地域未来投資促進税制とは。概要や申請方法、流れやメリットを分かりやすく解説
-
公開日:
事業者の皆さんにとっては、新たな事業展開を考える上で非常にメリットのある制度だと思いますので、確認してみてください。
目次
地域未来投資促進税制とは?地域活性化の取り組みに対する税制支援
地域未来投資促進税制とは、「地域未来投資促進法」という法律の施行に伴って、その施策を税制面から後押しするために実施される税の優遇制度です。
地域未来投資促進税制を知るためには、「地域未来投資促進法」が何なのかから理解をすることが重要となります。
では、「地域未来投資促進法」とは何なのでしょうか。
地域未来投資促進法とは?地域経済の促進を目的
地域未来投資促進法とは、地域の特性を生かして、高い付加価値を創出し、地域の事業者に対する相当の経済的効果を及ぼす「地域経済牽引事業」を促進することを目的とする法律です。
つまり、地域活性化につながる投資を促すために作られた法律ということです。
地域の特性を生かした地域経済牽引事業とは、例えば以下のような例が挙げられます。
・地元観光資源(歴史的建造物や自然遺産等の観光名所や温泉など)を活用した事業
・地元の農産物や特産品の地域外への販売や海外輸出のための販路開拓事業
・地元企業と大学などの研究機関とのタイアップによる新技術やサービスの開発事業
税制を受けるためにはまず、計画を作成し承認されることが必要です。
税制優遇には地域経済牽引事業計画の承認が必要
地域経済牽引事業計画は、地域未来投資促進法に基づく地域経済牽引事業の促進に関する制度で登場します。
計画から承認までの流れは以下の通りです。
【計画から承認までの流れ】
①市町村・都道府県が「基本計画」を作成
②事業者が①の基本計画に基づく「地域経済牽引事業計画」を作成
③都道府県知事が②を承認
④地域経済牽引事業の支援を行う「地域経済牽引支援機関」による「連携支援計画」を国が承認
※「地域経済牽引支援機関」とは、大学や公設試験研究機関などを指します
【基本計画が対象としている主な事業分野】
事業分野 |
事業内容 |
成長ものづくり |
ものづくり企業の医療機器産業参入 |
航空機部品の共同発注 |
|
バイオ・新素材分野の実用化 |
|
農林水産・地域商社 |
農林水産品の海外市場獲得 |
地域産品のブランド化 |
|
第4次産業革命関連 |
IoT、AI、ビッグデータ |
IT産業集積の構築 |
|
データ利活用による高収益化 |
|
観光・スポーツ・文化・まちづくり |
スタジアム・アリーナ整備 |
訪日観光客の消費喚起 |
|
文化財の活用 |
|
環境・エネルギー |
環境ビジネス |
省エネルギー |
|
再生可能エネルギー |
|
ヘルスケア・教育サービス |
ロボット介護機器開発 |
健康管理サポートサービス |
|
専修学校整備による専門職育成 |
※経済産業省資料より
地域未来投資促進税制とは?建物や設備への税制支援
「地域未来投資促進税制」とは、地域経済牽引事業計画の承認を受けた事業者を税制面から支援する制度です。
具体的には、当該計画に従って建物や機械装置等の設備投資を行った事業者は法人税等の計算において、以下の特例のうちいずれかを受けることができます。
①建物や機械装置等に係る特別償却(最大50%)
②税額控除(最大5%)
また地方自治体によっては、条例により地域経済牽引事業計画に必要な土地や建物について、固定資産税や不動産取得税の減免を受けられる場合があります(詳細は所管の自治体にお問い合わせください)。
本税制の利用のメリット5つ
地域経済牽引事業計画の承認を受けた事業者には、以下のようなメリットを期待することができます。
1.税制面の支援措置が受けられる
税制面の優遇の内容は以下の通りです。
①法人税等の優遇措置
建物や機械装置等に係る特別償却または税額控除の適用
対象設備 |
特別償却の場合 |
税額控除の場合 |
機械装置・器具備品 |
40% |
4% |
機械装置・器具備品 (上乗せ要件を満たす場合) |
50% |
5% |
建物・付属設備・構築物 |
20% |
2% |
②地方税の減免
地域経済牽引事業において新たに取得する土地・建物等について、都道府県・市町村の条例に基づき、地方税(固定資産税・不動産取得税)の課税免除または不均一課税を受けられる場合があります。
2.金融支援措置が受けられる
金融支援として、日本政策金融公庫の融資や、海外展開時の支援、信用保証協会による債務保証、中小企業投資育成株式会社からの出資等が受けられます。
3.各種規制の特例措置が受けられる
工場立地法や農地法、都市計画法等に関する各種規制において、緩和措置が設けられており、地域経済牽引事業の遂行のサポートが受けられます。
4.予算に関する支援措置が受けられる
地域経済牽引事業者は、各種予算事業等(補助金事業等)での加点措置や優遇措置を受けることができます。
5.みなし特定事業者特例
特定事業者(計画承認を受けた事業者)の要件から外れても、みなし特定事業者として継続して支援措置を受けることができます。
※例えば中小企業場合で従業員が増加したことにより中小企業でなくなった場合等
地域未来投資促進税制の対象や要件
次に申請の要件や手続きなどについて説明します。
対象企業
