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企業を悩ます飲酒運転、白ナンバーアルコールチェック義務化延期でも今とっておくべき対応策

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警察庁は、2022年10月1日から施行予定であった、アルコール検知器を用いた酒気帯び確認の義務化を当分の間、
延期することを正式に決定しました。

このところの深刻な半導体の不足やコロナ禍での物流停滞で、
十分な数のアルコール検知器の供給が不可能であると判断されたことが延期の理由です。
検知器が十分に流通する見通しが立った時点で、できるだけ早期に義務化を実施するとしていますが、具体的な時期は未定としています。

義務化が延期となった今だからこそ、会社としてとるべき対応策に不備な点はないか再確認をしておきましょう。

そこで今回は、アルコールチェックの義務化についての概要と、会社がとるべき具体的な対策や、実務での注意点について説明します。

アルコールチェック義務化の内容

義務化の内容の前に、白ナンバー車にもアルコールチェックが義務づけられるようになった
背景について説明します。

運送業や旅客鉄道業などのいわゆる緑ナンバーには、2011年からアルコールチェックが義務化されています。

ところが2021年6月、千葉県八街市で下校中の小学生が飲酒運転のトラックにはねられ、
児童5人が死傷するという事故が起きてしまいました。

トラックの運転手は職務中で、勤務先に戻る途中に多量のアルコールを飲酒していたのです。

事故を起こしたトラックは白ナンバーの大型トラックであったため、会社にはアルコールチェックが義務づけられておらず、
未然に事故を防ぐことができませんでした。

この事故をきっかけとして、今回の法改正で白ナンバーにもアルコールチェックが義務化されることとなりました。

今後は業務中の従業員による酒気帯びでの事故に対しては、
本人だけでなく会社にも責任が問われることになるでしょう。

アルコールチェック義務化の対象事業者

義務化の対象となるのは、下記の台数の自動車を業務で使用する企業です。

・乗車定員が11人以上の白ナンバー車 1台以上

・その他の白ナンバー車        5台以上

つまり義務化の対象となるのは、「安全運転管理者」の選任義務がある会社ということになります。 

保持する台数は企業単位ではなく、支店や営業所などの1事業所ごとにカウントします。

社用車として使用しているリース車両や、従業員のマイカーを業務で使用する場合も、
安全運転管理者が管理すべき車両に該当するという点は注意が必要です。

アルコールチェック義務化の内容

令和4年10月1日から施行される予定であった義務化の内容は次の2点です。

・業務で車を使用する従業員の酒気帯びの有無を、アルコール検知器を使って確認すること

・正常に作動するアルコール検知器をいつでも使用できる状態にして常備しておくこと

 

今回の義務化は2段階施行で、今年の4月1日からはすでに下記の2点が義務づけられています。

・運転前後の状態を目視などによって、酒気帯びの有無を確認すること

・確認の結果を記録し1年間保存すること

(参考:警察庁ホーページ「事業所の取組強化!」

 

運転前後の状態については、社用車に乗るたびのチェックまでは求められていません。業務の開始前や出勤時、
および終了後や退勤時の1日2回のアルコールチェックと記録を行っていれば、法律上問題はありません。

皆さんの会社では4月1日の施行から現在まで、目視などでのアルコールチェックと
記録の保存は適切に行われていますか?

記録用紙は準備したけど白紙のままといったように、チェック作業が形骸化されていないか再確認し、
確実に運用できる体制を整備しておきましょう。

アルコールチェックの実施について

ここからはアルコールチェックを実際に誰が行うのか、チェック時の注意点、
従業員への周知啓発などの実務的なポイントについて説明します。

アルコールチェックを行うのは安全運転管理者

実際にアルコールチェックを行うのは安全運転管理者とされています。
管理者が不在の時などは、「副安全運転管理者」や「安全管理者の業務を補助する者」による確認も可能です。
補助者については、それぞれの事業所で適任者を選任できます。

安全管理者は20歳以上などの要件があり、公安委員会への届出が必要です。

安全管理者には、アルコール検知器が故障していないか定期的に確認し、
正常に動作するものを常に事業所に備え付けておくことも求められます。

(警察庁ホームページ「安全運転管理者の概要」

 

アルコールチェックは原則対面で行う

アルコールチェックは安全管理者などと対面で行うことが原則です。

 

では出退勤時に対面チェックができない「直行直帰や出張」の場合はどうすればいいのでしょうか。

直行直帰など対面での確認ができない場合は、カメラやモニターなどでの確認が可能とされています。

 

直行直帰や出張する場合には、運転者に検知器を携行させ、
スマホのテレビ電話機能を利用し確認を行うなどの具体的な方法を決めておきましょう。

 

ただしメールでの報告や、顔写真および検知器の画面を撮っただけでは、対面で確認を行ったことにはなりません。
目視による確認だけでなく、応答する声の調子などをリアルタイムで確認することが必要です。

(参考:千葉県警「安全運転管理者の業務拡充に関するQ&A」

 

