【産後パパ育休】人事労務担当者が知っておくべき4つのポイント
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【産後パパ育休】人事労務担当者が知っておくべき4つのポイント
産後パパ育休(出生時育児休業)が2022年10月1日からスタートして約1か月が経ちました。
皆さんの会社では、産後パパ育休を取得された従業員はいらっしゃいますか?
政府は「2025年までに男性の育休取得率30%(2021年厚生労働省調査では13.97%)」を目標に掲げています。今後、産後パパ育休制度導入で、どれだけ男性の育休取得率が伸びるか注目されるところです。
今はまだ産後パパ育休の取得者がいらっしゃらない会社でも、今後増えてくるかもしれません。
今回は制度の概要だけでなく、人事労務担当者が知っておくべき実務上のポイントについても詳しく解説しています。
ぜひ、最後までお読みいただき人事労務担当者の皆さんの業務に活用していただければ幸いです。
通常の育休との違いについて
通常の育休という言葉は法律上の用語ではありません。
産後パパ育休と区別して分かりやすく説明するために、本記事内では通常の育休という言葉を使用しています。
最初に、この記事内で使用する通常の育休という言葉の定義について説明しておきます。
通常の育休とは
産後8週間の女性を就業させることはできず、この期間を産後休業といいます(労働基準法第65条)。
※女性が請求した場合で医師が支障がないと認めた業務に限り、産後6週間で就業可能。
そして、女性の場合は産後休業が終了した翌日から育休が始まります。
男性の場合は産後という概念がないので、子が生まれた日から育休を取得することができます。
この記事では、女性の産後休業後から始まる育休と、子供が生まれた日から取得する男性の育休について「通常の育休」という言葉を使用しています。
産後パパ育休とは
産後パパ育休は、この通常の育休に上乗せするかたちで創設された制度です。つまり、子供の出生後8週間以内の期間は、産後パパ育休と通常の育休のどちらも労働者は選択して取得することができます。(重複しての取得は不可)
表1 産後パパ育休と通常の育休
産後パパ育休 通常の育休とは別に取得可能 |
通常の育休 |
|
対象期間 取得可能日数 |
子の出生後8週間以内に4週間まで取得可能 |
原則子が1歳 (最長2歳)まで |
申出期限 |
原則休業の2週間前まで |
原則1か月前まで |
分割取得 |
分割して2回取得可能 (初めにまとめて申出) |
分割して2回取得可能 |
休業中の就業 |
労使で合意した範囲内で就業可能 ※労使協定の締結必須 |
原則就業不可 |
産後パパ育休の対象者
産後パパ育休の対象者は、通常の育休と同じです。
2022年4月1日から有期雇用労働者の雇用期間1年以上の要件が撤廃され、1歳6か月までの間に雇用契約が満了することが明らかでない労働者は、産後パパ育休を取得できます。
人事労務担当者からの良くある質問
Q.入社1年未満の従業員に、産後パパ育休の取得を認めないとすることはできますか?
A.労使協定を結べば可能です。
※2022年10月1日以前の労使協定には産後パパ育休については記載されていないため、再度締結することが必要です。
(参考:厚生労働省の労使協定の例)
※有期雇用労働者の雇用期間1年以上の要件が記載されている就業規則は改定が必要です。
Q.産後パパ育休を取得できるのは男性だけですか。
A.子供が生まれてから8週間は女性は通常産後休業中ですので、対象は主に男性となりますが、養子などの場合は女性も対象となります。
産後パパ育休の取得日数・回数・申出期限
産後パパ育休の取得日数・回数・申出期限は表1に記載のとおりです。
産後パパ育休の申出は2週間となっていますが、「2週間前にそんなにまとまった休みの申出をされたら業務が回らなくなって困る」という会社もあるかもしれません。
そのような場合は、雇用環境の整備などについて法を上回る取組みを労使協定で定めれば、申出期限を1か月とすることができます。
(参考:厚生労働省の労使協定の例)
人事労務担当者からの良くある質問
Q.子供が生まれて8週間以内は、4週間までしか休業を取得できないのでしょうか。
A.いいえ、違います。
子供が生まれてから8週間以内の期間は、産後パパ育休と通常の育休のどちらかを労働者が選択して取得できるようになります。
つまり、子供が生まれた日から続けて2か月間育休を取得したい男性労働者の場合、産後パパ育休を取得せずに通常の育休の1回目として取得が可能です。
産後パパ育休中の就業
産後パパ育休中に就業が可能となった点も大きなポイントです。
通常の育児休業では、原則は就業不可ですが、今回のコロナのように従業員の大幅な欠員状態が発生した場合に、一時的に就労することは可能です。
(育児休業中の就労について)
これに対し産後パパ育休中は、一時的・臨時的な理由は不要で、労使で合意した範囲内であれば就業することができます。
※休業中の就業日数等には上限があります。
(人事労務担当者からの良くある質問)
Q.会社の方針として、産後パパ育休中でも就業させないとすることはできますか。
A.はい、可能です。
休業中は就業しないことが原則であるため、パパ育休中は育児に専念にさせるために就業を認めないとすることも可能です。その場合は労使協定の締結は不要です。
Q.労働者は、勤務時間外である夜中の時間帯でのテレワーク勤務の申出をすることはできますか。
A.いいえ、できません。
産後パパ育休中に就業する時間帯は、所定労働時間の範囲内でしか申出をすることができません。
産後パパ育休中の育児休業給付金
産後パパ育休中は、出生時育児休業給付金が支給されます。
支給要件は通常の育児休業と同様ですので、ここでの詳しい説明は省きます。
(参考:厚生労働省のパンフレット)
実務上のポイント
