海外市場開拓(JAPAN ブランド)類型のみ
- 対象経費(抜粋)
本事業で開発又は提供する製品・サービスの海外展開に必要な広告(パンフレット、動画、写真等)の作成及び媒体掲載、展示会出展等、ブランディング・プロモーションに係る経費。
※1 補助事業以外の自社の製品・サービス等の広告や会社全体のPR広告に関する経費は対象外です。
※2 補助事業実施期間内に広告が使用・掲載されること、展示会が開催されることが必要です。交付決定後の発注・契約が前提となります。
出典:第16次 ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金 公募要領 2.0版
小規模事業者持続化補助金
- 対象事業
新たな顧客層の獲得に向けた商品の改良・開発等)や、販路開拓等
- 対象経費(抜粋)
- 展示会等出展費(オンラインによる展示会・商談会等を含む)、新商品等を展示会等に出展または商談会に参加するために要する経費。
- 展示会出展の出展料等に加えて、関連する運搬費(レンタカー代、ガソリン代、駐車場代等は除く)
- 通訳料・翻訳料も補助対象となります。
- 展示会への出展や、新商品生産のために必要な原材料調達の調査等に係る、宿泊施設への宿泊代
※ その他「補助事業期間外に開催される展示会等に係るもの」など補助対象外となるものがありますので、公募要領をご確認ください。
出典: 小規模事業者持続化補助金<一般型> 第 13 回公募
東京都 展示会出展助成事業
- 対象事業
BtoBの展示会(リアル、オンライン)
- 対象経費(抜粋)
- 助成事業者名義で自ら主催者と契約し、自ら出展小間内で商談を行うための小間スペース利用料
- 助成対象のリアル展示会に係る必要最低限の小間装飾委託費
- 助成対象のリアル展示会への出展に際し、展示物の輸送を運送事業者へ委託する場合の輸送委託費
※オンライン展示会の対象経費は公募要領をご確認ください。
出典: 東京都中小企業振興公社 令和5年度 展示会出展助成事業
東京都以外でも各地域で展示会出展の助成金や補助金が多くありますので、確認されることをおすすめします。
まとめ
今回は、事業再構築の際に必要となる新市場開拓の方法、特に展示会にフォーカスしてお伝えしてきました。
・BtoBの新市場開拓には展示会出展が効果的
・展示会では新規顧客の獲得が最大の目的
・展示会出展でターゲット顧客のニーズの収集など定性的な効果も
・展示会出展のKPIを設定し、費用対効果を想定しておく
・最大効果を得るために、フォローアップ体制を整えておく
・展示会にかかるコストを試算しておく
・展示会出展費用が対象となる補助金や助成金を活用する
展示会を計画的かつ効果的に活用し、新市場開拓、さらには新たな成長の足掛かりにすることをおすすめします。その際、補助金や助成金を上手に活用することで費用対効果をさらに上げることができます。
当社、アクセルパートナーズでは、展示会出展による新市場開拓を含めた事業再構築補助金をはじめとした補助金申請のサポートを承っています。
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この記事の監修
中小企業診断士
株式会社アクセルパートナーズ代表取締役 二宮圭吾
WEBマーケティング歴15年、リスティング・SEO・indeed等のWEBコンサルティング300社以上支援。
事業再構築補助金、ものづくり補助金、IT導入補助金等、補助金採択実績300件超。
中小企業診断士向けの120名以上が参加する有料勉強会主催。