青色申告法人で以下の条件に当てはまることが必要です。
・中小企業
・下記のいずれかを満たす大企業
(1)継続雇用者給与等支給額 (注1) > 継続雇用者比較給与等支給額 (注2)
(2) 国内設備投資額 (注3) > 当期償却費総額 (注4) × 30%
(注1) 継続雇用者給与等支給額とは、「法人の適用年度および前事業年度の期間内の各月においてその法人の給与等の支給を受けた国内雇用者に対する適用年度の給与等の支給額」
※雇用保険法の一般被保険者に限られる
※高年齢者等の雇用の安定等に関する法律の継続雇用制度の対象者を除く
※給与等に充てるために他の者から支払を受ける金額(雇用安定助成金額)を除きます。
(注2) 継続雇用者比較給与等支給額とは、法人の継続雇用者に対する前事業年度の給与等の支給額をいいます。
(注3) 国内設備投資額とは、法人が適用年度において取得等をした国内にある法人の事業の用に供する法人税法施行令第13条各号に掲げる資産(時の経過によりその価値の減少しないものは除きます。)でその適用年度終了の日において有するものの取得価額の合計額をいいます。
(注4) 当期償却費総額とは、法人が有する減価償却資産につき適用年度においてその償却費として損金経理をした金額の合計額をいいます。
申請要件
地域未来投資促進法の税制優遇を活用するためには、下記のどちらの要件も満たす必要があります。
<地域経済牽引事業の要件>
<課税特例の要件>
また上乗せ要件を満たせば、さらに有利な優遇を受けられます。
<地域経済牽引事業の要件(3つ)>
①地域の特性の活用をすること
②高い付加価値の創出をすること
③地域の事業者に対する経済的効果があること
具体的な要件については地域ごとで異なるため、下記URLをご詳細ください。
<課税特例の要件(4つ)>
①(事業に)先進性を有すること
【通常類型の場合】
・労働生産性の伸び率が4%以上または投資収益率が5%以上
【サプライチェーン類型】
・海外への生産拠点の集中の程度が50%以上の製品を製造
・事業を実施する都道府県内の取引額の増加率が5%以上 等
②(事業の)設備投資額が2,000万円以上であること
③設備投資額が前年減価償却費の10%以上であること
④対象事業の売上高伸び率がゼロを上回り、かつ、過去5年度の対象事業に係る市場規模の伸び率より5%以上高いこと
<上乗せ要件>
⑤直近事業年度の付加価値額増加率が8%以上
⑥労働生産性の伸び率が4%以上、かつ、投資収益率が5%以上
*サプライチェーン類型に基づく申請は上乗せ要件の対象外となります。
地域未来投資促進税制の申請方法と必要書類
申請スケジュール・手続き
法人税等の課税の特例や地方税の減免を受けるためには、以下の手続きを行う必要があります。
※現時点では令和4年度分までのスケジュールしか公表されておりません。
※令和5年度分のスケジュール(いつから・いつまで)については現時点では未定です。
参考として令和4年度の第32回分のスケジュールを記載します。
①地域経済牽引事業計画の承認を都道県知事から受ける
※承認までの具体的なスケジュールは各都道府県にご確認ください
②事業の主務大臣の確認のための事前締切り
事業内容を主務大臣が確認するため、事業実施場所を担当する経済産業局に事業内容を相談する必要があります。
※第32回の場合、令和4年11月22日まで
③確認申請書の提出
主務大臣宛に事業の確認申請書を提出します。
※第32回の場合、令和4年12月23日まで
④主務大臣による確認
※第32回の場合、令和5年3月10日まで
申請方法・必要書類
①地域経済牽引事業計画の承認申請
各都道府県の申請窓口に承認申請書を提出します。
※スケジュールは都道府県毎に決められていますので、ご確認ください。
②確認申請書の提出
事業実施場所を担当する経済産業局に確認申請書を提出します。
※添付書類の準備も必要です。
まとめ
地域未来投資促進税制に関して、その概要やメリット、申請要件や申請方法を中心にご説明してきました。
この制度は、地域の産業振興により地域経済への波及効果を最大化するものとして地方公共団体、並びに地域の事業者の事業の後押しをしようとするものです。
事業者にとっても、将来を見据えた新たな事業を開始しようと検討はしていても、それに伴うリスクや投資負担があればなかなか一歩を踏み出せないかもしれません。
その点、このような制度を一つの機会と捉えて事業を前向きに検討してみるのもよいのではないでしょうか。
地域未来投資促進税制に関して活用を考えていらっしゃるものの、難しいのではないか等お悩みのある事業者様は、一度アクセルパートナーズまでご相談ください。
下記の問い合わせからお待ちしております!
補助金に関するお悩みは
アクセルパートナーズに
お任せください!
補助金の対象になるのか、事業計画から相談したい等
お客様のお悩みに沿ってご提案をさせていただきます。
まずはお気軽にご相談ください。
この記事の監修
中小企業診断士
株式会社アクセルパートナーズ代表取締役 二宮圭吾
WEBマーケティング歴15年、リスティング・SEO・indeed等のWEBコンサルティング300社以上支援。
事業再構築補助金、ものづくり補助金、IT導入補助金等、補助金採択実績300件超。
中小企業診断士向けの120名以上が参加する有料勉強会主催。