産後パパ育休中は就業可能ですが、下記のように一定額を超えると給付金が減額されます。人事労務担当者から給付金が減額される場合も説明した上で、就業日数等を決定することが望ましいでしょう。
(人事労務担当者からの良くある質問)
Q.子供が生まれてから半年間、育休取得予定の男性従業員がいるのですが、出生時育児休業給付金と育児休業給付金に分けて申請が必要ですか。
A.従業員が子供が生まれてからの半年間を、通常の育休として取得すれば育児休業給付金のみの申請となります。
Q.産後パパ育休中に従業員を就業させた場合、その分だけ出生時育児休業給付金は受けられないのでしょうか。
A.日数次第で受給可能です。
産後パパ育休の就業日数には上限があります。
就業日数の上限は産後パパ育休の取得日数に比例し、最大は28日取得で就業10日(10日を超える場合は就業時間が80時間)以下です。
(雇保則101条の31、雇用保険業務取扱要領)
具体的な計算式:10日(80時間)×取得日数÷28
例えば産後パパ育休を10日間取得する場合は、10×10÷28=3.6日で端数を切り上げて4日まで就業しても支給対象となります。
就業日が4日を超える場合は時間でみますので、80×10÷28=28.57(端数処理なし)までが支給対象です。
産後パパ育休中の社会保険料免除
育児休業期間中の社会保険料免除要件も2022年10月1日から見直されました。
これまでの「その月の末日が育休期間中」である場合に加えて、新たに次の2点が社会保険料の免除要件とされています。
1.同一月内で14日以上育休取得した場合
2.賞与は連続して1か月を超える育休を取得した場合に限り免除
実務上のポイント
改正前は、例えば同じ14日間の育休でも月末をまたげば社会保険料が免除され、月末をまたがず月の前半でとった場合は免除されないという不公平感がありました。今回の改正ではその点が改善されています。
また賞与に関しては、支給月の末日の数日のみ育休を取得するといった育休では免除対象となりませんのでご注意ください。
※産後パパ育休は、最大で28日間ですので賞与の社会保険料免除の対象とはなりません。
(人事労務担当者からの良くある質問)
Q.従業員から月末に1日だけ育休を取得したいと言われました。社会保険料の免除を目的としていると思われるのですが、育休を取得させないといけませんか。
A.育休取得は労働者の権利ですので、要件を満たした労働者に育休を取得させない場合は法律違反となります。
しかしながら、育休とは育児をするために取得するものであるという趣旨については、人事労務担当者から説明することは必要でしょう。
ハラスメント対策で産後パパ育休の取得促進を
ハラスメント対策も人事労務担当者の重要な仕事のひとつです。
下の表は、過去3年間の種類別のハラスメント該当件数です。
パワハラやセクハラと比べると件数は少ないものの、マタハラ(妊娠・出産・育児休業等ハラスメント)は、今後男性の育休取得の増加によって増えてくる可能性があります。
過去3年間のハラスメント該当件数の傾向(ハラスメント種類別)
(厚生労働省 「職場のハラスメントに関する実態調査」より)
事業主にはハラスメント防止措置が義務づけられています。「ハラスメント防止対策は万全」という会社でも、現場レベルでは上司から「この忙しいのに休むの?男のくせに育休取るなんてありえないでしょ」言われたなんてことはよくある話です。
ハラスメントを未然に防止するには、ハラスメント教育が有効だとされています。
管理者向けにハラスメント研修を行ったり、相談体制を見直すなどの対策をとっておくことが重要です。
厚生労働省の認定制度「くるみん」の認定基準も改正
「くるみん」は「子育てサポート企業」として、厚生労働大臣が認定する制度です。
「くるみん」認定を受けると、認定マークを自社商品や求人広告などで使用することができます。また公表調達における加点評価などもあります。
最近は、学生や求職者が企業を選ぶ際の指標にしたとの声もよくききます。
(厚生労働省ホームページより)
「くるみん」認定を受けるには認定基準に達していることが必要です。
2022年10月1日の育休の改正に伴い、認定基準の一つである男性の育休取得率の基準が改正されました。
改正前は男性の育休取得率の認定基準は7%以上でしたが、この基準は「トライくるみん」という新たな認定制度で残るかたちになります。
主な認定基準
|
女性の育児休業取得率 |
男性の育児休業取得率 |
トライくるみん認定 |
10%以上 |
7%以上 |
くるみん認定 |
75%以上 |
10%以上 |
プラチナくるみん認定 |
75%以上 |
30%以上 |
認定を受けるのは簡単ではありませんが、子育てに支援に取り組んでいる企業であることをアピールできます。人事労務担当者の皆さん、認定に挑戦してみてはいかがでしょうか。
まとめ
今回は人事労務担当者向けに、産後パパ育休の実務上のポイントを中心に説明しました。
産後パパ育休の法改正よりも一足先に、2022年4月1日から従業員の育休制度の周知や、従業員自身や配偶者の妊娠・出産の申出があった場合の個別の意向確認が義務づけられています。
(雇用環境整備、個別の周知・意向確認措置の義務化)
育休についての制度を整備することはもちろんのこと、従業員からの制度利用やハラスメントに対する相談への適切な対応が人事労務担当者に求められています。
今回お伝えした内容が、育休取得率の増加に向けた取組みにお役立ていただければ幸いです。
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この記事の監修
中小企業診断士
株式会社アクセルパートナーズ代表取締役 二宮圭吾
WEBマーケティング歴15年、リスティング・SEO・indeed等のWEBコンサルティング300社以上支援。
事業再構築補助金、ものづくり補助金、IT導入補助金等、補助金採択実績300件超。
中小企業診断士向けの120名以上が参加する有料勉強会主催。