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【IT導入補助金】必要となる賃上げ表明と賃金引上げについて解説

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IT導入補助金は、中小企業や小規模事業者の幅広い事業者が対象になる補助金ですが、単にIT化を図りたいだけで交付を受けられるわけではありません。ITツールの導入により生産性の向上や労働環境の改善、賃金アップなどの目標を達成することが求められます。
IT導入補助金にはいくつか種類がありますが、その中でも通常枠のB類型は補助金額などが大きいこともあり、賃上げ表明や賃金引上げなどの要件がより厳格になっているので注意が必要です。
この記事では、IT導入補助金の通常枠A類型とB類型の違いと、B類型で求められる要件について解説していきます。

 

通常枠の概要とA類型・B類型の違いについて

IT導入補助金の通常枠は、それぞれの事業者が自社の課題を見出し、課題の解決につながるITツールを導入することで、業務効率化や売上アップを目指すことを目的とする補助枠です。自社での検討と専門家によるコンサルティングなどの利用により、自社の置かれた環境から強み・弱みを認識したうえで、しっかりと分析をすることが求められます。そのうえで、把握した経営課題や需要に合ったITツールを導入することで、業務効率化を図ることや売上アップといった目標を掲げて、経営力の向上・強化を行うことが求められます。
A類型とB類型には、補助金額、対象となるITツールの内容に違いがあるので、よく確認しておくことが必要です。

A類型

補助率は1/2以内で、補助金額は5万円以上150万円未満です。申請するITツールのうち、1種類以上は業務プロセスに関するソフトウェアであることが必要で、汎用プロセスのみでは認められません。

B類型

補助率は1/2以内で、補助金額は150万円以上450万円以下です。申請するITツールのうち、4種類以上の業務プロセスに関するソフトウェアを導入することが必要です。なお、対象となる業務プロセスに関するソフトウェアは以下の業務になります。
顧客対応・販売支援、決済・債権債務・資金回収管理、供給・在庫・物流、会計・財務・経営、総務・人事・給与・労務・教育訓練・法務・情報システム、その他業務固有の業務特化型プロセスの6種類が業務プロセスソフトウェアとして該当します。また、汎用プロセスとして業種・業務は限定されず、生産性向上への寄与が認められ、かつ業務プロセスに付随しない汎用・自動化・分析ツールといった専用のソフトウェアをB類型については対象とすることが可能です。A類型は汎用プロセスのソフトウェアは対象にできません。

通常枠B類型で求められる要件

IT導入補助金を申請するには、補助事業を実施することで労働生産性の伸び率が、1年後は3%以上、3年後は9%以上の実現可能かつ合理的な生産性向上を目標とした計画を作成しなくてはなりません。さらに、通常枠B類型の場合には、以下の要件をすべて満たす3年の事業計画を策定して実行しなくてはなりません。
まず、第一に交付申請を行う時点で、以下で求められる賃金引上げ計画を策定して、従業員に表明することが求められます。第二として、従業員に表明すべき内容の一つになりますが、事業計画期間において、給与支給総額を年率平均1.5%以上増加させることが必要です。第三として、これも従業員に表明すべき内容の一つになりますが、事業計画期間において、事業場内で最も低い賃金を地域別最低賃金+30円以上の水準にしなくてはなりません。
つまり、まとめると給与支給総額を年率平均1.5%以上増加させることと、事業場内最低賃金を地域別最低賃金+30円以上の水準にするという賃金引上げ計画を策定し、従業員に対して表明しないと、申請ができないということです。

賃上げ表明をしていない場合や賃金引上げができなかった場合

これらの要件はしっかりとクリアしないと、IT導入補助金の返還を求められる場合があるので注意が必要です。たとえば、策定した賃金引上げ計画目標が事業計画終了時点で達成できなかった場合をはじめ、事務局へ期間内に報告をしなかった場合は返還を求められます。
また、申請時に賃上げ計画について従業員に表明したと申告しておきながら、実際には表明していないことが発覚した場合も、IT導入補助金の返還を求められてしまいます。そのため、必ず全従業員に表明し、賃金引上げという目標をうやむやにしないようにしなくてはなりません。

給与支給総額の増加目標が未達の場合

事業計画終了時点において、給与支給総額の年率平均1.5%以上の増加目標が達成できていないと、補助金の全部の返還を求めることがあるため、目標が達成できるよう経営努力を図りましょう。未達かどうかは、事業計画終了時点の3年度目に判断されます。 ただし、給与支給総額の年率増加率平均が付加価値額の年率増加率平均/2を越えている場合や大規模地震や台風による被害など事業者の責めに帰さない事情により、目標を達成できなかった場合にはIT導入補助金の返還は求められません。付加価値額とは粗利益のことで、粗利益 = 売上高-原価で求められます。 なお、給与支給総額を用いることが適切ではない特別な事情がある場合に限り、給与支給総額増加率に代えて、1人あたり賃金の増加率を用いることが可能です。

事業場内最低賃金の増加目標が未達の場合

事業計画中の毎年3月時点において、事業場内最低賃金の増加目標が達成できていないと、補助金額の全部もしくは一部の返還が求められてしまうので、1年ずつしっかりと目標を定めて経営努力を重ねていく必要があります。このケースについても、付加価値額増加率が年率平均1.5%に達しない場合や大地震などによる被害といった事業者の責めに帰さない事情により達成できなかった場合には補助金一部返還は求められません。

補助金返還額について

補助金返還額は、補助金額を労働生産性の計画目標年数である3年で除した金額に対し、3年間のうち目標未達年以降の年数を乗じた金額になります。未達となって返還を行った場合には、翌年度以降の事業実施効果報告は不要となり、その後に未達となっても返還は求められません。
事業年度の3年度目において、事業場内最低賃金の増加目標が未達で、かつ給与支給総額の増加目標も未達である場合は、いずれか返還額の高いほうで返還が求められることになります。
IT導入補助金の通常枠B類型を申請した事業者は、毎年度しっかりと掲げたすべての目標をクリアできるように努力を重ねなくてはなりません。

補助金返還の例

補助金交付額が上限の450万円で、事業場内最低賃金の増加目標が未達の場合の返還額は年度ごとに以下となります。
1年度目で未達の場合は全額の450万円を返還しなくてはなりません。
2年度目で未達になった場合は1年目は達成できているので、返還額は2/3となり、300万円の返還が必要です。1年度目は達成しているので150万円は認められるということです。
3年度目で未達の場合は1年度目、2年度目は達成できているので、返還額は1/3となり、150万円を返還しなくてはなりません。1年度目、2年度目は達成できているので、その分の300万円はそのまま受け取れるということです。

まとめ

IT導入補助金の通常枠B類型の申請をするにあたっては、従業員に対する賃上げ表明が求められます。また、求められる要件を満たす一定の賃金引上げ目標を定めて、IT導入補助金を利用して実施する事業の期間内に実現しなくてはなりません。これらの要件を満たせないと、IT導入補助金の返還を求められることがあるので注意しましょう。

 

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この記事の監修

アクセルパートナーズ 代表取締役二宮圭吾

中小企業診断士
株式会社アクセルパートナーズ代表取締役 二宮圭吾

WEBマーケティング歴15年、リスティング・SEO・indeed等のWEBコンサルティング300社以上支援。
事業再構築補助金、ものづくり補助金、IT導入補助金等、補助金採択実績300件超。
中小企業診断士向けの120名以上が参加する有料勉強会主催。

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