運送業も申請できるIT導入補助金とは
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「自社にもITツールを導入したいけれど資金的に厳しいかも・・・」と悩んでいる運送業者も多いのではないかと思います。
そのような運送業者にぜひ活用してもらいたいのがIT導入補助金です。
ここでは、2023年からインボイス制度がスタートすることもあって注目度も高まっているIT導入補助金がどのようなものなのか、そして運送業においてどのような活用の仕方があるのかといったことについて詳しく見ていきます。
目次
IT導入補助金とは
まずはIT導入補助金の概要などからご紹介します。
・概要
IT導入補助金は中小企業や小規模事業者などの労働生産性向上を目的とした補助金であり、システムソフトウェアや会計ソフトといったITツールの導入にかかる費用の一部を補助してくれるものです。
幅広い業種で利用することができる補助金であり、もちろん運送業も補助の対象となっています。
2023年度からは補助金の下限が一部引き下げられたことで、より安価なツールを補助金を利用して導入することができるようになるなど、利便性も向上しました。
・種類と補助される金額
IT導入補助金には対象となる経費によって大きく3つの申請類型があり、それぞれに補助される金額や補助率が決まっています。
具体的な内容は次の通りです。
1.通常枠(A類型・B類型)
自社の強みや弱みを分析して、課題やニーズに合ったITツール導入のための経費を補助することによって、業務効率化や売上アップといった経営力の向上を目的とするものです。
補助対象となる業務プロセスが非常に幅広く、顧客対応・会計・人事・決済などさまざまなソフトウェアの導入にかかる経費を補助してもらえます。
通常枠はA類型・B類型に分かれていて、A類型は補助額が5万円以上150万円未満で補助率の上限が1/2、B類型は補助額が150万円以上450万円以下で補助率の上限は同じく1/2です。
より補助額の大きなB類型を利用するためには賃金引上げ計画や業務プロセス改善計画などを表明する必要があります。
2.デジタル化基盤導入枠
インボイス制度への対応を見据えて2022年に新設された申請枠であり、会計ソフト・受発注ソフト・決済ソフト・ECソフトに特化した申請枠です。
会計・受発注・決済・ECのいずれかの機能を少なくとも一つ持っていることが補助対象の条件となります。
補助額50万円以下(下限なし)であれば補助率は3/4まで、50万円を超えて350万円以下での補助率は2/3以内です。
なお、デジタル化基盤導入枠では導入するソフトウェアとパッケージになっているハードウェアの購入についても補助を受けることができます。
補助額はPCやタブレットの場合で最大10万円、POSレジや券売機等の場合は最大20万円までとなっており、補助率はともに1/2までです。
3.セキュリティ対策推進枠
インターネットにつながっている端末は、サイバー攻撃の標的となることやマルウェアへの感染のリスクに常にさらされています。
このようなサイバーインシデントによって業務が中断され生産性が低下することがないように、企業がセキュリティ対策にかける費用の一部を補助するものです。
補助の対象となるのは独立行政法人情報処理推進機構(IPA)が公表する「サイバーセキュリティお助け隊サービスリスト」に掲載されているサービスに限定されますが、サービス利用料の2年分について最大で1/2まで補助が受けられます。
なお、補助額の上限額は100万円です。
運送業におけるIT導入補助金
では、運送業においてIT導入補助金はどのように活用されているのでしょうか。
・補助の対象となる運送業者
IT導入補助金の補助対象となるのは中小企業や小規模事業者であり、資本金の額や常勤従業員の人数によって定義されます。
それぞれの業種で定義される資本金の額や従業員の人数は異なりますが、運送業の場合は「資本金が3億円以下または常勤従業員が300人以下」の業者が補助金の対象です。
・運送業におけるIT導入補助金の活用方法
IT導入補助金を鑷子に活用することでどのような効果が期待できるのでしょうか。
1.統合型業務ソフトの導入によるリアルタイムでの業務管理
運送業者は、複数の配送拠点を有しているため、売上や経費のデータは一度拠点ごとにまとめたうえうえで再度本社で事務作業を行うケースがほとんどです。
しかし、これではデータを集計するまで時間がかかるうえ、入力ミスなどがあった時にどこに問題があるのか特定するのも難しくなってしまいます。
このような場合、ITツールを導入することで本社で一括してデータを管理できるようになるため、売上や経費のデータをリアルタイムで把握することができるようになり、より迅速で正確な経営判断も下すことができるようになります。
2.業務のペーパーレス化
規模の比較的小さい運送業者では、いまだに運行日報や運行指示書などの書類を手書きで行っている場合や請求書や伝票をExcelで処理しているところも多くあります。
このような企業では、クラウド管理できるソフトウェアを導入することによりドライバーは配送業務の空き時間を利用して日報や伝票を作成することができるようになるため、スタッフの負担を大幅に軽減することが可能です。
また、業務で使用する紙の使用量も大きく減らすことができます。
3.人事管理システムの導入による業務改善
運送業界は、慢性的な人手不足が大きな問題となっており、ドライバーによる残業が日常化しています。