アルコール検知器の誤反応対策

飲酒をしていないにも関わらず、検知器が反応してしまう場合があります。

原因の1つとして考えられるのは、チェック前に摂取したものにアルコールが含まれていたという場合です。具体的には

・味噌汁や栄養ドリンクなどの食べ物や飲み物

・喫煙

・口腔ケア用品

などが挙げられます。

この他にも、最近はコロナ禍でアルコール消毒を使用する機会が多く、
手についたアルコールに検知器が反応してしまうこともあるようです。

 

アルコール検知器協議会が行った調査では、ほとんどの飲食物や医薬品は摂取後10分程度で、検知器の反応はなくなるという結果があります。

検知器の誤反応を防ぐために下記のような対策をとっておきましょう。

・検知器でのチェック前10分間は飲食を控える

・チェック前にうがい、手洗いをする

・換気の良い場所でチェックを行う

・検知器が反応した場合は10分後に再度チェックを行う

 

もちろん、検知器自体の誤作動の可能性もあるので、複数の対象者でチェックしたり、
検知器の定期的なメンテナンスを行ったりするなどの対策も必要です。

社内教育でアルコールについての正しい知識を

飲酒運転を未然に防ぐには、社内でのアルコールについての教育を行うことも重要です。

厚生労働省の科学研究の資料には、ビール1杯を飲んでアルコールが体内から消える推奨時間は1時間、
ワイン1ボトルの場合は20時間かかると記載されています。
もちろんアルコールの影響は体重や性別、体質によって個人差が大きく、これはあくまで目安です。

従業員がアルコールに関する正しい知識を身につけ、
「明日のアルコールチェックに影響するから、今日はこのくらいにしておこう」と節度ある飲酒を心がけるようになれば、
飲酒運転の防止だけでなく、従業員自身の健康を守ることにもつながります。

(参考資料:国土交通省ホームページ「飲酒に関する基礎教育資料」

アルコールチェック義務違反の罰則

最後にアルコールチェック義務を怠った場合の罰則や、社内就業規則への規定について説明します。

アルコールチェック義務に違反した場合の罰則

安全運転管理者を選任していれば、アルコールチェックを怠ったとしても直接的な罰則はありません。

(安全運転管理者を選任していない場合の罰則は、
令和4年10月1日から5万円以下の罰金から50万円以下の罰金に引き上がられています。安全運転管理者の業務の拡充等

 

アルコールチェック義務違反に対する直接的な罰則はなくても、
従業員が業務中に飲酒運転で第3者を死傷させるような事故を起こした場合、
従業員個人はもちろんのこと、会社も民事上の責任を問われる可能性があります。(民法715条)

 

何よりも従業員の管理すらできない企業として、世間での信用を失うことになるかもしれません。

失った信用を取り戻すことは、アルコールチェックや社員教育を徹底することに比べたら、はるかに難しいものとなります。

 

アルコールチェック 就業規則への規定

アルコールチェックについては、就業規則に規定しておくべきでしょう。

理由としては2つあります。

 

1つめの理由は、「アルコールチェックは義務」という認識を従業員に意識付けるためです。
就業規則とあわせてリーフレットを作成したり、社内システム上に掲載したりするなどして、
従業員に周知することが効果的でしょう。

 

そして2つめの理由は、従業員がアルコールチェックを拒否したり、結果をごまかしたりした場合などに、
懲戒処分を行うことができるようにしておくためです。

あらかじめ就業規則に規定していないと、懲戒処分を行うことはできません。

 

また明確でない懲戒事由での懲戒は、トラブルの原因となります。

アルコールチェックは義務であり、違反した場合にはどのような懲戒処分となるのかを
従業員にはっきりと示しておくことは、義務違反の抑止にもつながるでしょう。

 

まとめ

今まで飲酒運転をした従業員なんていないから、うちの会社は大丈夫だと思っていませんか。

白ナンバーのアルコールチェックの義務化は延期となりましたが、
検知器が普及したらすぐに開始されるでしょう。

 

そもそも、緑ナンバーと白ナンバーは、運送業や旅客業として営業しているかどうかの違いはあるものの、
酒気帯び運転の危険度は両者とも変わりはありません。

事故はいつどこで起こるか分かりません。
自社の従業員が加害者になってしまってからでは遅いのです。

 

「いつから義務化となるか」ではなく「いつから始めるか」が重要です。

会社と従業員を守るために、できるだけ早期に取組まれることをおすすめします。

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この記事の監修

アクセルパートナーズ 代表取締役二宮圭吾

中小企業診断士
株式会社アクセルパートナーズ代表取締役 二宮圭吾

WEBマーケティング歴15年、リスティング・SEO・indeed等のWEBコンサルティング300社以上支援。
事業再構築補助金、ものづくり補助金、IT導入補助金等、補助金採択実績300件超。
中小企業診断士向けの120名以上が参加する有料勉強会主催。

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