IT導入補助金の対象外?子会社グループ会社みなし大企業とは
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IT導入補助金は2023年度も継続しており、昨年度と同様に通常枠・デジタル化基盤導入枠・セキュリティ対策推進枠が設けられています。
この制度は小規模事業者や中小企業などが対象となりますが、基本的にIT投資のハードルが高い事業者を支援することが目的です。
そのため、制度の趣旨から外れる事業者は、たとえ形式的には該当するように見えても対象外となるケースも少なくありません。
ここでは、IT導入補助金の対象外となる子会社やグループ会社、みなし大企業について解説します。
目次
IT導入補助金は規模要件を満たせば良いだけではない
形式的には、IT導入補助金の対象企業は中小企業や個人事業主を含む小規模事業者です。
さまざまな業種が該当しますが、資本金額や出資金総額などのほか、常勤の従業員数など要件が定められていて、それぞれ一定規模以下でないと対象外となります。
たとえば、小規模事業者で商業・サービス業に該当するなら従業員は常勤で5人以下が要件となりますが、サービス業でも宿泊業や娯楽業、製造業そのほかに該当する場合は常勤で20人以下です。
また、中小企業に該当するなら、旅館業でも資本額か出資総額が5,000万円まで、従業員は常勤で200人までとかなり規模が大きくなります。
それぞれの詳細は公式サイトで業種ごとの要件を確認すればわかりますが、ポイントはその要件を満たしていたとしても対象外になるケースが存在するということです。
理由は、経済産業省が考える制度の目的にありますが、あくまでIT導入に対し資金的にハードルが高い企業をサポートするという趣旨に添うことが重要だと言えるでしょう。
IT導入補助金の対象外となる企業とはどんな企業か
形式的には中小企業などの要件を満たす場合でも、IT導入補助金では対象外とされるケースがいくつかあります。
それぞれのケースについて主な事例をまとめてみましょう。
・大企業の子会社やグループ会社
大企業を親会社とする子会社やグループ会社は、IT導入補助金においては対象外とされます。
具体的には、該当する企業の発行済株式の総数または出資価格の総額の2分の1以上、もしくは3分の2以上を大企業が所有している場合です。
または、該当する企業において、大企業の役員や職員を兼ねる者が役員総数の2分の1以上を占めている場合も対象外とされます。
つまり、形式的には中小企業以下の規模であっても、実質的には大企業が経営権を握っているとみなされる場合にはIT導入補助金は申請できません。
・大企業の子会社やグループ会社が株式のほとんどを所有する会社
少々ややこしいですが、前述した大企業の子会社やグループ会社に該当する会社が、発行済株式の総数または出資価格の総額を所有している小規模事業者等も対象外となります。
また、そうした大企業の子会社やグループ会社に該当する会社の人員が対象企業の役員総数のすべてを占めている場合も同様に対象外です。
簡単に言えば、いわゆる大企業の孫会社にあたりますが、こちらもIT導入補助金では対象外となります。
つまり、直接的な親会社は大企業ではなかったとしても、資金的人員的に実質の経営を大企業が行っているとみなされる場合は除外されると考えましょう。
こうした中小企業や小規模事業者は「みなし大企業」と呼ばれます。
「みなし大企業」とは
みなし大企業というのは、諸官庁から実質は大企業だとみなされる企業を指します。
組織規模としては、中小企業基本法の条件に当てはまる中小企業に当てはまりますが、その実態は大企業だとみなされる企業です。
みなし大企業の考え方は古くからありましたが、2019年度の税制改正案で範囲が広く見直されたため、現在ではより多くの中小企業がみなし大企業と定義されています。
定義としては、資本金もしくは出資金が1億円以下の企業で、以下のどちらかに該当する場合に定義されます。
・発行済株式または出資の2分の1以上を同一の大規模法人に所有されている法人
・発行済株式または出資の3分の2以上を大規模法人に所有されている法人
また、以下も改定によってみなし大企業と定義されることとなりました。
・大法人(資本金または出資金が5億円超の法人など)の100%子法人
・100%グループ内の複数の大法人に発行済株式または出資の全部を保有されている法人
IT導入補助金に限らず、みなし大企業は中小企業を支援する目的で設定される補助金制度の対象から外れる場合があります。
大企業の傘下企業である場合は注意が必要です。
・そもそも大企業の定義とは?
大企業は、厳密にいうときちんと定義されているわけではなく、逆に中小企業の定義に当てはまらない企業が括られています。
基本的には、定められた資本金や従業員数を上回る規模を有する企業が該当すると理解しましょう。
逆に、中小企業は中小企業基本法で明確に定められており、業種ごとに資本金や従業員数の範囲があります。
なぜ対象外となるのか
みなし大企業は親会社の資金力や人材育成ノウハウなどを活用することで、国の補助金がなくとも自助努力で業務環境の向上が見込めると判断されます。
IT化やDX化を図ることは急務ですが、経済産業省の思惑としては、資金力や従業員教育に高いハードルがある企業のIT導入をサポートすることが趣旨です。
子会社や孫会社は頼るべき親会社がある以上、そちらの支援を受けて改革を図るべきというのが対象外とされる理由です。
ただし中小企業投資育成株式会社(中小企業投資育成株式会社法に規定される)、投資事業有限責任組合(投資事業有限責任組合契約に関する法律に規定される)は、いわゆる親会社には含まれません。
これらの組織は大企業によって支えられていますが、こうした組織の支援を受けていてもIT導入補助金の申請においては対象外とされません。
・独立企業となればIT導入補助金活用も可能
もともとは株式を保有されていたり、役員の派遣を受けていたりしたとしても、親会社子会社の関係を切り完全に独立企業となれば補助金の対象となります。
この場合、子会社時代に使用していた基幹システムも親会社から独立する必要がある場合が大半ですが、その資金としてIT導入補助金を利用するという手法も考えられます。
親会社ベースのITツールではできなかったテレワークシステムを導入したり、会計や勤怠管理システムなどを導入したりするなどして、IT環境を刷新することも可能です。
親会社との資本提携を切ることになりますが、ベンチャー企業として切り替えるにあたり、IT導入補助金を活用するのも一つの手段でしょう。
まとめ
IT導入補助金の対象外となる子会社やグループ会社、みなし大企業などについて解説しました。
IT導入補助金制度の趣旨として、IT化のためにすべき投資のハードルが高い企業を支援するという考え方がある以上、頼るべき大企業のある会社はどうしても対象外とみなされます。
形式的には該当する規模にあっても、該当企業の資本関係によっては対象から外されますので、そこはあらかじめ注意が必要です。
基本的には、幅広い中小企業や小規模事業者が申請できる比較的通りやすい補助金制度ですので、業種ごとに定められた要件を確認し、ぜひ有効活用しましょう。
また、IT導入補助金は採択されるまで何度でも申請できます。
一度みなし大企業として不採択になったとしても、同年度内に資本関係が変化すれば何度でも再申請できます。
2023年度はさらに利用しやすくなっていますので、専門のコンサルティング会社などに相談するのがおすすめです。
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この記事の監修
中小企業診断士
株式会社アクセルパートナーズ代表取締役 二宮圭吾
WEBマーケティング歴15年、リスティング・SEO・indeed等のWEBコンサルティング300社以上支援。
事業再構築補助金、ものづくり補助金、IT導入補助金等、補助金採択実績300件超。
中小企業診断士向けの120名以上が参加する有料勉強会主催。