そのような状況で2024年からはドライバーの労働時間に上限が課されることになり、物流・運送業界の「2024年問題」は非常に深刻な問題です。
このような企業ではスケジュール管理ソフトを導入することにより、ドライバー一人ひとりについての労働時間をひと目で確認することができるため管理が非常に楽になります。
また、配送日時や積載量に応じた適切な運行計画を立てることが可能となるため、業務を効率化してドライバーの負担軽減にもつながります。
IT導入補助金の申請手続きと注意点
では、IT導入補助金の申請手続きと注意点を見ていきます。
・申請手続きの流れ
まずは流れから解説します。
1.前準備
IT導入補助金という制度がどのようなものなのかを理解し、自社が補助金の対象となっているかを確認します。
また、業務改善したいポイントを洗い出して、予算の中でどのようなツールを選択できるか検討しておきましょう。
2.IT導入支援事業者を選定
ITツールの導入にあたっては、IT導入支援事業者との連携が不可欠です。
まずは信頼できるIT導入支援事業者を選定し、事業者の意見を参考にしながら導入すべきITツールを選びましょう。
3.申請の準備
IT導入補助金を申請するために必要な手続きを行います。
(a)GBizIDプライムアカウントの取得
インターネットから行政サービスを利用するためにはGBizIDプライムアカウントが必要です。
ホームページからIDとパスワードを設定してアカウントを作成しましょう。
アカウントの発行まで2週間ほどかかるので、早めの手続きがおすすめです。
(b)SECURITY ACTIONの宣言
SECURITY ACTIONは企業が情報セキュリティ対策に積極的に取り組むことを自己宣言する制度です。
ホームページから必要書類をダウンロードしたら、必要事項を入力して送信することで宣言したことになります。
(c)みらデジ経営チェック
2023年度から新しく要件化された手続きです。
GBizIDプライムアカウントを使って「みらデジ」ポータルサイトへログインして経営チェックを行います。
(d)必要書類の準備
IT導入補助金を申請するためには、履歴事項全部証明書(発行されて3ヶ月以内)と法人税納付証明書(直近分)が必要です。
申請手続きの前に準備しておきましょう。
4.補助金交付の申請
選定したIT導入支援事業者と事業計画の策定を行い、商談が成立したら申請手続きを行います。
IT導入支援事業者から招待された申請マイページから必要事項を入力して書類を提出しましょう。
最後に、IT導入支援事業者が導入するITツール情報と事業計画値を入力すれば申請手続きは終了です。
5.審査・採択
申請内容は審査員会で審査され、問題がなければ採択となり補助金交付が決定されます。
6.契約・支払い
IT導入支援事業者と契約し、支払いを行います。
なお、補助金の交付はこの時点では行われていないので、支払いは自費で行わなければなりません。
7.事業実施効果報告
補助金によって導入したITツールがどのくらい効果を発揮しているのかについて毎月報告しなければなりません。
事業実施効果報告を3ヶ月ほど続けて行うと補助金が交付されます。
・注意点
国から支給されるお金には助成金と補助金があります。
助成金は要件を満たしていればほぼ100%の受給することができますが、補助金はあらかじめ予算が決められているので、希望者全員が受給できるわけではありません。
IT導入補助金も当然ながら対象者すべてが受け取れるわけではなく、審査で落ちてしてしまうこともあります。
審査落ちの理由は明らかにされませんが、以下のようなことは減点対象となるのでやらないように注意しましょう。
1.2年連続で同じ機能を持つITツールを申請する
前年に給与計算ソフトを補助金を使って導入したにもかかわらず、次の年も給与計算ソフトの購入を申請しても審査には通りません。
同じ機能を持つITツールは納品されてから少なくとも1年以上経過していなければ選ぶことができないことになっているからです。
2.申請した内容に誤りがある、必要な書類が揃っていない
申請時に入力した内容に誤りがある場合や必要書類が不足していると不採択の原因となります。
特に入力項目は履歴事項全部証明書や登記簿の情報と一致していなければならないので、事前に確認しましょう。
3.できるだけ早く申し込む
IT導入補助金には予算の枠が設定されているため、後になればなるほど予算が逼迫していきます。
申請内容が同じであれば予算に余裕がある初期ほど採択されやすくなります。
まとめ
IT導入補助金は、これからITツールを導入したいと考えている運送業者にとって非常に有益な制度です。
上手に活用することで業務の効率化や人件費の削減、ペーパーレス化などに大きな効果が期待できます。
ただし、申請すれば必ず受給できるというものではないので、IT導入支援事業者と綿密にコミュニケーションを取りながら申請手続きを進めていくようにしましょう。
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この記事の監修
中小企業診断士
株式会社アクセルパートナーズ代表取締役 二宮圭吾
WEBマーケティング歴15年、リスティング・SEO・indeed等のWEBコンサルティング300社以上支援。
事業再構築補助金、ものづくり補助金、IT導入補助金等、補助金採択実績300件超。
中小企業診断士向けの120名以上が参加する有料勉強会主催。